【意識調査結果から紐解く】2023年度新入社員の特徴や関わり方のポイントは?
コロナ禍の就職活動から、アフターコロナで通常出社が戻りつつある2023年4月に入社した新入社員。2021年4月・2022年4月入社の新入社員と同様に、緊急事態宣言が発令された2020年4月より約3年間、オンライン中心の学生生活を過ごしてきた世代です。そのため、対面でのコミュニケーションに対して、不安な気持ちを抱える人も一定数いることでしょう。
マイナビ研修サービスでは、2023年度入社の新入社員6,509名を対象とした意識調査を実施しました。本調査では、新入社員の「仕事に対する意識」や「社会人生活に対する期待・不安」について、18の設問を通じて明らかにしています。過去3回の同調査結果と比較しながら、2023年度新入社員の傾向や考え方などを紐解いていきましょう。
・調査期間/2023/3/17~2023/4/19
・調査方法/記入選択式アンケート
・調査対象/弊社が提供する新入社員研修に参加した新入社員
・有効回答数/6,509名
※今回の調査と2018年~2022年調査を一部比較(2020年は調査実施なし)
※構成比の数値は、四捨五入しているため、100%にならないことがあります。
※未回答を含まないグラフもあります。
>>2023年度新入社員意識調査のダウンロードはこちら
2023年度新入社員意識調査結果の傾向
最初に、2023年度新入社員意識調査結果の傾向を3点紹介します。
人間関係への不安を抱く新入社員が増えている
問3「社会人生活に対する“期待の度合い”を教えてください」では、「どちらかといえば不安がある」「かなり不安がある」と回答した割合が合わせて31.7%となり、2022年の29.3%よりも不安を感じていると回答した割合が増加しました。それでは、新入社員はどのようなことに不安を感じているのでしょうか。
問5「社会人生活の中でどのようなことに不安を感じていますか。」では、「仕事をうまくこなせるか」と回答した割合は70.2%と最も多いものの、過去の調査と比べると最も低い数字になりました。
一方で、同質問では「上司・先輩・同僚との人間関係」の回答率が2022年の調査と比べ、わずかに上昇しています。
仕事に対する不安を抱いている新入社員が多いことに変わりはありませんが、人間関係にも不安を抱いている新入社員が増えていることがわかります。
「プライベートを優先したい」と考えている新入社員が増加
問9「仕事とプライベートについて、お聞かせください。」の質問には過去の調査と比べて最多の72.2%が「どちらかといえばプライベート優先の生活を送りたい」または「プライベート優先の生活を送りたい」と回答しました。
また、問11「アフター5(業務終了後)の過ごし方について、お聞かせください。」という質問に対しても、「会社以外の人と過ごしたい」と答えた人の割合は、過去調査と比較して、最多の20.4%に上りました。
先輩に優しく接してほしい新入社員が過去3回の調査で最多である
問7「先輩にはどのように接してほしいですか。」に対する回答では、「優しく接してほしい」「どちらかといえば優しく接してほしい」の合計値が92.4%と、過去3回の調査の合計値を上回りました。
2023年度入社の新入社員は、コロナ禍における長期的なオンラインのコミュニケーションが「ノンバーバルコミュニケーション(表情や目線の機微などで伝わる、相手の感情表現)」を阻害していたことが考えられ、対面でのOJT指導や職場でのコミュニケーションなどで厳しくされることに抵抗があるのではないかと推察されます。
2023年度新入社員の3つの特徴
続いて、意識調査の結果から2023年度新入社員の特徴を紐解いていきます。
傾聴力に自信がある一方、発信力に課題を感じている
問1「あなたが今、会社で発揮できる力はどのような力だと思いますか。」では、最多回答に「相手の意見を丁寧に聞く力(傾聴力)」があがりました。
一方で、問2「これから自分に必要だと思う力は何ですか。」には、「自分の意見をわかりやすく伝える力(発信力)」と答えた割合が37.7%と最も多くなっています。
これらの結果より、2023年度新入社員は「傾聴力=インプットスキル」には一定の自信があるものの、「発信力=アウトプットスキル」に課題があると考えていることがわかります。
上記の結果を考慮して、問8「上司や先輩から特に指導してほしいことはどんなことですか。」を見てみると、過去調査から「コミュニケーション能力」が上昇傾向にあります。『自身が得た情報や知識を、いかにして業務で関わる人たちへ発信していくか』という点は、新入社員を指導する際に重要視するとよいかもしれません。
ストレス耐性に対する自己評価は高くない
問16「社会人になることに対してストレスを感じたことはありますか。」という質問には過去の調査と比べて最多の82.3%が「ある」もしくは「どちらかといえばある」と回答しました。
