次世代リーダーとは?育成方法や選抜方法をわかりやすく解説
次世代リーダーの育成は、現代の組織が直面する最重要課題のひとつです。技術の進化、働き方の変化、消費者行動の変化など、近年さらにビジネス環境が急速に変化しています。そのような背景のなかで、組織が持続的に成長していくためにはリーダーシップを発揮し、組織を導ける人材が不可欠です。
そこで本記事では、次世代リーダーについて解説します。次世代リーダーに求められるスキルや効果的な育成方法までを紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
次世代リーダーとは
次世代リーダーとは、組織の将来を担う経営者候補や管理職候補を指し、将来のCEOなど経営を担う中心となる人材です。戦略的思考力、高度なコミュニケーション能力に加え、グローバルな視野やデジタル技術の理解、創造性とイノベーション力が求められます。
次世代リーダーは、これらの能力を駆使して企業の持続的成長や競争力向上などを牽引し、変化の激しいビジネス環境に適応しながら組織を導く重要な役割を担います。
次世代リーダーの育成が求められている3つの背景
次世代リーダー育成の重要性が叫ばれる背景には、急速に変化するビジネス環境が挙げられます。ここでは、「なぜ、次世代リーダー育成が必要なのか」という点を確認します。
経営環境・ビジネス環境の変化が激しくなっている
デジタル化やグローバル化、さらにAIの登場などにより、ビジネス環境は急速に変化しています。日本の企業も変化に合わせた既存事業の適応や、新たな事業機会の創出ができるリーダーの育成が急務となっています。
優秀な人材を確保することが難しくなっている
グローバル化や人材の流動化により、経営者などの要職を担える人材の獲得競争が激化しています。後継者難による倒産は年々増加しており、組織内で計画的に次世代リーダーを育成することの重要性は、日に日に高まっているといえるでしょう。
出典:株式会社東京商工リサーチ「「人手不足」関連倒産(後継者難・求人難・従業員退職・人件費高騰)」※2023年4月~9月
世代交代に向けた計画的な育成の重要性が高まっている
多くの企業で経営層の高齢化が進んでおり、円滑な世代交代が課題となっています。次世代リーダーを計画的に育成することで、組織を持続しながら新しい視点や能力を経営に取り入れられます。その結果として、組織の持続的な成長と競争力の維持・向上を図れるのです。
次世代リーダーの育成が難しいといわれる理由
「次世代リーダー育成の大切さは理解しているけれど取り組めていない」、そういった企業は少なくありません。
経済産業省の「企業価値向上に向けた経営リーダー人材の戦略的育成についてのガイドライン」によれば、経営人材候補の育成を目的として何らかの取り組みしている企業割合は52.6%となっています(n=194)。裏を返せば、およそ半数の企業は次世代リーダーの育成に対して、具体的な取り組みができていない状況です。その主な理由としては、以下のような点が挙げられます。
- ・次世代リーダーの定義や人物像が明確でない
- ・長期プロジェクトになるため優先順位が低くなりやすい
- ・育成に時間がかかるためモチベーションの維持や人材確保が難しい
長期的な育成と短期的な成果のバランスを取る難しさは、次世代リーダー育成においてネックになりやすい点です。また、適切な育成機会を創出することや、個人の資質と組織のニーズを適切にマッチングさせることが課題になるケースが少なくありません。
次世代リーダーに求められるスキル
次世代リーダーには、変化の激しい環境下で組織を成功に導くための多様なスキルと資質が求められます。どのようなスキルが必要なのか、一つひとつ見ていきましょう。
リーダーシップとマネジメント能力
次世代リーダーには、組織が進むべき方向性を示し、チームを導くリーダーシップが不可欠です。同時に、効果的な目標設定、資源配分、進捗管理などのマネジメントスキルも欠かせません。中長期的な視点で組織の方向性を定め、目標を達成するために現実的な方策を実行する能力が求められます。
戦略的思考力と意思決定能力
複雑化するビジネス環境において、次世代リーダーには高度な戦略的思考力も必要です。さらに市場動向を分析し、戦略を立てたうえでそれを適切かつ迅速に意思決定をする能力も求められます。
コミュニケーション力と対人関係構築力
次世代リーダーは、組織内外の多様なステークホルダーと円滑にコミュニケーションを取ることが求められます。そのため、明確なメッセージの発信、傾聴、信頼関係の構築など、健全な対人関係を築く力がリーダーシップを発揮するうえで重要な要素となります。
