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自律型組織とは?企業が知るべきメリット・デメリットを解説

2025年03月19日更新

従業員同士のつながりと握手

「自律型組織」とは、社員一人ひとりが意思決定をおこない、組織の目標達成に向けて主体的に行動する組織形態を指します。従来のヒエラルキー型組織とは異なる組織づくりのアプローチとして注目を集めており、持続的な成長に寄与することが期待されています。

本記事では、自律型組織の基本的な概念から、メリット・デメリット、具体的な組織形態まで、企業が知っておくべきポイントを解説します。

自律型組織とは?

幅広い性別・年齢の社員が集まっている様子

自律型組織とは、社員一人ひとりが自律的に意思決定をおこない、組織の目標達成に向けて主体的に行動する組織形態です。組織のビジョンやバリューを共有したうえで、メンバーが自ら考え行動できる組織体制を指します。

ヒエラルキー型組織の違い

自律型組織は、従来のヒエラルキー型組織とよく対比されます。ヒエラルキー型組織は明確な指揮命令系統をもち、上位層から下位層へとトップダウンで意思決定がおこなわれます。一方、自律型組織では、メンバー個々人に権限が委譲され、現場レベルでの意思決定が重視されます。

自律型組織
ヒエラルキー型組織
・現場での意思決定が速い傾向にある
・個人の裁量範囲が広い
・部門間での協力体制をつくりやすい
・意思決定に時間を要する場合がある
・指揮命令系統が明確で、組織の方針が浸透しやすい
・部門ごとの役割が明確

 
また、情報共有や意思決定のプロセスも大きく異なります。ヒエラルキー型組織では、情報が上位層に集約され、そこで意思決定がなされた後に下位層へ展開されていきます。

これに対し自律型組織では、関係者間での対話を通じて合意形成が図られます。ただし、チーム間での情報共有には、重要な情報が特定のチーム内で止まってしまったり、同じような施策が別チームで重複して実施されてしまったりするといった課題が残ることも多く、組織全体での情報共有には工夫が必要です。

近年「自律型組織」が注目されている理由

ニーズが多様化した予測困難な現代において、従来のヒエラルキー型組織では日々変化する市場環境への対応が難しくなりつつあります。なぜなら、ヒエラルキー型組織では意思決定にどうしても時間がかかり、市場の変化に素早く順応できないケースがあるためです。その対応策として、より柔軟で機動的な組織形態としての自律型組織に注目が高まっています。

ただし、最適な組織の在り方は、業界特性や企業規模、事業内容などによって異なります。たとえば、品質管理や安全性が特に重視される業種・業界では、明確な指揮命令系統をもつヒエラルキー型組織が適している場合もあるでしょう。自社の特性や課題を踏まえたうえで、どのような組織形態が最適かを検討することが重要です。

自律型組織のメリット

メリット

自律型組織のメリットとしては、以下のような点が挙げられます。

    意思決定が速くなり、環境変化への対応力が上がる
    裁量が与えられることで当事者意識が生まれ、社員の主体性が向上する
    自由な発想が生まれ、社員の創造力が発揮しやすくなる

自律型組織では、顧客ニーズの変化に対して経営層の決裁を待つことなく、チーム内で合意形成をして新しい施策を実行しやすくなります。結果として、組織の機動力が高まります。また、メンバー一人ひとりに与えられる業務上の裁量が大きいため、個人で創意工夫がしやすく、新しいアイデアや改善提案が生まれやすい環境につながります。

自律型組織のデメリットや注意点

デメリット

自律型組織を導入・運営する際には、以下のような課題に注意が必要です。

    情報共有や統制が難しい
    評価制度や人材育成のプロセスが複雑化しやすい
    組織の方向性を統一させるのが難しい

たとえば、各チームが独自の判断で動くことで、重複した業務が発生したり、チーム間での情報共有が不足したりする可能性があります。また、個人の裁量が大きいため、成果の評価基準の設定が難しく、従来の人事評価の仕組みが機能しにくくなることも考えられます。

さらに、メンバーの経験や判断力によって成果にばらつきが生じやすく、能動的に動ける人材の育成には一定の時間を要します。以上のことから自律型組織では、これらの課題に対応しながら、個々の自律性を確保していく必要があります。

自律型組織の事例!代表的な組織の種類を紹介

多くの人が議論をする様子

自律型組織にはさまざまな形態が存在し、それぞれに特徴的な考え方や仕組みをもっています。続いては、代表的な組織形態を見ていきましょう。

    アジャイル組織
    ティール組織
    ホラクラシー組織

なお、これらの組織形態は、明確に境界線が決まっているわけではなく、実際にはそれぞれの要素を組み合わせて運用されることもあります。自社の特性や課題に合った要素を取り入れながら柔軟に、組織運営をおこなうことが重要です。

アジャイル組織

「アジャイル(agile)」は「敏捷な」「素早い」を意味し、アジャイル組織は環境変化に柔軟かつ迅速に対応できる組織構造を特徴としています。その特徴は、組織の中心に経営層を置き、その周りに複数の小規模なチームが配置される円状の構造をとる点です。経営層の周りには、プロジェクトごとにいくつものチームが構成され、1つのチームにはさまざまな部門の社員が含まれています。

