HR Trend Lab

MENU

HR Trend Lab

リーダーシップとは?定義や理論、とるべき8つの行動と高める方法

2023年08月23日更新

組織をまとめる立場になると、リーダーシップを要求される場面があります。新しい事業の立ち上げや、組織が停滞している場合はとくに必要とされるのがリーダーシップ。ただ、広く使われている言葉だけに、人によっては受け取り方もさまざまです。

ここでは、これまで提唱された数ある定義や理論の中でもポピュラーなものを紹介するとともに、リーダーシップを高める方法についてもお伝えします。自分が求めるリーダーシップ像に合わせてエッセンスを吸収し、リーダーシップを発揮していく上での参考にしてください。

目次 【表示】

リーダーシップとは

そもそもリーダーシップとはどのような意味を指すのでしょうか。あらためて言葉の意味を解説するとともに、リーダーシップの学術的な定義についても紹介しましょう。

リーダーシップとは指導力、統率力などと表現されることが多く、一般的には組織の中で目標を定め、組織を維持しながら成果を出す能力を意味します。求められるリーダー像はそれぞれの組織で差がある分、さまざまな定義や理論が語られてきました。

また近年、リーダーシップについての考え方は、先天的な才能や資質ではなく、トレーニングなどによって後天的に身につくものという考え方が主流となっています。

ドラッカーが挙げる3つの定義

数あるリーダーシップの定義の中で有名なのは、オーストリアの経営学者、ピーター・ドラッカーによるものです。リーダーシップに必要なのはカリスマ性ではなく人格を高めることというのがドラッカーの説です。その3つの考え方を紹介しましょう。

1.リーダーシップは仕事
ドラッカーは著書で、リーダーシップは「資質ではなく仕事」と著しています。組織の目標や優先順位、基準を定めて維持することを仕事として発揮できるのが、ドラッカーにとってのリーダーシップ。カリスマ性などの人を引きつける要素も「煽動的資質にすぎない」と強調しています。

2.リーダーシップは責任
また、ドラッカーはリーダーシップの要件に「地位や特権ではなく責任とみること」を挙げています。うまくいかない時も「その失敗を人のせいにしない」。すべての責任を背負う潔さを持つことが、「部下を激励し、前進させ、自らの誇りとする」という理想のリーダーシップにつながるという考え方です。

3.リーダーシップは信頼
ドラッカーは「リーダーに関する唯一の定義」として「『つき従う者』がいるということ」と挙げています。『つき従う者』とは強制されるのではなく、リーダーを信頼して自らの意思で従う人。そして、信頼するということについては「リーダーを好きになることではない。常に同意できることでもない。リーダーのいうことが真意であると確信を持てること」と説明しています。

ドラッカーのシンプルな3つの考え方は、多くのビジネスパーソンに支持されているようです。

リーダー以外にもリーダーシップが求められる理由

リーダーシップという言葉をそのまま捉えると、組織やチームを率いるリーダーに求められる資質やスキルと考えられがちです。しかし、リーダーシップは必ずしもリーダーにのみ求められるスキルではなく、リーダー以外のメンバーが身につけることで自分自身の強みにできるほか、組織にも好影響を与えることができます。

たとえば、メンバー一人ひとりがリーダーシップを理解して身につけることで、メンバー自身の主体性が増し、仕事に対するモチベーション向上が期待できるでしょう。また、チーム内の意思決定に関わる機会が増えることで仕事に対する視野も広がり、これまで以上に業務を円滑に進められる可能性もあります。

リーダーシップとフォロワーシップの違い

リーダーシップ以外にも、メンバー一人ひとりに求められる要素としてフォロワーシップがあります。

フォロワーシップとは、チームの目的や目標達成のために、上司やリーダーを積極的に支援したり、チームのために提言したりすることを指します。リーダーシップを発揮する人に対し、フォロワーシップを発揮しながらリーダーを支援する人がいることでチームが円滑に機能します。

リーダーシップの理論

論者の数だけ存在すると言われるリーダーシップの理論。組織の状況に応じて最適なリーダーのあり方は異なるとする「コンセプト理論」や、資質によっての有効性を説いた「条件即応モデル」など、ポピュラーなものも多くあります。ここでは日本人が提唱した「PM理論」と、現在活用されることの多い「SL理論」を紹介します。

三隅二不二のPM理論

PM理論は日本の社会学者、三隅二不二(みすみじゅうじ)氏が提唱したものです。

リーダーの行動をパフォーマンス(P)とメンテナンス(M)の組み合わせで構成。パフォーマンスは目標設定や計画の立案、部下への適切な指示などによる「目標達成能力」を指し、メンテナンスは組織内の人間関係を良好に保ち、まとまりを維持する「集団維持能力」を表します。

