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エンゲージメントとどう違う?モチベーション、従業員満足度、ロイヤルティ、コミットメント

2021年07月07日更新

近年注目を集めるようになった「エンゲージメント」。人事や経営者の方であれば、一度は聞いたことがあるでしょう。ただ、その意味について「なんとなくわかるけど、正直よくわからない」「モチベーションとなにが違うの」という方も多いはず。そこで今回は、「モチベーション」「ロイヤルティ」「コミットメント」「従業員満足度」といった周囲概念との比較を通じて、「エンゲージメント」について解説します。

目次 【表示】

「従業員と組織の心的なつながり」を表すエンゲージメント

一般的に「約束」「雇用」「婚約」といった意味で使われていることが多いエンゲージメント(=engagement)は、人事領域ではニュアンスが異なります。人事領域においてエンゲージメントは、「従業員と組織の心的なつながり」のこと。エンゲージメントが高い状態とは、「従業員が自ら組織に貢献する意図を持って業務に打ち込んでいる」状態といえます。

エンゲージメントを高めることで、退職による人材流失の抑制や社員のパフォーマンス向上などが期待できます。人材流失を抑えることが出来れば、組織としてのスキルレベルを保った業務の安定的な遂行も期待できるでしょう。社員のパフォーマンス向上は、アウトプットの質・量や顧客満足度の改善にも結びつき、業績の向上にもつながります。組織全体が活性化し、ポジティブな影響をもたらすことにつながるといえます。

エンゲージメントと周囲概念の比較

エンゲージメントと似ている言葉には、「モチベーション」「ロイヤルティ」「コミットメント」「従業員満足度」などがありますが、どう違うのでしょうか。さらに正確にエンゲージメントの概念を理解するために、エンゲージメントの類似概念と比較してみましょう。

個人を動機付ける「モチベーション」

モチベーション(=motivation)とは本来「動機付け」という意味の言葉。仕事面では、その人の仕事に対する力の入れ具合を示す場合に使われます。自分の内側から湧き出てくる「楽しい」「好き」という感覚から、自らの意思で仕事にのめり込み没頭する内発的モチベーションと、「いい結果を出したら給与を上げてもらえる」「頑張ったら上司に評価してもらえる」といった外部からの刺激によって高まる外発的モチベーションの2つがあります。

従業員のモチベーションを高めることで、高いパフォーマンスにつながることが期待できますが、中には「周りを蹴落としてでも収入を上げる」、「結果のためなら手段を選ばない」といった利己的な外発的なモチベーションに走る人もいるため、リスクもあります。

エンゲージメントとモチベーションの違いは「誰のために頑張るか」

エンゲージメントも「収入や地位を上げたい」という動機で仕事を頑張ることを否定しませんが、「周囲のために頑張る」という点でモチベーションと異なります。「自分が楽しい」「評価されたい」といった自分一人さえよければいいという考え方はエンゲージメントにはありません。「組織へ貢献したい」という気持ちが、エンゲージメントの大前提になるからです。

組織に従うことがいちばんの「ロイヤルティ」

会社や組織への忠誠心を表すとき、人事領域では「ロイヤルティ」という言葉が使われます。本来の意味も「忠誠」や「忠実」といったものであり、ロイヤルティの高さは、従業員がどれほど組織の方針に従うかという尺度で測ることができます。

従業員個人の考えや想いと組織の方針が一致していなかったり、入社を決めた際の組織の方針が入社後に変わったりしても、ロイヤルティが高ければ「組織の方針に従おう」と定年まで勤め続けるのです。たとえば、その組織の方針が社会的によくないものであっても従ってしまう、というリスクが考えられます。

エンゲージメントとロイヤルティの違いは「個人と組織の思いが合致しているか」

ロイヤルティとエンゲージメントの大きな違いは、そこに従業員個人の意思が存在しているかどうかという点です。エンゲージメントは、従業員個人の意思と組織の方針が異なると感じた場合に、従業員と組織との間で意思のすり合わせを行い、合致するように働きかけること。そして合致しない場合、従業員には自分の意思を尊重して組織から離れる選択肢も生まれうるものです。

