リーダーシップとマネジメントはなにが違う?混同されがちな両者の概念を解説
企業や組織を円滑に運営していくためには、さまざまな価値観・考えをもったメンバーをまとめ上げ、管理する能力が不可欠です。このような能力は一般的にリーダーシップやマネジメントとよばれますが、両者は混同されることも少なくありません。
本記事では、リーダーシップとマネジメントにはどのような違いがあるのかを解説するとともに、リーダーやマネージャーに求められるスキルについても紹介します。
リーダーシップとは
リーダーシップとマネジメントの違いを理解するためには、それぞれの意味を正確に把握しておく必要があります。
そこで、まずはリーダーシップとはどのような意味なのかを紹介するとともに、オーストリアの経営学者ピーター・ドラッカーが定義したリーダーシップについても解説しましょう。
リーダーシップの意味
リーダーシップとは、日本語で「指導力」や「統率力」などと表現されることが多い言葉です。これをよりわかりやすく言い換えると、「組織のなかで目標を定め、組織を維持しながら成果を出す能力」といえるでしょう。
ただし、上記はあくまでもリーダーシップの一般的な意味にすぎず、企業や組織によっても求められるリーダーシップは異なります。
また、リーダーシップは才能や資質といった先天的なスキルではなく、トレーニングによって身につく後天的なものであるという考え方が近年では主流となっています。
ピーター・ドラッカーは、リーダーシップに必要なのはカリスマ性ではなく人格を高めることであるとしています。リーダーシップの詳しい内容については、以下の記事でも解説しているため、ぜひこちらも参考にしてみてください。
マネジメントとは
リーダーシップと混同しやすい言葉にマネジメントがあります。
マネジメントとは、日本語で「経営」や「管理」といった意味をもつ言葉で、企業においては経営管理や組織運営などを意味する言葉として使用されています。特に日本では、管理職が部下を管理したり、自部門の業務を管理したりすることを指す場合が多いでしょう。
また、ピーター・ドラッカーはマネジメントについて「組織に成果を上げさせるための道具、機能、機関」と定義しており、以下の3つの役割が求められるとしています。
1.ミッションの達成
2.組織・チームのメンバーを活かす
3.社会貢献
たとえば、チームや組織の目標を達成するために経営資源を有効活用しながら、ステークホルダーから期待されている成果をあげることや、メンバー一人ひとりの個性・能力を把握したうえで動機付けをし、さまざまな仕事を通じて部下を成長させることもマネジメントの一例といえるでしょう。
リーダーシップとマネジメントの違い
リーダーシップとマネジメントは似たような意味で使用されることも多いですが、両者には明確な違いがあります。具体的にどういった点で違いがあるのか詳しく解説しましょう。
目標やビジョンの達成に向けた役割の違い
リーダーシップもマネジメントも、最終的には企業や組織が目指す目標やビジョンを達成するという共通の目的があります。しかし、そのためのアプローチ方法や役割がリーダーシップとマネジメントでは異なります。
リーダーシップは、目標やビジョンを達成するために、メンバー一人ひとりの自発的な行動を促し、組織を正しい方向へと導いていきます。
これに対しマネジメントは、目標やビジョンの達成に向けて、有効かつ効率的な方法や手段を模索すると同時に、組織としての活動を維持・促進できるように管理することを指します。
すなわち、組織が取り組む方向性を示しメンバーを導いていくのがリーダーシップであり、そのための現実的な方法を検討し組織を管理するのがマネジメントという違いがあるのです。
必要とされるタイミングの違い
リーダーシップとマネジメントは、必要とされる場面やタイミングにも違いが見られます。
リーダーシップが必要とされる場面の例としては、主に新たな事業・プロジェクトをスタートするときや、組織が停滞しているときなどが挙げられます。
新たなプロジェクトや事業のスタート段階では、メンバーがなにから手をつければよいのかが分からず、漠然とした不安を抱くことも多いものです。そこで、組織やチームが目指す大まかな方向性を示すことで、具体的なビジョンをメンバーが理解できるようになります。