アルファベットの大文字、小文字で強さと弱さを表現され組み合わせは4通り。リーダーの行動に関する課題を探る指針として用いられるケースが多いようです。

1.PM
P、Mともに高く維持されている理想の状態です。このリーダーはメンバーに対し目標を明確にしているだけではなく、人間関係にも気を配っていると考えられます。

2.Pm
目標提示や達成への努力には重点を置いていますが、組織内の人間関係にあまり気を配っていないリーダーと言えます。目標をメンバーに意識してもらう機会を増やす努力がいるでしょう。

3.pM
目標よりも集団内の人間関係を重視するタイプのリーダーです。組織の風通しはよくなりますが、組織として成果を上げる具体的な施策をさらに考える必要がありそうです。

4.pm
パフォーマンス、メンテナンスともに消極的なタイプのリーダーです。グループ内に存在意義が見出されていない場合が多く、組織としても問題であることから、このpmの位置に属するのだけは避けたいところです。

ハーシィとブランチャードによるSL理論

SL理論は米国の行動科学者、ポール・ハーシィと、作家で起業家のケン・ブランチャードが提唱しました。管理者のリーダーシップとメンバーの成熟度の相関関係をもとにリーダーシップ条件適合論を展開しています。リーダーシップの有効性を示すカテゴリーは4つ。相手によってリーダーシップのスタイルを変化させ、組織の活性化を目指します。

S1.指示型
部下との人間関係の構築よりも、仕事の達成度を優先します。業務を具体的に指示、事細かに監督するため、新入社員などメンバーの成熟度が低い場合に適合するでしょう。

S2.説得型
一方的に指示することはなく、相手を説き伏せ同意を得ながら目標達成を目指します。ある程度の経験を積んだ若手社員に対しては有効なリーダーシップの形でしょう。

S3.参加型
仕事に対する意識よりも、人間関係を重視します。意思決定なども部下の意見を参考にします。成熟している中堅社員に対しては適合しやすいでしょう。

S4.委任型
仕事の成果を、責任をかねて部下に委ねるタイプです。新入社員や若手に対してなら問題のある姿勢ですが、自立しているベテラン社員には責任感や達成感をもたらす効果も期待できるでしょう。

近年注目されているリーダーシップ理論

上記で紹介したPM理論やSL理論は、リーダーシップ理論の中でも代表的なものです。これらに加えて、近年になって注目され始めているリーダーシップ理論も存在します。

オーセンティックリーダーシップ

オーセンティックリーダーシップは、高い倫理観や道徳観を持つと同時に、リーダー自身が大切にしている価値観や考え方に根ざして組織をリードするリーダーシップのことを指します。

オーセンティックリーダーシップでは、リーダーがメンバーと本音で向き合いながら信頼関係を築くと同時に、それぞれの個性や強みを把握し、どう生かせるかを考えて行動することが特徴です。

現代社会は価値観の多様化によって、変化の激しい時代となっています。このような時代において、従来のようなトップダウン型の組織では上層部の決定により誤った方向に進んでしまうケースや、多様化する市場のニーズに応えられないこともあるでしょう。

そのようななかでも、リーダーがメンバー一人ひとりの個性や強みを活かすことができれば、多様性のある組織が作られ、変化の激しい時代にも対応できると期待されます。
なお、オーセンティックリーダーシップには、以下の5つの特性が求められます。

1.情熱を持って目的を追求する
2.自分なりの価値観にもとづいて行動する
3.真心を持ってリードする
4.継続的に人間関係を構築する
5.セルフマネジメント

サーバントリーダーシップ

サーバントリーダーシップとは、「リーダーである人は、まず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」という考えにもとづいたリーダーシップ理論です。

まずは部下の話を聞き、奉仕や支援をしながら信頼関係を構築し、目標達成に導きます。メンバーと信頼関係を築き、コーチングやメンタリングによってメンバーの強みや主体性を引き出すことにより、メンバーの自主性や自律性が育ち、真に強い組織が生まれることが期待されることから、サーバントリーダーシップの考え方は注目されています。

提唱者のロバート・K・グリーンリーフは、サーバントリーダーシップには以下の10の属性が求められるとしています。

1.傾聴(Listening)
2.共感(Empathy)
3.癒し(Healing)
4.気づき(Awareness)
5.説得(Persuasion)
6.概念化(Conceptualization)
7.先見力・予見力(Foresight)
8.執事役(Stewardship)
9.人々の成長に関わる(Commitment to the Growth of people)
10.コミュニティづくり(Building community)

