中堅社員の役割とは?求められるスキルやあるべき姿について解説
組織においてある程度の業務経験を積むなかで、周囲からは「中堅社員」と呼ばれるようになります。中堅社員には、若手社員や管理職にはない役割があり、求められるスキルや設定すべき目標が異なります。この記事では、中堅社員が担うべき役割や求められるスキルなどについて、詳しく解説します。
中堅社員とは?
中堅社員とは、どのような立ち位置にあるのでしょうか。一般的に新人や若手社員に求められるのは、技術的、専門的な知識やスキルの習得であり、与えられた業務を期日までに正確に遂行することが重視されます。
一方で、中堅社員ともなれば、自分の担当業務以外の点でも求められることが増えてきます。まずは、中堅社員とはどのような社員を指すのか、確認してみましょう。
中堅社員は何年目から?
中堅社員は勤続年数で何年目からといった明確な基準は決まっていないものの、一般的には、入社3年から10年目程度(20代後半から30歳前後)で、役職についていない社員を指すことが多いでしょう。
企業によっても基準が異なり、年代で区切って中堅社員とする場合や、一定の能力を満たした人材を中堅社員とするところもあるようです。
また前職である程度の業務経験を積んだ中途入社社員の場合は、入社1年目から中堅社員と呼ばれることもあるでしょう。
中堅社員と管理職の違い
管理職は、係長や主任、リーダー、課長、部長などの役職を持ち、立場に応じた決裁権を持つ社員を指します。そして、部下の指導やチームの総合的なマネジメントをおこなうといった役割を担います。
一方で、中堅社員は、管理職である上司を支える立場であり、役職はないものの後輩やチーム全体の業務支援や指導などをおこないます。
中堅社員が担う3つの役割
先にもお伝えしたとおり、新人・若手社員は、与えられた業務を期日までに遂行する能力が求められます。
一方で、中堅社員は、自身の担当業務を遂行するのはもちろん、上司の補佐や後輩の支援、部署内の業務の推進などの幅広い役割を担うといった、部署の中心的な存在となることが求められます。
中堅社員に求められる役割について詳しく見てみましょう。
上司の補佐
中堅社員は、上司と新人・若手社員を繋ぐ架け橋といえます。上司が示すビジョンを新人・若手社員に伝え、適切にリードしながら、チームをけん引するのも中堅社員の役割です。
ときには上司に対して適切な助言をおこなう必要もあるでしょう。組織や部署の「目的」「目標」をきちんと理解したうえで、主体性を持って行動することが求められます。
こうした役割を自覚し、具体的な行動に移せる中堅社員がいることで、チームや組織内に会社のビジョンが定着しやすくなり、目標に向かって適切に進むことができるでしょう。
また、中堅社員としての役割を担うことによって、自律的に行動する姿勢が身につくなど、自身のスキルアップにも役立ちます。上司の立場で考え、行動に移すことは、マネジメントを担うための予備的訓練となり、将来、管理職になったときの土台となるでしょう。
後輩の支援
中堅社員による後輩の支援は、実際に業務を手伝ったり、代行したりすることだけではありません。最終的に、新人・若手社員が自律的、能動的に業務を遂行できるようになるための支援をおこなう必要があります。実際には、OJTトレーナーやメンターなどとして、支援に当たることも多いでしょう。
また、多忙な上司に代わり、チームメンバーの業務の状況や感情の変化を把握するのも中堅社員の役割です。業務がうまくいかず感情面に問題が出るケースや、逆に感情面での問題が業務に支障をきたすケースなど、業務面、感情面は切り離すことができないものであるため、どちらか一方だけのサポートでは不十分です。
業務面においては、やり方を教えるほか、その業務に詳しい人や頼りになる人を引き合わせるなど、状況にあったサポートをおこなうといいでしょう。
加えて、感情面においても、業務の状況と個々人の言動から総合的に判断し、業務上に過度なストレスがないか、違和感を持っていないかなどをモニタリングしながら、適切なサポートをおこなう必要があります。
業務の推進
中堅社員は、業務遂行の要となる存在です。経験を積むなかで、大規模なプロジェクトや複雑な業務を任されることもあるでしょう。与えられた業務をこなすことに精一杯な若手時代とは異なり、主体的に業務を推進し、目標達成に向けて、より積極的に取り組む必要があります。
また、1人では成し遂げられない業務においては、周囲を巻き込みながら、課題解決につなげていく姿勢が重要です。
中堅社員に求められるスキル
中堅社員として上司の右腕となり、チームから信頼される人材になるためには、以下のようなスキルが求められます。
リーダーシップ
上司を補佐し、チームをけん引する立場にある中堅社員は、リーダーシップを発揮する必要があります。
具体的には、自ら率先してチームの目的・目標達成に向けた行動をする「率先垂範」、チーム全体で目的・目標達成に向けた適切な道筋を示し、解決に働きかける「軌道調整」、チームメンバーの不安や不満を傾聴し、モチベーションアップを促す「チームの活性化」の3つの要素を最低限身につけておくといいでしょう。
