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タフアサインメントとは?人事・マネージャーが注意すべきこと

2024年12月18日更新

社員同士が手を組む様子
タフアサインメントは、社員の潜在能力を引き出し、急速な成長を促す人材育成手法です。近年叫ばれている「リーダー人材不足」の解決策として注目を集めています。本記事では、タフアサインメントの概要、メリット・デメリット、実践方法までをまとめて解説します。

目次 【表示】

タフアサインメントとは

人形を選別する描画

タフアサインメント(tough assignment)は、社員の現在の能力を超えた挑戦的な職責を意図的に割り当てる人材育成手法です。新規プロジェクトの立ち上げや不採算事業の再建など、重要な職務を任せることで、研修など通常の人事施策のみでは実現が難しい短期間での急速な成長と能力開発を促します。

タフアサインメントとはストレッチゾーン(ラーニングゾーン)の課題を与えること

タフアサインメントでは、以下の3つの心理的空間が大きく関係しています。

コンフォートゾーン
現在の能力でも十分対応できる領域で、成長の機会は限られる
ストレッチゾーン(ラーニングゾーン)
適度な挑戦を伴う成長領域で、新たなスキルや能力の獲得が期待できる
パニックゾーン
能力を大きく超えた状態で、ストレスが高く学習や成長が阻害されることがある

 

従来仕事を割り当てる際は、安定した業務遂行と段階的なスキル向上を目的として、社員の現在の能力や経験に合った難易度の課題を与えるのが一般的です。

それに対して、タフアサインメントでは意図的に能力を超える職責を与え、短期間での急成長を促します。言い換えれば、タフアサインメントは社員をコンフォートゾーンから押し出し、ストレッチゾーンへと導くための手法といえます。

ジョブアサインメントやストレッチアサインメントとの違い

ジョブアサインメントは一般的に、上司が部下に対して「業務や役割を割り当てること」を指し、必ずしも挑戦的な内容とは限りません。また、ストレッチアサインメントは、ストレッチゾーンの課題を与えることを指す用語です。現在の能力を超える職務を戦略的に割り当てるという点でタフアサインメントと似ており、厳密に定義が異なるわけではなく同義として扱われることもあります。

なぜ今タフアサインメントが注目されているのか

タフアサインメントが注目されている背景には、急速に変化するビジネス環境があります。デジタル化やグローバル化の進展により、従来の段階的な人材育成では対応が間に合わないケースが増加しています。

とくに各企業において重要課題となっているのが、次世代リーダーの不足です。経済産業省の報告によると、日本企業の多くが次の世代を担う経営人材不足に直面しており、その育成が急務となっています。タフアサインメントは、経営者候補などの次世代リーダーを効果的に育成するアプローチとしても注目されているのです。

なお、タフアサインメントは上位層向けにおこなわれることが多いですが、下位のレイヤーに対しても実施できます。たとえば、アセスメントや経営層へのプレゼンテーションをおこなうプロジェクト型研修は、タフアサインメントを疑似的に体験できる手法として活用されています。これらの手法を通じて、通常業務の延長線上にはない課題に取り組む機会を提供し、一般社員の成長を促せます。

タフアサインメントのメリット

メリットのイメージ

タフアサインメントには、次のようなメリットがあります。一つひとつ確認していきましょう。

社員の急速な成長と潜在能力の開花が期待できる

タフアサインメントでは、通常よりも難易度の高い課題を与えて、対象社員をコンフォートゾーンからストレッチゾーンへと移行させます。これにより潜在能力を引き出し、社員の成長を飛躍的に促進する効果が期待できます。また、ハードルの高い課題を乗り越えられれば、その経験が社員の自信にもつながるでしょう。

リーダー人材の育成ができる

タフアサインメントを通じて責任の重い職掌や複雑な課題を任せることで、リーダーシップの育成に大きく寄与することが期待できます。困難な状況下での意思決定や、チームマネジメントの経験を通じて、将来の経営者候補や中核人材の早期育成を図れるでしょう。

さらに、タフアサインメントはサクセッションプラン(後継者育成計画)の重要な要素となります。サクセッションプランとは、組織の主要ポジションの後継者を計画的に育成する取り組みのことです。選抜された経営者候補に対してタフアサインメントを経験させることで、実践的なリーダーシップスキルを磨き、組織の将来を担う人材として育成できます。

組織の活性化・事業拡大に寄与する

タフアサインメントによる人材の急速な成長により、組織の柔軟性や適応力向上が期待できます。たとえば、新たな視点や革新的なアイデアが生まれやすくなったり、成長を実感できる組織風土の醸成につながったりします。結果として、組織全体の活性化と事業拡大の基盤を築けます。

タフアサインメントのデメリット

デメリットのイメージ

タフアサインメントは多くの利点がある一方で、注意すべきデメリットも存在します。

心理的負担・ストレスの増加につながる

通常以上に困難な課題に直面することで、社員は大きな心理的負担やストレスを感じる可能性があります。また、適切な説明や支援がおこなわれない場合、タフアサインメントがパワハラと誤解される危険性もあります。進め方次第でメンタルヘルスの問題につながるリスクがあるので注意しましょう。

