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越境学習とは? 求められる背景や企業のメリット、注意点も解説

2022年11月02日更新

企業をとりまくビジネス環境は時代とともに変化しており、ビジネスモデルの変革や新たな事業の創出などが求められています。しかし、自社がもっている知見や経験だけでは対応しきれないケースも多く、多様なスキル・経験を有した人材の育成は企業にとって大きな課題の1つです。

そこで注目されている人材育成手法の1つに「越境学習」があります。本記事では、越境学習とは何か、企業が取り入れるメリットや注意点もあわせて詳しく解説します。

目次 【表示】

越境学習とは

越境学習とは、ビジネスパーソンが現在の職場とは離れた環境のなかで業務を体験し、新たな知見やノウハウを学ぶことを指します。越境学習の具体的な例としては以下のようなものが挙げられます。

・他社への出向、移籍、交換留学
・プロボノ(専門知識を活かして行う、社会貢献を目的としたボランティア活動)
・副業、兼業
・社会人大学院、ビジネススクール
・異業種交流会

なお、法政大学大学院の石山恒貴教授は、越境学習のことを「自分にとってのホームとアウェイを行き来することによる学び」とも定義しています。

また、経済産業省では、不確実で変化の激しいVUCA時代を切り拓くリーダーを育成するために、さまざまな社会課題の解決に向けて、NPO法人への派遣や地方の企業や団体での越境学習を実証事業としておこなった実績もあります。

越境学習が求められる背景

経済産業省での取り組みだけでなく、各企業においても人材育成の一環として越境学習は注目されていますが、それはなぜなのでしょうか。

1つ目は、VUCA時代において社員自身のキャリア自律が求められていることが挙げられます。不確実で変化の激しい時代においては、多様な環境で、さまざまな経験を積み、新たな学習機会を得ていくことが重要となるためです。これによって自分自身の軸を再発見し、VUCA時代を切り拓いていくリーダーシップを養成できます。

2つ目は、企業がイノベーション人材を育成し自社の成長を促す必要があるためです。これまでにない革新的なビジネスモデルや新たな事業を創造するためには、多様な経験・スキルをもった人材が不可欠であり、自社では学ぶことのできない経験やスキルを身につけるためにも越境学習は有効な手段です。

人材育成のために企業が越境学習を取り入れるメリット

越境学習は社員のキャリアの幅を広げると同時に、社員の育成を目的として企業単位で取り入れるケースが多く見られます。

社員は普段と離れた場所で業務を行うことで、自分自身の価値観やスキルを客観的に見つめる機会が得られやすくなりますが、人材育成という観点において、企業が越境学習を取り入れるメリットは何があるのでしょうか。企業に期待される効果や手法の一例もあわせて紹介します。

新たな事業創出に向けた知見やノウハウを習得できる

社員が毎日同じ業務を行っていると、目の前の業務に集中するあまり、自分自身のスキルアップを考えたり、業務効率化を図ったりするという視点が欠けてくることもあります。

越境学習によって普段とは異なる体験をすることで、イノベーションに不可欠な新たな知見やノウハウを身につけられ、自社のビジネスモデルそのものを見直すヒントを得られる可能性があります。

たとえば、ゼロから新たな事業やプロダクトの開発を体験できる企業や団体への出向や移籍などは、一人ひとりに与えられる裁量や権限が大きい傾向にあることから、事業全体を俯瞰する広い視野が身につけられるでしょう。

また、副業や兼業なども専門的な知見やノウハウを身につけるうえでは有効な手法の1つといえます。

次世代のリーダー育成につながる

管理職としての経験がない20代、30代の若手人材のなかには、普段の業務を通してリーダーシップを身につけられる場面が少ない社員もいるでしょう。

越境学習であるプロボノ、他社への出向や移籍、交換留学は、多種多様な業界で働く人とともに共通の目的に向かって仕事を進めます。そのため、誰にでも理解できるように自分の考えや意見を分かりやすく伝えることや、さまざまな意見を聞いたり、チームをまとめたりすることが求められます。

これは経営層や管理職層といったリーダーにも求められるスキルであることから、次世代のリーダーを育成するためにも有効な手段の1つと考えられるでしょう。

企業が越境学習を取り入れる際の注意点

人材育成の手段として企業が越境学習を取り入れる場合には、自社における人材育成の視点だけではなく、受け入れ先にとっても新たな知見が得られるなど、双方にとって有益となるようシナジー効果を生むことが理想的です。

そこで、越境学習を取り入れる企業が注意しておかなければならないポイントを解説しましょう。

越境学習の目的を明確化する

なぜ越境学習を実施するのか、企業として目的を明確化し、社員に理解してもらうことが重要です。

しかし、今の仕事やポジションを望んでおり、越境学習から自社に戻ったあとに同じ場所で再び活躍できるのか不安を抱く社員が出てくることもあります。

そこで、あくまでも社員の成長を促すことが目的であることを伝え、越境学習が終わったあとの仕事やポジションについても説明しておきます。また、社員が目的を達成できたかどうかを確認するためにも、越境学習で学んだ内容を報告してもらいましょう。また、目的を達成することで、自社のイノベーションやビジネスモデルの変革にも貢献できることを伝えるとよいでしょう。

目的を正しく理解してもらうことで、社員は安心して越境学習に取り組むことができます。

主体的に取り組める人材を選定する

越境学習では自社と受け入れ先の双方に新たな知見が生まれるなど、有益な効果を生むことが理想的であり、そのためには越境学習に参加する社員が高いモチベーションを維持しながら主体的に取り組むことが重要です。

社員が受け入れ先での越境学習に興味を抱いているか、主体的に取り組める人材かどうかを見極めたうえで選定しましょう。

社員の志望理由を確認する

社員が習得したいと考えている知見と、企業が求めている知見、越境学習で得られる知見の3つがかけ離れていると越境学習の目的が果たせなくなることも考えられます。

そのため、越境学習への参加を希望する社員にはさまざまな志望理由がありますが、社員自身の成長のために、新たな知見やノウハウを得るという目的を正しく理解していることが前提となります。

そこで、企業は社員一人ひとりの志望理由を理解し、それに応じたプログラムを提供、またはプログラムそのものを最適化できるかを検討しましょう。また、社員が越境学習で学びたいことや学んだあとのビジョンを事前に確認しておくことも、重要なポイントの1つです。

さらに、志望理由を理解するだけでなく、受け入れ側の求めている要件とすり合わせをしておくことで、自社・受け入れ先双方のシナジー効果を生み出しやすくなるでしょう。

越境学習の目的を明確化し、成果を最大化させよう

普段とは異なる環境に身を置き、さまざまな体験を通してスキルや知見を習得できる越境学習は、人材育成に有効な方法の1つといえます。

越境学習には他社への出向や移籍、プロボノ、副業・兼業など、さまざまな方法があります。また、受け入れ先は民間企業だけでなくNPO団体なども含まれることから、ビジネスモデルの変革や新規事業の創出に加え、社会課題を解決する事業アイデアの創出にも役立つでしょう。

越境学習の成果を高めるためには、企業と社員が目的をすりあわせたうえで、高いモチベーションを維持しながら取り組むことが重要となります。自社はもちろんのこと、受け入れ先にとっても有益なシナジー効果を生み出すためにも、今回紹介した注意点を念頭に越境学習を取り入れてみましょう。

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