さらに、業務の目的や組織の目標、企業理念などをしっかり把握しておかなければいけません。チームをけん引するには、これらを新人・若手社員が理解できるように自分自身の言葉で伝えられるようにしておくことも重要です。
これらのスキルは、将来的に管理職を任されたときにも欠かせないものです。中堅社員として、チームの方向性を示しながら、主体的、自律的に判断、行動できる力が問われます。
フォロワーシップ
チーム全体の状況を把握している中堅社員として、現在進行している業務やプロジェクトが組織目標の道筋から外れていることに気づいたときには、上司に情報提供や助言をおこなう必要があります。そこで求められるのが、目標達成に向けて能動的に上司を支援するフォロワーシップのスキルです。
フォロワーシップとは、上司の補佐役として、組織目標に向けて、チームが正しい方向に進んでいるか確認し、ズレがあれば助言、提言をおこなうような行動や姿勢を指します。
先にもお伝えしたとおり、中堅社員はチームをけん引するために、組織目標や上司のビジョンなどを自身の言葉で伝えることが大切です。これらの働きかけにより、チームは効率的かつ効果的な業務の遂行が可能になり、求められる成果達成に近づくことでしょう。また、自ら考え、上司に対しても積極的に働きかけることで上司からの信頼を得られます。
指導・支援スキル
後輩の支援や指導をおこなう際、まずは相手を理解し、適切なサポートをおこなう必要があります。実務面だけでなく、感情面についても、チームメンバーの普段の様子を観察し、状況を把握できるようにしておくことが重要です。普段からコミュニケーションをとり、支援に必要な情報を集めておきましょう。
また、学校の授業のように具体的な知識やスキルを教えるティーチングと、対話をしながら相手の考えを引き出すコーチングのスキルを適切に使い分け、問題解決を支援することも大切です。後輩の自律性を損なわないように心がけながら、成長に繋がる支援や指導を進めるスキルが求められます。
コンセプチュアルスキル
中堅社員ともなれば、複雑な業務を担う機会も増えてきます。そうした業務を周囲と連携しながら効率的に進め、成果を出すためには、「複雑な物事の大枠を理解し、本質をとらえる力(コンセプチュアルスキル)」が求められます。
具体的には、論理的に筋道を立てて物事を考える能力「ロジカルシンキング(論理的思考)」や、固定観念に縛られず、多角的に物事をとらえる能力「ラテラルシンキング(水平思考)」などのスキルが挙げられます。
コンセプチュアルスキルを身につけるためには、普段から、視点・視座を変える、視野を広げる、共通項を見つけ出す、常に目的に立ち返って考えるといったポイントを意識するといいでしょう。
巻き込む力
新人・若手社員とは異なり、中堅社員には、これまで培ってきた人脈や、連携できる部署・同僚が多いはずです。
そうした周囲の人を巻き込んで、目標達成のために協働を促す「巻き込む力」も求められます。ただし、相手の立場や都合を把握したうえで、Win-Winになるような提案をすることが大切です。
また、周囲との良好な人間関係を保つためにも、日頃から関係構築を意識するように心がけましょう。
中堅社員のあるべき姿とは
中堅社員として、上司を補佐し、後輩をサポートしていくには、さまざまな経験を積む必要があります。活躍できる中堅社員にはどのような要素が必要なのか見ていきましょう。
組織目標や業務の目的を理解している
中堅社員としてリーダーシップやフォロワーシップを発揮するためには、組織が掲げる目標や目的を明確に理解しておく必要があります。これは後輩の支援役や業務の推進役を担う際にも重要です。
目標や目的を理解したつもりにならないためにも、それらを自分自身の言葉で伝えられるようにしておきましょう。
業務に精通し、成果を上げる
中堅社員は、組織内で業務経験を積み、専門的な知見を持つ人材として評価されます。後輩を支援するにあたっても、自身の十分な知識や経験必要です。
加えて、具体的な実績を持ち、着実に成果を上げていることも大切です。中堅社員としての自覚を持ち、さまざまな役割と並行して、自身の担当業務をきちんとこなしていく意欲の高さが求められます。
中堅社員は、次世代のリーダーとしての活躍が求められる
上司の補佐役や後輩の支援、業務の推進など、中堅社員には果たすべき役割が多くあります。また、そうした役割は、組織の継続的な発展に欠かせないものです。一方で、中堅社員自身は、自分の業務を抱えながら、複数の役割の担うため負荷も大きく感じがちです。
しかし、そうした経験こそが、自身の成長につながり、次世代のリーダーとして活躍するための土台となることでしょう。人事部門が中堅社員の人材育成を進める際には、中堅社員が自身の役割を認識し、自覚を持ってその役割を全うできるよう、効果的なスキルを身につけることを提案しましょう。