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企業におけるDEIとは?概念や取り組みのポイントについて解説

2023年08月30日更新

近年、経営理念に従業員個々の違いを受け入れて認めそれぞれの特性を活かすという意味を持つ「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)」を掲げる企業が増えています。さらに最近では、D&Iに「エクイティ(公平性)」を加えた「DEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)」が注目を集めています。

本記事では、DEIとはなにかを伝えるとともに、注目されている背景や取り組みのポイントをご紹介します。

目次 【表示】

DEIとは

DEIとは「ダイバーシティ(多様性)」「エクイティ(公平性)」「インクルージョン(包括性)」の頭文字からなる言葉で、「従業員一人ひとりに公平な土台をつくるとともに、個々が持つ多様性を最大限活かすことが企業の価値創出につながる」という考え方を指しています。

DEIの3文字が示す概念について、次項より具体的に解説します。

ダイバーシティ「多様性」

国籍や年齢、性別、価値観などにかかわらず、多種多様な人材が集まり、それぞれの個性を尊重し受け入れ、お互いの良さを認め合うことを意味する言葉です。

多様性には、国籍や年齢、性別といった表面的な要素と、価値観や考え方など深層的な要素があります。これらの違いを認め合い、あらゆる人材が活躍できる環境をつくることが企業には求められています。

エクイティ「公平性」

エクイティとは、さまざまな情報や機会、リソースへのアクセスが従業員一人ひとりに対して公平に保障されている状態を意味します。エクイティ実現のためには、企業が従業員一人ひとりの生活環境などの違いを考慮して、それぞれの不均衡を是正する取り組みをおこないます。

たとえば、育児中の従業員に対しては休暇をとりやすいよう配慮する、緊急の早退・遅刻にも対応できる体制づくりなどが必要です。

インクルージョン「包括性」

企業におけるインクルージョンとは、従業員一人ひとりが「組織を構成する仲間」という意識を持ち、かつ同じ組織内の個々人を認めながら働いている状態を指す言葉です。

インクルージョンを実現するためには、多様な個人・集団を認め合い、評価し、個々がサポートされる環境づくりに取り組む必要があります。組織内の仲間から評価される環境をつくることで、従業員エンゲージメントの向上が期待できます。

DEIが注目されている背景

DEIが企業から注目されている背景には、近年の市場環境の変化があります。具体的には次の通りです。

市場やユーザーのグローバル化

IT技術の進展により、国を越えた取引が拡大した昨今、国外にも多くの顧客を持つ企業が増えています。そのような中で企業は、国内ユーザーだけでなく、国外ユーザーのニーズにマッチする商品・サービスを開発し、競争力を高める必要があるでしょう。

そのためには、日本の慣習や商習慣、文化にとらわれない視点が必要です。多様な人材が活躍する環境を整えることで、さまざまな価値観を持つ人材がそれぞれの視点から意見を述べ、商品・サービスの開発や新規事業の企画を作り上げることができるはずです。

多様な人材を採用し育成するためにも、DEIを推進して、社員が安心して働き、意見を述べられる環境を構築することが望ましいでしょう。

価値観の多様化

日本的雇用慣行と呼ばれる終身雇用・定年制が崩壊しつつある今、ワークライフバランスを重視したい、スキルアップを目指せる企業に就職したいというように、就業者の雇用への意識も変化しています。

副業や起業、転職など、働き方も多様化している中で人材を確保するには、このような価値観の変化や多様な働き方に柔軟に対応できる組織づくりが必要です。

人材の多様化

少子高齢化により労働人口の減少が進む日本において労働力を確保するためには、女性やシニア、外国人など、さまざまな人材の採用が重要です。あわせて、さまざまな人材が定着し活躍できる仕組み作りも必要となります。

DEIの推進により、さまざまな人材がそれぞれの強みを活かし、活躍できる企業であることを対外的にアピールできるだけでなく、採用後には安心して働けることを実感してもらえるようになるでしょう。

また、多様な人材の能力や経験を掛け合わせることで、イノベーションを創出することができれば、企業の成長が促進されます。

企業成長が対外的にも認められるようになれば、投資家からの信頼も獲得できるでしょう。

DEI推進の5つのポイント

これからDEIの推進に取り組む企業は、次の5つのポイントをもとに自社の方針を定め、環境を整備していきましょう。

1.自社の推進方針の明確化と周知

多様な従業員が活躍できる組織を機能させるためには、DEIに関する自社の理念やビジョンを明確化し、従業員にも浸透するよう周知をおこなう必要があります。

定期的な研修や会議、社内報での情報発信などで理念やビジョンを従業員に伝え、DEIの推進が重要であることを理解してもらいましょう。

2.DEI教育の実施

DEIの推進においては、経営層だけでなく従業員の理解を促進する必要があります。自社がDEIを推進することを検討の段階から従業員に伝え、DEIについて理解を深められるよう研修や面談などを実施するとよいでしょう。

