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キャリアアンカーとは?8つのタイプや企業での活用法をわかりやすく紹介

2025年09月24日更新

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キャリアアンカーは、働く一人ひとりが自身のキャリアを考えるうえでの指針となる重要な概念です。企業にとっては、従業員の特性を理解し、効果的な人材育成や組織開発をおこなうための考え方としても活用できます。

近年、従業員一人ひとりの価値観や働き方が多様化しており、企業が定めた画一的な人事施策では十分な効果を得ることが難しくなっています。「なぜあの社員はモチベーションが上がらないのか」「どうすれば適材適所の配置ができるのか」、そのような課題に直面している人事担当者や管理職の方も多いのではないでしょうか。

この記事では、キャリアアンカーの基本概念から実践的な活用方法まで、わかりやすく解説します。

目次 【表示】

キャリアアンカーとは

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キャリアアンカーとは、「キャリアを選択する際に、もっとも重要視していて譲ることのできない判断基準」を表す概念で、アメリカの組織心理学者エドガー・シャイン博士によって提唱されました。

「アンカー(Anchor)」は船の「錨(いかり)」を意味し、キャリア選択において船が錨を降ろすように、「こういう仕事がしたい」「このような環境で働きたい」などキャリアの意思決定における重要な指針のひとつとなります。

キャリアアンカーは、専門・職能別能力タイプや自律・独立タイプなど8つのタイプに分けられるのが特徴です。

なお、キャリアアンカーは実際の社会人経験を通して形成されていくため、新入社員や若手のうちはまだ明確に定まっていないケースは少なくありません。また、一度確立されると変化しにくいとされていますが、大きなライフイベントや環境の変化によって見直されたり、複数のアンカーの要素をあわせ持ったりすることもあります。

そのため、キャリアアンカーを絶対的で唯一の指針として捉えるのではなく、自己理解を深めたり、他者との相互理解を促進したりするためのコミュニケーションツールとして活用することが重要です。

キャリアアンカーを構成する3つの要素

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キャリアアンカーは、以下の3つの要素から構成されます。

●動機・欲求:
→個人の内面から湧き出る「~したい」という根源的な欲求です。動機に沿ったキャリア形成ができれば、仕事に対する満足度や達成感を得やすくなります。
●コンピタンス(能力・才能):
→成功体験などから「自分はこれが得意だ」と自己評価している能力や才能のことです。単なるスキルだけでなく、自分自身が認識している強みが該当します。
●価値観:
→仕事や人生において、なにに重きを置き、なにを優先するかという基準です。「社会に貢献すること」「家族と過ごす時間」「安定した生活」など、意思決定の際に譲れないと考える事柄がこれにあたります。

これら3つの要素が重なり合った部分が、その人固有のキャリアアンカーです。

表面的な能力や一時的な感情ではなく、これらの要素を総合的に理解することがキャリアアンカーを活用するうえで重要です。

キャリアアンカーを知るメリット

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キャリアアンカーを理解することは、個人と組織の両方にとって多くの価値をもたらします。ここでは、それぞれの立場から見たキャリアアンカー活用のメリットを確認していきましょう。

個人におけるキャリアアンカー理解のメリット

キャリアアンカーを理解することで、自分らしいキャリアを考える材料のひとつとして活用できます。

自分の本当の価値観や強みに合った選択を検討する際の参考となるため、仕事の満足度向上にも寄与するでしょう。

組織におけるキャリアアンカー活用のメリット

組織がキャリアアンカーを活用することで、人材の適材適所を実現しやすくなります。

従業員の強みや志向性に合った配置ができれば、ミスマッチによる離職が減ったり、人材の定着率向上につながったりします。

価値観に合った役割で働くことで、従業員のモチベーションと生産性が高まり、エンゲージメントの向上が期待できるでしょう。

キャリアアンカーの8つのタイプ

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キャリアアンカーは8つのタイプに分類されます。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

