HR Trend Lab

MENU

HR Trend Lab

ワークライフバランスで働き方の多様性を実現!企業へのメリットや取り組み方を紹介

2020年11月30日更新

人々のライフスタイルが多様化している現代では、仕事だけではなく、プライベートも充実させる考え方である「ワークライフバランス」が広がっています。また昨今では、新型コロナウイルスの影響でリモートワークを実施する企業が増え、従業員の働き方はより多様化しています。今回は、ワークライフバランスの基本をお伝えするとともに、実際に企業が従業員のワークライフバランスを実現するメリットや、取り組み方法について解説します。

目次 【表示】

ワークライフバランスとは?

ワークライフバランスとは「仕事と生活の調和」を表す言葉です。仕事・労働は、生活を支えるためには欠かせませんが、プライベートの時間を趣味や自己研鑽に充てることもまた、人々の生活には欠かせない要素です。

そのため現代社会では、仕事とプライベートのそれぞれのバランスをとり、働き方の多様性を実現する一つの考え方としてワークライフバランスが提唱されるようになりました。

ワークライフバランスの歴史

ワークライフバランスは、IT技術の革新をはじめ、産業構造が大きく変化した1980年代のアメリカにおいて、女性の社会進出へ向けた施策の1つとして生まれた「ワークファミリーバランス」という考え方がもとになったといわれています。

その後、日本でも景気停滞の影響が広がりつつあった1990年頃から、仕事だけではなく生活(家庭や趣味)も充実させるという意識が徐々に広がり、国や企業が人々の「働き方」に関する施策をおこなうようになりました。

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章について

2007年12月18日に開催された官民トップ会議では、労働の国民的な取り組みの方向性を示す指針である「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」(※1)が策定されました。憲章では、仕事と生活の調和が実現した社会について、以下のように定義しています。

【国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会】

また憲章では、仕事と生活の調和が実現した社会について
・就労による経済的自立が可能な社会
・健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会
・多様な働き方・生き方が選択できる社会

の3つを具体例として示しています。

ワークライフバランスを考える上で大切なポイント

ワークライフバランスは「仕事はほどほどにして、プライベートを充実させる」という考え方ではありません。「仕事がうまく進むように、プライベートの時間も確保する」「プライベートの充実により、業務の生産性向上や成果に繋げる」というように、相乗効果を生むことがワークライフバランスの目的です。

また、企業が育児や介護などのさまざまな事情を持つ従業員に対して、多様な働き方ができる環境を整え、従業員の個々の事情に理解を示すことも、ワークライフバランスを考えるうえで大切なポイントです。

現代社会でワークライフバランスが求められる背景

日本が直面する3つの問題

いま日本は、「少子高齢化」「労働人口減少」「長時間労働」などの問題に直面しているといわれています。

国立社会保障・人口問題研究所が2017年に発表したデータ(※2)によると、日本の総人口は2015年以降、減少傾向になると予測されています。総務省が2020年9月に発表したデータ(※3)では、日本の総人口は同年9月1日の段階で前年同月と比べ約32万人減少が確認されました。2053年には総人口が1億人を割ると予測されており、人口減少とそれに伴う少子高齢化が労働人口の減少にも拍車をかけるでしょう。

また、長時間労働問題も人口減少に大きな影響を及ぼします。
厚生労働省の「平成30年版過労死等防止対策白書」(※4)によると、週に49時間以上働く人の割合はアメリカが16.4%、イギリスが12.2%、ドイツが9.3%であるのに対し、日本は20.1%と、長時間労働者の割合が多い傾向にあります。

とくに現代社会では、長時間労働や過重労働などによってプライベートの時間を確保できずに、心身ともに疲労してしまうケースも少なくありません。日本が直面するこれらの問題を解決するために「働き方改革」が進められており、そのなかでも重要な「ワークライフバランスの確保」に、国や企業が取り組むことが求められています。

新型コロナウイルスの影響によるリモートワーク推進の流れ

2020年4月には新型コロナウイルス感染拡大防止のために、リモートワークが多くの企業で導入されました。リモートワークに切り替えたことで、家族と過ごす時間が増えたり、育児や介護などをおこないながら仕事をするなど、人々の生活にも変化がありました。

企業が従業員のワークライフバランス実現に取り組むメリット

企業が従業員のワークライフバランスの実現に取り組むことで、双方にとってメリットが期待できます。

企業側のメリット

残業時間をはじめ、必要以上の長時間労働を改善することは、仕事と生活の両立には欠かせません。従業員の労働時間を短縮することは、人件費の削減や従業員の健康保持につながります。就業時間内に業務を終わらせるための工夫をおこなうことで、労働生産性の向上も期待できます。

また出産・育児・介護などを機に一時的に休職した従業員に対して、復帰支援やキャリア確保などを実施することで、人材流出の抑制にもつながります。従業員個々人にとって働きやすい環境を作ることで、多様な人材を採用できる機会が増えることでしょう。

