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「売上」より「正しさ」を評価。ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズの働きがいが高い理由

2020年07月31日更新


(写真)インタビューにお答えいただいたケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社 HR 渡邊歩さん

さまざまな業界・領域を対象に、業務改革やIT戦略立案などのコンサルティングサービスを提供しているケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ。「お客様にとって正しいことをする」という姿勢でサービスを提供し、業界のなかでもとくに高いプロジェクト成功率を誇っています。コンサルティングファームというと「成果主義」のようなイメージを持つ方も多いかもしれませんが、同社には社員が積極的にフィードバックしあう文化があり、チームプレーで全体のレベルを上げているのだそう。今回はHRの渡邊歩さんに、働きがいの高い組織風土を醸成するポイントについて伺いました。

目次 【表示】

「お客様にとって正しいことをする」が大前提

――コンサルティング業は個人プレーの印象が強いのですが、御社はいかがでしょうか?

渡邊歩さん(以下、渡邊):当社の場合は個人プレーではなく、チームを組んでプロジェクトを進めているんです。そのほうが、誰か1人の能力を切り売りするよりも大きな力を発揮できると考えています。

――チームを組んで進めているんですね。コンサルタントといえば、自分のノウハウは門外不出で守っているイメージでした。

渡邊:そこは隠さずオープンにしていますね。大前提として、当社ではコンサルタントがノウハウを1人で抱え込むことを良しとしていないんです。

お客様に対しても、自分たちの知見をオープンにお話ししています。極端な話、私たちコンサルタントが入らずにお客様が自立して変革を進めていける状態がベストなんです。私たちの食い扶持が減ったとしても、そのほうが社会的にいいと思っています。

――なるほど。プロジェクトチームなど組織形態はどのようになっているのでしょうか。

渡邊:全員がフラットです。また、コンサルタントの組織も業種×ソリューションのようなマトリクス型にはなっておらず、全員が1つのプールに入っています。

プロジェクトごとにメンバーをアサインして、その都度プロジェクトマネージャーを立てています。

――プロジェクトごとのアサインとなると、優秀だったり、人気だったりするコンサルタントにプロジェクトが集中するようなことはないのでしょうか?

渡邊:100%アサイン(1社専属)を原則としているので、1人のコンサルタントが複数のアカウントを掛け持ちすることは基本的にありません。

一般的には、週に何回かお客様のところに通って、長くお付き合いしながら問題解決するコンサルティング方法もありますが、当社では集中的にプロジェクトを進めて3〜6か月でゴールに導くことを基本にしています。なので、コンサルタントが一つのプロジェクトに集中できるようにしているんです。


(写真)普段のプロジェクトで大切にしていることを応用したオフィス「Base Camp0.5」。

――プロジェクトはチームで進めるとのことですが、評価はどのようにしていますか?

渡邊:まず、売上は評価の指標にしていません。私たちは「お客様にとって正しいことをする」ということを大切にしています。時には、お客様の自立を促すためにサービスや提案を減らさなくてはいけないこともありますが、もし売上が評価の指標になっていたとしたら、その判断にためらいが出てしまう。そういうことにならないよう、売上責任は一部の経営メンバーだけが負っているんです。

――では、なにが評価の指標となっているのでしょうか?

渡邊:それは、職位ごとの期待値とコンピテンシー(高業績者の行動特性)です。コンピテンシーは細かくはっきりと定義されているので、それと照らし合わせて評価していくと、その人がどの職位に該当するのかがわかってきます。プロジェクトが終わるごとにこの評価が行われて、それをもとにした年間評価で給与と職位が決定するんです。

年間評価については、CEOの鈴木をはじめとする経営メンバーが、社員1人ずつに時間をかけてじっくり議論しています。多数決ではなく、全員の見解が一致するまで徹底的に議論するというやり方で、評価基準を全社で統一するようにしています。

――年齢や在籍年数は考慮されますか?

渡邊:そこはまったく考慮しません。基本的に「自分より職位が上の人はすべからく優秀である」という認識があって、この認識こそが当社の“働きがい”において重要な要素を占めているように思いますね。

思ったことはすぐにフィードバックする

――かなりオープンな気風とのことですが、ノウハウはどのように社内共有していますか?