そして、アジャイル組織では実行と振り返りのサイクルを素早く回していくことを重視します。顧客からのフィードバックを随時取り入れ、必要な修正や改善を迅速におこなえる点が強みです。これを可能にするために、社員一人ひとりに与えられる権限や責任が大きいことも特徴となっています。

ティール組織

ティール組織も階層や上下関係にとらわれず、リーダーに権限が集中しない組織形態です。以下の3つの要素を重視し、メンバー同士が対等な関係で協力し合います。

エボリューショナリーパーパス:なんのためにこの組織は存在しているのか、その存在意義をメンバー全員が理解し追求している
ホールネス:多様性を認め合い、自分を否定されることがない環境
セルフマネジメント:メンバーが意思決定する権利をもつ

実践のためにはフラットで活発なコミュニケーションがカギとなります。メンバーにとっても自分の存在を肯定的に捉えられ、個性や才能を発揮できることにつながります。

ホラクラシー組織

ホラクラシー組織は、組織内の権限や役割に階層がなく、複数の自律的なチームや役割に意思決定権が分散している組織です。組織全体が柔軟性をもち、市場環境や顧客ニーズの変化に素早く対応できるように設計され、従来のように上司が部下に指示を出すのではなく、役割を割り当てられたチーム単位で自主的に活動します。

このような組織形態では、チーム内で議論をおこない一定の賛同が得られれば計画を実行できるため、環境変化への迅速な対応が可能になります。また、個々の意見をチームで話し合って意思決定をおこなうことで、多様な視点を取り入れた判断がしやすくなるのも特徴です。

自律型組織の特徴と実現のためのポイント

社員同士のつながり

ここでは、組織のビジョンや情報共有の仕組みづくりなど、自律型組織を実現するための具体的なポイントを見ていきましょう。

組織のビジョンと行動指針を明確にし、浸透させる

自律型組織では、メンバーが個々に意思決定をおこなう機会が多くなります。そのため、全員が同じ方向を向いて判断できるよう、まず経営層が社員の共感を得られるような明確なビジョンと行動指針(バリュー)を設定することが重要です。抽象的な表現にとどまらず、具体的な行動に落とし込めるものである必要があります。

そのうえで、組織のメンバー全員がそれを理解し、日々の意思決定の判断基準として活用できるよう浸透を図ります。たとえば、定期的にワークショップを開催したり、1on1ミーティングを通じて対話したりしながら、ビジョンや行動指針と具体的な業務との関連づけをおこなうことが効果的です。

組織全体での情報共有体制を構築する

自律型組織では、各チームや個人が独自に判断を下す機会が増えるため、その判断の質を高めるための情報基盤が重要です。そのためにも経営層から現場まで、組織の状況や方針に関する情報が適切に共有される仕組みづくりが欠かせません。

具体的には、経営会議の議事録を全社公開にしたり、各部門の進捗状況を定期的に共有したりすることで、メンバーが組織全体の状況を把握しやすくします。また、心理的安全性の高い環境を整えることで、メンバー間での率直な意見交換が促進されます。多様な視点からの意見や気づきが集まれば、より適切な意思決定につながります。

適切な目標を設定する

自律型組織では、メンバーの主体性を引き出すための目標設定も重要です。組織全体の方向性を示しつつ、各メンバーやチームが適度なチャレンジを含む達成可能な目標を設定します。また、目標は組織のビジョンとの整合性を確保しながら、達成可能性と成長機会のバランスを考慮して設定します。目標が高すぎるとモチベーションが上がらず、低すぎると成長機会を逃すことにつながるため、適度な難易度で設定できるとよいでしょう。

さらに、進捗状況の可視化も大切です。目標にどのくらい近づいているのかを見える化することで、メンバーが自身の状況を把握でき、必要に応じて軌道修正をしやすくなります。

自律型組織で組織力を高める

チームワーク

VUCAと呼ばれる予測困難な時代において、自律型組織は環境変化への対応力を高める選択肢のひとつとして注目されています。アジャイル組織やホラクラシー組織、ティール組織など、さまざまな形態がありますが、いずれも社員の主体性と組織の柔軟性を重視する点で共通しています。

もちろん、自律型組織だからといってすべての課題を解決できるわけではありません。組織の規模や業界特性、企業文化によって適切な組織形態は異なり、従来のヒエラルキー型組織が適している場合もあります。また、責任の所在が不明確になりやすいことや、評価制度の構築が難しいといった課題もあります。

自社への導入を検討する場合は、まず現状の課題を明確にし、自律型組織の導入が解決策として適切かどうかをしっかりと検討するようにしましょう。

著者プロフィールHR Trend Lab編集部
タレントマネジメントやエンゲージメントなどの最新トレンドから、組織や人事にまつわる基本知識までマイナビ独自の視点でお届けいたします。
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