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パワーハラスメント防止のために企業はなにをするべきか?パワハラの定義と対策例を紹介

2022年08月31日更新

職場において社員が精神的・肉体的な苦痛を受けるパワーハラスメントは、就業環境を悪化させ、人材流出や企業のイメージ悪化につながるおそれがあります。近年では法改正により、中小企業にもパワーハラスメントへの対策が義務化されたこともあり、誰もが働きやすい環境を整えることが企業に求められています。

本記事では、パワーハラスメントの定義を解説するとともに、パワーハラスメント防止のために企業はなにをすればよいのか具体例を交えて紹介します。

目次 【表示】

パワーハラスメントとは

そもそもパワーハラスメントとはなにか、定義を紹介するとともに、パワーハラスメントの具体例を解説します。

パワーハラスメントの定義

厚生労働省では、以下①~③のすべての要素を満たしているものをパワーハラスメントとして定義しています。

①職場において優越的な地位または立場にある社員が、ほかの社員に対して行うもの
②業務における適正な指導や指示の範囲を超えたもの
③精神的・肉体的な苦痛をともなう(就業環境が害される)もの

なお、「職場」とは企業のオフィスはもちろん、出張先や移動中の車内、取引先との打ち合わせや接待の場、懇親の場など、実質的に業務の延長線上と考えられる場所が含まれます。

また、「優越的な地位または立場にある社員」とは上司だけに限りません。その社員からの協力を得なければ円滑に業務を遂行できない場合や、抵抗や拒絶が困難である関係性の場合は、部下や同僚であってもパワーハラスメントと見なされます。

パワーハラスメントの6つの類型と具体例

厚生労働省では、パワーハラスメントに該当する代表的な言動として6つの類型を定義しています。それぞれの類型に当てはまるパワーハラスメントの具体例とともに紹介します。

1.身体的な攻撃:殴打や足蹴り、物を投げつける など

2.精神的な攻撃:人格を否定するような言動、必要以上の長時間にわたる厳しい叱責、他の社員がいる前で罵倒を繰り返す など

3.人間関係からの切り離し:正当な理由なく長期間にわたり別室に隔離する、集団で無視して孤立させる など

4.過大な要求:業務とは関係ない過酷な作業を命令する、十分な教育をしないまま高い目標を課して達成できなかったことを厳しく叱責する など

5.過小な要求:嫌がらせのために仕事を与えない、正当な理由なく本人の能力に見合わない低いレベルの業務をさせる など

6.個の侵害:社員の性的指向や病歴などの機微な個人情報を勝手に暴露する、職場外で継続的に監視する など

企業にとってパワーハラスメント対策が重要な理由

パワーハラスメントが起こった場合、企業として直接パワーハラスメントに加担していなくても、裁判で使用者責任を問われる可能性があります。また、このような法的なリスク以外にも、以下のような理由から企業はパワーハラスメント対策を徹底する必要があります。

人材流出を防ぐため

パワーハラスメントが起こっている職場は、社員にとって働きやすい環境とはいえません。
適切な対策を講じていないと、他社へ人材が流出する原因になります。その結果、人手不足に陥り、社員のモチベーション低下や、売上減少につながる可能性があるでしょう。

パワーハラスメント対策を講じ、働きやすい職場をつくることで、社員の定着につながると期待できます。

企業イメージの低下を防ぐため

社員の内部告発によってパワーハラスメントが世間に知れ渡ると、企業イメージの低下につながります。特に近年はSNSが普及し、誰でも手軽に情報発信ができるようになったことで、内部告発する文章がSNS上に投稿された場合、企業の悪評が拡散されるスピードも速くなっています。

適切なパワーハラスメント対策ができている企業は、万が一パワーハラスメントが発生した際にも迅速かつ対応でき、企業イメージの低下を防ぐなど、リスクを抑えて安定した経営に近づくでしょう。

パワハラ防止法の内容

改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)が2019年5月に成立しました。2020年6月から大企業を対象としてパワーハラスメント防止対策の義務化がスタートしており、2022年4月からは中小企業も義務化の対象となりました。

