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年次有給休暇の概要や日本における有給休暇取得率、義務化について解説

2021年02月19日更新

年次有給休暇とは、取得しても賃金が減額されない休暇のことで、労働基準法第39条に定められた労働者の権利です。条件を満たすことで、年に10日以上の年次有給休暇が労働者に対して付与されます。2019年4月から、この年次有給休暇のうち「1年間のうちの5日間」は従業員に確実に取得させることが企業の義務となっています。

今回は年次有給休暇についての概要や、日本における有給休暇の取得率、有給休暇の取得義務化におけるポイントについて解説します。

目次 【表示】

年次有給休暇とは

年次有給休暇とは、一定期間企業に勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復してゆとりある生活を保障するために付与される休暇のことです。有給休暇を取得しても、その労働者の賃金が減額されることはありません。

年次有給休暇が労働者に付与される条件は、労働基準法第39条に定められている以下の2つです。

・雇い入れの日から6か月の間継続勤務していること
・その期間の全労働日の8割以上出勤していること

なお継続勤務とは、事業場における在籍期間を意味し、勤務の実態に即して実質的に判断されます。たとえば、定年退職者を嘱託社員として再雇用した場合などは「継続勤務」とする必要があります。
また、全労働日の出勤率算定として「業務上の怪我や病気で休んでいる期間」「育児休業や介護休業を取得した期間」などは、原則として出勤したものとして扱われます。

上記2つの要件を満たした従業員に対しては、10日の年次有給休暇を付与することが義務付けられています。また、年次有給休暇が最初に付与された日以降は、1年ごとに付与される日数が増え、最大で年間20日分の年次有給休暇が付与されます。

パートやアルバイトへの付与も義務づけられている

労働基準法39条では、業種や業態、正社員、パートタイム・アルバイトなど、労働者の区分に関係なく、要件を満たす労働者に対して年次有給休暇の付与が義務づけられています。ただし、週所定労働日が4日以下で、かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者は、週所定労働日数と継続勤務年数に応じて年次有給休暇を付与します。

時間単位での取得も可能

年次有給休暇の取得は、原則1日単位です。ただし、企業と労働者の労使協定によっては、時間単位での有給休暇の取得が認められることもあります。また、労使協定がない場合でも、企業と労働者が合意した場合であれば半日単位での取得が可能となります。

「時季変更権」によって取得時期の変更を求めることも可能

労働者は、年次有給休暇を取得する際、取得の理由を企業に伝える必要はありません。ただし企業には、「時季変更権」と呼ばれる権利があり、労働者から年次有給休暇を請求された時季から、他の時季に取得をずらすよう求めることができます。

時季変更権は、単に「繁忙期で業務多忙だから」という理由だけでは認められませんが、「多くの労働者が同日の休暇を指定した」など、「労働者に年次有給休暇を与えることで正常な事業運営が妨げられる場合」にのみ認められます。

年次有給休暇は2年以内であれば繰越できる

労働者は、付与された年次有給休暇の権利を永久に保持することはできません。年次有給休暇の権利行使は、労働者に付与されてから2年間となっています。なお、退職などで残ってしまった有給休暇は、原則として権利が消滅します。

年次有給休暇には計画的付与制度がある

年次有給休暇の計画的付与制度とは「年次有給休暇の付与日数のうち、5日を除いた残りの日数については労使協定を結ぶことで、計画的に年次有給休暇取得日を割り振ることができる」という制度です。

たとえば、暦の関係で休日が飛び石となっている場合に、休日の橋渡しとして計画的付与制度を活用することで、労働者が年次有給休暇を取得しやすくなります。

日本における年次有給休暇の取得率

厚生労働省が発表した「令和2年就労条件総合調査(※1)」によると、企業の年次有給休暇の1年間の付与日数は、労働者1人あたり平均して18.0日でした。一方、実際に労働者が取得した有給休暇の日数は10.1日で、取得率にすると56.3%という結果になりました。つまり労働者は、付与された有給休暇のうち、半分程度しか取得できていないという状況です。

企業の規模別に取得率をみてみると、「労働者1,000人以上」の企業では取得率63.1%、「300〜999人」で53.1%、「100〜299人」で52.3%と、企業の規模が大きいほど取得率が高くなる傾向にありました。産業別の取得率は、「電気・ガス・熱供給・水道業」が76.8%ともっとも高く、「宿泊業・飲食サービス業」がもっとも低い41.2%となりました。