渡邊:当社には“教えたがり”が多いんです。たとえば「今度の金曜に〇〇の勉強会をやります」と誰かが発信すると、興味のある人たちが集まってその人にノウハウを教わります。「年間で何回勉強会を企画しないといけない」と決まっている訳ではないのですが、みんな自発的に開いていますね。

――「勉強会やります!」と告知して、もし人が集まらなかったら悲しいですね…。

渡邊:実際、そういうこともあります。でもそこは、社内マーケティング次第なんです。たとえば「こういうの知らないとマズいですよ。今度勉強会やるので参加してくださいね」と事前にプッシュしておけば、参加者を増やすことができます。

また最近では、教える側が企画する勉強会のほか「こういうことを知りたいので、誰か勉強会を開いてくれませんか?」と、ノウハウを知りたい人の発信で勉強会が開催されることもあります。


(写真)インタビューにお答えいただく渡邊さん。お借りしたMTGスペースの壁にはケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズが大切にしていることが。

――勉強会が活発なのは、企業カルチャーが大きく影響しているのでしょうか?

渡邊:そうですね。採用時にも「自分の成長だけにフォーカスせず、まわりに貢献したいという気持ちがどれだけあるか」という“オープンさ”を重視しています。

当社の面接は「面接らしくない」と言われることが多いんです。基本的に志望動機は聞かず、「ケンブリッジという場を使ってなにを実現したいのか」というところを掘り下げるようにしています。

また採用チームとしては、「応募者にとって正しいことをする」ということを大切にしています。応募者には、わざわざ面接のために1〜2時間費やしてもらうことになるので、何かしらお持ち帰りしてほしいという気持ちがあるんです。なので面接終了後は、「こういう伝え方をしたほうがあなたの魅力がもっと伝わりますよ」というように、その場でフィードバックをしています。

――お客様に対する姿勢が、採用の場でも表れているんですね。

渡邊:はい。それと本人の希望にもよりますが、選考結果についても原則はその場でお伝えしています。時には不採用になった方に「これからどうすればいいでしょうか」と相談され、そのままこれからの就職活動についてお話することもあるんですよ。

――フィードバック文化が日常的に根付いていますね。

渡邊:たとえば社内で誰かの振る舞いを見て感じることがあれば、それがいい意見でも悪い意見でも、相手が上司だったとしても、「自分からは今こういう風に見えています」とオープンに言いあうカルチャーがあります。会議が終わった後にも、「あの発言は良かったですね」「ああいう伝え方をするとお客様は怯んでしまうんじゃないですかね」という具合に、お互いにフィードバックしあっています。

フィードバックって“アドバイス”と捉えられがちですが、もう少しフラットな意味合いだと思うんです。だから当社では、自分たちの行動を少しでも良くしていくために、思ったことを正直に相手に伝えるようにしています。

本質的な目的を見据えて業務の線引きをする

――フィードバックのほかに、御社の特徴的な文化はありますか?

渡邊:「80・20(エイティ・トゥエンティ)」という考え方を大切にしています。「パレートの法則」「2・8(にっぱち)の法則」などと言われることもありますが、アウトプットの8割はインプットの2割によって生み出されているという考え方です。

――具体的にはどういうことでしょうか?

渡邊:たとえばドキュメントの体裁を整えるとか、細かいところに時間を取られているときってハードワークになる一方で、本質的な価値にあまり寄与できていないことが多いですよね。もっと具体的にいうと、私が今「80・20(エイティ・トゥエンティ)」を説明するのに、一旦離席してPowerPointで整えた図を作成してくるという行動はまったく合理的ではなくて、この場で手書きの図を描いて説明すれば、十分に理解してもらうことができます。

業務を進める際には、このように本質的な目的を見据えて、なにをどこまでやればいいのか考えることが重要です。80%までしかやらなくていいということでは決してなくて、余計な20%もやって100%にするくらいなら、次の目的を達成するための80%に目を向けましょうというのが、私たちが考える「80・20(エイティ・トゥエンティ)」です。

――「80%」の線引きが難しそうですね。

渡邊:大切なのは、マネジメントする人がきちんとそれを意識していることです。「今あなたがやろうとしているのは20%のほうのことだから、それをやるなら他の80%のことをやろうね」と導いてあげることが必要です。そうすることで業務に優先順位がつけられるので、結果的に、残業の抑制にも繋がります。

ただやはり、この考え方の難しいところは「80%」の範囲が明確に決まっていないというころです。なので、自分の中で「何が100%か」という基準をしっかり持っていなければいけません。