シェアドリーダーシップ

シェアドリーダーシップとは、組織内のメンバー全員がリーダーシップを発揮することを指します。リーダーの役割をシェア(共有)している状態ともいえることから、シェアドリーダーシップとよばれます。

シェアドリーダーシップは、状況に応じてリーダーシップを発揮するメンバーと、それに従い主体的に動いているメンバーが入れ替わるのが大きな特徴です。シェアドリーダーシップを実現するためには、メンバー一人ひとりが組織の目的やビジョンを理解し、共通のゴールに向かって進んでいくことが重要です。

シェアドリーダーシップの導入においては、以下3つのポイントがあります。

1.リーダーシップの定義や理想の組織のイメージを共通化したうえで、自分の強みがどのように組織に貢献できるのかをメンバー自身に自覚してもらう

2.メンバーに対するアプローチ方法(ファシリテートやコーチングなど)を公式のリーダーが学び、メンバーへ働きかける

3.日常業務や会議などの進め方を実際に変えることを提案し、組織に根付かせていく

リーダーがとるべき8つの行動

リーダーシップを発揮するためには、リーダー自身の日頃の行動を少しずつ変えていくことが大切です。リーダーシップ理論によってもリーダーがとるべき行動の定義は異なりますが、今回は8つの行動を例に紹介しましょう。

アデアが提唱したリーダーシップの特性理論

イギリスのリーダーシップ論の第一人者、ジョン・アデアはリーダーがとるべき8つの行動を「リーダーシップの特性理論」として提唱しています。この理論では「リーダーとはなにか」ではなく、「リーダーがなにをするか」に重点が置かれており、シンプルかつ実用的な理論としても知られています。
アデアが提唱した理論において、リーダーがとるべき行動として挙げられているのは以下の8つです。

1.仕事を明確に
チームや個人には仕事の目標をSMARTに示す必要があるとしています。SMARTとは、具体的=Specific、測定可能=Measurable、合意がとれている=Agreed-upon、現実的=Realistic、期限つき=Time-bound、の頭文字をとったものです。

仕事の目標を定性的で曖昧な内容として定めるのではなく、定量的かつ具体的な内容にすることが重要です。

2.計画
仕事を計画する際には、不測の事態に備えた代替案を用意しておかなければなりません。そのためにも、打ち解けた雰囲気をチーム内に作り、建設的で独創的な方法をともに編み出していくような環境が必要であると説いています。

3.説明
仕事にあたるまえに、チームメンバーに対して目的や計画を事前に説明しておかなければなりません。チームメンバーに共通の目的意識を持たせたうえで、各メンバーの役割も明確にしていきます。

4.統制
仕事が効率的に進められるように、メンバー一人ひとりのエネルギーをひとつの方向へ向けるのもリーダーの大切な仕事です。そこで、リーダーにはメンバーへの効果的な指示や規制ができる能力も必要と説いています。

5.評価
チームの業績や個人を正しく見極めたうえで、正当な評価や査定をするように心がけることも大切です。

大きな成果を出せたメンバーがいる一方で、目標を達成できないケースや、失敗に終わってしまうメンバーもいるでしょう。評価を下すだけでなく、成果を高めるための改善策を考え、提案する能力も重要としています。

6.動機づけ
リーダーシップを発揮しメンバーを引っ張っていくためには、リーダー自身が高いモチベーションを持つことも重要です。同時に、メンバー一人ひとりに対しても、内在的、外在的にモチベーションを維持できるような動機づけをおこなう必要があると説いています。

7.組織化
チームが一貫性を持った組織となるよう、メンバーを育成することもリーダーに求められます。

ときには組織そのものの方針が転換され、業務内容が大きく変わることもあるでしょう。そのような場合でも、リーダー自らがフレキシブルに対応できなければならないとしています。

8.模範化
リーダーは常にメンバーから見られていることを意識しなければなりません。仕事に対して妥協する姿勢が見えてしまうと、メンバーにもそのような考えや姿勢が伝わってしまいます。リーダーは自ら先頭に立ち、メンバーに模範を示すことが大切です。

リーダーシップとマネジメントの違い

リーダーシップと似た言葉にマネジメントがあります。両者はどのような違いがあるのか詳しく解説しましょう。

方向性を示すのがリーダーシップ

リーダーシップはマネジメントと混同されがちですが、概念はまったく異なります。

マネジメントとは、目標の達成に向けての手段の模索や管理が中心となります。対してリーダーシップは、目標の達成に向けて自発的に組織のメンバーを導くことを指します。よりシンプルに表現すると、ビジョンや方向性を示すのがリーダーシップであり、現実的な結果を求めるのがマネジメントということになります。