年次有給休暇の取得率は、49.4 %(平成29年調査)、51.1 %(平成30年調査)、52.4 %(平成31年調査)、56.3%(令和2年調査)と、年々増加傾向にあるものの、依然として企業規模や産業によって取得率には差が生じています。

2019年4月から年次有給休暇の取得が義務化

「働き方改革」の促進として労働基準法が改正されたことで、2019年4月からはすべての企業において下記のように、年次有給休暇の取得が義務付けられました。

「年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者を含む)に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、企業が時季を指定して取得させること」

今回の法改正により、企業は有給休暇を労働者に付与してから1年以内に、取得時季を指定した5日間の有給休暇を取得させなければなりません。

この場合、労働者が自ら請求・取得した有給休暇や企業ごとに定められている計画年休の日数は、時期指定義務のある5日間から控除されます。すなわち、企業が時季指定をおこなう必要があるのは、有給休暇の取得日数が5日に満たないケースのみであり、すでに有給休暇を5日以上取得している労働者に対しては、時季指定は不要となります。

なお、年5日の年次有給休暇の時期は、企業が自由に設定できるわけではありません。企業が労働者の意見を聴取し、労働者の希望に沿った取得時季になるように、意見を尊重するよう努めることが求められています。

また、時季指定をおこなうには、あらかじめ就業規則に「時季指定の対象となる労働者の範囲」、「時季指定の方法」を記載しておかなければなりません。そのため、有給休暇取得の義務化による時季指定をおこなう前には、就業規則の変更を行いましょう。加えて企業は、労働者ごとに「年次有給休暇管理簿」を作成し、3年間保存しなければなりませんので、こちらも忘れずに行いましょう。

違反すると企業に罰則も

年次有給休暇5日の取得義務化は、10日以上の有給休暇が付与される労働者がいる企業であれば事業の規模に関わらず対象となります。義務に違反した場合は労働基準法違反となり、労働者1人当たり30万円以下の罰金が課されます。

年次有給休暇を付与または買取する際の注意点

労働者へ年次有給休暇を付与、または労働者から年次有給休暇を買取する際には、どのような注意点があるのでしょうか?

買取は原則禁止

企業が労働者の年次有給休暇を買い取ることは年次有給休暇の本来の趣旨(労働者の休息)に反し、法律違反となるために、原則として禁止されています。
しかし以下のようなケースでは、残日数に応じて例外的に金銭を給付することが認められます。

・労働基準法で定められた有給休暇の日数を超えて有給休暇を付与している
・有給休暇の権利が消滅する「2年間」のうちにすべての有給休暇を消化できなかった
・退職する労働者の有給休暇が退職日に未消化のまま残っている

このようなケースで、従業員から申請があった場合にのみ年次有給休暇の買取が可能になります。企業側から買取を要求することは、就業規則などで明記している場合以外は「違法」となるため、自社の従業員が年次有給休暇を取得しやすい環境づくりに努める必要があるでしょう。

雇止めの労働者に付与する年次有給休暇の調整は不可

企業の中には、3ヶ月ごと、6ヶ月ごとなど、一定の期間ごとに更新契約をおこなう労働者を雇っていることもあるでしょう。その労働者が「次回の契約更新をしない」と判断した場合、それ以降の契約期間中における年次有給休暇の日数を按分比例して与えることはできません。

たとえば、3ヶ月ごとに契約更新し、通算で2年6ヶ月雇用した労働者が次回更新をしない場合であっても、12日分の年次有給休暇は付与する必要があります。「向こう3ヶ月の雇用に対して12日間の休暇を与えるのは多い」と企業側が判断して、すでに与えた年次有給休暇の日数を調整することはできません。

まとめ

年次有給休暇は正社員だけではなく、アルバイトやパートの労働者へも付与することが義務付けられています。また2019年4月からは、労働者へ年5日の年次有給休暇を取得させることが企業に義務付けられましたが、時季変更権や計画的付与制度などの企業が持つ権利を行使することで、計画的に年次有給休暇取得の促進を図ることができるでしょう。

労働者が休暇を取得することは心身の疲労回復やリフレッシュへとなり、結果として業務生産性の向上へとつながることが期待できます。これを機に、企業は労働者が有給休暇を取りやすい環境を整えてみてはいかがでしょうか。

<出典>
※1. 厚生労働省:令和2年就労条件総合調査

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