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エンゲージメントとは?意味や注目の背景、高めるポイントを解説

2022年07月14日更新

採用力強化、離職防止、健康経営など、さまざまな効果が期待できることから、近年注目されているエンゲージメント。人事や経営者の方なら一度は耳にしたことがあるでしょう。しかし「詳しい意味はよくわからない」という方も少なくないはず。そこで今回は、エンゲージメントの定義から注目される背景、高めるメリットを解説します。

目次 【表示】

エンゲージメントとは

人事領域におけるエンゲージメントとは

エンゲージメント(engagement)とは、一般的に「約束」「雇用(契約)」「婚約」などを意味する言葉。人事領域では従業員が組織に抱く「愛社精神」「愛着心」「思い入れの強さ」といった意味の「従業員エンゲージメント」と、「熱意をもって仕事に取り組める」「仕事から活力を得ている」といった「ワーク・エンゲージメント」という2つの意味で使われています。

本記事では、ワーク・エンゲージメントと比較してより広義に捉えられる、従業員エンゲージメントについてご説明します。

エンゲージメントと従業員満足度・ロイヤルティ・モチベーションとの違い

エンゲージメントと混同されがちな言葉に、従業員満足度やロイヤルティ、モチベーションがあります。これらの言葉にはどのような違いがあるのでしょうか。

従業員満足度とエンゲージメントの違い

従業員満足度(Employee Satisfaction)は、従業員が仕事の内容や報酬、待遇、職場環境、職場の人間関係などに対してどのくらい満足しているかを示しています。従業員満足度が高い状態だとしても、従業員は必ずしも「組織に貢献したい」という気持ちを持っているわけではありません。より条件のよい企業があれば、そちらへ移ってしまう可能性があります。

一方でエンゲージメントが高い職場の場合、従業員は組織に対する思い入れがあるため、「この企業に貢献したい」という気持ちを持って仕事に取り組んでくれます。

ロイヤルティとエンゲージメントの違い

ロイヤルティ(Loyalty)は、「忠誠」や「忠実」を意味する言葉。人事領域で使われる場合には、従業員の会社に対する忠誠心や忠実度を示します。ロイヤルティとエンゲージメントの違いは組織と従業員の関係性から考えるとわかりやすいでしょう。

ロイヤルティは、年功序列や終身雇用などの制度によって組織に従業員がしたがっているという関係性。ロイヤルティが高い状態では「組織の方針に従う」という考え方が従業員の根底にあり、必ずしも従業員個人の想いと組織の想いが合致しないこともあります。

一方でエンゲージメントは、組織と個人(従業員)の立場が同等の関係性。エンゲージメントが高い状態では、従業員個人の想いと組織の想いが一致しています。

モチベーションとエンゲージメントの違い

モチベーション(Motivation)は「動機付け」「目的意識」を意味する言葉。内発的なものと外発的なものがあり、内発的モチベーションは「好きな仕事に取り組めている」「作業に集中しているとおもしろい」といった、本人の気持ちからわき起こるもの。外発的モチベーションは「他の人から評価される」「高い報酬をもらえる」など、外部からの働きかけで生じるものを指します。モチベーションは個人のなかで醸成されるため、組織との関連性はありません。

一方でエンゲージメントは「組織への貢献」が前提となります。それぞれの違いについてなんとなくイメージいただけたのではないでしょうか。

なぜエンゲージメントが注目されているのか

では、なぜ近年日本でエンゲージメントが注目を集めているのでしょうか。社会的背景や個人の価値観の変化からその理由が見えてきます。

組織と個人の関係性が変化

かつて日本では、終身雇用や年功序列のように「組織が個人を従える」という関係性が一般的でした。しかし近年では、より個人がキャリアを自律的に設計できるようになり、組織と対等な関係を構築するようになっています。これまで当たり前だった方法では、組織と個人の結びつきを維持することが難しくなっているのです。両者を繋ぐための新しい方法が必要になりました。

