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日本の特徴的雇用慣行は?欧米諸国と比較

2022年08月26日更新

長年、終身雇用や年功賃金が一般的だった日本の雇用慣行に、近年変化が見られています。社会環境の激変もあり、欧米の雇用慣行も参考に成果主義へのシフトを進める企業も増えているようです。

また、経済がグローバル化するなかで従来の雇用慣行では日本の競争力が低下する懸念もあるとのことで、政府も雇用慣行の転換について議論を始めました。こうした日本の雇用慣行の変化について、欧米の雇用慣行と比較しながら、その背景を探ってみます。

目次 【表示】

日本的雇用慣行の特徴は?

高度成長期に定着したと言われている日本的雇用慣行。終身雇用や年功賃金などは、労働者が会社に忠誠心を持ちやすいシステムで、膨大な生産力を必要とした当時は企業の競争力アップにつながっていたようです。

職能型と呼ばれる3つの要素

日本的雇用慣行は「職能型」と言われ、「終身雇用」「年功賃金」「企業別労働組合」などの特徴があります。「メンバーシップ型」とも呼ばれ、先に人を採用してから仕事を割り振り、職務や勤務地、労働時間が限定されない雇用契約がほとんど。将来的な賃金アップと定年までの雇用が確保されているので、社員は安定感のなかで仕事に取り組むことができ、会社にも愛着が湧きやすいという利点があります。

一方、企業は大量に採用した若手社員をOJTとOFF-JTの組み合わせで教育。定年までの雇用を前提としているが故に、新入社員に多くの時間や労力を割いて訓練ができるのです。

高度成長期に定着した日本的雇用慣行

日本的雇用慣行が定着したのは、第二次世界大戦後の高度成長期になります。この頃は家電の「三種の神器」に代表されるように、消費需要が急速に増加した時期で、発展を続けた大企業や製造業で、まとまった人数の新卒を採用し始めたのがきっかけになったと考えられています。

こうした雇用慣行は、膨大な生産力が必要な企業と、住宅購入や子供の教育費など、年齢が上がるにつれて生活費もかさんでいく労働者のライフスタイルの両方にマッチしました。加えて国内の失業率も低い水準に抑えられ、日本的雇用慣行は経済発展への大きな支えとなっていたことは間違いありません。

欧米の雇用慣行は?

欧米の雇用慣行には、日本に見られるような新卒一括採用がほとんどありません。求職者には専門性や特長が求められ、賃金もその能力に応じて支払われることになります。とくに中途採用がメインのアメリカは、日本と対極にあると言えるでしょう。

能力を評価する職務型を採用

欧米の多くの企業で採用されているのが、「職務型」と言われる雇用システムです。日本のような新卒採用は、ドイツなどヨーロッパでも重視している国はあるものの、アメリカでは中途採用がメイン。組織の中に欠員が出た時に、そのポジションを埋められる専門性や特長を持っている人材を採用するのが一般的です。

賃金も年功序列ではなく、あくまで採用者のその時点での能力に応じて支払います。一括で採用された新卒人材を教育する日本と違って、欧米では採用者がすぐにプロフェッショナルとして稼働することを求められるのです。日本政府が推進する働き方改革のなかで、雇用形態で待遇に差を付けない「同一賃金同一労働」が掲げられていますが、これも欧米諸国ではすでに普及している考え方です。

時代の変化で日本的雇用慣行に揺らぎ

近年の経済グローバル化などで、日本的雇用慣行は時代にそぐわない雇用の形として指摘を受けることが増えてきました。また日本的雇用慣行は、エンゲージメントの浸透度合いにも影響していると考えられています。

経済のグローバル化で課題も

1990年代初頭のバブル崩壊後に、日本の社会環境は大きく変化しました。経済がグローバル化して成果主義、能力主義の浸透が始まり、キャリアアップのための転職も珍しくなくなります。さらに、ITなど技術革新のスピードも急速に進み、長く働いている社員ほど、技術や経験があるという年功型の前提は揺らぎ始めました。

また働き方の多様化が進む中で、各企業は雇用者に対して職務や勤務地、労働時間に配慮した条件整備も迫られています。こうして時代の変化とともに、従来の日本的雇用慣行は課題を指摘される機会が多くなってきたのです。

エンゲージメントの浸透に影響

職務型の欧米では、離職率を抑えるためにエンゲージメントを重視し、エンゲージメントを高めることに注力してきました。一方日本では、これまでの雇用慣行からエンゲージメントの必要性が差し迫ったものではなかったため、エンゲージメントの浸透が遅れたと考えられています。

しかし、会社と従業員の関係が変化している近年、日本のエンゲージメントは、海外諸国と比べても極端に低いことがわかっています。これは社員が組織に長く居続けることを重視して、自分にしかできないことをしているという実感を持たせづらい「職能型」の特徴が表れていると言えるのではないでしょうか。

雇用慣行に変化。競争力低下に危機感

近年はIT化の進展などで企業の環境がさらに激変。企業によっては欧米型を参考とした雇用システムへのシフトを図っています。政府内でも日本の競争力低下の危機感から、日本的雇用慣行の変化の必要性について議論が進められています。

IT化の進展などで成果主義へシフト

厚生労働省の「平成23年版 労働経済の分析(労働経済白書)~世代ごとにみた働き方と雇用管理の動向~」(※1)によると、日本企業で年功型賃金制度の見直しが広まったのは1990年代後半から2000年代初めにかけて。300人以上の企業では、賃金制度の見直しのうち「業績・成果給部分の拡大」は1996年に約20%だったのが、2004年には約30%までに上昇しています。

2019年から政府内で議論

日本的雇用慣行からの変化については、2019年から政府内でも議論が始まりました。背景には急速に進行するIT化に対応できる人材が不足しており、日本経済の競争力が低下しかねないという危機感があります。欧米の雇用システムを参考にしていくのはもちろんですが、職能型は企業側にとって社員を解雇しやすいという問題点もあり、急速な転換は社会的不安を招くという指摘もあります。現在の日本に適した雇用システムの構築へ、今後もさらに議論を進めていく必要があるでしょう。

日本の雇用慣行に捉われない最適な雇用システムへ

高度成長期に定着して長く経済発展に貢献してきた日本的雇用慣行ですが、現在は社会環境も激変しています。企業に属する社員の働き方への意識も大きく変わり、日本の雇用システムにも変化が見られています。しかし、欧米型をそのまま取り入れるなど急な転換を図っても混乱を招く危険性が高くなります。日本型のメリットも十分考慮しながら、最適な雇用システムを目指していく必要があるでしょう。

<出典>
※1. 厚生労働省:「平成23年版 労働経済の分析(労働経済白書)~世代ごとにみた働き方と雇用管理の動向~」

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