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リスキリングが注目される背景とは?人材育成におけるメリットも解説

2022年02月16日更新

企業の成長を支える要素にはさまざまなものがありますが、とくに不可欠なのが人材育成です。人材育成は通常業務を覚えてもらうことを目的としているケースもあれば、キャリアアップやスキルアップのためにおこなうケースもあります。

なかでも、スキルアップを実現するための人材育成方法として「リスキリング」が注目されています。今回の記事では、基本知識として押さえておきたいリスキリングの概要と、企業にとってのリスキリングのメリットや課題もあわせて解説します。

目次 【表示】

リスキリングとは

リスキリングとは一般的に、「キャリアアップを目的として新たなスキルを身につけること」を表す言葉です。経済産業省ではリスキリングを「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、 必要なスキルを獲得すること/させること」と定義しています。

すなわち、リスキリングには「社員自らがスキルを獲得すること」だけでなく、「企業が社員に対してスキルを獲得させること」という意味も含まれることになります。

なお今回の記事では、企業が社員に対してスキルを獲得させることに焦点を当てて解説します。

ちなみに、スキルアップやスキルの習得に関連する概念はほかにも存在し、リスキリングと混同されることも少なくありません。そこで、混同されがちな概念とリスキリングの違いについて解説しましょう。

リカレント教育との違い

就労→学習→就労のサイクルを繰り返すのがリカレント教育です。リカレント教育は一旦就労から離れて教育を受けるのに対し、リスキリングは働きながら新たなスキルを習得することが前提となります。

生涯学習との違い

学校教育を含め、社会教育や文化活動、スポーツ活動など、人々が生涯にわたって主体的に学習し続けることを生涯学習といいます。これに対しリスキリングは、経済産業省の定義にもあるように、新しい職業に就くため、または今の職業で必要となるスキルを習得することであり、仕事に関係するスキル習得が目的となります。

OJTとの違い

OJTは現在社内にある業務を覚えてもらうためのトレーニング手法のひとつです。これに対しリスキリングは、今後必要となるスキルを習得する場合もあるため、現在は習得したスキルを発揮できる業務が社内にないケースや、そのスキルをもった社員がいないケースもあります。

リスキリングが注目される背景

リスキリングが注目されている理由のひとつとして、DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現が求められていることが挙げられます。

DXはデジタル技術によってビジネスモデルや企業文化そのものを変革し、企業が競争上の優位を確立することを目的としており、これを実現するうえでデジタル人材の育成は不可欠です。しかし、経済産業省は「デジタル時代の人材政策に関する検討会」において、デジタル人材の育成が遅れていることを課題のひとつに挙げています。

そこで、社内にいる人材をデジタル人材に育成する手法としてリスキリングが注目されています。

なぜDXの実現が求められているのか、例として物流業界について考えてみましょう。

従来はドライバーの経験や勘に頼って配送ルートを選択するケースがほとんどでした。しかし物流業界でDXが実現すると、荷物の宛先に応じて自動的に最適な配送ルートが選択され、効率的に配送ができるようになります。また、従来は紙で管理していた伝票が電子化されると、瞬時にデータをシステムへ反映できます。このようにDXを実現するための具体的な取り組みにより、業務が効率化されることで他社と比べて優位に立てると期待できるでしょう。

情報システム部門やIT分野の開発部門だけでなく、従来デジタルとは関連が低いとされてきた業種や部門、職種においてもDXは無関係ではありません。DXによりビジネスモデルが大きく変わることは、これまで仕事で身につけてきたスキルだけでは通用しなくなる可能性があります。

たとえば、上記で例に挙げた物流のDXを実現するためには、AIやIoT、ビッグデータなどに関連する開発スキルや運用スキルが新たに求められるようになるかもしれません。AIを活用したシステム開発を専門に担うAIエンジニアや、ビッグデータの解析を担うデータサイエンティストは、DXによって需要が高まっている職種のひとつといえます。

リスキリングは、社員自身が今後生き残っていくために必要であることはもちろん、企業にとってもデジタル人材を育成し、厳しい競争に打ち勝っていくために不可欠な取り組みです。

