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ノーレイティングとは?給与や昇給はどう決める?導入のメリットと注意点も解説

2023年01月18日更新

アメリカの主要企業が取り入れ注目されたノーレイティングが、近年日本の企業にも広がりつつあります。企業を取りまく環境が大きく変化している昨今、変化に柔軟に対応できる組織づくりの一助となるノーレイティングとはどのような人事評価制度なのでしょうか。

ノーレイティングの概要をはじめ、注目されている背景や導入時の注意点を解説します。

目次 【表示】

ノーレイティングとは

ノーレイティングとは、従業員をランク付けしない人事評価制度のことです。2010年代からアメリカの企業が取り組み始め、近年では日本企業でも導入されはじめています。具体的にどのような人事評価制度なのか、従来型の人事評価制度と比較しながら説明します。

従来型人事評価との違い

日本企業の人事評価では、企業側が一定の基準を設け、その基準をもとに従業員を評価しランク付け(レイティング)をおこなうのが一般的です。

ランク付けによる人事評価を実施する多くの企業は、半期に1度など、定期的に人事評価面談を実施し、「S」「A」「B」といったランクや評点を従業員本人に伝えます。昇給・昇格や賞与額などは、この評価をもとに決定されます。

この人事評価制度は、従業員を比較し評価することで従業員同士の競争を生み出し、モチベーションを高める方法として重用されてきました。

一方、ノーレイティングでは、上司と部下が日頃から面談をおこない、コミュニケーションをとりながら設定した目標への進捗度を確認していきます。

たとえば、上司と部下が1on1などの面談で目標を設定し、週単位など頻繁に進捗を確認します。面談ではリアルタイムで部下のよい点・改善すべき点を、上司から部下に共有し、成長を促します。

最終的な評価は、部下との面談を重ねてきた上司がおこない、昇給・昇格や賞与に反映させる仕組みです。

ノーレイティングが注目されている背景

このように、従来の人事評価とは大きく異なるノーレイティングが導入されはじめている背景には何があるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

従来の人事評価制度の課題解消のため

従来型の人事評価制度では、1年間などあらかじめ定めた期間の期末に、業務における成果や能力、勤務態度といった企業が定めた評価基準に沿って、従業員を相対的に比較してランク付けをおこない評価します。

前述した通り、この評価方法は従業員同士の競争を生み出し、モチベーションを高める効果があります。一方で、過去の働きが評価のベースとなるため現在の能力が評価されず、評価結果に対して従業員の納得感が得られにくいという一面もあります。従業員側から見ると、評価基準が曖昧で、不公平感がでてしまうなどの懸念点があるのが現状です。

このような評価方法では、企業が定めた評価基準からは外れるものの、優秀なスキルを有する従業員が評価されず、企業にとっても優秀な人材を活かしきれない状態に陥る可能性もあります。

また、ランク付けによって従業員同士の競争を喚起するはずが、評価基準の不透明さや不公平感から、かえってモチベーションを低下させる可能性も潜在しています。

これら従来型の人事評価制度にある課題を解決するために、新たな人事評価制度の導入を検討する企業が増える中で、「ランク付けをしない」ノーレイティングが注目されるようになったのです。

企業を取りまく環境の変化

企業を取りまく環境が刻一刻と変化していることもノーレイティングの導入につながっています。

いわゆるVUCA時代に突入している今、画一的な評価や企業の長期的な成長を見込んだ育成計画だけでは、短期間で変化する社会や市場への迅速な対応が困難になります。ノーレイティングでは、リアルタイムフィードバックによって過去ではなく従業員の現在を見て成長を促し育成できるため、状況に即した活躍を期待できます。

また、テクノロジーの進展やビジネスパーソンの価値観の変化により、転職市場が活発化している昨今では、より活躍できる場へと人材が流れていきがちです。画一的な育成ではなく、従業員一人ひとりが活躍できるよう本人の能力などに鑑みた育成は、人材流出を防ぐとともに、強い組織作りにもつながっていきます。

ノーレイティングのメリット

ノーレイティングの導入によって得られる主なメリットは次の4つです。

評価への納得感が得られやすくなる

ノーレイティングを導入すると、面談をおこなう機会が増えることにより上司と部下のコミュニケーションが活性化し、信頼関係を構築しやすくなります。

信頼できる上司による評価は納得感を得られやすく、フィードバックと目標達成度の確認を重ねることでモチベーションの向上も図れます。これらを通して、従業員に「上司が自分の努力を見てくれている」という安心感も生まれるでしょう。

個々の能力・特性に見合った育成が可能

従業員一人ひとりの能力・特性に見合った育成が可能になる点もメリットといえます。従来の人事評価では、少ない面談回数と限られた時間の中で、なぜその評価になったのかを伝えることに終始してしまい、従業員の将来について話し合うことは難しい状況にありました。

