コンフォートゾーンとは?意味やゾーンの外側に出るメリット、ポイントを解説
日々の生活のなかで安心して過ごせる場所や環境を「コンフォートゾーン」と呼び、ビジネスにおいては、自分で進行できる業務やルーティン業務などがコンフォートゾーンに当てはまります。初期キャリアの形成や経験が少ない業務において、コンフォートゾーンで経験値を向上させることは大変重要です。
しかし、生産性の向上やキャリア成長を目指す場合、新しい業務や職掌に挑戦し、スキルの習得や経験を積むことが求められ、コンフォートゾーンのように安心して過ごせる環境下に居続けることで、成長機会が失われる可能性があります。
では、コンフォートゾーンから抜け出し、成長機会を形成するためにはどうすればよいのでしょうか?本記事では、コンフォートゾーンとはなにか、成長するきっかけ、コンフォートゾーンの外側に出るメリット、ポイントを解説します。
コンフォートゾーンとは?
コンフォートゾーンとは、ストレスや不安を感じることなく、心地よく過ごせる環境や状態のことを指します。コンフォート(comfort)は、快適・心地よいといった意味を持っています。
コンフォートゾーンは、自分にとって安心感があり、リスクを冒さずに日常的な行動ができるため、居心地が良いと感じる領域となっています。日常生活や業務、社会的な関係のなかで、慣れ親しんだ場所や行動、交流がコンフォートゾーンに当てはまります。ビジネスにおいては、自分で自信を持って進行できる業務やルーティン化している業務などが当てはまります。
コンフォートゾーンそのものは悪い状態ではないものの、その状態では現状維持に留まってしまいます。一方で、成長の機会を得るための新しい挑戦や未知の経験は、コンフォートゾーンを超えた適度なストレスがあるところに存在すると考えられています。
そのため、コンフォートゾーンに留まり続けることは成長を妨げる可能性があり、ある目標や行動に対して「自分ならできる」といった自信を持つことを指す自己効力感が低下することもあります。
ラーニングゾーンとパニックゾーンの関係
「コンフォートゾーン」の外には、「ラーニングゾーン(ストレッチゾーン)」と「パニックゾーン」の2つのゾーンが存在します。この3段階のゾーンのフレームワークはミシガン大学のビジネススクール教授であるノエル・M・ティシー氏によって提唱されました。
コンフォートゾーンの外にある2つのゾーンは、学びや成長を経験するうえで重要な役割を果たしますが、その違いと関係を理解することが重要です。
ラーニングゾーン(ストレッチゾーン)
ラーニングゾーン(ストレッチゾーン)は、自分が慣れ親しんだコンフォートゾーンの外側に位置し、少しだけ挑戦を伴う領域のことです。ここでは、過去の経験やスキルを活かしつつも、新しいことに取り組むための努力が求められます。
たとえば、「これまでおこなっていた業務の発展形となる新たなプロジェクトへの参加」や「チーム内での地位が向上し、周囲をまとめる立場になる」などが挙げられます。ストレスや不安を感じることもありますが、そのなかで学びや成長を得られます。
パニックゾーン
一方、パニックゾーンはラーニングゾーンのさらに外側に位置し、自分の経験や知識に対して求められるレベルが高く、今の経験や知識が役立ちづらい領域のことです。ここでは、過度のプレッシャーやストレスにより、冷静な判断や学びを得ることが難しく、混乱状態に陥ることもあります。
たとえば、「知識や経験がまったくない分野についてのプレゼンテーションを任されてしまう」や「リーダーの経験がないにも関わらず別分野のチームリーダーを任されてしまう」などが挙げられます。この状態では、成長を促進するどころか、心身の負担が大きくなり、業務への自信やモチベーションが喪失してしまうリスクがあります。
3つのゾーンの関係性
コンフォートゾーン、ラーニングゾーン、パニックゾーンは、成長のプロセスにおいて連続的な段階を形成しています。コンフォートゾーンは、安心感があり、リスクや不安を感じることのない領域です。ここでは、現状維持が容易ですが、新しい知識やスキルを得ることが難しいため、成長の機会が限られてしまう側面を持っています。
次に、一歩踏み出してラーニングゾーンに入ると、適度な挑戦とストレスがあり、少しの不安を感じるものの、学びと成長につなげられます。このゾーンでは、新たなスキルを習得したり、既存の能力を伸ばしたりすることができ、成長に適した環境といえるでしょう。
しかし、ラーニングゾーンを超えてパニックゾーンに入ってしまうと、過度なストレスや不安が生じるため、失敗や挫折のリスクが高まり、成長が止まることにつながりかねません。この3つのゾーンの関係性を理解し、コンフォートゾーンの外側での挑戦を続けるラーニングゾーンを目指しつつ、パニックゾーンに陥らないようバランスを保つことが大切です。