モチベーションが下がりやすい環境に

2019年の統計データ(IMF)において、日本のGDP成長率はG8最下位(191カ国中147位)。少子高齢化や実質賃金の低下なども影響し、働く人たちが目標や希望を持ちにくい状況になっています。さらに仕事に対する価値観は多様化。ワークライフバランスを重視する人や欲のない「さとり世代」と呼ばれる人たちも増えてきました。

将来への不安が高まり、働く動機が変化したことにより、モチベーションが下がりやすい環境となっています。

従来的なマネジメントスタイルにも限界が

雇用形態や個々の価値観が多様化したことで、モチベーションの源泉も人それぞれに多様化しています。その結果、画一性や凝集性を重んじる従来のマネジメントスタイルでは、多様な個人をまとめることが難しくなってきています。さまざまな価値観を持ったメンバーがイキイキと働ける職場環境をつくることが求められています。

組織と個人を結びつけるため、さまざまな要因により下がりやすい個人のモチベーションを維持するプロセスのひとつとして、さらには画一的なマネジメントではなく多様化する個々人に適したマネジメントを実現するために、エンゲージメントは注目されているのです。

エンゲージメント強化はなににつながるか

エンゲージメントを高めることは、組織にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。

エンゲージメントを高めるメリット

エンゲージメントを高めることによって、退職による人材流失の抑制や社員のパフォーマンス改善などが期待されます。人材流失を抑えることが出来れば、組織のスキルレベルを保つことができ業務の安定的な遂行が期待できます。社員のパフォーマンス改善はアウトプットの質・量や顧客満足度の向上にも結びつき、業績の向上にもつながるのです。

エンゲージメントが高い職場とは

それでは、実際にエンゲージメントが高い職場とはどのような職場なのでしょうか。各社で制度や文化はさまざまですが、次のような特徴があるといえるでしょう。

企業と社員の方針が一致している

従業員のエンゲージメントが高い職場では、自社の目標、価値観、ビジョンなどをすべての社員が理解し、大切にしながら業務を遂行しています。企業とメンバーの方針が一致しているので、社員たちが自主的に企業目標を達成しようとします。

課題があったとしても、メンバーが積極的に解決案を提案。その姿勢がお客様に喜ばれ、企業のファンづくりにも良い効果をもたらします。もちろん、エンゲージメントの高さがすぐに業績へ反映されるという単純な話ではありませんが、中長期的に見たときにはエンゲージメントが高い組織ほど結果を出せるのです。

社内のコミュニケーションが大切にされている

企業には国籍や性別、言語、文化、性格など多様な個性を持った人材が集まっています。ともに手を取り合って同じ方向へ進んでいくことが、エンゲージメントを高め目標を達成するためには重要です。

エンゲージメントが高い企業ではメンバー同士の会話はもちろん、マネージャーとメンバーの対話頻度も多く、対面・オンラインを問わず、従業員の交流が自然と生まれる文化が根付いています。日々のコミュニケーションのなかで、それぞれの施策に対するふり返りを精緻におこなうこともできるので、改善を効率的に進められます。

メンバーの成長を大切にしている

従業員のエンゲージメントが高い職場では、メンバーの成長を大切にしながら一人ひとりに最適な業務を任せています。本人が認識していなかった「強み」に上司が気づき、最適な仕事を任せることで、メンバーの成長を促しているのです。

メンバーの成長を大切にする企業では従業員が組織に貢献したときに、まわりから褒められたり、正当に評価されたりする仕組みが整えられています。その結果、一人ひとりの向上心も高まり、組織としても成長しやすくなります。

従業員エンゲージメントが高い企業事例

エンゲージメントが高い職場として、freee株式会社と株式会社コンカーをご紹介します。

freee株式会社

freeeは、2019年版日本における「働きがいのある会社」の中規模部門で4位にランクイン。同社は自分たちが大切にすべき行動指針を策定し、その内容に沿った意思決定をおこなっています。「あえて共有する」という行動指針を例にご説明しましょう。

freeeでは業務連絡のみならず、チームの課題や個人の考えなども社内SNSで共有し合う文化を根付かせることで、社員同士のコミュニケーションが活発に。経験を共有し合うことが社員同士の成長にもつながり、エンゲージメント向上につながっているようです。

