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合意形成の流れやポイントは?意見が出ない・食い違うときの対処法も解説

2025年06月12日更新

ディスカッション

ビジネスにおける合意形成とは、同じ業務やプロジェクトに携わる関係者間や、商談における顧客などとの意見の一致を図ることを指します。合意形成はさまざまなビジネスシーンで求められ、目的を共有したり、業務を円滑に進めたりするために不可欠です。

本記事では、合意形成とはなにかを説明し、社内会議やプロジェクトの進行などにおける合意形成の流れやポイントについてお伝えします。あわせて、意見が出ない原因と対処法、意見の食い違いがあった場合の対処法、合意形成を円滑にする「ファシリテーション」についても解説します。

合意形成とは

ビジネスにおける合意形成とは、複数の関係者同士と意見を一致させることです。関係者間の合意を得ることには以下のような目的があり、仕事を円滑に進めるためには欠かせないものです。

  • ・お互いの意見を納得のいく形へと導く
  • ・合意のもとで決定された意見や提案に対して、個々人に当事者意識を持ってもらう

合意形成をおこなうことは、経営方針を定める会議やチーム内でのミーティング、取引先との商談など、ビジネスのさまざまな場面でたびたび求められ、仕事の方向性や双方のメリットを共有する機会としても欠かせません。

合意形成と似ている言葉で「コンセンサス」と呼ばれるものがありますが、合意形成は、合意を形成しようとしている段階であるのに対し、コンセンサスは、合意が得られている段階を指します。

議論は合意形成のための手段

合意形成のためには議論が欠かせません。議論の中で単に意見をぶつけ合うのではなく、参加者がお互いの意見をすり合わせ、納得のいく形に導くことが大切です。

質の高い合意形成とは、関係者全員が心から納得できる状態を指します。

一方で、実際の議論の場では、次のような状態にとどまってしまうことも少なくありません。

  • ・発言力の強い人の意見だけが通る
  • ・多数決で決めると、少数意見が置き去りになってしまう
  • ・互いに譲歩し合って妥協点を探るが、本心では納得していない

こうした状態では、本当の意味での合意形成とはいえず、後々に不満となり、問題となることもあります。

ここまでの内容を踏まえて、質の高い合意形成をするための流れを見ていきましょう。

合意形成の流れ

合意形成はどのようにおこなうのでしょうか?前述のように、合意形成はさまざまなビジネスシーンで求められますが、本項では社内会議やプロジェクトの進行などにおける合意形成の流れについて順番に紹介します。

1.目的の共有と合意

合意形成をおこなうには、チームメンバーや仕事の関係者の間で、会議やプロジェクト、業務などにおける目的の共有が求められます。目的が関係者に明確に理解・共有されていないと「なぜこの会議をしているのか」「プロジェクトをどのように進めるのか」といった疑問が生じ、議論が進まなくなる恐れがあります。

たとえば、新製品のマーケティングについての議論をする場合、「製品をたくさん売るための方法を考える」という目的と、「消費者の目にとどまる製品のパッケージを考える」という目的では、議論の内容が異なります。議論の方向性を定めるためにも、関係者同士で目的の共有が必要です。

2.アクションプランを選んだ理由の共有と合意

関係者同士の議論を通じて意見として挙げられた「新商品の開発をする」「新規得意先の開拓をする」などのアクションプラン(計画)について、それらを挙げた理由を共有します。実際に実行するアクションプランを選んだ際に、関係者全員がそのアクションプランを挙げた理由に納得することで、当事者意識を持った主体的なアクション(行動)が期待できるでしょう。

3.アクションへの合意

アクションプラン(計画)を選んだ理由の共有と合意を得た後、仕事やプロジェクトの目的を達成するための具体的なアクション(行動)について検討し、関係者の合意を得ることが必要です。
たとえば「新商品の開発をする」というプランの共有と合意を得た後は「どのようなターゲット層を狙うのか」「取引先はどの企業にするのか」などのように、具体的なアクションについて合意を得ることで、目的の達成へと近づきます。

4. 個々のアクションプランやコミットの確認と共有

会議やプロジェクトの話し合いで盛り上がった結果、関係者同士で「これをやろう」と抽象的なプランが決定しても行動に移す人が誰もいなく、そのプランが合意されていないケースも存在します。決めたプランを実行するためにも「誰が・いつまでに・なにをするのか」といった、具体的で細かな流れを明確に決める必要があります。

合意形成のポイント

対話する社員

合意形成をおこなうためにはどのようなポイントを意識すればいいのでしょうか?