コンフォートゾーンの外側に出るメリット
コンフォートゾーンの外側に出ることで得られるメリットを紹介します。
柔軟な対応力が身に付く
コンフォートゾーンの外側に出て挑戦する経験を積むことで、新規プロジェクトの立ち上げや急なトラブル対応など未知の状況に柔軟に対応する力が養われます。未知の状況に直面しても、解決策を見つけたり、創意工夫で乗り超えたりすることが期待できます。
自己効力感の向上
挑戦を成功させるたびに「自分はできる」という自信が培われ、それが自己効力感の向上にもつながります。自信を持って次の挑戦に挑めるようになり、さらなる成功体験を積み重ねていく循環を生むことが期待できます。
より大きな目標に取り組める
コンフォートゾーンの外側で挑戦を繰り返すことで、最初は難しいと感じたこともやがて慣れ、自分のコンフォートゾーンとして取り込めます。このようにして、徐々に自分のコンフォートゾーンを広げていくことで、より大きな目標にも取り組めるようになります。
コンフォートゾーンの外側に出るためのポイント
コンフォートゾーンの外側に出るためのポイントを紹介します。
自分の現状を把握し、成長できる部分を見つける
コンフォートゾーンの外側に出るためには、まず、現在の自分の業務や立場がどのゾーンにあるかを確認することが重要です。たとえば、ルーティン化している業務や、不安やストレスを感じない立場にいる場合、それはコンフォートゾーンの内側である可能性があるといえます。自分が次に挑戦するべきラーニングゾーンを明確にし、そのゾーンで求められるスキルを把握することが必要です。
コンフォートゾーンの外に目標を設定する
コンフォートゾーンの外に目標を設定し、その達成に向けて行動を起こすことが次のステップです。ただし、目標をむやみに高くするのは避けるようにしましょう。高すぎる目標は、どこから取り組めばよいかが見えづらく、パニックゾーンに入りやすい状態であり、モチベーションを下げる要因にもなります。
また、目的を達成するために成し遂げたい内容を具体化した指標にすることも重要です。こうした取り組みにより、小さな成功を積み重ねることで、徐々に自信をつけていくことにつながります。
挑戦と失敗を受け入れて行動し続ける
今までやったことがない新しい挑戦には失敗はつきものです。そのため、失敗をした際に自分自身の仕事や業務を客観視し、業務に関する考え方や価値観、行動などを客観的に振り返る内省(リフレクション)をおこなうことで、改善点を見つけ、成長の糧に変えられます。失敗を恐れず、改善して行動し続けることで、成長につなげられるでしょう。
他者からのフィードバックと協力を活用する
自分一人で成長を続けるのが難しいと感じた場合には、他者からのフィードバックを積極的に取り入れることや、自分と同じ目標を持つ人と話し合うことが効果的です。
他者の視点から、自分では気づけない弱点や改善点を発見する機会が得られる可能性があるほか、同じ目標に向かっている仲間と協力することで、目標達成までの道のりを一緒に取り組めます。これにより挑戦への不安を軽減し、前向きに取り組めるようになるでしょう。
継続的にモチベーションを保つ仕組みを作る
慣れない、ストレスのかかる業務に取り組むには、モチベーションを維持するための仕組みがあるとよいでしょう。たとえば、途中経過を見える化し、進展を実感しやすくすることで、目標に向けてのやる気を保てます。そのための取り組みの一例として、ゲーミフィケーションが有効です。
ゲーミフィケーションとは、ゲームの要素を非ゲームの場面に活用してモチベーションを高める手法です。たとえば、業務の途中経過をゲームの代表的なジャンルのひとつであるロールプレイングゲームにたとえて、「経験値」や「レベル」として視覚化することで、各タスクの達成が目に見える成長として感じられるようにします。
また、特定の目標を達成すると「報酬」が得られる設定にすることで、モチベーションの維持につながります。こうした仕組みが、次のチャレンジへの継続的なモチベーションを育むことにつながります。
コンフォートゾーンのバランスを意識した成長を
コンフォートゾーンは、安心して自分を保てる大切な場所です。しかし、積極的に成長を求める場合には、時折このゾーンの外側に出て、ラーニングゾーンに身を置くことも重要です。ラーニングゾーンでは、新しいスキルや経験を得られる機会があり、自身の成長につなげられます。ただし、パニックゾーンに入り込むほどの無理は、不安やストレスを増大させ、成長の妨げとなります。
自分の現状を把握しながら、コンフォートゾーンの居心地の良さを尊重しつつも、適度な挑戦でバランスを取るようにしましょう。