企業にとってのリスキリングのメリット

では、企業が社員に対してリスキリングを推進することは、どのようなメリットがあるのでしょうか。3つのポイントを紹介します。

生産性の向上

業務効率化によって生産性を向上させることは、多くの企業にとって課題となっています。属人化した手作業に頼っていては、生産性の向上に限界があるため、業務プロセスそのものを見直したうえで自動化を検討することも必要といえるでしょう。

たとえば、リスキリングによってIT関連のスキルを身につけることで、業務への積極的なIT活用が進むと期待できます。DX実現のための第一歩であるデジタル化が推進され、業務プロセスの自動化が進み業務効率化と生産性の向上につながるでしょう。

企業文化を守りながらDXを進められる

社内にデジタル人材を増やしたい場合、リスキリングによって既存社員を育成する方法と、新たな人材を雇用する方法が考えられます。

しかし、新たに雇用した人材が中心となってDXを推進するとなると、自社が培ってきた企業文化に沿わない形になることもあります。その結果、それまで自社を支えてきた社員の離職につながることも考えられるでしょう。

また、そもそもIT関連の高いスキルをもったデジタル人材は少なく、新たに人材を採用すること自体が現実的に難しいことも事実です。リスキリングによって既存社員をデジタル人材として育成すれば、企業文化を守りながらDXを進められます。

新しい価値の提供により持続的な成長につながる

消費者のライフスタイルやニーズが多様化している現在、企業が生き残っていくためには、時代の変化を察知しビジネスモデルや企業文化自体を変化させ、新しい価値を生み出すことが重要といえます。

リスキリングによって社員がこれからの時代に必要とされるスキルを習得できれば、そのスキルを活かして、これまで自社が提供してきた商品やサービスに新たな付加価値を与えることができ、さらなる成長の原動力になると期待されます。

企業がリスキリングを推進するうえでの課題

企業が社員に対してリスキリングをおこなう際、メリットばかりとは限らず、さまざまな課題もあります。具体的にどのような課題が考えられるのかをピックアップし、それに対する解決策も紹介しましょう。

スキルの習得方法

社員に対して、新たなスキルをどのように習得させるかという課題が挙げられます。

社内に専門のスキルをもった人材がいる場合には、教育用のコンテンツ作成担当や研修の講師として任命する方法もあるでしょう。しかし、通常業務との兼ね合いで時間を確保できないケースや、そもそも社内に専門スキルをもった人材がいないケースもあります。

そのような場合には、社外の教育用コンテンツを利用したり、外部企業に講師を委託したりする方法もあります。これにより、社内で一から教育用コンテンツを作成したり、講師を育成したりするよりも時間とコストの節約になることも多いです。

社員に対する当事者意識の醸成

DXの推進を主な目的としてリスキリングに取り組む企業も多いでしょう。しかし、デジタル化を否定的に捉えてしまったり、自分とは関係ないものだと考えてしまったりする社員もいる可能性があります。

そのような場合は、たとえば、「DXによって自分の仕事がなくなる」と考える社員に対しては、「競合他社もDXへの取り組みが加速している。自社が生き残っていくためにDXの推進は不可欠である」ことを説明するとよいでしょう。

また、「リスキリングは一部のデジタル人材だけの育成に役立てればよい」と考える社員に対しては、「DXは一部の業務プロセスの改善や効率化ではなく、ビジネスモデルそのものを変革するものであり、あらゆる部門に影響が及ぶため、全社員を対象とする必要がある」ことを説明すれば、当事者意識が醸成されリスキリングに対して前向きに取り組んでもらえることが期待できます。

リスキリングは企業の持続的な成長に有効な人材育成方法

時代が大きく変化し、消費者のニーズが多様化している現在、企業が今後も生き残っていくためには新たな価値を提供することが求められます。そのためにも、多様なスキルをもった人材の育成は重要な課題であり、リスキリングは有効な手段のひとつといえるでしょう。

たとえば、DXを推進したいと考えているものの、自社にデジタル人材がおらず、新たに採用を検討する企業も少なくありません。しかし、人材採用と並行して既存社員のスキルアップを推進することも重要といえます。リスキリングをうまく活用すれば、生産性を向上させることでき、企業の持続的な成長につながるでしょう。

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