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チェンジマネジメントとは?具体的な手法や進め方、企業事例も紹介!

2023年12月27日更新



チェンジマネジメント(Change Management)は、海外のグローバル企業でも活用されている、組織の成功や成果を導くための管理手法です。この記事ではチェンジマネジメントがなぜ企業に必要とされているのか、歴史的な背景や成功事例など詳しく解説します。

目次 【表示】

チェンジマネジメントとは

チェンジマネジメント(Change Management)とは、日本語で「変革管理」とも呼ばれ、「あるべき姿や達成したい目標」に向かい、現状とのギャップを明確にし、ステークホルダーや周囲の環境を巻き込みながら、変革を推進するための管理手法です。

チェンジマネジメントは欧米で組織変革のディファクト・スタンダード(※)としてFortune 500企業(アメリカ合衆国のフォーチュン誌が年1回編集・発行するリストの1つで最新の総収益が全米上位500以内の企業)など多くのグローバル企業で活用されています。チェンジマネジメントはなぜ企業に必要とされているのでしょうか。

(※)ディファクト・スタンダード……企業間の市場競争によって、その業界の標準になった規格のこと。

チェンジマネジメントの必要性

近年、先行きが不透明で将来の予測が困難なVUCAの時代といわれており、2020年の世界的パンデミックがチェンジマネジメントの必要性に拍車をかけました。環境の変化が激しい現代においていち早く順応し、競合他社との差別化や競争優位性を高めることが企業にとって重要になってきました。

    <企業におけるチェンジマネジメントが必要な理由>

  • ・VUCA時代におけるビジネスの変化に柔軟に対応するため
  • ・コロナ禍を経て求められるようになったューノーマルな働き方を実現するため
  • ・業務の効率化や生産性向上する必要がある

今回述べた理由はあくまで一例です。これらを自社の状況と照らし合わせ、必要に応じてチェンジマネジメントを実践し、職場環境に変化を加えていくことが求められているといえるでしょう。


チェンジマネジメントの歴史

チェンジマネジメントは古くからある概念ですが、1990年代にアメリカのビジネス領域で普及しました。

バブル崩壊後の日本においても経営再生を目的にして多くの組織改革が実施されました。しかし、そのほとんどが人員の削減や設備投資の減少といった構造の解体が中心で、労使双方の不満がたまるものであり、むしろ状況を悪化させました。

このような失敗は主に、改革が「人」を無視してきたことに起因しています。そのため、組織文化や人などのソフト面を考慮して変革を進める、チェンジマネジメントの重要性が認識されるようになってきました。


チェンジマネジメントと組織開発の違い

ここで重要なのはどちらも最終目的は「企業利益(収益・売上など全般)」の向上を担っているということです。チェンジマネジメントと組織開発の主な違いは下記の通りです。

  • ・チェンジマネジメント:成果を強調し、経済的な価値を尊重。
  • ・組織開発:プロセスを強調し、人間的な価値を尊重。

チェンジマネジメントの3つのレベル



チェンジマネジメントには、大きく分けて「組織レベル」「プロジェクトレベル」「個人レベル」の3つのアプローチ方法があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

組織レベル

企業全体または事業組織全体で取り組む経営戦略の改革アプローチです。規模も大きいため、プロジェクト単位や個人単位のチェンジマネジメントと並行して実施のうえ、改革を効率的におこなえる組織づくりをしていきます。個人レベル・プロジェクトレベルのチェンジマネジメントをベースに目標を実現し、推進することが可能となります。

プロジェクトレベル

一定数の従業員が集まるプロジェクト単位で変革を図るアプローチです。変革が必要なプロジェクトを明確にし、プロジェクトメンバーがどのように変化すればよいのか気づくように働きかける方法です。プロジェクトレベルのアプローチを実施することで、企業全体に良い影響を与えていくことが可能となります。

個人レベル

従業員一人ひとりに対し変化を促すアプローチです。その人に対して、どのようなサポートが必要かを考え、なぜ変化が必要とされるのかを十分に説明し、個人に最適なタイミングでサポートをおこないます。どのような組織にも変化に抵抗感を持つ人は数多くいますが、個人レベルでアプローチすることで抵抗感をやわらげ、変革を促すことが可能となります。

チェンジマネジメントを成功させる8段階のプロセス


ではチェンジマネジメントを成功させるにはどうすればよいのでしょう。ハーバード大学ビジネススクールのジョン・P・コッター教授が提唱している「変革の8段階プロセス」に沿って具体的なポイントをお伝えしていきます。

1.危機意識を高める

コッターによると、経営幹部の75%が危機意識を認識しない限り、変革は失敗するといわれています。そのため、経営幹部が共通の危機意識をもち、強いリーダーシップのもと従業員の危機意識を高めることが、チェンジマネジメントをおこなううえで必須となります。まずは組織内に「現状のままではいけないこと」を明確に伝え、変化に対して否定的な感情を持反対勢力に変革を阻止されないよう、うまく浸透させる必要があります。

2.変革推進のための連携チームを築く

経営幹部や従業員の「1.危機意識高める」ことが完了したあとは、変革推進のための連携チームを築く必要があります。コッターによると、効果的に変革を進めるチームを生み出すためには、下記の4つの要件が不可欠であると述べています。

  1. パワー(権限)を持った人材
  2. 高い専門知識を持った人材
  3. 組織から信頼を得ている人材
  4. 変革を前に動かすためのリーダーシップ力を発揮できる人材

必ずしも一人でこれらすべての要件を持ち合わせている必要はありません。それぞれの要件を持っている人材を発掘してチームを構築し、各自が持つ能力を発揮できる組織運営をすることで要件を満たすことができるでしょう。


