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組織内の衝突・対立を成長に繋げる│コンフリクトマネジメントを解説

2021年09月15日更新

組織やチーム内のメンバー同士が、意見や考え方の違いにより対立・衝突することは、一見するとネガティブに捉えられるでしょう。しかし最近では、意見の対立や衝突を組織活性化に繋げる「コンフリクトマネジメント」と呼ばれる手法が注目を集めています。
本記事では、コンフリクトマネジメントの概要やメリット、成功させるポイントについてそれぞれ解説します。

目次 【表示】

コンフリクトマネジメントとは

コンフリクトマネジメント(conflict management)とは、組織内で意見の対立が起きた時、それらを組織の活性化や成長機会と捉え、積極的に問題解決を図ろうとする考え方、あるいはその取り組みのことをいいます。

「コンフリクト(conflict)」は、「衝突、葛藤、対立」を意味する言葉であり、お互いの考え方や主張が異なる場面で意見を譲らずに対立する状況で使われます。1対1の対立だけではなく、チームや組織同士が衝突して確執が生まれる状況もコンフリクトに含まれます。ビジネスシーンにおいて、コンフリクトが発生する状況としては、なにかを決定したり、新たな変化を迫られたりする場面が多く挙げられます。

たとえば、工場などでのものづくりにおいて「作業効率化のためにIT技術の導入を検討する」という場面で以下のような意見がメンバー内から出た場合に、スピードと品質のそれぞれにこだわるチームの間でコンフリクトが発生しうるでしょう。
・売上アップを目指すため、IT技術の導入で製作のスピードを上げたい(経営層)
・品質を保つため、人間が一つひとつ丁寧に作ることにこだわりたい(現場社員)

このような「意見の衝突、対立」はネガティブなイメージに捉えられがちですが、この対立を「組織内の問題解決のチャンス」と前向きに捉えることで組織の成長に繋げ、積極的に活用しようとする取り組みがコンフリクトマネジメントです。

なおコンフリクトマネジメントの定義は、その分野や背景によって複数存在しますが、本記事ではコンフリクトマネジメントを「組織経営の文脈」で捉え、解説します。

コンフリクトマネジメントを実践するメリット

コンフリクトマネジメントを実践することで、どんなメリットがあるのでしょうか?

相互理解が深まる

コンフリクトマネジメントの実践により、チーム内のメンバーや仕事の関係者同士における相互理解の促進に繋がります。

先述した「ものづくり」を例に出すと、「スピード」と「品質」のそれぞれにこだわりを持つメンバーがいる場合、コンフリクトマネジメントによってメンバー同士における、仕事に対する価値観の違いを知ることができます。

メンバーの価値観を知ることは、仕事を円滑に進めるための重要なポイントです。コンフリクトを通じて相手の考えや立場を把握し、お互いが納得できる範囲で物事を決定する方法を考えることで、相互理解へと繋がるでしょう。

新たなアイディアの創出に繋がる

コンフリクトの解決のために意見や考えの異なるメンバー同士で議論を重ねることは、それらの意見を集約する過程で新たなアイディアの創出に繋がる可能性があります。

たとえば、先述した「ものづくり」の例であれば「品質とスピードを両立できるアイディア」など、既存の意見や考えからより良いアイディアが生まれ、企業の成長へと繋がるかもしれません。

また、コンフリクトの原因となっている問題や課題について多角的な視点から意見を出し合うことで、たとえば「従業員の安全を第一に確保することで、作業の安定性が高まり、結果的にものづくりの品質とスピードの双方を向上させる」といった、物事の本質的な課題の解決へと導くことができる可能性もあります。

組織活性化に繋がる

コンフリクトの解決を目指すことは、メンバー同士の相互理解を促したり、新たなアイディアが生まれたりと、組織経営やチーム作りに良い影響を与えます。具体的には、メンバー同士のコミュニケーションの促進、組織内外での協力関係の構築などといった組織活性化に効果が期待できます。

コンフリクトが発生する3つの原因

コンフリクトが発生する原因には、どのようなものがあるのでしょうか?

条件の対立

企業や組織、チームの内部では、それぞれの立場や役割の違いによって意見の対立が発生することが多々あります。「営業部門と技術部門」「営業部門と品質保持部門」「上司と部下の関係」など、それぞれの役割や立場が異なることで、目的や優先度が変わり、それらの条件の相違によってコンフリクトが発生します。

認知の対立

認知の対立とは、経営戦略やチームの方針に対する思考、現場で働くメンバー同士の仕事に対する価値観の違いなどが原因となるコンフリクトを指します。

たとえば、企業が全従業員へ同じ戦略、企業方針を示しても、データ優先で論理的に捉える人、顧客優先でホスピタリティを重視して捉える人、仕事の効率重視で捉える人など、同じ仕事であっても捉え方は人によってさまざまです。

また、営業部門において「数字目標の達成を目指す」という同じ目標を掲げても、「大きい取引先に対して集中して営業をおこなう方法」や、「幅広く中小規模の取引先へ営業をおこなう方法」など、どの方法を選択するかという認識は異なる場合があります。従業員それぞれの価値観や解釈の違いから、メンバー同士でコンフリクトが生じます。

