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従業員体験(EX)とは?重要性や向上施策、実践企業の事例をまとめて解説

2025年05月28日更新

男女5人の社員

従業員体験(EX:Employee Experience)の向上は、企業の持続的な成長において重要な課題のひとつとなっています。

労働人口の減少や働き方の多様化が進む中で、優秀な人材の確保・定着のためには、従業員にとって魅力的な体験を提供することが不可欠です。また、従業員体験は顧客体験の向上にも寄与し、企業の競争力強化につながります。

本記事では、従業員体験の重要性から具体的な向上施策、先進企業の事例までをまとめて解説します。

目次 【表示】

従業員体験(EX)とは

エンゲージメント

従業員体験(EX:Employee Experience)とは、従業員が入社から退職までに企業との間で経験するあらゆる体験のことを指します。具体的には、評価面談やキャリアアップ研修といった業務に直結するものだけでなく、オフィス環境や人間関係など、働く環境や組織文化に関わるすべての経験が含まれます。

近年の人事施策において注目を集めているのが従業員体験という考え方で、「従業員一人ひとりの経験や感じ方」に焦点を当てます。

より良い従業員体験を重ねることでエンゲージメントが高まり、結果として生産性の向上や離職率の低下などの効果が期待できます。

従業員体験向上に取り組むメリット

Merit

従業員体験の向上は、組織にさまざまな効果をもたらします。あらためて、取り組みを進めることのメリットをみていきましょう。

生産性とイノベーションの向上

従業員体験の向上は、業務効率や生産性の向上にも直結します。働きやすい職場環境の整備や効果的な研修制度の確立などにより、従業員は能力を最大限に発揮しやすくなります。それにより、従業員の創造性や主体性が引き出され、イノベーションの創出にもつながります。

人材の定着と採用力の強化

従業員体験の向上により、従業員の職場に対する満足度やエンゲージメントが高まり、定着率の向上につながります。また、その企業で得られたポジティブな従業員体験が口コミなどを通じて広がることで、企業の採用ブランディングが強化され、優秀な人材の獲得もしやすくなるでしょう。

組織文化の活性化

従業員体験の向上は、組織内のコミュニケーションを活発にし、よりオープンで創造的な組織文化の醸成につながります。従業員同士の信頼関係が強化され、部門を超えた協力体制も生まれやすくなるでしょう。

従業員体験が注目される背景

同じ方向を向く様子

なぜ昨今、従業員体験の重要性が高まっているのでしょうか。その背景には社会やビジネス環境の変化があります。

人材の確保と定着が重要な経営課題になっている

労働人口の減少により、企業の人材確保は年々困難になっています。また、終身雇用制度が一般的なものではなくなったことで人材の流動性も高まり、優秀な人材の確保・定着が重要な経営課題のひとつとなりつつあります。

そのような背景から、従業員にとって魅力的な体験を提供し、職場への満足度やエンゲージメントを高め、組織や企業の定着を促すことが重要となっています。

人的資本の可視化とその価値の重要性が増している

企業が持続的な経営を実現するために、人的資本経営の機運が高まり、それに対しての取り組みの可視化や適切な開示が求められるようになりました。

一例として、ISO30414(人的資本報告の国際規格)の策定など、従業員に関する取り組みを定量的に示す動きが加速しています。そのような情報開示は、投資家にとっては持続的な企業価値向上の可能性を判断する材料に、就職希望者にとっては自身のキャリア形成の機会を評価する指標となっているのです。

顧客体験(CX)の向上に寄与する

従業員体験が向上することで、顧客体験(CX)が向上し、結果として顧客満足度(Customer Satisfaction)にもいい影響があることが研究で明らかになっています。

マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology)の研究によると調査対象企業のうち、従業員体験が上位25%の企業は、下位25%の企業と比較して、より革新的で収益性が高く、顧客満足度も高いことが示されています。

なお、この従業員体験から顧客満足度、そして企業業績向上までの好循環は「サービスプロフィットチェーン」と呼ばれています。

優れた従業員体験を提供する企業は、従業員と顧客の両方の満足度を高め、持続的な成長の実現につながります。

従業員体験を向上させる5つの取り組み

施策

従業員が働きがいを感じ、最大限の能力を発揮できる環境を作ることは、企業全体の生産性向上、そして顧客満足度向上にもつながります。

従業員体験を向上させるための5つの取り組みを紹介します。

エンプロイージャーニーマップの活用

エンプロイージャーニーとは、従業員ひとりの入社から退職までのプロセスやその間の経験全体を指す言葉です。これを可視化したものがエンプロイージャーニーマップで、それぞれの段階における従業員の感情やニーズを深く理解することに役立ちます。

たとえば、入社、研修、配属、昇進、異動、退社など、従業員が経験する可能性のあるイベントを洗い出します。それぞれのイベントにおける従業員の「期待していること」「心理的状況」「行動」などを詳細にマッピングすることで、従業員体験の全体像を把握できます。