――基準がしっかりしていないと「80%まででいいや」となってしまうのですね。

渡邊:はい。あくまで「お客様に届けるのが100%」という共通認識が土台としてあるからこそ成り立っている考え方だと思います。

――コンサルタントの人たちはどのようなキャリアプランを持っているのでしょうか。

渡邊:社員には入社時から口酸っぱく言っているのですが、当社ではキャリアは自己責任と考えています。会社がお膳立てしてあれこれやってあげるということはなくて、自分の道は自分で切り拓いていこうね、というスタンスです。

研修一つ取っても「この研修を受けなさい」と言われることは基本的になくて、なにを受けるのかは自分で考えて自分で決めるという自発性を大切にしています。

自分自身の専門性を追求したいなら、それが叶うプロジェクトに入れるように立候補する、自らポジションを作ることを提案する。必ずしもすべて実現するとは限りませんが、自分のキャリアを深耕するためのアクションや提案を歓迎しています。

キャリアについて考えた結果、中には転職を選択する人ももちろんいます。ですが、会社が嫌になって辞めるというよりはいったん距離を置く感じです。数年後に再入社するという人も一定数いて、これも当社のおもしろいところかなと思います。

カルチャーが薄れるほどの拡大はしない

――ここまでお話を伺ってきて、御社はカルチャー基盤がとてもしっかりしているのだと思いました。現在の社員数は158名ほどと伺いましたが、この先もし1000人、5000人まで社員数が増えたとしても、今の体制を維持できると思いますか?

渡邊:それはまず無理だと思います。前提として、私たちはカルチャーが薄れるほどの拡大はしないと決めているのですが、人数が増えてくると、今のオープンかつフラットな組織を維持するのは難しいですね。

――では1000人までは増えないとして、仮に200人、300人に増えたとき、カルチャーを維持するためにこれだけは続けるべきだということはありますか?

渡邊:年に一度の全社員合宿は、どんなに会社の規模が大きくなったとしても、複数の事業所にまたがったとしても続けなければいけないと思っています。

――全社員合宿ですか。

渡邊:1泊2日で、会社の現在と将来について本気で議論するんです。2019年は経営方針書を作るワークを行ったのですが、とても有意義で楽しい時間になりましたね。

――具体的にはどのようなワークをしたのでしょうか?

渡邊:経営メンバーが中心となって作成した経営方針書の案をベースに、ケンブリッジをクライアントに見立ててチームに分かれてコンサルティングするんです。

あるチームはフレームワークで要素の抜け漏れを発見し、あるチームはより読んでもらいやすくするために漫画化することを提案し、またあるチームは歌にしようと作曲までして……。

全員が自分の言葉で理解するというプロセスがあったので、「一部の人たちが考えた方針書でしょ」ではなく、みんなが自分ごととして捉えられるようになったのがとても良かったと思います。


(写真)2019年7月におこなったワークで社員が作った戦略ストーリーを社内に掲示。

――なるほど。ちなみに、カルチャー維持を大切にするからこそできた制度などはありますか?

渡邊:四半期に一度行っている「ワークアウト」という制度があります。経営メンバーに向けて「こんなことやってみたい」と企画提案できる場なのですが、有志が約20分かけてプレゼンし、経営側はその場で可否を判断します。

――判断を先延ばしにせず、その場で採用・不採用を決めるのが御社のスタイルなのですね。

渡邊:一時期、「これをやればああいうリスクも出てくるね」とか「今はしかるべき人がいないから判断できない」という風潮になりかけたんです。でも、情報がなくてもある程度その場で方針を決めましょうという仕組みにしてから、思いのほかいい感じに回るようになりましたね。

――社員からの声を吸い上げて実現していったほうがいい、という考え方が根底にあるということでしょうか。

渡邊:そうですね。要は「あれやれ、これやれ」と言ってやらされるよりも、一人ひとりが問題意識を持って「これはもっとこうなったらいいんじゃないか」「これはこうあるべきだ」と自発的に提案できたほうが楽しいし、絶対にいいものが出てくるし、コミットメントにもつながると思っています。だから、採用基準としても「ケンブリッジという場を使ってなにがしたいのか」を大切にしているんです。

――一人ひとりがそういったモチベーションであれば、全社としての生産性も上がりますし、お客様に届けられるバリューも高くなりますよね。渡邊さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。

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