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若手社員の離職理由と企業に求められるリテンションマネジメントについて解説

2021年03月17日更新

若手社員の早期離職は、人員が減ることによる現場への労働負担や、採用・教育といったさまざまなコストの増大につながります。そこで若手社員の離職防止施策として、「リテンションマネジメント」への取り組みが注目されています。
今回は、リテンションマネジメントについて説明するとともに、若手社員の早期離職の理由や、離職防止につながる具体的なリテンションマネジメントの施策について解説します。

目次 【表示】

リテンションマネジメントとは?

リテンションには、どのような意味があるのでしょうか?

「リテンション」の意味

「リテンション(Retention)」とは、「維持・保持・引き留める」などを意味する言葉で、元々はマーケティングの領域で「既存顧客と継続的な関係を維持していくための活動」という意味で使われていました。現在では人事領域でも広く使われており、「人材を組織に定着させ、活躍し続けてもらうための施策」という意味で「リテンションマネジメント」と呼ばれています。

リテンションマネジメントの目的とメリット

リテンションマネジメントをおこなう目的は、優秀な社員の流出を防止し、自社で長く活躍してもらうことです。企業が優秀な人材を採用して研修やトレーニングを行ったとしても、その人材が数年で離職してしまえば、人員減少による現場社員の負担増大や人材の採用・教育にかかるコスト増大などにつながってしまいます。

社員が自社に定着すれば、企業は社員個々人の能力やスキルなどをもとに適材適所の人材配置に繋げることが可能になります。社員の働きやすい職場環境を整えることで、生産性の向上も期待できるでしょう。また社員が組織内で成長することで、多くのノウハウが蓄積され、新たな技術や事業が生まれることにもつながります。

実際に、優秀な社員の流出を防いで組織への定着を促すために、若年者に向けたリテンションマネジメントの施策に取り組む企業が増えています。

厚生労働省の「平成30年若年者雇用実態調査の概況」(※1)によると、若年正社員の「定着のための対策を行っている」事業所は72.0%(前回平成25年調査では70.5%)、正社員以外の若年労働者の「定着のための対策を行っている」事業所は57.1%(前回調査では54.2%)となりました。この結果から、若年労働者を定着させるための対策を行っている事業所は5年の間に徐々に増加していることがわかります。

リテンションマネジメントが注目されている背景

なぜ今、リテンションマネジメントが注目されているのでしょうか?

社員の仕事に対する価値観の変化

日本が直面している「少子高齢化」「労働人口不足」「長時間労働」などの問題を見直すために推進されている働き方改革により、昨今では社員の仕事への価値観も変化しつつあります。仕事と生活の調和を求めるワークライフバランスを重視する若手社員が増えてきているのです。

実際に、内閣府が公表した「平成30年版子供・若者白書」における「特集 就労等に関する若者の意識」(※2)では、「仕事と家庭・プライベート(私生活)のどちらを優先するか」という質問に対して、「仕事よりも家庭・プライベート(私生活)を優先する」と回答した16歳~29歳までの若者は63.7%にも上り、平成23年度の52.9%から大きく増加しています。

また同調査の「仕事を選択する際に重要と考える観点」については、「安定していて長く続けられること」および「収入が多いこと」に、「とても重要」または「まあ重要」と回答した若者の割合は88.7%でもっとも多く、次いで多かったのが「自分のやりたいことができること(88.5%)」でした。この結果から、安定して働くことや収入が多いことの他に、仕事に自分自身のやりがいを求める若手社員が多く存在していることがわかります。

少子高齢化による労働人口の減少が進む中、企業側が若手社員の仕事に対する価値観を理解し、働きやすい環境を整えなければ、若手社員を定着させることが難しくなっていくといえるでしょう。

キャリアチェンジによる人材の流動化

株式会社マイナビの「転職動向調査2020年版」(※3)によると、正社員でキャリアチェンジの経験がある人材の割合は、2016年時点では3.7%でしたが、2019年には7.0%と増加しています。とくに20代においては男女ともに10%を超えており、若手社員を中心に人材の流動化が進んでいることがわかります。

このパーセンテージの増加は、働き方のニーズが多様化し、求める働き方を実現するためにキャリアチェンジを選択する若手社員がいることが理由の一つです。若手社員の働き方のニーズの変化に対応するためにも、企業には離職理由を把握することが求められています。

若手社員が早期離職してしまう理由

若手社員の早期離職を防止し、自社に定着させるためには、まずは離職の原因となる要素を把握して、それに対してリテンションマネジメントをおこなうことが重要です。

内閣府の「平成30年版子供・若者白書」における「特集 就労等に関する若者の意識」(※2)によると、16歳~29歳の若者が初職を離職した理由としては、「仕事が自分に合わなかったため」が43.4%でもっとも多く、「人間関係がよくなかったため」が23.7%、「労働時間、休日、休暇の条件がよくなかったため」が23.4%と続いています。