また、問17「ストレス耐性(ストレスへの抵抗力)の有無について、お聞かせください。」に「ある」「どちらかといえばある」と答えた割合は、前回調査よりも2.2%減少しています。
これらの結果から、2023年度新入社員のストレス耐性に対する自己評価は決して高くない、ということが推測されます。先輩に優しく接してほしいと考えている新入社員が多いことも踏まえ、新入社員に対して丁寧な指導が求められるでしょう。
「やりたい仕事ができるかどうか」を気にしている新入社員が多い
問4「社会人生活の中でどのようなことに期待をもっていますか。」の質問に対しては、2021年・2022年調査を上回る14.6%の人が「自分のやりたい仕事ができる」と回答しました。
さらに、問5「社会人生活の中でどのようなことに不安を感じていますか。」には、過去3回の調査と比べて最多の10.1%が「やりたい仕事ができるか」と答えています。
これらの結果から、過去3回の調査対象の新入社員に比べて2023年度新入社員は、自身のキャリアビジョンと実際の業務で得られるスキルや経験に強い関心を示していることがわかります。
2023年度新入社員と接するうえで押さえておきたい3つのポイント
2023年度新入社員の特徴を踏まえて、彼らと関わるうえで押さえておきたいポイントを3つ解説します。
心理的安全性を担保する
2023年度新入社員は、ストレス耐性に対する自己評価が高くありません。加えて、問5「社会人生活の中でどのようなことに不安を感じていますか。」という質問では、「上司・先輩・同僚との人間関係」が2番目に多い回答率(58.1%)だったことから、企業には新入社員が自分の考えや気持ちを安心して発言できる環境、つまり心理的安全性を担保することが求められるでしょう。
なお、心理的安全性を担保する方法にはたとえば以下があります。
■ 新入社員も含めたメンバーの発言機会を均等にすることで、意見を伝える恐怖を払拭する
■ 新入社員を受け入れる現場の社員全員で、新入社員一人ひとりをサポートする雰囲気づくりをする
■ 課題や問題には、チーム全員がポジティブな反応を示すようにする
■ 新入社員の発言や行動を否定したり批判したりせずに、存在自体を尊重する
仕事の目的・背景やキャリア自律の重要性を伝える
問4「社会人生活の中でどのようなことに期待をもっていますか。」という質問に対して、2021年・2022年調査を上回る37.5%の人が「収入が得られる」と回答しています。
これは、学生時代よりも多くの給料がもらえることへの期待と捉えられる一方、「業務内容に対する希望が薄いがゆえに、収入のみに期待している新入社員が一定数存在する」と考えられるでしょう。
そのため、企業は新入社員に少しでも仕事の意義・やりがいを感じてもらうことを意識することが大切です。ただ業務を教えるだけでなく、一つひとつの仕事の目的や背景を伝えることで、仕事への理解を促す必要があるでしょう。あわせて社員自身が自らのキャリア形成に主体的に取り組む、いわゆる「キャリア自律」の重要性も伝えることも効果的です。
「認める・褒める」を意識し、「オーダーメイド型育成」をおこなう
問7「先輩にはどのように接してほしいですか。」に対しては、過去3回の調査と比べて最多の52.9%が「優しく接してほしい」と回答しています。
2023年度の新入社員を含むZ世代は、個性や多様性を尊重される環境で教育を受けた方も多く、価値観の強要や画一的な指導に耐性が低い場合があります。
たとえば、ルールや前提を伝えない(伝わっていない)中での叱責などは、新入社員にとって大きなギャップとなる可能性もあるでしょう。また育成計画や内容が全体で同一の場合、業種や業務に関連性の低い内容に対しては、取り組みの姿勢や学習理解度に影響を及ぼします。
全員が身に着けておくべき『ビジネスマナー』など、基礎となる部分はしっかりと必要性を理解させ身に着けるとともに、各業務別に求められる『仕事の進め方』や『能力・知識・スキル』などは、対話を通じた個人特性や業務熟練度などを参考に、個別最適化していくことが強く求められるでしょう。
まとめ
今回は意識調査結果を踏まえて、2023年度新入社員の特徴や接するうえで押さえておきたいポイントを解説してきました。
過去3回の調査の対象である2019年・2021年・2022年度新入社員と似た傾向はあるものの、たとえば先輩に「優しく接してほしい」と考えている人の割合は、過去最多の数字となるなど、一定の特徴がみられます。また「やりたい仕事ができるか」を気にしている人が増えているなど、わずかに変化が認められる項目もあります。
そのため、受け入れ側も軽微な接し方の調整をする必要がありそうです。企業は、本調査の結果およびそれらからわかる2023年度新入社員の特徴を踏まえて、より効果的なアプローチをしていきましょう。