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キャリア自律を企業が支援する必要性・メリットは何か? 支援のポイントも解説

2022年10月12日更新

企業の成長を支えるためには、原動力となる社員の育成は欠かせない取り組みです。これまでの日本では、終身雇用制度が浸透しており、社員のキャリア形成は企業が主導となって長期的に行うケースが一般的でした。

しかし、現在では社員自らキャリアを考えるキャリア自律が注目されており、企業にはそれを支援することが求められています。

本記事では、キャリア自律を企業が支援するのはなぜか、必要性やメリット、支援する際のポイントも含めて解説します。

目次 【表示】

キャリア自律とは

キャリア自律とは、社員が自身のキャリアを主体的に考えながら、自律的にキャリア形成に向けて取り組むことを指します。なお、「自律」とは自分自身をコントロールするという意味を表し、他からの影響や従属から離れ独立することを意味する「自立」とは異なります。

キャリア自律は1990年代後半に米国で提唱された概念であり、米国のCareer Action Center(CAC)では、キャリア自律のことを以下のように定義しています。

「めまぐるしく変化する環境の中で、自らのキャリア構築と継続的学習に積極的に取り組む、 生涯にわたるコミットメント」
(「キャリア自律を考える:日本におけるキャリア自律の展開」 花田 光世ら より引用 )

キャリア自律が提唱された当時の米国では、雇用の流動化が進み、多くの非正規労働者が存在していました。このような不安定ななかで生き残っていくために、労働者は組織に依存することなく自らのキャリアを考えることが求められたため、キャリア自律という概念が生まれました。

キャリア自律が求められる背景

厚生労働省が2021年に実施した「令和3年度能力開発基本調査」によると、2019年には39.4%、2020年は37.8%、そして2021年には41.8%の企業が正社員に対するキャリアコンサルティング(労働者からの職業選択・生活設計や能力開発向上に関する相談に応じ、助言や指導を行うこと)を実施していることがわかりました。

このことからも、企業において社員にキャリア自律を促す傾向は高まりつつあるといえますが、それはなぜなのでしょうか。

職業能力開発促進法の改正

2016年に施行された、改正職業能力開発推進法では、「労働者は、職業生活設計を行い、その職業生活設計に即して自発的な職業能力の開発及び向上に努めるものとする。」ことを基本理念に掲げ、キャリア自律を促しています。

企業側の責任としても、キャリアコンサルティングの機会確保や援助を行うことが定められており、具体的な施策の1つに「セルフ・キャリアドック」があります。

この制度は、キャリアコンサルティング面談やキャリア研修などを通して、社員の主体的なキャリア形成を支援する企業の取り組みや仕組みのことです。

ビジネス環境の変化

従来の日本では終身雇用制度が一般的であったため、企業が主導して自社内で社員の長期的なキャリア形成を行ってきました。しかし、現在はビジネス環境が大きく変化し、将来の予測が困難なVUCA時代に突入しています。

その結果、終身雇用制度は一般的なものではなくなり、転職者も増加傾向が見られます。企業へ就職すれば年功序列で給与がアップしていく時代は終わりつつあり、成果主義を採用する企業が増加しました。

かつてのように、企業が主導する画一的で長期的なキャリア形成では、短期間に起こる変化や予測が困難な変化に対応することが難しい実情があることから、キャリア自律が求められています。

加えて、2021年に施行された改正高年齢者雇用安定法によって、企業は65歳までの従業員に対して雇用義務が課され、70歳までの雇用機会確保の努力義務も課されるようになりました。

労働者にとっては、嘱託として再雇用された際に給与が下がる場合もあり、定年後も安定した収入を得るためにも自律的にキャリアを考える必要が出てきたのです。

個人の働き方に対する価値観の変化

正社員やパート、アルバイトといったような働き方に加えて、現在は業務委託や副業などさまざまな働き方が選択できるようになり、働き方の自由度は高まったといえます。

それにともない、働き方に対する個人の価値観も多様化しています。自分自身のライフスタイルや将来のビジョンに応じて、さまざまな選択肢のなかからキャリアを選べるようになったことも、キャリア自律が求められる背景の1つといえるでしょう。