従業員側のメリット

企業が従業員のワークライフバランス実現に取り組むことで、従業員は育児・介護、さらにはプライベートの時間などを確保しやすくなり、個々人に合わせた生活を送れます。空いた時間を資格習得や勉強などの自己研鑽に使うこともでき、習得した知識やスキルを今の仕事に活かすことで、仕事の効率化やキャリアアップにもつながります。

またプライベートの時間を確保することで、趣味を楽しんだり、日々の疲れをリフレッシュしたりと、仕事以外の時間を大切に過ごすことができます。

ワークライフバランス実現へ向けた取り組み方法

では実際に、企業が従業員のワークライフバランス実現に取り組むためは、どのような方法があるのでしょうか。

所定外労働時間の削減

所定外の労働時間(残業)を削減することで、従業員は仕事以外の自由な時間を確保しやすくなります。過剰な労働時間を削減することで、企業はその分の残業代を抑えることにつながります。

しかし、「ただ単に労働時間(残業)を減らす」だけでは、かえって仕事の生産性を低下させかねません。「生産性を上げ、その結果として残業がなくなる」という状態が理想的です。そのためには、生産性を落としていると考えられる日々の業務を見直しましょう。たとえば、形だけになっている会議の廃止や、業務フローの見直しなども一つの方法です。

年次有給休暇・育児休暇などの休暇取得促進

年次有給休暇や育児休暇など、休暇を取得しやすくする環境を整えることも大切です。とくに育児休暇の取得については、日本が直面する少子高齢化にも影響を及ぼすと考えられ、女性のみではなく、男性の働き方にも関わる問題です。
厚生労働省が発表したデータ(※5)によると、男性の育児休暇取得率は年々増加傾向にあるものの、2018年度の育児休暇取得率は女性が82.2%であるのに対し、男性は6.2%であり、女性と比較して依然と低い状況です。

企業勤めの男性の中には、「育児休暇制度が整備されていない」「育児休暇を取得しにくい」などの理由で休暇取得を断念するケースも多くあります。「育児休暇は女性が取得するもの」と思われがちですが、そのような中で、男性が育児休暇を取得しやすい環境を整備することは、ワークライフバランスの実現には欠かせません。

勤務制度の見直し

働き方が多様化している現代では、「平日9時からの8時間勤務」という、従来通りの勤務制度を見直すことも有効です。最近ではリモートワーク以外にも、8時間よりも短い時間で勤務する「短時間労働制度」、一日の労働時間はそのままで出勤と退勤時間を調節できる「フレックスタイム勤務」など、多様な働き方が普及しています。

企業が、育児や介護などのさまざまな事情を持つ従業員に対して理解を示すことは、ワークライフバランスを考えるうえで大切なポイントです。既存の勤務制度を見直し、多様な働き方を認めることは、企業が従業員のワークライフバランスを尊重する姿勢を示すことにもつながるでしょう。

福利厚生サービスの導入

資格取得支援制度やレジャー施設利用時の割引などの福利厚生サービスを導入することは、従業員のプライベートを充実させることにつながります。福利厚生サービスが充実することで従業員の自己研鑽やリフレッシュにつながり、仕事における生産性の向上も期待ができるでしょう。

人事評価制度の見直し

内閣府が2013年に実施した「企業のワーク・ライフ・バランスに関する調査」(※6)によると、残業している人は「頑張っている人」というイメージを持たれることが多い一方で、時間内に仕事を終えて帰宅する人については、人事評価で考慮されない企業が多い傾向にありました。

従業員のワークライフバランスを確保するためには、まず、このような「長時間仕事をした人が評価される」という意識を見直し、勤務時間内に業務を終わらせる人を評価するような制度を導入することが一つの方法としてあげられます。

まとめ

今回は、ワークライフバランスの概要や企業が従業員のワークライフバランス実現への取り組むことのメリット、取り組み方法について解説しました。ワークライフバランスを考える上で重要なことは、仕事とプライベートの調和を保つことで、企業・従業員の双方にメリットのある労働環境を整えることです。

また、従業員のワークライフバランスの実現に向けて企業がさまざまな取り組みをおこなうことで、生産性の向上や人材定着、さらには企業イメージアップなど、多くの相乗効果も期待できます。人々の働き方が多様化している現代社会において、ワークライフバランスの実現へ向けた取り組みを推進し、より良い組織作りに活かしてみてはいかがでしょうか。

<出典>
※1. 内閣府:仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章
※2. 国立社会保障・人口問題研究所:日本の将来推計人口(平成29年推計)
※3. 総務省統計局:人口推計(令和2年(2020年)6月確定値,令和2年(2020年)11月概算値)
※4. 厚生労働省:平成30年版過労死等防止対策白書
※5. 厚生労働省:男性の育児休業の取得状況と取得促進のための取組について
※6. 内閣府:企業のワーク・ライフ・バランスに関する調査(2013年)

人気記事ランキング
注目キーワード
研修・診断サービス
  • クレクタ
  • マイナビ エンゲージメント・リサーチ
  • 社会人基礎力診断
  • ムビケーション
→
←
Career Research Lab マイナビ研修サービス ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 外国人採用サポネット 日本エンゲージメント協会 HUMAN CAPITAL サポネット ナレビ マイナビキャリアサポート