エンプロイージャーニーマップを作成し、定期的な従業員インタビューや社員が抱える課題を分析することで、従業員が経験するどのイベント・フェーズに課題があるのかを特定しやすくなります。

エンゲージメント・サーベイの実施

エンゲージメン・サーベイとは、従業員と組織の心的な繋がりを測定することで、組織の現状を可視化し、組織課題を改善するためのヒントを得るためのツールです。

エンゲージメント・サーベイを実施することで、従業員のエンゲージメントレベルを把握し、組織全体の健康状態を診断できます。従業員体験を改善するための重要な起点となり、サーベイを通じて得られた従業員の声や課題認識をもとに、より良い従業員体験を実現するための施策を検討・実施できます。

タレントマネジメントに取り組む

タレントマネジメントとは、自社の抱える従業員や従業員の持つ能力(タレント)に着目し、採用・配置・評価・教育などの人事施策を統合的に実施することで、従業員一人ひとりのパフォーマンスを最大限に活かそうとする人事管理手法のひとつです。

一般的にはタレントマネジメントシステムなどを活用して従業員の状況を可視化し、必要に応じて個別面談を実施します。

そのプロセスを通じて、従業員は自身のキャリアパスを明確に描けるようになり、さらに組織からの適切なサポートを実感でき、結果として良質な従業員体験を構築する重要な要素となります。

DXによる業務環境の整備

従業員体験の向上には、DX化も有効です。DXとは、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略称で、デジタル技術を活用し、ビジネスモデルや企業文化を根本から変革していくことを指します。

  • ●業務プロセスの効率化による生産性向上
  • ●場所や時間にとらわれない柔軟な働き方の実現
  • ●データにもとづく従業員満足度の改善
  • ●働き方の柔軟性向上
  • ●部門を超えたコミュニケーションの活性化

DXは単なる業務効率化にとどまりません。従業員の働き方や満足度を定量的に把握することでより良い職場環境の構築にもつながります。デジタル技術を戦略的に導入することで、従業員体験の継続的な改善が可能になります。

従業員の心身の健康支援

従業員の心身の健康は、企業の生産性や業績にも大きな影響を与えます。

定期的な健康診断の実施やメンタルヘルスケアの充実など、従業員の健康管理を支援する体制を整えることが重要です。また、長時間労働の削減や休暇取得の促進、柔軟な働き方の導入など、働き方改革を推進することで、従業員が安心して働ける環境を整備します。

心身ともに健康で働ける環境は、従業員の日々の仕事における充実感や満足度を高め、より良い従業員体験の構築につながります。

従業員体験を向上に取り組む企業事例

CASE

最後に、従業員体験の向上に積極的に取り組む企業の事例を3つご紹介します。

体験を重視した人事改革を実現した大手テクノロジー企業 A社

A社では、従業員を大切にする文化を創るため、人事部門を「EXチーム」として再定義し、従業員体験の向上を経営の中核に据えました。

採用やオンボーディングなどの人事施策から、ワークスペース、食事などの職場環境に至るまで、従業員のあらゆる体験に焦点を当て、従業員体験の改善を図っています。

自律性を重視した文化を築く大手動画配信会社 B社

B社では「フリーダム&レスポンシビリティ」という文化のもと、従業員の自律性を最大限に尊重しています。「プロセスより人(People over Process)」という理念を掲げ、以下の指針で従業員体験の向上を図っています。

  • ●情報共有と意思決定の自由により、従業員が主体的に働ける環境を作る
  • ●シンプルな規則により、柔軟な働き方が可能
  • ●失敗を恐れずに自由に判断し、それを通じて学び、成長できる機会が豊富
  • ●従業員の意見が尊重され、重要な意思決定に対して意見を述べる機会がある

教育支援を通じて成長機会を提供する大手コーヒーチェーンC社

C社では、従業員の成長支援に力を入れ、大学との提携によりオンラインでの包括的な教育プログラムを提供しています。週20時間以上勤務する従業員であれば、雇用形態に関係なく多数の学部課程から学びたい分野を選択できます。

学位取得後の継続勤務義務を設けていない点も、「人をベースとした経営」という同社の方針を体現しているといえるでしょう。この取り組みによって、従業員の能力開発と同時に、サービス品質の向上を図っています。

従業員体験を上げて組織を強くしよう

従業員体験の向上は、企業の成長戦略における重要な要素です。優れた従業員体験は、社員のエンゲージメントを高め、生産性の向上や優秀な人材の定着、さらには顧客満足度の向上にもつながります。本記事で紹介したように、エンプロイージャーニーマップの活用やエンゲージメント・サーベイ、タレントマネジメント、DXの推進など、さまざまなアプローチを組み合わせ、従業員体験の向上に取り組んでみましょう。

著者プロフィールHR Trend Lab編集部
タレントマネジメントやエンゲージメントなどの最新トレンドから、組織や人事にまつわる基本知識までマイナビ独自の視点でお届けいたします。
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