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リーダーシップとマネジメントはなにが違う?混同されがちな両者の概念を解説

2025年08月07日更新

企業や組織を円滑に運営していくためには、さまざまな価値観・考えをもったメンバーを管理し、目標に向けて導く力が欠かせません。こうした能力は一般的に「リーダーシップ」や「マネジメント」と呼ばれますが、両者は混同されることも少なくありません。

しかし、リーダーシップとマネジメントは役割や求められる視点、スキルなどにおいて明確な違いがあります。

本記事では、リーダーシップとマネジメントの概要、リーダーシップとマネジメントの違い、必要なスキルの違い、リーダーシップとマネジメントの使い分けについて解説します。

リーダーシップとは

リーダーシップとマネジメントの違いを理解するためには、それぞれの意味を正確に把握しておく必要があります。

ここでは、リーダーシップの基本的な意味と、オーストリアの経営学者ピーター・ドラッカーによるリーダーシップの考え方について紹介します。

リーダーシップの意味

リーダーシップとは、日本語で「指導力」や「統率力」などと表現されることが多い言葉です。これをよりわかりやすく言い換えると、「組織のなかで目標を定め、組織を維持しながら成果を出す能力」といえるでしょう。

ただし、上記はあくまでもリーダーシップの一般的な意味にすぎず、企業や組織によっても求められるリーダーシップは異なります。

また、リーダーシップは才能や資質といった先天的なスキルではなく、トレーニングによって身につく後天的なものであるという考え方が近年では主流となっています。

ピーター・ドラッカーは、リーダーシップに必要なのはカリスマ性ではなく人格を高めることであるとしています。リーダーシップの詳しい内容については、以下の記事でも解説しているため、ぜひこちらも参考にしてみてください。

マネジメントとは

リーダーシップと混同しやすい言葉にマネジメントがあります。

マネジメントとは、日本語で「経営」や「管理」といった意味をもつ言葉で、企業においては経営管理や組織運営などを意味する言葉として使用されています。特に日本では、管理職が部下を管理したり、自部門の業務を管理したりすることを指す場合が多いでしょう。

また、ピーター・ドラッカーはマネジメントについて「組織に成果を上げさせるための道具、機能、機関」と定義しており、以下の3つの役割が求められるとしています。

  1. ミッションの達成
  2. 組織・チームのメンバーを活かす
  3. 社会貢献

たとえば、チームや組織の目標を達成するために経営資源を有効活用しながら、ステークホルダーから期待されている成果をあげることや、メンバー一人ひとりの個性・能力を把握したうえで動機付けをし、さまざまな仕事を通じて部下を成長させることもマネジメントの一例といえるでしょう。

リーダーシップとマネジメントの違い

リーダーシップとマネジメントは似たような意味で使用されることも多いですが、両者には以下のように明確な違いがあります。


リーダーシップ マネジメント
目標・ビジョンの達成に向けた役割 組織を正しい方向へ導く。メンバーの自発的な行動を促す。 有効かつ効率的な手段を模索し、組織を管理・維持する。
必要とされるタイミング 新たな事業・プロジェクトの開始時や組織が停滞しているときに必要。 方向性が定まった後、目標を確実に達成したいときに必要。
求められる視点 組織の方向性を考えるために中長期的な視点が必要。 組織の目指す方向性や目標を達成するために短期・長期の両方の視点が必要。
影響要因 人格・価値観・考え方など、リーダー本人の影響力によって左右される。 地位・肩書き・権限など、職務上の立場に影響されやすい。


具体的にどういった点で違いがあるのか詳しく解説いたします。

目標やビジョンの達成に向けた役割の違い

リーダーシップもマネジメントも、最終的には企業や組織が目指す目標やビジョンを達成するという共通の目的があります。しかし、そのためのアプローチ方法や役割がリーダーシップとマネジメントでは異なります。

リーダーシップは、目標やビジョンを達成するために、メンバー一人ひとりの自発的な行動を促し、組織を正しい方向へと導いていきます。

これに対しマネジメントは、目標やビジョンの達成に向けて、有効かつ効率的な方法や手段を模索すると同時に、組織としての活動を維持・促進できるように管理することを指します。

すなわち、組織が取り組む方向性を示しメンバーを導いていくのがリーダーシップであり、そのための現実的な方法を検討し組織を管理するのがマネジメントという違いがあるのです。

必要とされるタイミングの違い

リーダーシップとマネジメントは、必要とされる場面やタイミングにも違いが見られます。

リーダーシップが必要とされる場面の例としては、主に新たな事業・プロジェクトをスタートするときや、組織が停滞しているときなどが挙げられます。

新たなプロジェクトや事業のスタート段階では、メンバーがなにから手をつければよいのかが分からず、漠然とした不安を抱くことも多いものです。そこで、組織やチームが目指す大まかな方向性を示すことで、具体的なビジョンをメンバーが理解できるようになります。