パニックゾーンに入ってしまうリスクがある

タフアサインメントが社員の能力を大きく超える場合、パニックゾーンに陥る可能性はゼロではありません。パニックゾーンの状況下では、ストレスや不安が高まりすぎて、学習や成長どころか通常の業務遂行も困難になってしまいます。期待された成果を得られないだけでなく、社員の自信喪失やモチベーションの低下を招く可能性があるので注意が必要です。

タフアサインメントの実践方法

虫眼鏡で人形を覗く様子

タフアサインメントを実践する際は、次に紹介する4つのステップを意識して社員の成長を促しましょう。

目標を適切に設定する

適切な目標設定は、タフアサインメントの成功の鍵といっても過言ではありません。社員の現在の能力よりも高いレベルに設定しつつも、達成不可能なほど困難ではない「ストレッチゾーン」に収まるような設計をします。具体的かつ測定可能な目標を設定し、期待される成果を明確にすることが重要です。

対象社員にタフアサインメントの目的を共有する

タフアサインメントが単なる業務の割り当てではなく、育成の一環であることを対象社員に理解してもらうことも大切です。このアプローチにより社員のモチベーションが高まり、当事者意識や主体性が生まれます。また、「組織としてなにを期待しているのか」「個人の成長にはどのような意義があるのか」を丁寧に説明することで、社員の不安を軽減し、前向きな姿勢を引き出します。

力が発揮できるようなサポート環境を整える

社員が新たな挑戦に臨めるよう、上司のサポートやメンターの割り当てなども忘れてはいけません。個人で頑張らせるのではなく、多面的なサポート体制を整え、失敗を恐れずに挑戦できる雰囲気づくりを心がけます。それにより組織の心理的安全性が高まり、タフアサインメントの対象となる社員の成長の加速につながります。

定期的なフィードバックをおこなう

タフアサインメントの施策が始まったら、対象社員の進捗状況を定期的に確認し、適切なフィードバックをおこないます。「なにができているのか」を伝えて自信をつけさせ、「なにができていないのか」を言語化して課題や改善点を明確にします。このプロセスを通じて、社員の成長を可視化し、必要に応じて軌道修正をしながら支援しましょう。

人事部門の役割と注意点

人のシルエットと虫眼鏡

タフアサインメントにおいて人事部門は、適切な人材選定から公平な制度設計、関係部署との連携まで多面的な役割を担います。最後に、人事担当者がタフアサインメントを実践する際に気をつけるべきポイントを確認しておきましょう。

個人の適性と希望を見極める

タフアサインメントの対象者選定では、個人の能力、経験、成長意欲などを総合的に評価します。過去の実績だけでなく、潜在的な能力や適性も考慮し、チャレンジするにふさわしい人材を見極めましょう。同時に、その人材の成長に最適な配置先やミッションを慎重に検討します。あわせて、個人の希望やキャリアプランを尊重することで離職リスクが軽減し、優秀な人材の確保にもつながります。

各ステークホルダーを巻き込んで実施する

タフアサインメントの効果を最大化するには、関連部署やマネージャーの協力が不可欠です。なぜならタフアサインメントは通常の業務範囲を超える挑戦的な任務を含むため、多角的なサポートが必要となるからです。ケースによって異なりますが、所属部署のマネージャーをはじめ各ステークホルダーと連携しながら対象社員の成長を支援しましょう。

公平性を確保するための評価指標を定める

タフアサインメントは言い換えれば、特定の社員に対して積極的に成長機会を与える取り組みです。そのため、明確な評価基準を設定して、選考や評価プロセスの公平性・透明性を確保することが大切です。それらが曖昧だと、主観的判断による偏り、部署間の不均衡、評価基準の不明確さなどが入り込む余地が生まれてしまいます。

透明性の高い公平な評価指標を心がけ、社員全体の信頼を損ねないよう注意しながら進めましょう。

抜擢されなかった人材への配慮も忘れずに

タフアサインメントに選ばれる社員が将来的な経営者候補として評価される一方で、選ばれなかった社員にとってはモチベーション低下や自信喪失のきっかけになりえます。そのため、周囲への適切な説明を心がけ、今後の成長機会の提示、モチベーション維持のためのフォローアップも欠かさないようにしましょう。

専門性を深めるエキスパート育成など、個々の適性や希望に合わせた多様なキャリア開発の機会を提供し、きめ細かなサポートをおこなうことが重要です。組織全体の公平感と一体感を損なわないよう、バランスの取れた人材育成戦略を展開することが求められます。

タフアサインメントで戦略的に人材育成をしよう


タフアサインメントは、社員の急速な成長と組織の目標達成につながる施策です。次期経営者候補の育成方法としても注目を集めており、困難な課題を通じて実践的にマネジメントや意思決定の能力を磨くことができます。

人事担当者や当該部署のマネージャーなど部門横断でタフアサインメントに取り組むことで、対象となる人材の潜在能力を引き出し、リーダーシップスキルや戦略的思考力を効果的に育成できます。さらに、こうして育成された人材が組織の要所で活躍することにより、変化の激しいビジネス環境に適応できる強靭な組織づくりにつながります。

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