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コーチングとティーチングはなにが違う? 人材育成における使い分けを解説

2022年07月21日更新

人材育成にはさまざまな方法がありますが、育成対象により育成の方針や具体的な育成方法は異なります。たとえば、実務に慣れていない新入社員や、チームの主力として活躍している中堅社員など、社員の成熟度や状況に合わせて育成をおこなうことが重要であり、そのために有効な方法の一例としてコーチングとティーチングがあります。

しかし、両者にはどのような違いがあり、どのような社員にどちらの人材育成方法がマッチするのかわからないという方も多いことでしょう。そこで今回は、社員の成熟度や状況に応じてコーチングとティーチングをどのように使い分ければよいのか詳しく解説します。

目次 【表示】

コーチングとティーチングの違い

そもそも、コーチングとティーチングとはなにを指すのか、それぞれの言葉の定義について解説します。

コーチングとは

コーチングとは、トレーナー(上司・先輩社員)からトレーニー(新入社員・後輩社員)に対し、目標達成のために、解決しなければならない問題や課題について問いかけながら対話することで、トレーニーのなかにある答えや意見、考えを引き出す人材育成方法です。

対話を繰り返すことによって、1人で考えてもたどり着けない考えや答えが見つかる場合もあります。答えや意見はあくまでもトレーニー自身が見つけることを前提としているため、トレーナーが正解を教えたり、アドバイスしたりといったことは多くありません。

コーチングは、主に目標やゴールの設定、課題の解決方法を見極める際などに効果的な方法といえます。たとえば、将来どうなりたいのか、興味のあることや理想の働き方などをトレーニーから引き出し、それを実現するためにはなにが必要なのか、求められるプロセスを導き出すときなどに役立ちます。トレーニー自身の問題を解決する能力を伸ばすためにも、コーチングは効果的な人材育成方法といえます。

ティーチングとは

ティーチングとは、トレーナーがトレーニーに対して学校の授業のように知識やスキルを教える人材育成方法です。専門的な知識やスキル、仕事内容などは、1人の力だけでは習得することが難しい場合も多いため、トレーナーからトレーニーに対して正解を教えるティーチングが効率的な手法といえます。

ティーチングで重要なのは、トレーニーの知識量や成熟度に合わせて教え方を工夫することです。たとえば、専門的な業務の経験がないトレーニーに対しては、基礎的なスキルや知識なども含めて一から業務を教える必要がありますが、実務経験のあるトレーニーは、基礎的なスキルや知識は身についているため、自社の仕事上のルールや業務フローなどを中心に説明するとよいでしょう。

状況に合わせた人材育成をおこなうSL理論

人材育成においては、トレーニーの成熟度や状況に合わせてコーチングとティーチングを使い分ける方法があります。

コーチングとティーチングを使い分ける際に参考になるのが、SL理論とよばれる考え方です。SL理論とは、1977年にポール・ハーシーとケネス・ブランチャードが提唱した、リーダーシップおよび人材育成に関する理論です。SL理論では「部下の成熟度によって、上司に求められるリーダーシップのスタイルや指導方針は変化する」という前提にもとづいており、具体的には以下の4つのスタイルを定義しています。

S1 指示型

指示型とは、部下への指示や命令、監督といった「指示的行動」が多く、質問や助言、称賛などの「援助的行動」が少ないスタイルです。

業務の進め方や手順を事細かに指示することが特徴で、新入社員など成熟度が低い社員を育成するために有効なスタイルといえるでしょう。

S2 説得型

説得型とは、指示的行動と援助的行動のバランスが同等のスタイルです。

細かな命令や指示を出すという意味では指示型に近いのですが、指示の根拠や理由を述べながら部下の納得を得ていく点が説得型の特徴です。説得型は業務経験を積んだ若手社員に対するスタイルとして適しています。

S3 参加型

参加型とは、援助的行動が多い一方で指示的行動が少ないスタイルです。

業務に関する細かな指示は控え、部下からの意見や案を尊重し意思決定の参考にするのが参加型の特徴です。参加型は、実務の現場で中核として活躍している中堅社員に対するスタイルとして適しています。

S4 委任型

委任型とは、援助的行動と指示的行動がともに少ないスタイルです。

課題や目標のみを共有し、仕事の進め方を部下に一任するのが委任型の特徴といえます。委任型は十分な経験を積み重ねてきたベテラン社員に対して適したスタイルといえるでしょう。

このように、成熟度が低い部下には指示型の人材育成方法が適しており、その後成熟度に応じて説得型、参加型、委任型へと移行していくのがSL理論です。

SL理論を取り入れたコーチングとティーチングの併用

SL理論を参考にしながらコーチングとティーチングを併用することで、効果的な人材育成につながります。ここで押さえておきたいのが、コーチングは援助的行動にあたり、ティーチングは指示的行動にあたることです。社員の成熟度や状況と照らし合わせたとき、コーチングとティーチングをどのように使い分けるとよいのでしょうか。

新入社員はティーチング中心

新入社員に対しては、ティーチングによって上司が仕事の進め方を具体的に指示する人材育成方法が効果的です。

また新入社員以外にも、未経験での中途採用者や新たな部署に配属されたばかりの社員など、実務経験のない社員に対しても状況に応じてティーチング中心の人材育成をおこなうことが適しています。

若手社員はティーチングとコーチングを併用

業務を遂行するにあたってのスキルや能力はまだ低いものの、部下が自発的に仕事に取り組むようになってきたら、ティーチングとコーチングを併用してみましょう。

仕事の割り振りや計画などは上司が行い、部下に説明します(ティーチング)。一方で、イレギュラーな対応など、これまで上司に指示を仰いで判断していたことは、コーチングによって若手社員自身が答えや意見を出すことに徐々に慣れさせていきます。

この段階の社員に対してティーチングで細かい指示を出しすぎると、部下は指示を待ち、自発的に動かなくなる可能性もあります。部下の成熟度や状況に合わせて、意識的にコーチングを取り入れるようにしましょう。

中堅社員にはコーチング中心

部下が業務全般に慣れてきたら、クレーム対応や取引先との交渉など、これまで上司が担ってきた一部の業務を経験させます。

ただし誤った判断をしないよう、適切なタイミングでサポートするためにも、上司は部下の動向に気を配り、コミュニケーションを取ることを心がけましょう。また、部下が誤った判断をしそうになった場合、上司は部下をコーチングによって解決に導くことも重要です。

ベテラン社員には必要に応じてコーチング

部下の成熟度が十分高まったら、上司の権限を部下に委譲し業務を遂行してもらいます。この段階では完全にコーチングへ移行することになりますが、権限を委譲している以上、部下から上司に対して質問や相談を受けたときのみコーチングをおこなうことが前提といえます。

ただし、判断に迷ったときには必ず相談することを部下に伝えておきましょう。部下から求められていないにもかかわらずコーチングをしてしまうと、部下は上司から信頼されていないと感じてしまうこともあるため注意が必要です。

コーチングとティーチングを使い分け、従業員の成長につなげよう

人材育成においては、知識やスキルを一方的に教えるティーチングを多用しがちです。新入社員に対してはティーチングが効果的ですが、それ以外の若手社員や中堅社員、ベテラン社員に対してもティーチングが中心になってしまうと、部下の成長が促進されず組織自体の人材育成も滞ってしまう可能性があります。

そのため今回紹介したように、部下の成熟度に合わせてティーチングとコーチングを併用したり、移行したりしながら、両者をうまく組み合わせて人材育成をおこなっていきましょう。

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