リーダーシップ マネジメント
役割 目標やビジョンを達成するために、メンバー一人ひとりの自発的な行動を促し、組織を正しい方向へと導く 目標やビジョンの達成に向けて、有効かつ効率的な方法や手段を模索すると同時に、組織としての活動を維持・促進できるように管理する
求められる視点 中長期的な視点 長期的な視点と短期的な視点
メンバーに影響を与える要因 リーダーの人格・考え方・価値観 地位・肩書き・職務の権限など
求められるスキル 先見性・意思決定力 管理能力・状況把握力

 

必要とされるタイミングにも違い

リーダーシップとマネジメントは必要とされるタイミングにも違いがあります。リーダーシップは主に新しい事業を始める場合や、組織が停滞している時に最適とされています。

とくに組織が機能不全を起こしている場合は、さまざまな障害のある中で改革をおこなわなければならず、従来の体質を壊せるエネルギーも必要です。それはリーダーシップの得意とするところです。

方向性が定まればその後はマネジメントの出番となります。現状を正確に把握し、目標の達成や組織の維持へ向け、論理的に行動を起こします。

リーダーシップを高める方法

リーダーシップの形はひとつではありませんが、これからリーダーシップを高めたいと考えたとき、どういった方法が有効なのでしょうか。

理想的なリーダー像を設定し、真似をしてみる

まずはどのようなリーダーが求められるのか、理想像を定めます。

理想のリーダーとする人は、社内の上司や現実に存在する人物はもちろん、本やアニメの登場人物などでも構いません。その人の振る舞いや思考を観察し、それになりきって真似をしてみましょう。

理想像とするリーダーがどのような思考と行動をとっているのか、実際に体験することで徐々に近づいていくことができます。

このように、思考と行動を真似しながら体得していく手法を心理学では「モデリング」とよびます。モデリングをおこなうことで、その人の振る舞いといった表面的な行動だけでなく、価値観や思考のパターン、信念といった内面的なものも理解できるようになります。

意思決定プロセスを意識する

リーダーは日頃からさまざまな意思決定をおこなわなければなりません。たとえば、タスクや業務をメンバーに割り振るのもリーダーの意思決定のひとつといえるでしょう。
リーダーの立場にはないメンバーであったとしても、日常業務では些細な意思決定をおこなっているはずです。

意思決定のシーンにおいて、どういった方法やパターンがあるのかを考え、もっとも効率が良い方法を判断し行動に移す、といったプロセスを意識しながら業務をおこなってみましょう。

これにより、複雑な選択肢や難しい判断が求められる中でも、リーダーとして責任のある意思決定ができるようになるでしょう。

コミュニケーション能力を磨く

話や相談がしやすいリーダーのもとには、些細なことでも自然と報告が上がってくるようになります。

このようなリーダーになるためには、ビジネスパーソンとして求められるコミュニケーション能力よりも、ひとつ上の優れたコミュニケーション能力を身につけることが重要となってきます。

具体的には、相手の年齢や立場に関係なく、敬意を持って話や意見を聴こうとする姿勢が挙げられます。また、人と接する際の姿勢が謙虚であったり、話を盛り上げようとしたりする姿勢も挙げられるでしょう。

日頃のコミュニケーションを振り返り、コミュニケーション能力を磨くことでリーダーシップを高めていけるでしょう。

求められるリーダーシップを常に模索

組織をまとめるのにリーダーシップは欠かせません。経営者や管理職だけではなく、社員一人ひとりもそれぞれの役割の中で求められるスキルであることを認識するのも重要でしょう。

時代が急速に変化する中、理想のリーダーシップも変化していく可能性があります。

これまで提唱されてきた定義や理論を参考に、リーダーシップを高める方法を日頃から実践しつつ、リーダーシップとはなにかを常に模索し続けることで、組織で指導力や統率力を発揮するエネルギーへつながるかもしれません。

>>管理職研修ムビケーションはこちら

人気記事ランキング
注目キーワード
研修・診断サービス
  • クレクタ
  • マイナビ エンゲージメント・リサーチ
  • 社会人基礎力診断
  • ムビケーション
→
←
Career Research Lab マイナビ研修サービス ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 外国人採用サポネット 日本エンゲージメント協会 HUMAN CAPITAL サポネット ナレビ マイナビキャリアサポート