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目標設定はなぜ重要?目標設定の方法、役立つフレームワーク、注意点も解説

2025年08月08日更新


企業の成長や利益を高めるためには、組織全体が同じ方向に向かって仕事に取り組むことが欠かせません。その際に重要なのが「目標設定」です。適切に目標を設定することで、仕事の成果は高まります。また目標は従業員のモチベーションを引き出す原動力にもなるのです。

本記事では、目標設定とはなにか、目標設定が重要な理由、目標設定の方法、目標を立てるときや運用していくときに役立つフレームワーク、注意点を解説します。

目次 【表示】

目標設定とは


目標設定とは、達成すべき具体的な成果や状態を明確にして、それに向けた行動や方策を設定することです。

通常、企業や組織には目標があり、部署目標、個別目標と段階的に落とし込まれていきます。そのため従業員個人の目標は、組織目標を達成するために必要となる要素を逆算して設定することが一般的です。

目標と目的の違い

「目標」は「目的」と混同されやすいですが、両者は異なります。目的が「成し遂げたい内容」を指すのに対して、目標は「目的を達成するための具体的な指標」を指します。適切な目標設定なしに目的を達成することはできません

目標 目的
定義 目的を達成するための具体的な指標 成し遂げたい内容
抽象度 具体的な数値・期限がある 漠然としている
生産性向上のために「現在の工数を○%削減する」「専門性のある人材を○人採用する」など 生産性の向上

目標設定が重要な理由

なぜ多くの企業において目標を設定することは重要なのでしょうか。

目的を達成するためのステップが明確になる

的確な目標が定められていれば、やるべきことが明確になり、余計な時間やコスト、労力を削減しながら最短ルートで目的を達成できます。

また、具体的な目標を設定することによって、「目的を達成するためにどれだけの時間とコストが必要なのか」といった「求められるリソース」を適切に把握でき、人材管理にも役立ちます。

PDSサイクルを回すことで目的達成のスピードを上げる

PDSサイクルとは、「計画(Plan)を立て、実行(Do)した後、成果およびプロセスを検証(See)する」という一連のサイクルのことです。

目標設定によって必要な時間とコストが把握できると、進捗管理がしやすくなります。予定していた進捗に対して遅れている場合には、なにが原因なのかを考え、改善していくことができます。

従業員のモチベーションを高める

組織目標に照らして個人の目標設定をおこなうことで、従業員一人ひとりに対して求められるミッションが明確化されます。

目標設定をおこなわずに、漠然と仕事をし続けていると、成果や達成感を得られずモチベーションが低下する従業員も出てくるでしょう。仕事をするうえでのモチベーションを維持するためにも、設定した目標に対する進捗を確認しながら業務に取り組むことが重要です。

目標設定の方法

資料を机に広げて読みあう二人

目標設定の方法をフローに分けて紹介します。

1. 目標のタイプを理解する

最初に確認すべきなのは、目標のタイプです。目標は大きく「発生型目標」と「設定型目標」に分けられます。

「発生型目標」は、すでに現場で問題や不具合が生じている場合に、解決を目的として立てるものです。たとえば、「作業ミスの削減」や「業務の遅延解消」といった目標が当てはまります。これらは、目の前の問題を把握し、改善するための指針になります。

「設定型目標」は、現状に大きな問題はないものの、より高い成果を目指して自主的に掲げる目標のことです。たとえば、「顧客満足度の向上」や「商品提案件数の増加」などが挙げられます。これは、自発的な成長や挑戦を促すタイプの目標です。

自分やチームの置かれた状況を客観的に見極め、いま必要なのは「課題解決」か「成果拡大」かを判断することで、目標の方向性が逸れづらくなるでしょう。

2. 数値や内容を明確にする

目標は、進捗状況や達成度を把握しやすいように、できる限り定量的に設定することが重要です。たとえば「売上向上を目指す」ではなく、「月次売上を15%向上させる」「顧客満足度アンケートの平均評価を半年以内に4.5点以上にする」など、数値に落とし込むと、目指すべき水準を共有しやすくなります。