一方、マネジメントが必要とされるタイミングは、組織やチームとして目指すべき方向性が明確に定まった後、その目標を確実に達成したいときです。現状を正確に把握することで、目指すゴールに対してなにが不足しているのかが明確になり、メンバーはとるべき行動が論理的に理解できるようになるでしょう。
求められる視点の違い
リーダーシップは組織を正しい方向に導いていく必要があるため、中長期的な視点が求められます。たとえば、3年後、5年後といったスパンで組織をどう変革していくか、そのためにどのような人材を育成していくべきか、といった視点が求められるでしょう。これには組織目標の設定や、環境の整備なども必要になります。
これに対しマネジメントは、長期的な視点と短期的な視点の両方が求められます。組織が示す方向性やビジョンを正しく理解したうえで、目標を達成するためにどのような人材育成プランを立てるべきか、経営資源をどのように配分するか、組織をどのように維持・調整すべきか、といったこともマネジメントでは検討しなければなりません。
影響要因の違い
リーダーシップは、リーダーの人格や考え方、価値観などによって周囲に与える影響力が変わってきます。
たとえば、経営者や管理職といった肩書きがあるからといって、無条件にリーダーシップを発揮できるとは限りません。反対に、肩書きがなくてもリーダーシップを発揮できる人材は存在します。
すなわち、部下やメンバーを強制的に従わせるのではなく周囲の人から信頼されるリーダーになれるかどうかは、リーダー本人の人望や人格のほか、その人の行動とそれによって導かれる結果など、どれだけ人を納得させられる要素やスキルを持っているかによって決まるということです。
これに対しマネジメントは、地位や肩書き、職務の権限などに影響されることが多いという特徴があります。
さまざまな経営資源を効率的に管理・活用しながら、企業としての目標やミッションの実現を目指すためには、特定の権限や役職をもっておいたほうが物事を円滑に進められるためです。
リーダーとマネージャーに必要なスキル
組織目標やビジョンを達成するために、メンバー一人ひとりの自発的な行動を促し、組織を正しい方向へと導いていく人材をリーダーとよび、有効かつ効率的な方法や手段を模索すると同時に、組織を管理する人材をマネージャーとよびます。
リーダーとマネージャーはそれぞれ役割が異なりますが、行動力やコミュニケーションスキルのように、共通して求められるスキルも多くあります。
では、それ以外にリーダーとマネージャーに求められるスキルはどのようなものがあるのでしょうか。
リーダーに求められるスキル
・先見性
先見性とは、時代の変化や流れをいち早く読み、先を見通す力のことを指します。あらゆる情報に積極的に耳を傾け、世の中の変化を敏感に察知できるようになることで、今後の時代にも通用する新たなビジネスのヒントを得られる可能性が広がります。
・意思決定力
組織を引っ張っていくためには、予期せぬトラブルや問題が発生することもあります。状況に応じて正しい判断をし、即座に決断できる意思決定力もリーダーにとって必須のスキルといえるでしょう。
マネージャーに求められるスキル
・管理能力
組織としての目標やビジョンを達成するためには、いつ・誰が・どのように業務を進めていくのかを細かく管理する必要があります。
マネジメントでは組織の目標を明確にし、目標に対して現在どの程度の進捗具合なのかを把握し、必要に応じて業務の進め方を調整するスキルが求められます。
・情況把握力
組織が目指す目標やビジョンを達成するために、状況に応じて効率的な方法や手段を検討することがマネージャーの役割です。
メンバーから報告される内容をもとに、状況を正しく把握して、適切なアドバイスをするスキルがマネージャーに求められます。また、メンバーが相談・報告しやすい雰囲気を作っておくことも必要でしょう。
リーダーシップとマネジメントはどちらも経営に欠かせない要素
リーダーシップとマネジメントは似たような概念として捉えられることも多いですが、実際には今回紹介したように、さまざまな違いが挙げられます。
企業や組織においてはどちらも欠かせない要素であり、経営者や管理職はもちろんのこと実務を担うメンバーも、リーダーシップとマネジメントの双方に必要なスキルを身につけておくことが理想といえるでしょう。
これらのスキルを身につけてもらうために、企業としてさまざまな研修や講座を用意することもひとつの方法です。