ノーレイティングを導入し1on1を実施することで、個々人の能力・特性を見ながら、かつ本人の希望を聞きながら、従業員一人ひとりの能力開発やキャリア支援に取り組めます。

環境変化に柔軟に対応できる組織をつくれる

ノーレイティングを導入し従業員の育成を進めていくことで、環境の変化に柔軟に対応できる組織を作れます。日頃おこなうフィードバック面談では、設定した目標を実現するために何をすべきなのかを考え、行動するよう上司が促していきます。

これを重ねていくと、従業員に自ら考え行動する意識が芽生え、環境の変化により目標を変更することになったとしても、変更された目標を達成するための行動を迅速に起こせるようになるでしょう。

リモートワーク下でも適切な評価が可能になる

コロナ禍を契機にリモートワークを導入したものの、直属の上司などの評価者がリモートワーク中の従業員をどう評価すればよいのか、困惑している企業は少なくありません。リモートワーク中は従業員の働きぶりが見えず、かつ成果は個人の努力だけで決まるものではないため、評価の基準を設定しづらいという課題があります。

成果のみを注視する評価では従業員の納得感を得られづらく、内容によってはモチベーションの低下を招きかねません。また、コミュニケーション不足による従業員エンゲージメントの低下も考えられます。

リモートワーク中の従業員に対しては、モチベーションや従業員エンゲージメントの維持・向上を目指し、頻繁にコミュニケーションを取る必要があります。加えて、適切な評価のためには成果中心でありながらも、1on1によるきめ細やかなフィードバックと目標の進捗管理が必要です。これらリモートワークにおける人事評価に必要な要素は、ノーレイティングによる評価と大きく重なります。

リモートワーク中の人事評価に課題のある企業も、ノーレイティングの導入で適切な評価が可能になることはメリットの一つでしょう。

ノーレイティング導入時の注意点

ノーレイティングを導入する際には、評価方法や評価に至るまでのプロセスが変更され、面談回数も大幅に増えることから、評価者の業務負担が増加します。同様に、評価される側の従業員も面談回数の増加により業務時間が取れないなどの不満が出る可能性があるため、注意が必要です。

これら負担増加による不満感を解消するには、前述したノーレイティングの導入によるメリットを評価者・被評価者の双方に理解してもらう必要があります。

また、評価者である上司と被評価者である部下の間に信頼関係が構築できていない場合や、上司が適切なフィードバックを送れない場合は、かえって部下のモチベーションが低下する可能性があります。ノーレイティングによるメリットを享受するためには、上司側へのコミュニケーションスキルおよびフィードバックスキルを高めるための教育が必須です。

ノーレイティングにおける給与や昇給の決め方について

ノーレイティング導入後の昇給・賞与額の決め方は、企業によりまちまちです。アメリカではノーレイティングを導入する際に、昇給・賞与額などの決定権限を評価者に委譲しているといいます。この場合、評価側が持つ判断基準を軸にしつつ、部下と相談のうえ決定するなどの方法があります。

なお、ノーレイティングにおいて昇給・賞与額の決定権限の委譲は必須というわけではありません。評価者によって昇給の基準や額が異なる場合、部署内では合理性があるとして受け入れられたとしても、他部署においては非合理的と見られてしまうことがあるためです。

ノーレイティングによる評価を、従来の昇給判断のルールにあてはめる方法もあります。評価者が評価を決定した後は、従来の昇給・賞与額を判断する際のルールをそのまま適用して昇給額などを決定できます。

ノーレイティングを導入するメリットが高い企業の特徴

ノーレイティングはどのような企業にも対応できるものではありません。企業によっては、ノーレイティングがマッチせず、うまく制度を活用できない可能性があります。

ノーレイティングの導入するメリットが高く、制度を継続しやすい企業には次のような特徴があります。

・少人数のチーム制で業務にあたっている
・日頃から上司と部下のコミュニケーションがとれている

少人数のチーム制を採用している企業は、面談にかかるコストを抑えられることから比較的ノーレイティングを導入・継続しやすい傾向にあります。

また、対面・リモート問わず、日頃から上司と部下のコミュニケーションが活発で信頼関係が構築できている企業は、面談への心理的ハードルが低いため導入しやすいと考えられます。

ノーレイティングの導入前に自社分析を


ノーレイティングは、昨今の不安定な社会情勢にも対応できる組織づくりに寄与する人事評価制度です。

ノーレイティングの導入を検討している企業は、まず自社の人事評価制度にある課題を洗い出し、ノーレイティングで解決できる課題なのか検討を進めましょう。

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