3.ビジョンと戦略を生み出す

変革推進のためのチームを結成した次は、ビジョンと戦略を生み出す必要があります。変革管理を効果的に実施するためには、従業員に向けて、変革によってなにが期待されるのか、今後どのように進めていくのかを明確に示さなければなりません。また多くの人に周知徹底していくために、短い時間で説明可能なビジョンであることが望ましいといわれています。

4.変革のためのビジョンを周知徹底する

ビジョンと戦略を設定したら、現場からの理解を得るために、社内のあらゆるコミュニケーション手段を活用して周知徹底し続けていく必要があります。この場合、全体周知として社長からの1回限りの説明や、文書を掲示板に張り出すだけなどの方法で終わってはいけません。

なぜなら、それだけは従業員に理解してもらうことができず、ビジョンと戦略だけが独り歩きしてしまい現場とのずれが生じてしまう可能性があるからです。これらを回避するためにも、一度だけではなく、繰り返し発信し続けることが重要です。

5.従業員の自発を促す

変革のためのビジョンを周知徹底するなかで変革の行く手を阻む障害が発生する可能性があります。その障害は人だけではなく、企業にもともとある文化や制度なども関わってきます。

時には障害を取り除く判断をおこなうことも必要であり、その手段としては「新たな人材の登用」「社内異動」「制度の見直し」などが挙げられます。ただし、変革推進のための連携チームに権限を持った人材が参加していない場合、手段を実行できず、変革が大幅に遅れてしまう可能性もあります。そのような状況を回避するためにも、必ず連携チームには権限を持った人材を登用する必要があります。

このフェーズでは現状を維持したいという心理的行為から、改革を妨害したり、かき回したりする可能性をもった群(チェンジモンスター)が一定数発生します。チェンジモンスターがいることで、計画していた事業が難航したり、想定通りの結果を得られなかったりと問題が発生するリスク要因となります。そのため、変革を成功させるためには、自社のチェンジモンスターを理解し、原因となっている問題をうまく解決していくことが必要になります。

6.短期的成果を実現する

魅力的なビジョンを掲げ、効果的に変革を推進しても、なかなか成果が見えてこなければ従業員のモチベーションは維持できません。

まずは短期的な成果が出るような仕組みを意図的に組み込んで、眼に見える改善を実感させることが重要です。それらが従業員のモチベーションとなり、変革のプロセスは進行していきます。また、成果に貢献した人を積極的に表彰する、報酬を上げることも効果的です。

7.成果を活かして、さらなる変革を推進する

短期的な成果が蓄積してくると、さらなる改革を推進していく必要があります。企業としてはある程度の成果が出てくると安心してしまいがちですが、この段階で改革を推進するうえで全体的になじまないシステムや構造、制度を引き続き変革することが重要です。なぜならこの段階にきても、取り除いていたはずの障害が再び芽を出してしまい、社内の変革が頓挫してしまうケースがあるためです。

8.新しい方法を企業文化に定着させる

ここまでくると短期的な成果が積み重なることで、新しい方法を企業文化に定着させることが可能となるでしょう。新しい方法を企業文化に定着をさせるために下記2つのポイントがあります。

  1. 新しい方法と企業の成功の関係を企業内で発信し続ける
  2. 次世代リーダーへの能力開発を進めていく

変革のレベルにもよりますが、最低でも3年、長いものだと5年~10年ほど期間がかかるといわれております。時間をかけて変革の重要性を説きながら、次世代にしっかりと引き継ぐことで新しい方法を企業文化に定着させることができるでしょう。

チェンジマネジメントの企業事例



ここではチェンジマネジメントの企業事例として、厚生労働省の働き方改革取り組み事例集から2つ成功事例をご紹介します。

時間外労働の削減に成功したA社の事例

A社概要:飲食料品卸売業
長時間の残業など従業員に過酷な働き方を強いており、社内の雰囲気は暗く、従業員には活気がなく、劣悪な環境が問題となっていました。

[実践内容]
代表取締役社長自身が働き方を変え、数字にしがみつかない経営方針に変えるなど残業削減に取り組みました。さらに社屋の大規模リノベーションを決行し、部署間、社長室の壁を取り去ったのが特徴的です。

[実践の成果]
月平均残業時間の約10%削減。社内改革を取り入れて2年で年次休暇の取得率が上がりました。社屋のリノベーションの結果、オープンな社風が確立、部署間の連携も取りやすくなりました。そのほか、社員食堂の食材には有機野菜や大豆ミートが使用され、低価格で利用でき、従業員自身も自分の健康に気を遣うようになったそうです。

生産性向上による待遇の改善につながったB社の事例

B社概要:道路貨物運送業
業界の慢性的なドライバー不足解消による生産性低下が課題となっていました。

[実施内容]
労働時間8~9時間の「リレー輸送」と、改善基準告示で定められた1日13時間の拘束時間を最大限利用する中距離対応の「シャトル便」、ドライバーの働き方に合わせて選べる輸配送方式を確立。隔週土曜出勤を週休2日制へと完全移行し、全従業員の日報提出を義務化しました。

[実施の成果]
年間休日が大幅にアップし、全従業員の日報提出は従業員の業務の把握にも繋がり、業務の割り振りやシフトを決めるのにも役立ったそうです。

組織変革の推進に向けてチェンジマネジメントを実践してみよう

組織改革は、さまざまな阻害要因に対処し、従業員の協力を得ながら計画的にプロジェクトを進めていく必要があります。組織再編、DX、システム導入、プロセス改革といったさまざまな変革プロジェクトなど、時代の変化に柔軟に適用できるアプローチとしてチェンジマネジメントを実践してみてはいかがでしょうか。

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