ラポールを形成するための4つの手法とビジネスにおけるメリットを解説
ビジネスを円滑に進めていくうえで、人と人とのコミュニケーションは欠かせないものです。しかし、コミュニケーションが思うようにとれず、業務にさまざまな影響を及ぼすことも少なくありません。そこで、スムーズなコミュニケーションを図るうえで重要なのが、ラポールです。
今回は、ラポールの定義とラポールを形成することでのビジネスにおけるメリット、ラポールを形成する代表的な4つの手法ついて詳しく解説します。
ラポールとは
はじめに、ラポールとはなにか、定義を解説するとともに、コミュニケーションにおけるラポールの重要性について説明します。
ラポールの定義
ラポールとは「2人の人間が互いに信頼し合っている関係」を指す言葉で、フランス語で「架け橋」を意味する「rapport」が語源となっています。
もともとは心理学の分野で使われていた言葉で、カウンセリングをするうえでセラピストとクライアント(患者)間の信頼関係や、心理的安全性がある状態を意味するものでした。しかし昨今では、心理学の分野に限らず広く一般的に使用されています。
コミュニケーションにおいてラポールが重要な理由
人間同士がコミュニケーションをとるためには、お互いに相手のことを受け入れる姿勢が重要といえます。十分な信頼関係が築けていないと、相手のことを警戒してしまい本音でのコミュニケーションが生まれにくいものです。
一方的なコミュニケーションにならないためにも、ラポールが形成されている、つまり信頼関係が築けていることは、良好なコミュニケーションをとるうえで重要なポイントといえます。
ビジネスにおけるラポール形成のメリット
ラポールを形成することはビジネスの場面でも大いに役立ち、さまざまなメリットがあります。ビジネスにおけるラポール形成のメリットを3つのポイントに分けて紹介しましょう。
社内コミュニケーションの活性化
ラポールを形成することで、社内における人間関係を良好に保てるメリットがあります。
たとえば、上司と部下との間に信頼関係がなければ、お互いに本音で話すことは難しいものです。上司は部下に対して指導やアドバイスをしたつもりでも、部下はハラスメントととらえてしまうこともあるでしょう。また、部下から上司に対して意見を伝えようとする場合も、評価に影響したり、上司の機嫌を損ねてしまったりするのではないかと遠慮してしまうことも考えられます。
しかし、ラポールが形成されていれば、上司と部下がお互いを尊重しながら伝えたいことを齟齬なく、本音で話ができるようになります。
チーム全体のパフォーマンス向上
新規事業の創出や業務プロセスの改善など、チーム全体でアイデアを出し合うときに、的はずれな意見ではないかと発言を遠慮してしまうこともあります。しかし、活発にアイデアを出し合わなければ、新規事業や業務プロセスの改善は進みません。
ラポールが形成されている職場では、一人ひとりの社員がお互いの意見を尊重する風土が醸成されるため、多様な意見が出やすくなります。その結果、チームや部署全体のパフォーマンス向上が期待できるでしょう。
業績アップにつながる
顧客と営業の方との間でラポールが形成されていれば、顧客の心を開いて本音を引き出すこともできます。そして、顧客が本当に求めていることがわかり、それに合った提案もできるでしょう。
その結果、「この担当者から購入したい」という顧客が増え、業績アップにつながることが期待できます。
ラポールを形成するための代表的な手法4つ
ラポールを形成するためには、どのような方法があるのでしょうか。ラポールの形成に役立つ代表的な4つの方法を紹介します。
1.ミラーリング
ミラーリングとは、相手と同じような言動をしたり振る舞いを真似たりすることです。人間は同じような行動をとる人物に対して好意的な印象を抱くといわれています。これを応用したのがミラーリングであり、相手の行動をコピーするように真似ることによって、自分に好意をもってもらうことを目的としています。
会話をするときの間のとり方や手の動きを真似してみることは、ミラーリングの代表的な一例といえるでしょう。ただし、あまりにも同じような行動をとってしまうと、相手は不自然に感じ不快に思うため注意が必要です。
営業や接客などにおいて、初対面で信頼関係を構築しなければならない場合は、相手に好意的な印象を与えるミラーリングは有効な方法といえるでしょう。
2.マッチング
マッチングとは、話し方の特徴を合わせることです。ミラーリングは行動を真似るのに対し、マッチングでは声のトーンや話のテンポ、リズムなどを合わせることが大きな違いといえます。
たとえば、声のトーンが低く静かな相手に対し、早口で話しても会話のリズムが合わず噛み合わないことがあるでしょう。このような場合、相手は「会話の主導権が一方的で自分とは合わない」と感じてしまい、信頼関係の構築は難しくなります。
対面でのコミュニケーションにかぎらず、コールセンターなど電話口で対応することが多い職種では、とくにマッチングが重要な手法といえます。
3.バックトラッキング
バックトラッキングとは、オウム返しのように相手の言葉を繰り返したり、相手が用いた言葉を会話のなかに織り交ぜたりする方法です。
会話の相手が自分の言葉を反復してくれることで、「自分の話を理解してくれている」、「自分の話をよく聞いてくれる」と感じるようになります。その結果、相手が信頼してくれるようになり、ラポールの形成につながる可能性が高まります。
ただし、機械的にオウム返しをするだけだと相手が不快感を抱くこともあるでしょう。そこで、会話のなかに相手の言葉を織り交ぜ、話の内容を要約しながら言葉のキャッチボールをすることが重要といえるでしょう。
バックトラッキングは、長時間の会話や複雑な内容を正しく理解しなければならない場面などにおいて、内容を確認しながら会話を続けていくうえでも役立つ手法といえます。
4.キャリブレーション
キャリブレーションとは、相手の表情や行動など、言葉以外のわずかなサインを観察し、それに合わせてコミュニケーションを変化させる方法です。
たとえば、言葉では「理解できた」といっていても、腑に落ちないような表情をしている場合、本心では疑問に感じていることがあるかもしれません。そのような場合、どこがわからないか、または疑問に感じているのかを具体的にヒアリングすることで、相手は「自分のことを理解しようとしてくれている」と感じ、信頼関係が構築しやすくなるでしょう。
ビジネスの場面では、部下は上司に対して本音や本心を打ち明けにくいことも少なくありません。そのため、上司は部下の表情や行動、わずかな仕草などを観察しながら、本音を引き出すようなコミュニケーションが求められます。
お互いの率直な考えや意見を出し合えるよう、上司と部下のラポールを形成するためにも、キャリブレーションは効果的な手法です。
ラポールを形成しビジネスコミュニケーションを活性化しよう
ラポールを形成することは、取引先や顧客といった社外のコミュニケーションを円滑にするだけでなく、上司と部下、同僚といった社内のコミュニケーションを活性化するためにも重要です。ラポールを形成するためにはミラーリングやマッチングなどの手法があり、コミュニケーションをとる相手や状況に応じて使い分けることが求められます。
業績アップやチーム全体のパフォーマンスを向上させるためにも、社員一人ひとりがラポールの重要性を理解することが大切であるといえるでしょう。