情報をメンバーで共有する

会議やプロジェクトの目的や、テーマに関する情報、メンバーの意見、市場調査などの情報はできる限りオープンにし、メンバー全員で共有できるようにすることが大切です。一部の情報が欠けていると、物事の認識の違いが生まれ合意が得られない場合も考えられます。メンバー同士で情報の伝え忘れがないようにしましょう。

議論のステップを柔軟に調整する

すべての議論が、前述した1~4のステップの順番通りに進むわけではありません。必要な議論に集中するために、既に合意が得られている部分は省略します。

たとえば、新商品の販売戦略を決める議論において、『この商品を販売する』という点で既に合意が得られていれば、その部分の議論は省略し、『どのターゲット層にアプローチするか』『どの販売チャネルを活用するか』に焦点を当てた合意形成としましょう。

このように、議論の前提がすでに合意されている場合は、その部分を省略し、次のステップに進むのが合理的です。

参加者の認識レベルに合わせて議論の出発点を設定する

参加者がそのテーマについてどの程度の知識を持ち、理解しているかによって、なにから議論すべきかが異なります。参加者が「話自体を知らない」「問題意識を持っている」「十分な知識を持っている」など、どの認識レベルにいるのかを慎重に判断しましょう。

「皆わかっているはず」と思い込まず、事前に参加者の理解度を確認することが重要です。とくに、目的や課題への理解が不足していると、具体的な改善案の議論がかみ合わないため、必要に応じて基礎的な説明からスタートする必要があります。

また、1回の議論で完結しないことが予想される場合は、議論を複数回に分ける(例:第1回で情報共有、第2回で具体的な議論)、事前に資料を配布して参加者の理解を深めておく、といった工夫が望ましいです。

メンバーの多様性を理解する

同じ企業のメンバー同士であっても、企業の中での立場や個々人が育った社会的背景などは異なります。年齢や文化・社会環境、価値観、職務経験なども異なる中で、個々の意見や考え方が違うことは当たり前といえるでしょう。

そのため、メンバー同士で「なぜ相手はそう思うのか?」について考えることで相互理解を心掛け、多様性を認めることが、合意形成をおこなう重要なポイントとなります。

疑問点や意見を引き出す

会議やプロジェクトで議論された内容について疑問や不満があった際には、意見を述べたり質問したりしてもらうことが重要です。また、たとえ疑問や不満が出なかった場合でも、メンバーや関係者へ質問を投げかけて意見を引き出すようにしましょう。

そうすることで、仕事やプロジェクトの進行中に問題やトラブルが起こった際、「話し合いの場で反対意見を言わなかった」「そのような問題が起きる可能性は把握していると思った」と、お互いに責任を押しつけあってしまう事態を防止できます。また、全員が当事者意識をもって仕事やプロジェクトに取り組めるようになるでしょう。

意見が出ない原因とその対処法

アイディア

全員が沈黙してなかなか意見が出てこないときや、一部の参加者がほとんど発言していないようなケースでは、意見を出しやすくする工夫が必要です。

ここでは意見が出ない原因ごとに対処法を紹介します。

【原因1】発言するタイミングを掴めない

一部の参加者の間で議論が活発になっているときは、その他の参加者にとって意見を言うタイミングが掴みづらいことがあります。

意見を引き出すためには、意識的に質問を投げかけることが大切です。たとえば、一通り議論をした後に「気になる点はないか?」「さらに問題となる部分はないか?」などといった質問をメンバーへ投げかけることは、内容の理解促進にもつながります。

参加者が平等に意見を述べるアイデアとして、「意見を紙に書く時間を設け、順番に発表していく」方法も検討しましょう。

【原因2】意見を言うのが不安

「自分の意見が否定されたり攻撃されたりするかもしれない」「的外れな意見を出してしまうかもしれない」といった不安から、意見を出せない人がいることも考えられます。

とくに、多数派の意見が存在する場合や、対立構造になってしまっているときは、新たな意見に対して排他的な雰囲気になりやすいため意見が出づらいものです。

メンバーや関係者からの意見を引き出すには、まずチームの心理的安全性(メンバー全員が臆することなく意見を言い合え、メンバーが互いに安心感を共有できている状態)を確保することが前提となります。

心理的安全性を確保するためには、メンバーの発言を批判せずに尊重することはもちろん、「メンバーの発言機会を均等にして、意見を伝える恐怖を払拭する」といった工夫も有効です。