数値化が難しい場合には、「◯月までに◯◯の提案を上司におこなう」「週1回、部内で業務改善アイデアを共有する」など、目標の達成状態や進捗が具体的にイメージできる内容に整えることが大切です。

3. 達成のための手段を考える

目標が定まったら、次に「どうすれば達成できるか」を明確にします。ここで重要なのは、実行可能な行動にまで落とし込むことです。

たとえば、「問い合わせ対応の満足度アンケートで、月末までに平均スコアを4.0以上に引き上げる」という目標に対しては、対応マニュアルの見直しや、週1回のフィードバックミーティングの実施が有効な手段と考えられます。

実際に行動に移せる具体策を複数挙げ、優先順位をつけて取り組むと効果的です。

4. 達成までの期限を設定する

最後に、目標達成に向けた期限を決めます。期限を設定しないままだと、目標が先延ばしになりやすく、達成への意識も薄れがちです。

1か月・3か月・半年など、目標の内容に応じて期限を設定し、必要に応じて中間における目標も定めると進捗管理がしやすくなります。たとえば、「6か月以内に社内改善提案を3件提出」といった目標であれば、「まず2か月以内に1件提出」と中間目標を立てると、達成できる確率が高まります。

目標を立てるときのフレームワーク

目標設定の際に役立つフレームワークを「SMARTの法則」を中心に紹介します。

SMARTの法則

「SMARTの法則」は目標設定の基本原則の一つで、組織や個人が適切な目標設定をするために役立ちます。「SMART」は、目標設定に必要な5つの要素の頭文字を表しています。ここでは、それぞれの要素について詳しく解説しましょう。

・Specific(具体的である)
目標を達成するための手段や時間、人員など、具体的な方法も含めて言語化し、目標を設定することが重要です。
たとえば「年間売上30%増」という目標に対しては、SEO対策やランディングページの制作を通じてWebからのアプローチを強化し、アポイント件数を100件獲得するなど、具体的な計画の立案が求められます。

・Measurable(測定可能である)
設定する目標は、定性的な内容も存在しますが、可能な限り測定可能で定量的なものであることが理想的です。また最終的なゴールと、それを達成するためのプロセスにおける目標が確実にリンクしていることも重要です。

上記で示した「年間売上30%増」のゴールに対して「Webでアポイント件数を100件獲得」という目標を立てたとしても、「100件のうち何件を成約に結びつけようとしているのか」まではわかりません。そのため、「100件のうち○件を見積もり・提案」、「そのうち○件を成約し、売上○万円を目指す」といったように、ゴールとの関連性があり、定量的な目標設定が重要です。

・Agreed-upon(合意が取れている)
目標設定は、ステークホルダー全員が合意している数値または内容であることも重要です。「なぜこの目標を達成する必要があるのか」という点が誰に対しても明確であり、関係者全員が納得できる目標であることが求められます。そのためにも、目標設定の際は「ゴールである目的を達成するために必要性が高い目標であるか」を再度確認しましょう。

目標を達成することが、会社の目指している目的とどのような関連性があるのかを明確にすることが重要です。

・Realistic(現実的である)
社内のリソースや現状を踏まえ、達成可能な目標を設定することが重要です。たとえば、上層部がトップダウンで「売上300%増」といった目標を立てたとしても、社内の状況を無視したものであれば目標の達成は現実的ではありません。現場の担当者も「達成するのは無理」と感じ、モチベーション低下につながる可能性もあります。

一方で、簡単に達成できるハードルの低い目標を設定すべきではありません。適切な目標の立て方としては、たとえば「過去に達成してきた目標のレベルよりもややストレッチする」などの方法が挙げられます。

・Time-bound(期限が設定されている)
設定した目標を、いつまでに達成するのか、具体的な期限を定めておきましょう。
ゴールの期限だけではなく、一定のタイミングで進捗の確認や振り返り、必要に応じて目標達成のための方法の変更など軌道修正をおこなうことも重要です。

