ジョハリの窓とは?4つの窓の紹介、やり方と活用方法を解説
「ジョハリの窓」は、自己理解と対人関係の向上に効果的な心理学モデルとして、ビジネスの現場でも活用できます。自己分析とフィードバックを通じた信頼関係の強化だけでなく、対人関係の能力向上や特性の発見など、社員の成長も期待できます。
本記事では、ジョハリの窓とはなにか、ビジネスに役立つ理由、4つの窓、やり方と活用方法について解説します。
ジョハリの窓とは
ジョハリの窓は、自己分析とそれに対する他者からのフィードバックによって、自己理解を促進し、対人関係を向上させるための心理学モデルのことです。このモデルは1955年にアメリカの心理学者ジョセフ・ルフトとハリー・インガムによって考案され、2人の名前を合わせた「ジョハリの窓(Johari Window)」として知られています。
ジョハリの窓は「自分から見た自分」と「他者から見た自分」の視点にもとづいており、この2つを軸にマトリクスをつくり、4つの領域(開放の窓、盲点の窓、秘密の窓、未知の窓)にわけることができます。自分が認識している部分や他者から認識されている部分を把握し、他者からのフィードバックを通じてより自己理解を深めます。
こうした自己理解とともに、他者と自分の認識の差を埋め、結果をもとに自己開示することで対人能力の向上にも役立てることができます。
ジョハリの窓がビジネスに役立つ理由
ジョハリの窓はビジネスの場でも役立てることができます。以下で理由を3つ解説します。
対人能力の向上
ジョハリの窓を通じて、他者からのフィードバックを受け、自分の行動や言動がどのように受け取られているかを把握でき、それをもとに対人能力の向上を図れます。これにより、コミュニケーションの課題を把握し、改善につなげられ、職場での人間関係がスムーズになることが期待できます。
チームの結束力が高まる
ジョハリの窓はチームの信頼関係を築き、円滑なコミュニケーションを促進する手法としても活用されています。メンバー同士が自己開示をし、他者からのフィードバックを受け入れることにより、共通の理解が深まり、チームの結束力が高まることが期待できます。
強みや特性を発見するきっかけになる
ジョハリの窓を活用することで、自己理解が深まり、今まで気づかなかった自分の強みや特性を知るきっかけになります。このようなきっかけから、業務への新しい取り組み方の発見や役割の見直しにもつながります。
ジョハリの4つの窓

ジョハリの窓には4つの領域に分類される「4つの窓」があります。以下でそれぞれ解説します。
開放の窓
「開放の窓」は、自分も他者も知っている領域のことです。たとえば、自分の主観と他者から見た自分で共通している性格や性質が該当します。
この窓が広がることは、周囲に対して自己開示ができており、自分と他者の認識に差が少ない状態といえます。また、開放の窓が広がることで相互理解が進み、コミュニケーションが円滑になることが期待できます。他者との信頼関係の強化につなげるためにも、開放の窓を広げていくことがよいでしょう。
秘密の窓
「秘密の窓」は、自分だけが知っていて、他者にはまだ知られていない領域のことです。隠している弱みや不安、苦手意識など、内に秘めている部分が該当します。
秘密の窓が大きいほど周囲に隠している面が多いことになり、それは自然な状態の自分で振る舞えていないともいえます。それにより、コミュニケーションが円滑でない、コミュニケーション自体にストレスを抱えてしまうといったことが起こり得ます。
必ずしもすべてを打ち明ける必要はありませんが、積極的に自己開示をして、開放の窓にしていくことで、自然な状態で周囲に振る舞えるようになり、コミュニケーションがより円滑になるでしょう。
盲点の窓
「盲点の窓」は、他者は知っているが、自分では気づいていない領域のことです。自分では気づいていなかった癖や、思いもしなかった長所・短所が該当します。長所であった場合は自分であらためて意識をして活用し、短所だった場合は、改善してくことが望ましいでしょう。自分の見えない一面を理解し、盲点の窓を縮小することで自己改善につなげられます。
未知の窓
「未知の窓」は、自分も他者も知らない領域のことです。潜在的な可能性や未知の才能が該当します。現時点では意識していないため、発見するのは簡単ではありませんが、未知の窓を見つけることは、自己成長や新たな能力の発見につながります。