他にも、「賃金がよくなかったため」20.7%、「ノルマや責任が重すぎたため」19.1%なども挙げられています。希望する業務内容との不一致や、労働条件、職場の人間関係などの理由によって離職する若手社員が多いことがわかります。

「保守的な企業体質」も離職の原因になる

ITツールに馴染みのある若手社員からすると、業務の連絡や記録に紙ベースの書類のみを使用していたり、事務作業がシステム化されていなかったりすることで、「仕事の効率が良くない」と感じてしまうことがあります。

また、「雑務は若手の役割」のようなルールも、若手社員は非合理だと感じる可能性が高いでしょう。上司・先輩社員との価値観の違いが生じることで、人間関係や職場環境に不満が現れます。企業の体質が保守的なままだと、若手社員はその企業に未来を感じなくなり、離職へとつながる可能性があります。

若手社員の離職防止につながるリテンションマネジメント

リテンションマネジメントには、社員の「衛生要因」にアプローチする施策と、「動機付け要因」にアプローチする施策の2種類があります。

・衛生要因:給与、インセンティブ、賞与、福利厚生などの要因
・動機付け要因:働きがい、仕事を通じて得る経験、責任のある仕事、適切な評価、キャリアアップなどの要因

どちらもリテンションマネジメントにとって重要ですが、「衛生要因」にアプローチする施策のリテンション効果には限界があるといわれています。また、「衛生要因」にばかりフォーカスすることで、社員の内発的な仕事への動機づけが薄れてしまう可能性も考えられます。

では、リテンションマネジメントとして注目を集めている「動機付け要因」へアプローチするには、具体的にどのような施策が考えられるでしょうか?

若手社員のモチベーションの維持

動機付け要因の一つである働きがいの醸成や適切な評価などによって、若手社員のモチベーションを維持することが離職を防ぐための施策のひとつとして考えられます。

また、仕事で適切な評価を受け、若手社員が働きがいを感じることもモチベーションの維持に役立ちます。目標や人事評価の項目を明確化し、若手社員が自身の仕事に取り組む理由が理解できる仕組みをつくりましょう。

離職はいくつかの原因が重なることで起きますが、職場での人間関係が良好だと離職が少ない傾向にあります。とくに若手社員にとって上司や先輩との人間関係は非常に重要であり、良好な人間関係はモチベーションの維持にも大きく影響するでしょう。

若手社員は「褒められること」が仕事のモチベーションになることも多くあります。上司が若手社員を褒めるような企業文化を取り入れる、仕事のフィードバックをしっかりとおこなうなどの取り組みをすることは、若手社員の早期離職を防ぐ効果が期待できるでしょう。

メンター制度の導入

メンターとは、「指導者・相談者」などを意味する言葉です。ビジネスシーンでは多くの場合、仕事の手本となって若手社員や新入社員などの指導・サポートをする先輩社員のことを指します。企業における「メンター制度」は、メンターである先輩社員が、後輩社員の仕事上における悩みや不安を聞き、支援する制度のことです。

メンター制度を導入することで、若手社員は「なにかあっても相談できる相手がいる」という安心感を持って業務に取り組めるようになります。とくに新入社員は、業務や社内ルールなど、わからないことが山ほどあります。メンター制度を導入することで、一人で悩みや不安を抱え込むことを防ぎ、仕事への意欲の低下や離職を防ぐことにもつながるでしょう。

幅広いキャリアプランの提示

入社してから長い期間同じ職場や部署にいることで、若手社員が達成感や成長を感じにくくなる可能性があります。今後の自身のキャリアプランが見出せなくなると、離職のリスクが高まる要因にもなるため、入社間もない段階から社内の幅広いキャリアプランを提示することで早期離職を防ぐことにつながります。

インナーコミュニケーションの活性化

インナーコミュニケーションは、企業におけるビジョンの浸透や、社員の愛社精神の醸成、モチベーション向上を目的におこなう社内活性化コミュニケーションです。手法としては、研修や社内イベントの実施、社員同士が会話できるビジネスチャットの利用などが挙げられます。

インナーコミュニケーションの機会を作ることで、直属の上司だけではなく、他部署の先輩社員などの縦・横・斜めのコミュニケーションを活性化させ、企業内の風通しを良くする効果が期待できます。若手社員は、他部署との交流が増えることで人脈の構築ができ、企業の環境に慣れることにもつながります。

まとめ

若手社員が離職してしまう原因は、企業ごとにさまざまです。若手社員の離職を防止するには、まず自社における若手社員の離職理由や労働環境をしっかりと把握することが重要といえます。離職理由となっている原因に対して、適切なリテンションマネジメントを実施し、企業の未来を担う若手社員の定着を目指しましょう。

<出典>
※1. 厚生労働省:平成30年若年者雇用実態調査の概況
※2. 内閣府:平成30年版 子供・若者白書 特集 就労等に関する若者の意識
※3. 株式会社マイナビ:転職動向調査2020年版

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