目標を運用していくフレームワーク

PCでの会議
目標を運用していくフレームワークとして「MBO」と「OKR」を紹介します。

MBO

MBO(目標管理制度)とは、Management By Objectives and Self controlの略で、「従業員本人が目標を立てること」、「従業員が立てる個人目標は、組織目標と関連していること」という原則を持っています。従業員が自ら目標を立てることにより、一人ひとりが自律的・主体的に目標に取り組み、「業績向上」や「働きがいの向上」にもつながるとされています。

MBOの基本的な運用は、以下の手順で進められます。

● 目標設定……上司と部下が面談を通じて目標をすり合わせ、組織目標との整合性を確認しながら、具体的かつ達成可能な個人目標を設定します。

● 指導と進捗確認……目標達成に向けて取り組んでいる期間中も、定期的な1on1や面談を通じて、上司が進捗状況を確認し、必要に応じてサポートやアドバイスをおこないます。

● 振り返り……決められたタイミング(例:期末)に、目標に対する達成度を振り返ります。部下自身の自己評価と、上司による客観的な評価をおこない、フィードバックやアドバイスで成長を促します。

MBOは従業員の自律性やスキル向上を促すための仕組みとしても活用できます。たとえば、自ら目標を設定し、達成に向けて工夫や努力を重ねる過程で、当事者意識やスキルが高まりやすいでしょう。また、目標の達成度をもとに実績を評価しやすくなるため、人事評価制度と連動させて運用することもできます。

OKR

OKR(Objectives and Key Results)は、組織全体の目標達成を目的としたフレームワークです。

OKRの特徴は、定性的な目標(Objective)をひとつ設定し、それに対して、達成度合いを測るための明確な数値となる指標(Key Results)を複数設定することです。

また、企業全体→組織や部門→個人といったように上位の目標に紐づけて目標を設定していくため、チームや個人の取り組みと、組織全体の目標との整合性が取れ、同じゴールに向かって進みやすくなります。

また、OKRではあえて難易度の高い目標を掲げることも多く、いまよりも高い成果にもつながりやすくなります。

目標設定における注意点

目標を設定する際は、以下の注意点を意識してみましょう。

組織のビジョンや戦略と関連性を持たせる

チーム目標や個人目標は、会社のビジョン・戦略と整合性を持っていることが重要です。

組織のビジョンや戦略に沿った目標であれば、評価の根拠が明確になりやすく納得度が高まるとともに、「この仕事が会社全体にどう影響しているか」を理解できるため、モチベーションの向上につながります。

公平な目標を設定する

目標の難易度にばらつきがあると、評価の公平性が損なわれ、職場の信頼関係にも影響を及ぼす恐れがあります。すべての個人やチームにとって、チャレンジングでありながらも達成可能な、公平な目標設定をおこなうことが重要です

適宜フィードバックを実施

評価者は、数値目標の達成度だけを評価するのではなく、過程での取り組みや姿勢も観察し、良かった点や改善点を本人にフィードバックしていくことが重要です。フィードバックが本人のモチベーションアップにつながるとともに、次の目標達成に向けた前向きな姿勢を引き出せます。
特に、目標に対する未達成項目があった場合はそのままにせず、従業員にしっかりと振り返ってもらい、どう対応するかを検討してもらいましょう。

目的達成の一歩は目標設定から

目標設定は、従業員個人の成長はもちろん、会社や組織が目的を達成するための指標となります。目的達成までのステップを明確にし、PDSサイクルを効果的に回すことが重要です。SMARTの法則などのフレームワークを活用すれば、目標の具体性や実現可能性を高めることもできるでしょう。
従業員の目標は、組織の目標を踏まえて設定されるため、個人だけでなく、上司や管理者も目標設定の意義や方法を理解しておく必要があります。こうした認識を共有するために、評価者研修の実施を検討するのも有効です。

著者プロフィールHR Trend Lab編集部
タレントマネジメントやエンゲージメントなどの最新トレンドから、組織や人事にまつわる基本知識までマイナビ独自の視点でお届けいたします。
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