株式会社コンカー

コンカーは、「高め合う文化」を推進するために、「フィードバックし合う」「教え合う」「感謝し合う」の3つの文化を軸に、組織づくりを進めてきたそうです。

「働きがいの向上」を、経営戦略に位置付けて、「人材という最も希少な経営資源の価値を最大限発揮する」という方針で働きがいの向上に取り組み、結果的に社員のモチベーションを高めることに成功しています。

エンゲージメントに必要な3つの要素

エンゲージメントを高めるには、具体的にどんな要素が必要なのでしょうか。

「強み」を活かして仕事をする

会社や仕事に「意味」を見出すことは前提条件として必要ですが、それだけでエンゲージメントが高まるわけではありません。日頃の業務がうまくいかないことが、エンゲージメントの低下につながってしまいます。

そこで重要になってくるのが、個人の「強み」です。自分が「強み」だと感じているものは、得意なことや好きなことであり、その分野で邁進するからこそ「やる気」が生まれます。これは心理学の世界でもさまざまな調査が行われ、職場で「強み」を活かすことで自信が湧き、創造性や自己効力感が向上するなど、ポジティブな効果をもたらすことが実証されています。

本人が自分の「強み」に気付いていない場合には、上司や先輩が気付いた要素をフィードバックすることが重要になります。とくに近年注目されている「1on1」は、上司と部下が1対1で向き合い対話をおこなうので、「強み」の発見に効果的です。

「成功」ではなく「成長」を目指す

仕事への意味を見出し、自分の「強み」を活かすことができれば仕事は楽しくなります。しかし、ずっと同じ仕事をしていては成長することができません。今までよりも少し難しい仕事にチャレンジして、「成長」の達成感を得ることでエンゲージメントが高まっていきます。

年次を重ねるごとに給料が増えていくとしても、それは成長しなくても成し遂げられるため、エンゲージメントは醸成されません。必要なのは「成功」ではなく「成長」を求める成長マインドです。変わりたい、成長したいという意識を常に持つことが重要です。成長マインドによって、仕事の結果にこだわることなく「この仕事からなにを学べたか」というポジティブな視点で考えられるようになります。

成長マインドを育むために大切なのは、心から納得できる「目標」を掲げることです。理想像を描き「目標」として設定すると、現状とのギャップがおのずと浮かび上がり、それを埋めようとするマインドになります。「目標」への差分を埋めるために成長することが、エンゲージメントの向上につながるのです。

職場に信頼できる「仲間」をつくる

なんでも話し合える仲間がいる組織には、自然と愛着が湧きます。愛着はエンゲージメントの重要な要素であり、組織に親しい友人がいればパフォーマンスが高まりやすくなります。

どれだけ能力が高くて優秀でも一人でやれることには限界があります。チームや組織で成果を出し続けるには、協力者が職場に必要です。孤独に働いていては周囲の協力を得られず全体のパフォーマンスが低下し、結果として個人のエンゲージメントが下がることにつながります。

一方、信頼できる仲間がいる職場では安心感から自然と笑みも生まれます。笑うことはストレスや退屈さを軽減し、エンゲージメントや幸福感、さらには創造性を高めることにも効果があると実証されています(※)。職場の良好な人間関係とエンゲージメントには密接な関係があるのです。

※編集者アリソン・ビアードがハーバードビジネスレヴューに寄せた論文「Leading with Humor」より。

エンゲージメントを高めるには

エンゲージメントを高めるためには、具体的にどうすればよいのでしょうか。

エンゲージメントを高めるにはサーベイの活用が効果的

従業員のエンゲージメントを高めるには、最初に組織の現状を把握することが重要です。しかし組織の課題は見えづらく、調査には多くの時間が必要になります。

そんなとき現状を把握するために効果的なのが、エンゲージメント・サーベイです。従業員にアンケート調査を実施することで、収集データから組織の課題につながる要因を洗い出し、改善のために活用できます。

