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ピグマリオン効果はビジネスでどう役立てられる?ゴーレム効果やハロー効果との違いも解説

2022年06月15日更新

人材育成にあたっては、上司と部下のコミュニケーションが欠かせません。指導において、上司から期待されていることを部下が自覚すると、部下のモチベーションは向上し、さらに高い成果に結びつくこともあります。

このような心理を応用した理論のひとつに「ピグマリオン効果」があります。今回は、ピグマリオン効果の概要や、類似した理論との違いを紹介するとともに、ビジネスで役立てられる方法もあわせて解説します。

目次 【表示】

ピグマリオン効果とは

ピグマリオン効果とは、他者に期待されることによって成果があがる現象のことを指します。
米国の教育心理学者であるロバート・ローゼンタールによって提唱された教育心理学の用語で、別名「教師期待効果」や「ローゼンタール効果」ともよばれます。

「ピグマリオン」の言葉の由来

ピグマリオン効果は、ギリシャ神話に登場するピグマリオン王に由来して名付けられました。
ピグマリオン王は理想の女性として自ら彫った、ガラテアという名の彫刻像に恋をし、ガラテアが人間になることを願い続けました。その結果、アプロディテという神の力によってガラテアは人間となり、ピグマリオン王と結ばれることになります。

ピグマリオン効果は、このピグマリオン王の伝説の「相手(彫刻)に対して期待をかけた結果、良い結果につながった」という物語が由来となっています。

ローゼンタールがおこなった実験

相手に対して期待をかけることは、本人にとっての内面的なものに過ぎません。そこで、ローゼンタールは1964年、ピグマリオン効果を証明するために実際の教育現場で以下のような実験をおこないました。

1. 「今後成績が伸びる児童を割り出すため」という名目で知能テストを実施
2. 検査結果とは関係なく無作為に抽出した児童の名簿を、担任に対して今後成績の向上が期待される児童であると伝えた
3. 担任は期待をもって指導した結果、対象の児童もその期待に応え成績が向上した

実験の手法や結果に対しては、教育現場を利用したことや、生徒が自ら学ぶという視点が不足しているという批判が挙げられることもあります。

また、ローゼンタール自身も「生徒とのつきあいが2週間以内の教師の場合には、91%の研究でピグマリオン効果が見られたが、2週間以上のつきあいがある教師では12%の研究でしか効果が見られなかった」とも報告しています。

このように、さまざまな批判はあるものの、他者からの期待に応えようとする心理は存在し、同様の結果に結びつく可能性は十分あることも事実です。

ピグマリオン効果と比較されやすい理論との違い

ピグマリオン効果以外にも類似の理論は存在します。では、それぞれの理論とピグマリオン効果はどのような違いがあるのでしょうか。
今回は、ピグマリオン効果と比較されやすい3つの理論との違いを紹介しましょう。

ゴーレム効果との違い

ピグマリオン効果との対比で用いられることが多いのが「ゴーレム効果」です。ピグマリオン効果と同様、ローゼンタールによって提唱されました。

ゴーレム効果とは他者から期待されていないと感じることで、それ以上の成果があがらないばかりか、逆に低下してしまう現象のことを指します。
ゴーレム効果を証明するために、ローゼンタールは以下のような実験をおこないました。

1. 成績の良い生徒を集めたクラスと、成績の悪い生徒を集めたクラスをつくる
2. 成績の良いクラスを担当する教師には「このクラスは成績が悪い」と伝える
3. 成績の悪いクラスを担当する教師には「このクラスは成績が良い」と伝える

上記の実験の結果、もともと成績の良かったクラスの成績は低下し、反対に成績の悪かったクラスは成績が上昇したという結果が得られました。

ハロー効果との違い

ハロー効果とは、その人のもつ一部の特性によって全体を評価(判断)してしまうことを指します。ハロー効果は、とくに人事評価の場面において起きやすいのが特徴です。

たとえば、「◯◯大学を卒業しているから営業の成績も優秀だろう」、「英語のスキルがあるから難易度の高い仕事もこなせるだろう」のように、1つ良い点があると他の因果関係がないところも、実際の能力とは無関係に良く見られてしまうことなどが挙げられます。

ピグマリオン効果は相手に対して期待が伝わることで成果に結びつくのに対し、ハロー効果は本人(評価者)の内側のみで完結してしまうという違いがあります。

ホーソン効果との違い

ホーソン効果とは、他者から注目されることによって成果を発揮しようとする心理的効果のことを指します。

たとえば、優秀な営業成績を収め表彰を受けた社員が、その後も継続的に高い成果を出し続けられるのもホーソン効果の代表的な例といえるでしょう。

ピグマリオン効果は他者から期待されることが要因となるのに対し、ホーソン効果は注目されることが要因となる点が大きな違いといえます。

企業が人材育成にピグマリオン効果を活かす方法

ピグマリオン効果は教育現場だけでなく、ビジネスの世界にも応用できます。上司が部下に期待を寄せる場合において、ピグマリオン効果を活かすにはどのような方法があるのでしょうか。

肯定的なコミュニケーション

部下に対して否定的な態度で接するのではなく、つねに肯定的なコミュニケーションを心がけることで、ピグマリオン効果を活かせる可能性があります。

たとえば、営業目標に対して未達で終わってしまった場合、厳しい言葉で責め立て否定的な態度をとってしまうと、部下は上司から見放されたと感じることもあるでしょう。その結果、ゴーレム効果によってますます成績が悪化することも考えられます。

上司は部下に対し、否定的な言葉を投げかけるのではなく、良い部分を褒めるなど肯定的なコミュニケーションを心がけましょう。
前向きな姿勢を示すことで、部下は自分自身が期待されていると感じ、それに応えようと行動を起こすようになります。

裁量を与える

部下に任せられる範囲で業務にある程度の裁量を与えることで、上司から部下に対して高い信頼や期待を寄せていることを示すことができます。

日々の業務のなかで、失敗を恐れるあまり部下に対して細かい指示を出してしまうことはないでしょうか。このような場合、部下は上司から信頼されていないと感じ、自信を失ってしまうこともあります。

部下に対し「期待している」と言葉で表すことも重要ですが、実際に裁量を与えるという行動で示すことでピグマリオン効果が発揮されやすくなります。

プロセスも評価する

部下に対して期待を寄せて業務の裁量を与えたものの、思うような成果に結びつかないこともあるでしょう。とくに、それまで上司がおこなってきた業務を部下に任せた直後のタイミングでは、業務そのものに慣れていないことも多いものです。

また、クリアすべき目標や課題のレベルが高く、期待していた成果が出ないことも考えられます。
このような場合、上司は結果が出なかったからといって部下を責めるのではなく、プロセスを評価し部下に対して期待を抱いていることを示す姿勢も重要です。プロセスを評価することで部下は「自分のやり方は正しい」、「自分は期待されている」と理解でき、自信を身につけられるでしょう。

ピグマリオン効果を人材育成に活かそう

ピグマリオン効果は教育心理学の分野で提唱された理論ですが、ビジネスの場面でも活かすことができます。

上司が部下に対する接し方を変えることで、部下に期待していることを伝えられ、部下はそれに応えようと努力することで成果に結びついていく可能性があります。
ピグマリオン効果について正しく理解し、人材育成に活かしていきましょう。

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