変革推進力とイノベーション創出能力
急速に変化する環境に適応するため、次世代リーダーには変革推進力とイノベーション創出能力が求められます。既存の枠組みにとらわれず、新たな価値を創造し、それを実現に導く力が重要です。
次世代リーダー育成の流れ
次世代リーダー育成は、体系的かつ継続的なプロセスを通じておこなわれます。組織の規模や特性に応じて適切なアプローチを選択し、以下の流れに沿って進めることが重要です。
次世代リーダーの具体的な人物像の決定
まずは自社の経営戦略にもとづいて、求める次世代リーダー像を明確に定義します。必要なスキル、経験、価値観などを検討し、現在の組織課題や将来的なビジョンを考慮した要件設定が重要です。
社内人材の現状把握
次に、社内人材のスキルや能力を適切に把握できるような体制づくりによる人材情報の可視化をおこないましょう。また、人材アセスメントなどを通じて、把握した情報が適切かの判断をおこなうことも大切です。
育成対象の選抜
定義された人物像にもとづいて、次世代リーダー候補を選抜します。この際、上司による恣意的な判断とならないよう客観性を持たせることが重要です。また、優秀な人材を事業部門が抱え込んでしまう事例も多く見られます。これを防ぐためにも、経営層や各事業部門の責任者、人事担当、役員など複数の視点から評価・選抜をおこなうとよいでしょう。
人材開発・教育計画の策定
選抜された候補者それぞれに対して、育成目的と現状のスキル・経験を加味した個別の育成計画を策定します。OJTやOFF-JTを含む育成プログラムを用意することに加えて、人材育成を円滑に進めるための環境づくりも同時に進めましょう。候補者の上司に対する理解の浸透、メンター制度などのサポート体制を構築します。
育成施策の実行と検証
策定された計画にもとづいて育成施策を実施し、定期的に進捗を評価します。必要に応じて計画を調整し、効果的な育成を継続します。
効果的な次世代リーダー育成のポイント
最後に、次世代リーダー育成を効果的におこなっていくためのポイントを解説します。
早期から計画的に育成プログラムを実施する
次世代リーダーの育成は、長期的な視点を持って早期から取り組むことが重要です。サクセッションプランの考え方を取り入れ、潜在的なリーダー候補を早期に特定し育成をおこなうことで、対象者は必要なスキルと経験を効率的に積めます。サクセッションプランとは「後継者育成計画」と訳される人材マネジメント手法を指します。詳しくは以下の記事をご覧ください。
実践的な経験を通じた成長機会を提供する
次世代リーダー育成には、タフアサインメントの取り組みが効果的です。タフアサインメントとは、社員の現在の能力を超えた挑戦的な職責を意図的に割り当てる人材育成手法です。チャレンジングな目標を育成対象者に課すことで、飛躍的な成長を促します。
なお、タフアサインメントの取り組みを効果的に進めるうえでは、リフレクション(内省)が重要です。上司やメンターがコーチングをおこない、経験の振り返りや学びの定着を促進します。このプロセスを通じて、次世代リーダーの候補者は経験から学び取る力を養えます。
アクションラーニングによる問題解決能力の向上
アクションラーニングとは、現実の課題を題材にグループで議論し、解決するための方法を考え、その振り返りをおこなうことで問題解決能力やリーダーシップを高める手法です。この方法により、実践的な問題解決スキルだけでなく、チームワーク、傾聴力、創造的思考力などを同時に強化できます。
コンセプチュアルスキルの強化
次世代リーダーには、コンセプチュアルスキル(概念化能力)も求められます。コンセプチュアルスキルは、複雑な状況の大枠を理解し、本質を捉える力を指します。大局的な視点で組織を捉える力、将来のトレンドを予測する力、抽象的な概念を具体的な行動計画に落とし込む力などが含まれます。自力で鍛えるのが難しい場合は、必要に応じてロジカルシンキングやクリティカルシンキングなど、コンセプチュアルスキルを構成する要素を高める研修を実施するのも効果的です。
持続可能な組織成長のためには次世代リーダー育成が不可欠
次世代リーダーの育成は、組織の持続的な成長と競争力維持のための重要な戦略です。急速に変化するビジネス環境に適応し、イノベーションを推進するためにも先見性と変革力を持つリーダーは必要不可欠です。
計画的かつ体系的な次世代リーダー育成プログラムを策定・実施し、優秀な人材の育成や組織全体の成長促進を図りましょう。