一方、マネジメントが必要とされるタイミングは、組織やチームとして目指すべき方向性が明確に定まった後、その目標を確実に達成したいときです。現状を正確に把握することで、目指すゴールに対してなにが不足しているのかが明確になり、メンバーはとるべき行動が論理的に理解できるようになるでしょう。

求められる視点の違い

リーダーシップは組織を正しい方向に導いていく必要があるため、中長期的な視点が求められます。たとえば、3年後、5年後といったスパンで組織をどう変革していくか、そのためにどのような人材を育成していくべきか、といった視点が求められるでしょう。これには組織目標の設定や、環境の整備なども必要になります。

これに対しマネジメントは、長期的な視点と短期的な視点の両方が求められます。組織が示す方向性やビジョンを正しく理解したうえで、目標を達成するためにどのような人材育成プランを立てるべきか、経営資源をどのように配分するか、組織をどのように維持・調整すべきか、といったこともマネジメントでは検討しなければなりません。

影響要因の違い

リーダーシップは、リーダーの人格や考え方、価値観などによって周囲に与える影響力が変わってきます。

たとえば、経営者や管理職といった肩書きがあるからといって、無条件にリーダーシップを発揮できるとは限りません。反対に、肩書きがなくてもリーダーシップを発揮できる人材は存在します。

すなわち、部下やメンバーを強制的に従わせるのではなく周囲の人から信頼されるリーダーになれるかどうかは、リーダー本人の人望や人格のほか、その人の行動とそれによって導かれる結果など、どれだけ人を納得させられる要素やスキルを持っているかによって決まるということです。

これに対しマネジメントは、地位や肩書き、職務の権限などに影響されることが多いという特徴があります。

さまざまな経営資源を効率的に管理・活用しながら、企業としての目標やミッションの実現を目指すためには、特定の権限や役職をもっておいたほうが物事を円滑に進められるためです。

リーダーとマネージャーに必要なスキルの違い

組織目標やビジョンを達成するために、メンバー一人ひとりの自発的な行動を促し、組織を正しい方向へと導いていく人材をリーダーとよびます。一方で、有効かつ効率的な方法や手段を模索すると同時に、組織を管理する人材をマネージャーとよびます。

両者は役割が異なるものの、共通して求められるスキルも少なくありません。
ここでは、リーダーとマネージャーそれぞれに求められるスキルと、共通して求められるスキルの代表例を紹介します。

【求められるスキルの違い】

リーダー マネージャー
・先見性
・意思決定力
・ビジョン構築力
・管理能力
・情況把握力
・調整力
・部下育成力
共通して求められるスキル

・コミュニケーション能力
・チームビルディング

リーダーに求められるスキル

・先見性
先見性とは、時代の変化や流れをいち早く読み、先を見通す力のことを指します。あらゆる情報に積極的に耳を傾け、世の中の変化を敏感に察知できるようになることで、今後の時代にも通用する新たなビジネスのヒントを得られる可能性が広がります。

・意思決定力
組織を引っ張っていくためには、予期せぬトラブルや問題が発生することもあります。状況に応じて正しい判断をし、即座に決断できる意思決定力もリーダーにとって必須のスキルといえるでしょう。

・ビジョン構築力
リーダーにとって欠かせないのが、組織の進むべき方向を明確に描き、周囲に伝えるビジョン構築力です。これは理想となる将来を挙げるだけでなく、そのビジョンがなぜ重要なのか、どうすれば実現できるのかを具体的に示す力を指します。

ビジョンは、組織の価値観や目的意識の土台となるものであり、メンバーの日々の業務における指針にもなります。

また、ビジョンを一度伝えただけで組織に定着させるのは難しいため、日常的なコミュニケーションの中で繰り返し言語化し、浸透させていく姿勢も必要です。
組織のビジョンと会社全体の方針が連動していることを示しながら、メンバーにとって達成感や手応えが感じられる工夫をすることで、一体感を作ることにつながるでしょう。

マネージャーに求められるスキル

・管理能力
組織としての目標やビジョンを達成するためには、いつ・誰が・どのように業務を進めていくのかを細かく管理する必要があります。

マネジメントでは組織の目標を明確にし、目標に対して現在どの程度の進捗具合なのかを把握し、必要に応じて業務の進め方を調整するスキルが求められます。

・情況把握力
組織が目指す目標やビジョンを達成するために、状況に応じて効率的な方法や手段を検討することがマネージャーの役割です。

メンバーから報告される内容をもとに、状況を正しく把握して、適切な指示やフィードバックをするスキルがマネージャーに求められます。また、メンバーが相談・報告しやすい雰囲気を作っておくことも必要でしょう。