未知の窓を見つけるためには、普段とは異なる業務に挑戦したり、他部署や他業種の方と交流したりといった、新しい経験に取り組むことが有効です。それにより、隠れていた能力や興味が表面化し、自己成長のきっかけを逃さずに済みます。
ジョハリの窓のやり方
ジョハリの窓のやり方には、いくつかの方法があります。一人での実施やオンライン実施も可能ですが、ここでは複数人で実施する方法を説明します。
1.参加者を集め、準備を整える
ジョハリの窓は自己分析と他者分析を含むため、一般的には複数人が対面で集まって実施します。準備として、3人以上のお互いを知るメンバーを集め、紙とペンを用意しましょう。なお、参加者の数だけ自分に対する認識が集まるため、参加者が多いほど自分が認識していない特性を発見しやすくなります。
2.自分に関する認識を記入する
自分自身の認識にもとづき、自分の性格や特性を紙に書き出します。この過程では、リフレクション(自分自身の考え方や行動を客観的に振り返ること)を取り入れることで、より詳細な自己分析につながります。また、書き出す際は自分の性格や特性を率直に書き出すことが重要です。どれだけ率直に書き出せたかどうかで他者との認識のギャップを確認しやすくなります。
この時、自由記述でもおこなえますが、一般的には特定の項目から選ぶ方法が推奨されます。性格や特性の項目の例として、「責任感がある」「表現が豊か」「行動力がある」「聞き上手」「慎重」などが挙げられます。書き出した内容は他人に見せず、自己分析のための記録とします。
3.他者による認識を記入してもらう
次に、他の参加者から自分に対する印象や性格などの認識を記入してもらいます。これも自由記述でおこなうか、特定の項目から選ぶ形式を用いますが、「2.自分に関する認識を記入する」で決めた方法で実施すると自分と他者の認識の比較がしやすくなります。この際、無記名で記入してもらうことで、より率直なフィードバックを得やすくなります。
4.「4つの窓」に分類する
記入が終わったら、自分と他者の認識を照合し、以下を参考に「開放の窓」「秘密の窓」「盲点の窓」「未知の窓」の4つに分類します。分類することで自己開示の傾向や自己理解の現状が把握できます。
- ・開放の窓:自分と他者の認識が一致した項目
- ・秘密の窓:自分だけが認識している項目
- ・盲点の窓:他者だけが認識している項目
- ・未知の窓:自分も他者も認識していない項目
5.フィードバックとディスカッションをおこなう
最後に、参加者同士で意見を交換し、客観的な視点から深掘りすることで自己理解を深めます。この時に、自分が書き出した内容や「秘密の窓」に該当する情報を他者と共有することで、自己開示につながります。また、他者からの認識の理由や根拠について掘り下げることで、新たな気づきを得ることにもつながるでしょう。
ジョハリの窓の活用方法
ジョハリの窓をビジネスで活用する方法を紹介します。
チームの信頼関係を強化するために自己開示を促進する
ジョハリの窓を用いて、チーム内の信頼関係を深めるには「秘密の窓」を小さくすることが有効です。そのためには自己開示を増やすことが必要になります。自分の意見や感情を共有する場を設けることで、メンバー同士が安心して意見を言いやすくなり、協力的な雰囲気が生まれるでしょう。
他者のフィードバックから自己成長につなげる
ジョハリの窓における他者からのフィードバックは、自分の認識と他者の認識の違いを明らかにし、具体的な行動改善のきっかけとなります。とくに「盲点の窓」に分類される内容は、自分では気づいていない長所や短所を示しており、自己成長につなげられます。
たとえば、周囲から「細かい点に気づく」と思われている場合、それは自分の注意力や観察力に強みがあることを示している可能性があります。反対に「細かすぎる」と感じられているなら、その点は短所といえるため、改善することで自己成長につながります。
ジョハリの窓で信頼関係の強化と自己成長を
ジョハリの窓を活用することで、自己理解が深まり、チーム内の信頼関係やコミュニケーションが向上します。自己開示とフィードバックを意識的におこなうことで、組織内の協力体制が強化され、メンバーの能力を引き出すことにもつながります。
社員教育やチームの信頼関係強化に取り組む際に、ジョハリの窓を活用することで、個々の対人能力が強化され、チームの結束力も高まり、組織全体の成長につなげられるでしょう。