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カルチャー採用とは?重視すると既存社員にもメリットがある理由

2021年07月14日更新

文化(カルチャー)とは、ムリにつくるものではなく、そこにいる人々の間で自然に出来上がるもの。企業文化も同様に、経営方針や企業理念をもって人々が企業活動をおこなう過程で、長い時間をかけて培われていきます。

選考プロセスに、企業文化と合っているかどうかという視点を取り入れる採用手法を「カルチャー採用」と呼びます。この手法は、既存社員と新入社員の双方にとってメリットがあることが明らかになってきています。採用候補者や社員が自社の企業文化に合っていることは「カルチャーフィット」と表現されることが多いです。

「カルチャー採用には興味があるものの、自社の企業文化について深く考えたことがない」という経営者や採用担当者の方に向けて、カルチャーフィットを重視するメリットや取り組み方を紹介します。

目次 【表示】

カルチャー採用とは?

カルチャー採用とは、企業の理念や価値観への共感度を重視する採用手法です。選考プロセスの中で、採用候補者の価値観にもとづいて自然とでてくる行動や思考が、自社の企業文化と合っているかどうかを判断します。たとえば、仕事に長時間従事していることを価値と捉える企業もあれば、短時間で成果をあげることを価値と捉える企業もあります。

どちらの方がよいとは言えませんが、一方の価値観を持つ人材がもう一方の価値観の企業に入社した後、フィットしていないことに気付くようでは、お互いに不幸な結果を招いてしまいます。

カルチャー採用と対比される言葉として、「スキル採用」があります。スキル採用とは、業務遂行に必要な知識やスキルを持ち合わせているかどうかを採用基準とする手法です。近年、スキルがあることよりカルチャーフィットを重視した採用が注目されています。なぜかというと、価値観や行動原理は、スキルに比べると入社後に新たに身に付けたり、変えたりすることが難しいためです。

ただし、カルチャーフィットを重視して採用活動を進める場合にも、決してスキルのマッチ度をおろそかにするわけではありません。最低限持っていてほしいスキルを絞り込み、入社後に業務や研修などを通じて育成できる部分については優先度を下げて対応する方法が有効です。

カルチャー採用の効果

カルチャー採用を取り入れることによる効果には、主に以下の3点が挙げられます。

業務の生産性が向上する

カルチャーフィットしている人材同士がチームとなって業務にあたることで、業務の生産性が向上します。お互いの行動が自然と一致することから、阿吽の呼吸でスムーズに仕事を進められるためです。その状態があると、社員のモチベーションは維持され、高い成果にもつながるのです。スムーズに仕事が進むことで、結果的に事業全体のパフォーマンスも向上するでしょう。

逆にフィットしていないと、チームのメンバーが互いの行動に違和感を覚えることが多くなり、双方にストレスがかかります。そうなると、仕事の進め方やコミュニケーションにズレが生じ、非効率な進め方になってしまいます。

早期離職を防ぐ

カルチャーフィットしている人材は、能力を発揮しやすく、正当な評価も得やすいことから、長期間就業してくれる傾向があります。逆にカルチャーフィットしていない人材は、その環境下でスムーズに業務を進めることが難しいため、結果的に低評価を下されてしまう場合があります。そして当人も、その結果に納得できずに退職してしまう可能性が高まります。

このようなミスマッチに、入社前に気付くためにできる対策が、選考プロセスの中でカルチャーフィットをチェックすることです。カルチャーフィットを重視した結果、長く就業してもらえる従業員が増えることは、採用や育成コストの観点からも大きなメリットです。

自社のブランディングや社員同士の一体感が形成される

カルチャー採用を実施するためには、社内でカルチャーの言語化や浸透を進める過程が不可欠です。詳しい取り組み方法は後述しますが、その過程を経ることで、既存社員が自分たちの共通する価値観に気付いたり、互いのコミュニケーション方法を再認識したりすることでしょう。それらは、あらためて自社の特色を際立たせるブランディングにつながる効果があります。チームのカルチャーが一致していることで社員同士の一体感も形成されていくでしょう。