従業員へのDEI教育の実施は、DEI推進にかかる従業員の不安の払拭につながります。働き方が変化することへの不安を取り除くことで、DEI推進へのハードルを下げられます。

3.職場環境の整備

DEIを推進するために、企業は従業員がどのような働き方を希望しているのかを把握し、それぞれが能力を発揮できる職場環境の整備に努めましょう。

ITツールやデバイスといったハード面だけでなく、勤務体系や育児休業・介護休業の充実、外国人従業員向けの制度の拡充といったソフト面の整備も重要です。

4.公平な評価基準の作成

従業員それぞれが公平に評価される評価基準を作成しましょう。公平な評価によって、多様な人材が活躍できる機会をつくりだすことにつながります。

たとえば、オフィスに出社し働く従業員とリモートワークで働く従業員では、上司から見た働きぶりが異なるため、評価にも差が生じる可能性があるでしょう。このようなことが起こらないよう、働き方に影響されない評価基準を設定する必要があります。

5.互いを尊重し意見を出し合える環境の整備

多様な人材の活用が進むことで、異なる視点や意見を持つ従業員が増加することが考えられます。異なる視点や意見は、イノベーションの創出においても重要です。企業は、従業員それぞれが円滑に意見を出し合える環境の整備に努めましょう。

たとえば、チームビルディングを実施して社内のコミュニケーションの強化を図る、チャットツールを導入して意見を伝えるハードルを下げるなどの方法が考えられます。

DEI推進に取り組む企業の事例

NTTデータは、DEI推進に取り組む企業の一つです。同社では、自社の最大の資産は人材であるという考えのもと、人材が自己成長し活躍するための取り組みが進められてきました。

以来、「テレワークデイズ」という取り組みをはじめ、各種取り組みにより多様な人材が活躍できる職場へと変革を遂げています。

たとえば、子育て世代の社員に向け、「リアルワーママ百科」「リアルワーパパセミナー」を実施しています。リアルワーママ百科は、育児をしながら働いている社員や妊娠中の社員が、自身の経験談を他の社員に語る取り組みのことです。

育児中の男性社員に向けたリアルワーパパセミナーでは、育児休暇を取得した男性社員が、後輩社員に向け体験談を語ります。

NTTデータは、DEI推進にあたって重要な社員の意識醸成についても積極的に取り組んでいます。DEI推進をトップダウンで進めるのではなく、現場への理解を深めながら、なぜDEIが重要なのかを繰り返し伝えています。

DEI&Bとは

さらに、海外では、「DEI&B」という概念も広まり始めています。DEIに新たに加えられた「B」は、「Belonging:帰属意識」を意味します。

帰属意識とは、組織や地域、グループなどにおいて、自分がメンバーとして受け入れられているという安心感のようなものです。

帰属意識が高い組織は、従業員同士の心理的距離が近く、良好な人間関係のもと、心理的安全性を確保できるという特徴があります。

DEI&Bが注目されるようになった背景には、「The Great Resignation(大量退職時代)」があります。欧米では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を契機に、労働者の人生観の変化が見られました。たとえば、労働者がワークライフバランスの見直しをおこなったり、やりたいことに挑戦したりする傾向が強まったことなどです。

これにより企業への帰属意識が薄まり、多くの労働者が退職する道を選びました。そこで「帰属意識の向上が重要」として、DEIに「Belonging(帰属意識)」を追加したDEI&Bへの取り組みに注目する企業が増えたのです。

帰属意識の向上には、従業員の視点を組織が求めていること、また評価していることを従業員自身が感じられる環境をつくることが必要です。このことから、DEI&BはDEIを推進した先に実現できるものとされています。

DEIの推進で組織強化を

DEIを推進することで、多様な人材の活用が進み、イノベーションの創出が期待できます。また、多様な人材が活躍できる環境をつくることで、人材の確保や投資家からの信頼など、企業価値の向上につながる効果を得られる可能性もあります。

DEI推進のためには、自社におけるDEIの方針や目的について繰り返し発信し、従業員の理解を得ていくことが重要です。

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