パワハラ防止法では、事業主などの責務として以下の3つが求められています。

1.パワーハラスメントを禁止するとともに、労働者のパワーハラスメントに関する問題への理解・関心を深めること

2.労働者が他の労働者に対する言動に注意を払い、社内のパワーハラスメントを未然に防ぐために、ハラスメント防止研修を行うなど必要な配慮を行うこと

3.事業主自身がパワーハラスメントに関する理解・関心を深め、労働者への言動に注意を払うこと。また、労働者同士の言動にも細心の注意を払い、パワーハラスメント防止を労働者へ徹底させること
(※)労働者とは、自社の社員のみならず、取引先等の他の事業主が雇用する労働者や、求職者の方も含む。

また、企業だけでなく社員側もパワーハラスメントに関する理解を深め、他の社員に対する言動に注意を払うことと、企業が講じる雇用管理上の措置に協力する責務があります。

パワハラ防止法では罰則規定は設けられていないものの、必要な措置が講じられていないと指導や勧告の対象となる可能性があります。それでも適切な対応をせず、改善が見られない企業は、企業名を公表されることもあります。

企業に求められるパワーハラスメント対策

パワハラ防止法では、パワーハラスメントを防止するために企業に対して雇用管理上必要な措置を講じることを義務化しており、具体的には以下4つの措置が挙げられています。

事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

企業としてパワーハラスメントを禁止する旨の方針を明確化し、全社員へ周知します。また、パワーハラスメントが行われた場合の行為者である社員への対処・罰則について、就業規則等の文書へ規定し、周知しておく必要があります。

相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

パワーハラスメントに関する相談窓口を設置するとともに、窓口の存在を社員へ周知します。
また、窓口の担当者が相談内容に応じて適切に対応できるよう、体制を構築しておく必要もあります。

職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

パワーハラスメントについて相談する社員が現れた場合、迅速かつ正確な事実関係の確認を行います。

パワーハラスメントの事実が認められた場合には、被害者に配慮し、保護するための適正な措置も講じます。同時に、パワーハラスメントの行為者に対して適正な措置・処分を下す必要があります。

また、今後パワーハラスメントが発生しないよう、企業として再発防止に向けた措置も講じなければなりません。

そのほか併せて講ずべき措置

窓口への相談者および行為者のプライバシーを保護することはもちろんですが、プライバシーが保護される旨を社員に周知しておくことも重要です。

さらに、窓口へ相談したことを理由に、解雇や異動といった職場での不利益な取り扱いをすることは法律で禁止されている点も、社員へ周知しておく必要があります。

パワーハラスメント対策の具体例

上記で紹介したパワーハラスメント対策をもとに、企業として具体的にどのようなことを実行すればよいのでしょうか。3つの具体例を紹介します。

経営者からの社内周知

企業としてパワーハラスメントを防止するためには、社員一人ひとりの意識を向上させることが重要です。パワーハラスメント対策に本気で取り組んでいく姿勢を示すためには、経営者自らがメッセージを発信することも有効な方法といえるでしょう。

ハラスメント防止研修の実施

どのような行為がパワーハラスメントに該当するのかわからない、または指導との境界線がわからないと感じている社員もいるかもしれません。

そこで、ハラスメント防止研修を実施し具体例を交えながら学習していくことで、指導とハラスメントの違いを明確化させ、パワーハラスメントの抑止につなげていきましょう。

匿名によるアンケートの実施

相談窓口を設置しても、仕事が忙しく時間をとれなかったり、窓口を利用すること自体に抵抗を感じたりする社員もいるでしょう。

そこで、匿名のアンケートを実施することで社員が自社に対してパワーハラスメントに関する現状を伝えられ、さらに相談することへの心理的な抵抗が緩和されることも期待できます。

また、企業にとっては自社のパワーハラスメントの現状を把握でき、相談窓口の積極的な利用を呼びかけることもできるでしょう。

適切な対策でパワーハラスメントを防止しよう

パワハラ防止法では、パワーハラスメントを禁止する旨を社員に周知することや、相談窓口の設置など、企業に対してさまざまな措置を講ずることが義務付けられています。

社員一人ひとりにパワーハラスメントに関する正しい知識を身につけてもらうためには、ハラスメント防止研修を受講してもらうこともおすすめです。

誰もが働きやすい職場環境を実現するためにも、企業としてどのようなパワーハラスメント対策を講じるべきか、この機会に考えてみましょう。

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