カルチャーフィットを測る方法

それでは、採用候補者が自社の企業文化にフィットしているかどうかを、どのようにして測ればよいのでしょうか。重要なのは、「自社の企業文化とは?」を具体的に言語化することです。

自社の企業文化を可視化する

まずは、自社が大切にしている理念や価値観を、行動原理に落とし込む形で言語化します。具体的には、社員アンケートや話し合いの場を設けることで、従業員の考えを確認することから始めます。望むビジョンや価値観といった抽象的なことから、年齢や性別の構成比といった定量的なことまで、広い視野で理解を深めましょう。

自社の企業文化に関わるキーワードが見えてきたら、それを文字として見える形にして社内外へ提示することも大切です。そうすることで、自社の社員が企業文化を意識できますし、社外へのアピールもできるという両面の効果が期待できます。これらの取り組みを繰り返して、より自社らしい企業文化を作りあげていきます。

採用候補者の価値観や行動特性を把握する

自社の企業文化を言語化できたら、候補者の価値観や行動特性を把握できる仕組みを選考プロセスに取り入れます。主に考えられるのは、面接での質疑応答を通じて、事実に対する解釈と行動を聞く方法です。質問を設計する際に重要なのは、候補者のこれまでの行動や経験にもとづいた回答を引き出せるようにすること。一時しのぎの回答や評価されることを目的とした回答は防がなくてはなりません。

面接では、まず過去の事実に紐づけた具体的な行動と、なぜそのような行動に至ったのかという思考の部分を深掘りします。場合によっては、書類選考やワークショップで候補者の価値観や行動特性などを引き出す問いを設計することも考えられます。

また、「リファレンスチェック」で価値観や行動特性を把握する方法もあります。リファレンスチェックは外資系企業でよく行われている方法で、候補者の人物像や働く姿に関する情報を、前職や現職の同僚から取得する方法です。日本企業ではあまり馴染みがありませんが、採用プロセスに取り入れてみるのも一案です。

自社の企業文化とのマッチ度を判定する

選考プロセスの中で見えてきた候補者の価値観や行動特性が、自社の企業文化とフィットするかどうかを見極めます。自社のメンバーと、スムーズに仕事をしている姿が目に浮かぶでしょうか。入社後のチームの雰囲気を左右する重要なポイントですので妥協は許されません。

また、自社の考え方や価値観を積極的に企業側から候補者へ伝えることも効果的です。候補者自身が、自分の価値観に合っている企業なのかを判断する重要な情報源となります。

カルチャー採用に取り組む上での留意点

まずは既存社員に企業文化を浸透させる

冒頭でお伝えしたように「文化」と呼べるまで企業文化が醸成されていないと、採用活動へ反映ができません。焦らず、しっかりと言語化のための取り組みを実施し、全社的に共通理解を持てるようになってからスタートしましょう。

面接官の感覚で判定しない仕組みづくり

文化は抽象的な概念に陥りやすいため、面接官が個人の感覚で判断してしまうと見当違いになる可能性もあります。面接における質問の設計やその意図をマニュアル化することは必須です。どのような価値観の人を採用するのか、誰が面接をしても同じ結論になるような仕組みをつくります。

多様性の喪失とは分けて考える

カルチャーフィットを重視し、価値観や行動特性が合っていることを判断基準にすると、社内が似たような人材ばかりになると思われがちです。しかし実際には、カルチャー採用の手法を用いて「行動」で絞り込むことで、性別や年代、国籍といった属性の観点で大きな偏りが生じることは考えにくいです。

カルチャー採用の目的は、「自社にとっての理想的な行動をとり、NG行動は取らない人材かどうか」に注目することにより、社員間でスムーズに業務をおこなうというメリットを享受することだという点を忘れないでください。

まとめ

カルチャー採用とは、社員がコミュニケーション上のストレスをできる限り感じずに業務を遂行できる環境をつくるために、有効な採用手法です。価値観や行動特性というと抽象的な表現に留まりがちですが、選考基準に反映するのであれば、もう一歩進んで、じっくりと企業文化を可視化することが大切。カルチャー採用に取り組み、「既存社員」・「新入社員」・「事業」がwin-win-winの構造で、好循環を生み出すことを目指しましょう。

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