エンゲージメントサーベイ活用の流れ


一般的なエンゲージメントサーベイ活用の流れは、以下の通りです。

①現状把握
現状把握のためにサーベイを実施して、結果を出力します。

②結果分析〜施策計画
サーベイの結果を分析し、「なにが問題・課題なのか」を定義します。そして、「なぜそれが発生しているのか」原因を特定し、それを解決できる新たな施策を計画します。

③施策実施〜施策振り返り
施策を実施して、その結果について振り返りを行います。

自社の課題に対してサーベイを実施するときには、目的を定めることが欠かせません。具体的には次のような内容です。
「なぜエンゲージメント・サーベイを実施するのか」
「実施した後にどのような状態になっていたいか」

自社の目的を達成するために必要な要素を事前に決め、その内容に沿ってサーベイを実施することが大切です。

エンゲージメント・サーベイ活用のポイント

エンゲージメントサーベイの実施時には、運用方針をアンケート回答者(従業員)へ丁寧に説明するようにしましょう。「回答データはあくまでも組織改善に活用する」「回答は評価につながらない」ということを事前に説明して、安心して回答できる環境を整えるのがポイントです。

また、実施後には結果を組織全体で共有し、そのあとで回答者に1on1などなんらかのかたちでフィードバックを行い、対話するようにします。組織の現状をデータ化することで、メンバーもマネージャーも同じ目線で意見を交わせるようになることが、エンゲージメント・サーベイを実施する意義のひとつになります。

エンゲージメント・サーベイを選ぶポイント

昨今ではさまざまな企業からツールが提供されているので、機能を比較しながら自社に合ったサーベイを選ぶことが大切です。選択する際にポイントとなるのは、以下の4つです。

1.測定したいものを正しく測る「妥当性」
正しい測定結果を得るためには、測定したい概念を正しく漏れなく測定できるかどうかを確認することが大切です。

2. 複数の質問からも同じ答えを得られる「信頼性」
複数回の測定で結果が安定しているかどうかを確認しましょう。また、測定したい概念に対して複数の質問項目を設け、正しい測定結果をもたらすのかどうかも確認する必要があります。

3.結果から施策に繋げる「活用性」
エンゲージメント・サーベイ実施後に、その結果をどのように組織改善に活かしていくのか、具体的な活用方法をイメージできるかどうかなど、使い勝手の良さも指標として見ておきましょう。

4. 自社に必要なエンゲージメントの「測定尺度」はなにか
エンゲージメントサーベイは、従業員エンゲージメントの高低を測る「エンゲージメント状態」と、なぜそのようなエンゲージメント状態なのかを探る「環境要因」の2つの測定尺度で構成されています。

環境要因とは、職場の人間関係、労働環境、業務内容といった、エンゲージメントに寄与している要素を見つけるための尺度。この環境要因のうち、自社がとくに注視したいものを測れるかどうかも重要な選定指標です。

エンゲージメントの向上で組織の力を高める

エンゲージメントの概要についてご理解いただけたでしょうか?エンゲージメント・サーベイで組織の状態を可視化すれば、その情報を組織改善に活用することもできます。

自身の組織はエンゲージメントが高いといえる状態か、いま一度見つめなおし、組織課題解決への一歩を踏み出しましょう。

監修者プロフィール土屋 裕介(つちや ゆうすけ)
株式会社マイナビ 教育研修事業部 事業開発統括部 統括部長/HR Trend Lab所長
大学卒業後、企画営業として研修やアセスメントセンターなどを多数導入。2013年に株式会社マイナビ入社。マイナビ研修サービスの商品開発責任者として「ムビケーション研修シリーズ」「各種アセスメント」「タレントマネジメントシステムcrexta」など人材開発・組織開発をサポートする商材の開発に従事。10年以上にわたり一貫してHR領域に携わる。 主な著書に『タレントマネジメント入門~個を活かす人事戦略と仕組みづくり~』(ProFuture)、『楽しくない仕事は、なぜ楽しくないのか~エンゲージメントで“働く”を科学する』(プレジデント社)など。
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