【原因3】議論の内容を理解できていない

さまざまな意見が飛び交い、合意形成のための議論が活発化すると、展開についていけずに意見を出せない参加者が出る可能性があります。

話し合いの内容を参加者全員が理解できるように、必要であれば途中で議論を区切って、それまでの議論の内容を整理したり、合意形成の目的を再確認したりすることが重要です。

また、そもそも合意形成の目的や前提となる情報の共有が不十分であると、内容を理解しづらくなります。参加者が意見を出すためにも、判断に必要な知識や情報を持っていることが前提となるため、合意形成を始める前の事前の情報提供が大切です。

意見の食い違いがあった場合の対処法

対立
合意形成をおこなう際に意見の食い違いがあった場合、どのように対処したらいいのでしょうか?

相手の意見を否定せずに傾聴する

合意形成をおこなう段階では、他者への協調が非常に重要なポイントとなります。自身とは意見が食い違ってしまった際でも、まずは相手を尊重し、相手の話に耳を傾けることが大切です。

ここで有効となるのが「傾聴」です。傾聴とは、相手に関心を持ち、共感しながら話を聞くコミュニケーション技術です。単に話を聞くだけではなく、言葉の背景にある考えや感情、状況までも受け容れながら、相手が伝えたいことを理解することを指します。

関係者間で意見が対立したときでも、お互いの話や意見を傾聴することで、双方の意見への理解促進につながります。

意見の一致点と相違点を把握する

意見が食い違った場合、会議や議論の中で双方から出た意見を比較して、一致している点と相違点について把握することで双方の考え方を整理でき、議論の目的や方向性をすり合わせられるでしょう。
意見が一致している点はそのままで、相違点については双方の意見をまとめて食い違いの原因を見つけることで、「その人の立場や背景など、なにが原因で対立しているのか」を考え、具体的な解決策の検討へとつなげられます。

双方が納得できる形で着地させる

双方の意見を聞いて理解し、お互いの考え方を整理することによって食い違いの原因を見つけ、その原因について話し合うことで双方が納得のいく着地点を探し出せたら、目的に向かって協力して取り組むように促しましょう。

納得のいく着地点を探す際には、全員からの反対意見がない状態にまで意見を落とし込むことを目指しましょう。そのためにも、目的を再共有する、関係者全員から意見を出し切ってもらうために質問を投げかけるといった方法をとり、議論の着地点を探していくといいでしょう。

合意形成を円滑にする「ファシリテーション」とは

公正

ファシリテーション(facilitation)とは、組織の活動において円滑な進行がおこなえるように支援する手法です。このファシリテーションを担う人を「ファシリテーター」と呼びます。

教育や地域活動、ワークショップなど、さまざまな場面で活用されるファシリテーションですが、本記事では、会議やディスカッションなど「議論の場」におけるファシリテーションに焦点を当てて解説します。

ファシリテーションでは、「傾聴」「介入」「質問」のスキルを使いながら、参加者の心理的安全性を確保し、参加者全員が建設的に意見を出し合い、議論できるようにします。

先にも述べた「意見が出ない原因とその対処法」の対処法をおこなうシーンでも、ファシリテーターがいることで対処法を実践しやすく、議論の進行と調整を分担でき、よりスムーズな合意形成が期待できます。

具体的には、以下のような対応を通じて、納得度の高い合意形成へとつなげていきます。

  • ・意見を引き出すためには、意識的に質問を投げかける
  • ・議論が脱線したときは一度中断して軌道修正をしたり、内容を整理したりする
  • ・発言が特定の参加者に偏っている場合は他の参加者からも意見を求めたりする

合意形成のポイントをおさえ仕事を円滑に進めよう

会議やプロジェクトの進行など、さまざまなビジネスシーンにおいて合意形成が求められます。仕事の関係者やチームメンバー間で合意形成をおこなうことで、仕事の目的や方向性を共有し、相互理解を促進することで円滑な業務進行につながります。

また、意見の違いがあっても、納得のいく議論を通じてすり合わせをおこなうことで、お互いの理解が深まり、チームワークが強化されます。とくに、参加者全員が「本当に納得した状態」で合意することが重要です。

そのためには、意見が出やすい場づくりや、議論の進め方の工夫、参加者の理解度に応じた情報提供が欠かせません。議論のステップを柔軟に調整したり、心理的安全性を確保したりすることで、質の高い合意形成を実現しましょう。

著者プロフィールHR Trend Lab編集部
タレントマネジメントやエンゲージメントなどの最新トレンドから、組織や人事にまつわる基本知識までマイナビ独自の視点でお届けいたします。
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