専門・職能別能力タイプ

専門・職能別能力タイプは、特定の業務領域における深い知識と高度なスキルを身につけることに最大の価値を見出します。

自分の専門性を活かしてエキスパートとして活躍することに強いやりがいを感じるため、管理職よりも現場での専門業務に従事することを望む傾向があります。

特徴:

  • ● 特定領域での専門知識とスキル向上への強い関心
  • ● エキスパートとしての評価と承認を重視
  • ● 技術的挑戦や専門性の深化を求める

管理能力タイプ

管理能力タイプの人は、組織の経営や運営に深い関心を持ち、経営者的な視点で物事を判断し行動することに価値を見出します。

責任あるポジションでリーダーシップを発揮し、組織全体の成功に貢献したいという強い願望があります。専門業務に特化するよりも、幅広い業務領域を統括し、組織の方向性を決定する管理職としてのキャリアを志向します。

    特徴:

  • ●組織全体を俯瞰した経営的思考
  • ●リーダーシップ発揮への強い意欲
  • ●責任ある意思決定への関心

自律・独立タイプ

自律・独立タイプの人は、自分のやり方やペースで仕事を進めることに価値を見出します。

組織のルールや他者からの干渉に縛られることに抵抗を感じる傾向があり、仕事の進め方やペース、時間配分などを自分でコントロールできる環境を強く求めます。独自のやり方で成果を出すことにやりがいを感じるのが特徴です。

    特徴:

  • ●自分のペースでの業務遂行を重視
  • ●組織の制約や規則への抵抗感
  • ●高い自由度と裁量権を求める

保障・安定タイプ

保障・安定タイプの人は、ひとつの組織で長期的かつ安定的に働くことに価値を見出します。終身雇用制度や充実した退職金制度、定年後の再雇用制度などが整った大企業や公的機関での勤務との相性が良いといえるでしょう。

大きな変化や不確実性を避け、予測可能な範囲内で安心して業務に取り組みたいという欲求を持つため、これまでとは異なる働き方を求められたり、業務内容が大きく変わったりするような異動は好まない傾向があります。

    特徴:

  • ●雇用の安定性と将来保障を最重視
  • ●予測可能で変化の少ない環境を好む
  • ●福利厚生制度を重視する

起業家的創造性タイプ

起業家的創造性タイプは、新しい製品やサービスの開発、新規事業の立ち上げなど、創造性を継続的に発揮できる業務に価値を見出します。

既存の枠組みにとらわれず、革新的なアイデアを形にして事業として成功させることに喜びを感じるのが特徴です。企業に所属しながらその創造性を発揮し、組織の成長エンジンとなる新規事業開発や既存事業の変革をもたらす役割で活躍する傾向が見られます。

    特徴:

  • ●新規事業創出への強い関心
  • ●革新的アイデアの事業化を重視
  • ●リスクを取って新しいことに挑戦する意欲

奉仕・社会貢献タイプ

奉仕・社会貢献タイプの人は、自分の仕事を通じて社会を良くしたい、人々の役に立ちたいという使命感にもとづいてキャリアを選択する傾向にあります。

社会的意義を感じられる業務に従事することに価値を見出し、金銭的な報酬よりも社会への貢献や周囲からの認知・支持を重視します。

    特徴:

  • ●社会貢献への強い使命感
  • ●他者や社会への奉仕を重視
  • ●金銭的報酬より意義を優先

純粋な挑戦タイプ

純粋な挑戦タイプは、困難な課題の解決や競争相手との勝負など、手強い問題に立ち向かい克服することに重きを置きます。

不可能と思われるような障害を乗り越えることを成功と捉え、日々のルーチンワークよりも困難な業務への挑戦や自己成長に力を注ぎます。高いプレッシャーや競争環境を好み、常に新しい挑戦を求め続ける傾向があります。

    特徴:

  • ●困難な課題解決への強い意欲
  • ●競争環境や高プレッシャーを好む
  • ●不可能を可能にすることへの挑戦

ライフスタイルタイプ

ライフスタイルタイプの人は、仕事への真剣な取り組みとプライベートの充実を両立させることに価値を置きます。

家族との時間や個人的な活動を大切にしながら、同時に職業生活も充実させたいと考えます。育児参加や確実な休暇取得など、柔軟な働き方を実現できる環境を強く求める傾向があるといえるでしょう。

    特徴:

  • ●ワークライフバランスの実現を最重視
  • ●家族や個人の時間を大切にする
  • ●柔軟で多様な働き方を求める

企業におけるキャリアアンカーの活用方法

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キャリアアンカーは、企業の人事施策はもちろん、現場の管理職による部下の育成や組織運営など、人材マネジメントのさまざまな場面で活用できます。

最後に、キャリアアンカーを効果的に活用する方法を見ていきましょう。

採用・配置での活用

採用面接においてキャリアアンカーを見極めることで、候補者と職務の適合性をより正確に評価できます。

「仕事においてもっとも重視することは何ですか」「どのような環境でもっとも能力を発揮できると思いますか」などの質問を通じて、候補者の根本的な価値観や志向性を把握します。

また、既存社員の配置においても、職務内容とキャリアアンカーの適合性を考慮することで、従業員の能力発揮とやりがいを実現できるでしょう。たとえば、専門性を重視する人材には技術的な挑戦を、管理能力を志向する人材にはリーダーシップを発揮できるポジションを提供するといった具合です。ミスマッチによる離職を防止し、組織全体のパフォーマンス向上につながります。

人材育成・キャリア開発での活用

管理職が部下のキャリアアンカーを深く理解することで、効果的な人材育成とキャリア開発を進められます。

たとえば、キャリア面談においてキャリアアンカーの観点を取り入れ、表面的な希望聴取にとどまらず、その人の本質的な価値観や動機を探りながら対話を深めます。

そうして把握したキャリアアンカーをもとに、挑戦タイプの部下には段階的に難易度を上げたプロジェクトを任せる、安定タイプの部下には継続性のある業務で着実にスキルを積み上げてもらうなど、一人ひとりに最適化された成長支援をおこないます。

同時に、部下自身にキャリアアンカーを理解させることも重要です。自分らしいキャリアを主体的に考える力が養われ、キャリア自律を促進できるでしょう。

チームビルディングでの活用

メンバー同士がお互いのキャリアアンカーを理解し合うことで、円滑なコミュニケーションや協力体制が生まれるでしょう。

たとえば、「専門性重視」のメンバーに技術的なアドバイスを求めたり、「挑戦志向」のメンバーを中心に困難なミッションに取り組んだりと、それぞれの強みを活かした自律的な役割分担が促進されるといった具合です。

また、チーム内でのキャリアアンカーに関するワークショップの実施も有効です。

キャリアアンカーを組織と個人の成長に活かす

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キャリアアンカーは、個人のキャリア選択における価値観や強みの核心部分を表す重要な概念です。8つのタイプそれぞれに固有の特徴があり、それを把握し活用することで個人と組織の両方にとって多くのメリットをもたらします。

ただし、キャリアアンカーは個人の考え方や欲求のすべてを把握できる万能薬ではありません。経験やライフステージによって変化する可能性もあるため、キャリアアンカーをあくまで一手段として捉えることが大切です。

管理職がその点をしっかりと理解することで、キャリアアンカーは部下の成長促進と組織力向上の要となりえます。キャリアアンカーを対話と相互理解を深めるためのツールとして捉え、人材育成や組織開発に積極的に活用していきましょう。

著者プロフィールHR Trend Lab編集部
タレントマネジメントやエンゲージメントなどの最新トレンドから、組織や人事にまつわる基本知識までマイナビ独自の視点でお届けいたします。
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