ロイヤルティが組織が従業員を従える縦の関係性である一方で、エンゲージメントは従業員個人と組織が対等な横の関係性となります。組織と従業員両者の意思が一致している場合にエンゲージメントは高まり、より熱意のある働き方が期待できるでしょう。

与えられた責任を果たす「コミットメント」

コミットメント(=commitment)には、「委託」や「約束」「責任」といった意味があります。コミットメントが高い人は、「○○(仕事)をいつまでに実行する」と組織に対して約束を交わし、責任を持って仕事を実行するものです。

コミットメントには責任を伴いますので、結果を出すことが強く求められる一方で、従業員個人の熱意ややりがいなどが考慮されるとは限りません。その結果、従業員が「仕事が楽しい」と思えなかったり組織に愛着を持てなかったりする、といった可能性も考えられるのがコミットメントです。

エンゲージメントとコミットメントの違いは「与えられた約束か」

責任感を持って仕事を成し遂げるという点においては、コミットメントもエンゲージメント も同じです。大きな違いは、そこに本人の情熱があるかどうか。自らの意思をもって「この仕事を成し遂げたい」「この仕事をしていて楽しい」と思えていれば、それはエンゲージメントと言えるでしょう。

会社がどれだけ適切な仕事だと考えていても、その仕事に取り組む従業員個人が情熱を持てなければエンゲージメントにはつながりません。コミットメントは組織から従業員に与えられるものに対する約束であるのに対し、エンゲージメントは従業員が自発的に取り組みたいことに対する約束です。

個人の期待に組織が応えられているかを表す「従業員満足度」

従業員個人が仕事の内容や報酬、職場の人間関係などにどれほど満足しているかを示す指標として、従業員満足度(=Employee Satisfaction)があります。従業員がイキイキと働くことが、結果的に顧客満足度につながるといった考えからも、従業員満足度向上に取り組む組織は多いでしょう。

しかし、従業員満足度はあくまで「今の環境や待遇に満足しているかどうか」の指標ですので、従業員個人が組織に貢献したいという気持ちを持っているかどうかを測ることはできません。もし今より条件のいい企業があれば転職してしまう可能性はありますし、もしも「楽して働く」ことを重視している従業員がいれば、パフォーマンスを上げることは難しくなります。

エンゲージメントと従業員満足度の違いは「組織への貢献意識があるか」

エンゲージメントが高い場合、組織の方針と従業員個人の想いが合致していますので、従業員は「組織に貢献しよう」という気持ちで仕事に取り組むことができます。その結果、仕事のパフォーマンス向上が期待できるのです。

一方、従業員満足度は「従業員個人が求めているものを与えられているか」という点で評価がなされるため、組織の方針と従業員の想いが一致しているとは限りません。たとえば、組織がハイパフォーマンスな働き方を従業員に望んでいるのに対し、従業員が「のんびり仕事がしたい」と望んでいた場合、組織のパフォーマンスは下がってしまうでしょう。従業員個人の満足が必ずしも組織全体のパフォーマンス向上につながるとは限らないのです。

まとめ

自分一人のために頑張ろうと考える「モチベーション」や、従業員個人の意思が存在しない「ロイヤルティ」、情熱の有無を問わない「コミットメント」、そして従業員の求めるものを与えられているかどうかで評価される「従業員満足度」。これらの言葉とエンゲージメントは、それぞれ重なる部分もありますが少しずつ異なる概念です。

モチベーションやロイヤルティ、コミットメント、従業員満足度と比較してエンゲージメントは、

・従業員の思いと組織の思いが合致しているか
・従業員が自主性や熱意、組織への貢献意識を持っているか
・成長実感や楽しさを持って働けているか

といった指標を持っているという特徴があります。さらにこれらの指標は、組織全体のパフォーマンスと関係があることがわかってきています。

従業員のエンゲージメントを向上させることは、パフォーマンスの高い組織づくりにつながります。エンゲージメントの意味を正しく理解し、従業員がイキイキと働ける環境づくりに活かしてください。

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