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若き「怒れる市長」が考える未来のためのリーダーシップ(石丸伸二 様)

2024年05月16日更新

石丸伸二様top
広島県 安芸高田市長 石丸伸二 様(※2024年1月12日取材時点)

若き市長が議場に立ち、真っ直ぐに相手を見据えながら語勢強く「恥を知れ!」と議員に向かって一喝する姿をオンライン動画などで見たことがある方も多いのではないでしょうか。
それが、メガバンクのアナリストから37歳の若さで生まれ故郷の市長へと転身した、広島県安芸高田市の石丸伸二市長です。
SNSで繰り返し流れてくる彼の動画についてインタビュー中に話を向けてみると、少しはにかみながら「あれは、わざとなんですよ。ああいう動画ばかりが話題になってしまいますが、私としては正論を言っているだけなんです」と語ってくれました。

若くして一つの市を率いるリーダーとなった石丸氏。彼の考える「リーダーシップ」とは一体どのようなものなのでしょうか。

目次 【表示】

リーダーに「リーダーシップ」があるとは限らない

—オンライン動画で大きく話題になっている石丸市長の姿を見て「リーダーシップがあるなぁ」と感じる方が多いと思います。ご自身ではどう評価されますか?

石丸様(以下、石丸):正直、私自身は自分が「リーダーシップのあるタイプ」であるとは全然思わないんですよ。
友人と飲みに行っても、場を仕切るタイプではありませんし(笑)。むしろ隅っこに座って場の流れに任せていることのほうが多いです。

ただ、リーダーシップがあるかないかは置いておき、私が「リーダー」であるのは間違いのない事実です。市長ですから。

私の主観からは、「市長」という役割・立場においてやるべきことをやっているだけなんです。
それを見て「リーダーシップがある」と感じる方もいるかもしれませんが、私個人としては自分にリーダーシップがあるとは思いません。

—石丸市長は「リーダー」ではあるが、「リーダーシップ」があるとは自認されていないんですね。

石丸:私はたしかに「リーダー」ではあります。そして、切り抜き動画などでは「自信家」にも見えるでしょう。だからといって、全てのリーダーが自信家であるわけでも、ましてや自信家であればリーダーであるわけでもないと思うんですよね。

ただ、私が大切にしていることが一つあります。リーダーであろうとなかろうと、そしてリーダーであるならなおさら、「あるべき論」から逃げず、あえて率直に語っていくということです。
石丸伸二様

リーダーなら「あるべき論」を語るべき

—「あるべき論」ですか。たしかに、議会での石丸市長は率直な物言いで、人の言いにくいことをズバッと語る印象があります。

石丸:あの言葉遣いや態度は、ある種の演出です(笑)。そのように振舞っているのも、目的が二つあるからです。
一つが、長年かけて固着してしまった悪習を取り払うために強い言葉が必要だと思っているから、そしてもう一つが「あるべき論」をしっかり語っていくことの重要性を次の世代に知ってもらいたいからです。

—なるほど。オンライン動画で有名になったあの語り口は、戦略的な演出なんですね。

石丸:そうです。動画だけを見ていると私が議会と喧嘩しているように見えるかもしれませんが、そうではありません。
民主主義における大原則の一つ、二元代表制の「あるべき」姿を取り戻すために必要だと思うから、やっているのです。今お話しした一つめの目的を果たすため、ですね。

地方議会というのは、私(市長)を代表とした「執行部」と、議員によって構成される「議会」という、どちらも選挙によって選ばれた代表者による「二元代表制」で成り立ち、お互いに議論を重ねて市政運営を行っています。

が、多くの地方議会ではこの二者の関係が「なあなあ」になりやすく、実際、私が市長就任する前の安芸高田市議会もそうでした。しかし、それでは市政を健全に機能させることはできません。

その状態を解決するため、あえて強い言葉を使いながら、もとのあるべき姿に戻そうとしているのです。

—— その姿を見た、とくに若い世代が石丸市長に、まさに「牽引役」という意味での「リーダーシップ」を見ているのかもしれませんね。

石丸:リーダーシップを見ているかどうかは置いておいても、それが先ほどお話しした、二つめの目的です。

私としては、この安芸高田市があるべき姿に戻り、そして若い世代が「あるべき論」をきちんと語ることの大切さを理解し、行動を起こしてくれれば、それが何よりも嬉しいです。

リーダーは「個として責任をとる」

—— 一方、「市長」というまさにリーダーの立場であるからこそ「あるべき論」を語ることができるという見方もあると思います。石丸市長は就任前までメガバンクの行員でしたが、その時代はどうでしたか?

石丸:行員時代はアナリスト(※)で、巨大組織の一員という立場でしたが「あるべき論」を語るという姿勢は今と同じでしたね。その姿勢は、もしかすると上司に抱いていた不満の裏返しだったのかもしれません。
※アナリスト:分析担当者。銀行においては、国内外の経済動向や政治情勢、企業経営状況といった、多種多様なデータを調査・分析し、金融市場や経済の予測を行う職のこと。

—— 上司への不満の裏返しですか。どのようなものですか?

石丸:銀行という組織はその性質上、とてもミスを嫌います。なので、上の立場になると「ミスを認めない」人が増えてくるんです。これが嫌だったんです。

完璧な人間は存在しないので、「ミスをしない」のは無理ですが、「ミスをしたら認める」ことは誰にだってできるはずです。
そうすれば、周りがフォローしてミスをリカバリーしたり、再発防止策を考えたりもできるので、組織がよりよい方向に動き出します。

そういう「あるべき論」をいつも語っていたので、けっこう煙たがられましたが(笑)。

—— 銀行でなくても、会社組織が「ミスを嫌う」というのはよくあることなのだと思います。

石丸:そうですね。経営危機に陥るような大きなミスをしないように仕事をするのは当然ですが、それと「ミスを嫌がって挑戦しなくなる」というのは別のことだし、挑戦をやめてはいけないと思っています。

たとえば、サッカーには「ここから先にボールを出してはいけない」というラインがありますよね。
プレイ中はもちろん、そのラインを割らないようにプレイすることが求められます。

しかし、ラインを割ってしまうのを恐れてコートを大きく使えないのでは、とれる戦略が限られ勝てなくなってしまい、本末転倒です。

これと同じように、どのような仕事、業界にもルールというラインがあります。そのラインを踏んだり、はみ出たりしたら、その時はきちんと謝って修正すればよいのです。ラインを踏むことを恐れて、萎縮をしていたら成長はありません。

ミスをしたら謝り、修正する。そしてリーダーがしかるべき責任をとる。
これは私が考える「リーダーシップ」において重要なポイントなのかもしれません。

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