感情の対立

感情の対立は、条件や認知の対立が継続するなかで発生することが多いですが、条件や認知の対立とは異なり「メンバーそれぞれの気持ち」が原因となるため、解決が難しいとされています。立場や利害、考え方の違いが原因で発生したコンフリクトが解決されずに長期化することで、「あの人は嫌い」「一緒に仕事をしたくない」といった感情的な衝突に発展する恐れがあります。

感情的な対立によるコンフリクトの場合、解決が難しくなるため、条件や認知による対立の段階でコンフリクトマネジメントをおこない、早い段階での解決を目指すことが大切です。

コンフリクトに対する5つの反応

コンフリクトが発生した際、対立関係にある人たちがとる反応は5つに分類されます。

強制(競争)

強制(競争)は、相手の意見を聞き入れず、一方的に自身の意見や主張を押しつける反応です。自身の意見を無理やり通したとしても、対立関係における勝敗がついてしまい、相手から反感を買う可能性が高いです。そのため、コンフリクトマネジメントとはかけ離れた状態といえるでしょう。

服従(受容)

服従(受容)は、相手の考えや意見をすべて受け入れる反応です。強制とは裏表の関係にあり、対立しているどちらかが強制による解決を図れば、もう一方は服従することになります。
もし、強制と服従によってコンフリクトを解決した場合、表面的には対立が解消したように見えますが、実際には服従側が強制側に対して強い反発を抱くことが多くあります。それらは感情の対立に発展しやすいため、強制と服従によるコンフリクトの解決は避けることが望ましいでしょう。

妥協

妥協とは、双方がそれなりに納得できる解決策を見つけた状態のことをいいます。妥協での解決を図ること自体は難しいものではありません。しかし、妥協によって出された解決案は双方の理想とする結果ではないために、どちらにもメリットのない状態に陥る可能性もあり、コンフリクトマネジメントとしては不向きな解決策といえます。

回避

回避は、相手との直接的な衝突や対立を避ける反応です。回避を選択することで一時的に衝突や対立が消えるため、一見すると問題が解決したような状態になるでしょう。
しかし、それは問題解決を先延ばしにしている状況であり、時間が経つと再び対立が生じる可能性があります。回避は、コンフリクトの本質的な問題解決に至らないため、コンフリクトマネジメントとしては活用しがたい反応です。

協調

協調とは、自分以外の他者の意見や考えを否定せずに尊重し、お互いにとってメリットのある解決を目指す反応です。協調は、コンフリクトマネジメントにおけるもっとも望ましい反応であり、双方の意見を出しながらも問題の本質的な解決に繋げられます。

コンフリクトマネジメントを成功させるポイント

コンフリクトマネジメントを成功させるには、同じ仕事、業務に携わる関係者がコンフリクトの発生を前向きに捉え、「乗り越えることで組織が強化される」という意識を持つことが大切です。

中には、自分が関係する組織内でのコンフリクトの発生をよく思わないメンバーもいます。しかし各々が、コンフリクトの発生について理解を深め、それを活用しようと考えることで自然と本質的な問題解決への議論、取り組みなどに繋がり、組織活性化の効果が期待できるでしょう。

以下では、コンフリクトマネジメントを成功させるポイントを紹介します。

相手の意見を否定しない

コンフリクトマネジメントを成功させるには、自分以外の他者を否定しない姿勢である「協調」の反応がもっとも重要といえます。コンフリクトマネジメントを実践するには、まずは相手の意見を尊重し、相手の話に耳を傾け、理解しようとする姿勢が必要です。

問題の本質的な部分に焦点を当てる

コンフリクトは、条件・認知・感情それぞれの対立によって起こります。コンフリクトが発生した際には、意見の正しさを決めるのではなく、その原因を探し、問題や物事の本質的な部分に焦点を当てて話し合うことが解決に必要です。

チームが目指すべき方向性や具体的なアクションを決めるためにも、対立関係にある双方の共通目標を明確にし、目標達成に向けて取り組んでいくことが大切です。

Win-Winな解決を目指す

コンフリクトマネジメントでは、対立に勝敗をつける必要はありません。双方にとってメリットのあるWin-Winの解決策を導くことが目的です。

どちらかが妥協したり、正論で相手を論破したりするなど、一方の利益がもう一方の損失になるようなゼロサムの状況は避けましょう。双方が意見を出し切ったうえで納得のいく解決策を考えることが、双方にとってWin-Winの状態をつくることに繋がります。

まとめ

コンフリクトマネジメントを成功させるためには、コンフリクトの原因や、コンフリクトが発生した際のメンバーの反応について理解し、双方の意見を尊重しながらも、お互いがWin-Winの状態になれる解決策を見つけることが大切です。

コンフリクトマネジメントは、メンバー同士の相互理解や新たなアイディアの創出に繋がることからも、組織活性化へ向けた取り組みとして有効活用しましょう。

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