・調整力
マネージャーにとって重要なスキルの一つが、立場や目的の異なる人同士の意見を整理し、対立を建設的な形で解消していく調整力です。
業務には複数の関係者が関わることも多く、部署間の連携や社外との交渉において、意見の相違は起こり得るものです。

調整力のあるマネージャーは、対話を重ねながら双方の主張を理解し、公平な視点で折り合いをつけることができます。また、ただ単に妥協点を探るのではなく、全員が納得できる形で前に進めるように道筋を整えることが求められます。

・部下育成力
部下の成長を支援する育成力もマネージャーに求められるスキルです。

これは部下一人ひとりの強みや課題を把握し、適切なサポートや成長機会を与えたり、モチベーションを向上させたりするなど、広い範囲の能力を指します。
相手の性格や理解度に応じて適切な指導や目標設定をおこない、本人の主体性を引き出します。
また、成果だけでなく取り組みの過程にも目を向け、「プロセスフィードバック(業務のプロセスに対するフィードバック)」をおこなうことで、学習の促進につなげます。

共通して求められるスキル

ここまで異なるスキルを紹介しましたが、リーダーとマネージャーに共通して求められるスキルも多いです。共通して求められるスキルの中から「コミュニケーション能力」「チームビルディング」の2つを紹介します。

・コミュニケーション能力
リーダーにもマネージャーにも、周囲との円滑なやりとりができるコミュニケーション能力は欠かせません。
自分の考えをわかりやすく伝え、相手の話をきちんと受け止める姿勢が大切です。

そのために傾聴スキルが役立ちます。傾聴スキルとは、相手の話を最後まで遮らずに聴き、内容だけでなく気持ちや意図まで理解しようとする姿勢のことを指します。

具体的には、以下の行動が挙げられます。

  1. 相手の話を途中で遮らず、うなずきや相づちを交えて最後まで聴く
  2. 「それは大変でしたね」といった共感を示す言葉を添える
  3. 「もう少し詳しく教えてもらえますか?」「それはどんな背景があったのですか?」といった深掘りの問いかけをする

こうした関わり方により、相手に「きちんと聞いてもらえている」という安心感を与え、信頼関係の構築につながります。

・チームビルディング
チームビルディングとは、個々のメンバーが力を発揮しやすい関係性や仕組みを作ることです。
メンバーが互いを信頼し、協力し合える環境が整っていると、情報共有がスムーズになったり、困ったときに助け合えたりと、チームでの動きが円滑化します。

結果としてチームとしてのパフォーマンス向上につながります。リーダーやマネージャーには、メンバーの個性や強みを理解し、役割や働き方を調整していくことが求められます。

リーダーシップとマネジメントの使い分け方

選択肢を考えるビジネスマン イメージ画像
リーダーシップとマネジメントは対立するものではなく、互いに補完し合う関係にあります。とくに管理職には、この両方の力と行動が求められます。

変化の激しい時代には、将来の方向性を示し、人を動かすリーダーシップが求められる場面が増えています。しかしそれだけでは十分ではなく、日々の業務を安定的に運営し、管理していくためのマネジメントの視点も欠かせません。

たとえば、新しい事業を立ち上げるような場面では、これまでおこなっていないことに挑むため、ビジョンを構築し、メンバーを巻き込んで進める力であるリーダーシップが重要になります。一方で、すでに決まっている業務を確実に進めていく場面では、計画や体制を整え、メンバーの力を安定的に発揮させるマネジメントの力が求められます。

また、十分に力を発揮できるメンバーに対しては、裁量を渡し、自発的な行動を促す姿勢であるリーダーシップのあり方が重要です。重要なのは、どちらが優れているかではなく、状況や人に応じて両者をどう使い分け、組み合わせるかです。

現代の管理職としては、「リーダーシップを持つマネージャー」や「マネジメント力を兼ね備えたリーダー」が理想といえるでしょう。

リーダーシップとマネジメントはどちらも経営に欠かせない要素

リーダーシップとマネジメントは似た概念として混同されがちですが、実際には今回紹介したように、役割や視点、求められるスキルなどに明確な違いがあります。ただし、企業や組織においては、どちらか一方が必要なのでなく、互いに補完し合うことで、より強い効果を発揮するものです。

そのため、経営者や管理職はもちろん、実務を担うメンバーも、リーダーシップとマネジメントの双方のスキルを身につけていくことが理想的です。
企業はリーダーシップとマネジメントを体系的に学べる研修や教育の機会を提供し、組織全体の能力向上につなげていくことが重要です。

著者プロフィールHR Trend Lab編集部
タレントマネジメントやエンゲージメントなどの最新トレンドから、組織や人事にまつわる基本知識までマイナビ独自の視点でお届けいたします。
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