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エンゲージメント・サーベイとは?具体的な質問例や導入事例も

2023年12月13日更新

エンゲージメント・サーベイは「エンゲージメントを測定し、組織の現状を可視化する」診断ツールです。エンゲージメント・サーベイの実施により、「組織の問題」を明らかにし、原因をつきとめて改善することで、従業員の生産性・パフォーマンスの向上や離職率の低下などに繋げることができます。この記事では従業員満足度調査との違いやエンゲージメント・サーベイの具体的な質問例など、エンゲージメント・サーベイの基本的な内容を解説します。

目次 【表示】

エンゲージメント・サーベイとは?なぜサーベイが必要

始めに「そもそもエンゲージメントとはなにか」を含め、エンゲージメント・サーベイの意味や目的などを解説します。

エンゲージメントとは

従業員エンゲージメントは、「従業員と組織の心的な繋がり」のこと。エンゲージメントが高い状態とは、「従業員が自ら組織に貢献する意図を持って業務に打ち込んでいる」状態といえます。

エンゲージメントを高めることで人材流出を抑えられれば、組織としてのスキルレベルを保った業務の安定的な遂行や、採用コストの低減にも期待できるでしょう。さらに従業員のパフォーマンス向上は、アウトプットの質・量や顧客満足度の改善にも結びつき、業績の向上にも繋がります。組織全体が活性化し、ポジティブな影響をもたらすことに繋がるといえます。

エンゲージメント・サーベイとは

エンゲージメント・サーベイとは、エンゲージメント(従業員と組織の心的な繋がり)を測定することで、組織の現状を可視化し、組織課題の改善に向けた示唆を得るためのツールです。

具体的には会社への意見や職場における人間関係、働きがいなどに関する質問をおこない、組織の「現状」と従業員が感じている組織への「意向」と「傾向」を明らかにします。

しかしエンゲージメント・サーベイを実施しただけでは、エンゲージメントは向上しません。エンゲージメント・サーベイの結果をもとに、組織改善の施策を講じることで、従業員のパフォーマンス向上や離職率の低下などの効果・メリットが期待できます。

従業員満足度調査とエンゲージメント・サーベイの違い

エンゲージメント・サーベイと似た調査に「従業員満足度(ES:Employee Satisfaction)調査」があります。従業員満足度調査では、給与額・利用可能な休暇の日数・福利厚生・職場の人間関係など、従業員が組織の用意するものに満足しているか、個々人の「満足の度合い」を調査します。

一方のエンゲージメント・サーベイでは、従業員がどの程度会社に対して愛着を持っているのか、またどの程度仕事に情熱を持っているかなど、「会社や仕事への従業員の思い」を調査します。

このように両者はそもそも調査により明らかにしたい対象が異なるのです。

なぜ必要?エンゲージメント・サーベイ実施の目的

エンゲージメント・サーベイ実施の最終的な目的は「組織課題の解決による、企業運営の改善や収益の向上」です。エンゲージメント・サーベイの結果を活用した組織改善は以下のような流れでおこないます。

  • 1. 解決したい組織課題を明らかにしたうえでエンゲージメント・サーベイを実施し、従業員と組織の「エンゲージメント状態」を可視化する
  • 2. サーベイ結果をもとに課題の要因を仮説立て、調査し、改善のための施策を立案、実行する
  • 3. 施策実行の結果を評価し、改善状況に応じて継続的な改善活動をおこなう

課題の要因を見つけるためには、現状を正確に、かつ客観的に把握しなければなりません。エンゲージメント・サーベイはそこに有効活用されるのです。

エンゲージメント・サーベイの2つの測定尺度

一般的にエンゲージメント・サーベイは以下2つの測定尺度から構成されています。

  • ● エンゲージメントスコア:組織のエンゲージメントの状態
  • ● 影響要因:エンゲージメントに影響を与える要素の状態

エンゲージメントスコアでは、エンゲージメント状態が「高い」のか「低い」のか、現在の組織の状態を把握します。さらに、影響要因では職場の人間関係・労働環境・給与・マネジメントなど、「なにが」現在のエンゲージメント状態を引き起こしているのか、という要因を測定できます。

エンゲージメント・サーベイを起点に得られる3つのメリット・効果

エンゲージメント・サーベイの結果をもとに、効果的な組織改善施策を講じることは、エンゲージメント向上に期待が持てます。ここではエンゲージメント・サーベイを起点にエンゲージメントを高められた結果として得られるメリット・効果を3つ紹介します。

生産性およびモチベーションの向上

エンゲージメント・サーベイの実施により、従業員の意向と傾向を把握できます。そして、明らかになった意向と傾向をもとに、改善策の立案・実施に繋げられます

たとえば「ある部署の生産性が低い」という課題が顕在化している場合、エンゲージメント・サーベイを実施することで、なぜその部署の生産性が低いのか、その要因を把握できます。

そして、その要因が生じている背景を仮説立て、正確な実態調査をおこなったのちに、有効であろう施策を立案・実行することで、その部署の生産性が向上したかを検証します。

なお、特定の部署の生産性およびモチベーションの向上は、結果的にさまざまな部署・従業員へも伝播し、組織全体の成長にも繋がることでしょう。

離職率の低下+定着率の向上

エンゲージメント・サーベイの結果をもとに施策を実施し、エンゲージメントが向上すれば、従業員が働きがいを感じやすくなる風土が醸成される可能性があります。結果的に、離職率の低下・定着率の向上が期待できます。