企業が社員のキャリア自律を支援するメリット

企業が社員のキャリア自律を支援することで、転職などの人材流出につながるのではないかといった不安を抱いてしまうかもしれません。

しかし、必ずしもそうとは限らず、キャリア自律の支援によって企業が得られるメリットが多いことも事実です。具体的にどのようなメリットが得られるのか解説しましょう。

優秀な人材の発掘や育成

キャリア自律を支援することで、社員のスキルアップが期待できるケースがあります。その結果、これまで自社になかった専門的な知見を獲得できる可能性もあるでしょう。

たとえば、キャリア自律支援の一環として越境学習を推進することにより、自分自身の軸を再発見でき、別のポジションで能力を発揮する社員を発掘できることも期待できます。

人材の定着と採用力強化

キャリア自律の支援では、社員本人と上司、または社員本人と人事部との間でキャリアについて話し合う場を設けることもあります。社員が今後どのようなキャリアを目指しているのかを上司や人事部の担当者と共有することで、企業として社員をさまざまな面からサポートできるでしょう。

人材の流出を避けながら社員のキャリア自律を促すためには、キャリア自律に向けて企業がサポートすることが重要です。

適切なサポートをすることで、社員の企業への信頼が高まり、エンゲージメントの向上が期待できます。企業や組織への愛着をもつ社員が増えれば、人材の定着も期待できるでしょう。

また、キャリア自律の支援に積極的な企業は、就活生にとって持続的な成長が期待できると認識されやすく、採用力の強化にもつながります。

組織全体の活性化

キャリア自律に取り組む社員が多い組織は、キャリアの実現のために社員一人ひとりが目標を明確化しており、仕事に対してポジティブな気持ちで取り組むことができます。

ポジティブな社員が多い職場は組織全体が活性化しやすく、困難な課題や問題にぶつかったとしても解決に向けて前向きに取り組めるようになります。

キャリア自律支援のポイント

企業が社員のキャリア自律を支援する場合、どのようなポイントに注意すべきなのでしょうか。押さえておくべき3つのポイントを紹介します。

キャリア自律支援の方針を明確化する

企業がキャリア自律支援を行う場合、ただ支援するのではなく、自社の経営方針に沿っているかが重要です。

自社が理想とする人材にはどのような特性が求められるのかを整理し、有効な支援の方法を検討したうえで、社員に対して方針を正しく伝える必要があります。

ビジネス環境や事業内容の変化によっては、理想とする人材の特性が変わることもあるため、キャリア自律支援の内容がマッチしているかを定期的に見直すことも重要なポイントです。

研修の実施や相談の場の設定

上司や人事部との面談の機会を設けたとしても、社員が自身のキャリアをどのように考えればよいのかわからず、具体的な方向性が定まらないこともあるでしょう。

キャリア自律を促すためには、社員に気づきを与え、これまでの経験や強みを活かせるヒントを提供することが重要です。そのために、キャリア自律を支援するための研修を実施したり、社員が気軽に相談できる場を設定したりすることも有効です。

社内制度の導入

キャリア自律を促すためには、社員に多様な仕事を経験してもらったり、新たな能力開発を行って刺激を与えたりすることも有効です。

そのための具体策として、社内を対象に部署ごとに人材を募集する社内公募制度や、社員自ら配属を希望する部署に売り込む社内FA制度、さまざまな業務を通して能力開発を行うジョブローテーションの実施などが挙げられます。

さらに、社外での業務を通してキャリアの幅を広げるために、副業の解禁なども有効です。

社員のキャリア自律を支援し、自社の持続的な成長を実現しよう

キャリア自律は社員が主体となって自分自身のキャリアを考え、キャリア形成に向けて取り組むことという前提があります。

しかし、企業がキャリア自律を支援することで、人材の定着や組織の活性化が図れ、持続的な成長を実現できる可能性があることも事実です。

キャリア研修や相談の場の設定、人事制度の活用など、自社でできるキャリア自律の具体的な支援内容を検討してみましょう。

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