加えて離職率が高く、かつ離職の兆候が現れている部署を対象に、仮説の検証、調査を実施したのちに重点的に離職対策をおこなうことで、より効果が高まるでしょう。

人材育成の強化

エンゲージメント・サーベイの結果を部署別・役職別など詳細に分析することで、そのエンゲージメント状態に影響を与えている要因をより詳細に可視化できます。

そして、十分に能力を発揮できていないなどエンゲージメントを低くしている要因に対して仮説を立て、調査し、部署別・役職別に人材育成の面から研修や面談などの施策を実施することで、人材育成の強化を計ることが可能です。

エンゲージメント・サーべイの選び方

適切な調査実施のための準備、エンゲージメント・サーベイを選定する

適切な調査をおこなうためには、事前準備が欠かせません。サーベイの導入にあたってまずは、「なぜエンゲージメント・サーベイを実施するのか?」など、自組織におけるエンゲージメント・サーベイ実施の目的やゴールを定めることが必要です。

ゴールが決まったら、つぎは自社に適したサーベイはなにか。測りたい項目をどのくらい的確に測定できているのかという指標である「妥当性」、同じ方法で測定すれば安定して同様の結果が出るかといった「信頼性」、アウトプットから実際の施策にはどのように繋げられそうかといった「活用性」の3つのポイントを重視して選定していきましょう。

エンゲージメント・サーベイ活用の流れ

エンゲージメント・サーベイは実施すること以上に、実施前後、課題とどう向き合い施策を打っていくか検討・実行してくことが大切です。ここではエンゲージメント・サーベイ実施の流れと実施後にすべきことを解説します。

調査対象となる従業員へ説明をおこない、実施する

エンゲージメント・サーベイを実施する前に、調査対象となる従業員へ説明をおこないましょう。どのような形で活用されるのか、誰にフィードバックされるのか、誰が回答結果を見るのかといった説明が必要です。適切な説明がない場合は従業員の理解を得られず、結果として正直な回答と診断結果が出ないことも。

個人の回答結果が上司の目に触れ、評価に影響するかもしれないと感じた時点で、従業員は率直な回答をしなくなってしまいます。そのためエンゲージメント・サーベイは、あくまで組織の状態の診断であり「個人の回答結果が上司や同僚に見られることはない」などきちんと説明するとよいでしょう。

実施後は施策へ繋げるための検討が必要

エンゲージメント・サーベイを実施すると、組織の現状とその状態に影響を及ぼしている要因が明らかになります。自組織はどのようなことができていて、どのようなことに課題があるのか、明らかになった結果に対してきちんと向き合うことが重要です。

満足のゆく結果でなかったからといって「なぜこのようなことになっているんだ」と、特定の誰かや部署を責めても改善にはなりません。エンゲージメント・サーベイはあくまで組織の状態を測るものであり、特定の個人の責任を追及するものではありません。

結果については、人事部や経営陣だけでなく可能であれば従業員へも開示し、一緒に検討することで、組織全体・従業員一人ひとりが働きやすい環境について考えることにも繋がります。

継続して取り組む

エンゲージメント・サーベイにより明らかになる課題への施策はさまざま。施策をおこなっていく中であっても、新たな問題が浮上すれば、さらなる改善が必要となります。
エンゲージメント・サーベイは単発で終わらせるのではなく、半年~1年のスパンでPDCA(計画→実行→評価→改善)を回しながら、課題解決に繋げていくことが大切です。

エンゲージメント・サーベイの質問項目例

エンゲージメント・サーベイの質問項目には働きがいや職場風土、仕事状況などに関するものが多くあります。質問項目例は以下のとおりです。

  • ● この会社で働けることを誇りに思うか。
  • ● 仕事に働きがいを感じるか。
  • ● 会社は充分な教育を提供してくれているか
  • ● 上司とコミュニケーションが取れているか。
  • ● 同僚との関係は良好かどうか。
  • ● 組織の目標に見合った成果をあげられているか。
  • ● 目標達成意識して働いているか。

これらの質問から得られた従業員の回答より、自社の組織課題を把握し、原因の調査と仮説立てに活かすことができます。

エンゲージメント・サーベイ導入事例

住宅・インテリア業界のタカノホーム株式会社では、新入社員における各現場配属後のOJTや指導方法が属人化しており、「現場と人事が連動した育成・指導が難しくなってきたこと」に課題を感じていました。

中長期的には社員間のコミュニケーション鈍化に繋がり、若手社員の採用や人材育成に支障が出るという漠然とした不安から、原因の明確化、解消に向けた施策の検討を目的にエンゲージメント・サーベイを実施しました。

エンゲージメント・サーベイの結果、「職場風土」や「労務環境」といった業務属性として重視していた項目は良好で、その点において企業側とのギャップはありませんでした。一方、「目標を達成しようとする意欲」などについて、管理職と非管理職との間にギャップがあることが明らかになりました。

この結果から、管理職が抱く業務推進の思いやそれを実現するスキルの「暗黙知」が非管理職に正確に伝えられていない可能性を考え、現在は管理職と非管理職で定期的な面談実施に向けて準備を進めています。

エンゲージメント・サーベイで組織課題を可視化しよう


エンゲージメント・サーベイ実施の目的は、従業員の「意向と傾向」を把握し、組織全体の状態を可視化することで見えた課題と向き合い、組織を活性化すること。

実施にあたっては、「なぜ実施するのか、実施によってなにを実現したいのか」といったことを従業員にしっかりと説明しましょう。実施後、組織の現状が明らかになったときには「組織のどこを改善すべきか、改善のためになにをすべきか」課題と向き合い、施策を実行します。

エンゲージメント・サーベイと、その結果を踏まえた改善施策を定期的におこなうことによってはじめて、従業員のエンゲージメント向上を達成できるのです。

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