ヒューマンスキルとは?8つの構成要素と高め方
円滑なコミュニケーションと対人関係の構築に役立つヒューマンスキルは、ビジネスシーンにおいて重要な役割を担います。アメリカの経営学者ロバート・L・カッツが提唱し、近年、企業には多様な人材の活躍が求められていることから注目を集めています。本記事では、ヒューマンスキルの8つの構成要素とヒューマンスキルの高め方について解説します。
ヒューマンスキルとは
ヒューマンスキルとは、ビジネスマナーやコミュニケーション能力など、その人が身につけている仕事のベースとなる力のことです。「自分の考えを相手に正確に伝える」「相手の考えを理解する」など、相互のコミュニケーションを促す能力とも言い換えられます。
カッツモデルとは
ビジネスパーソンに必要な能力を示す理論として、アメリカの経営学者ロバート・L・カッツが提唱したカッツモデルでは、経営者や幹部クラスを「トップマネジメント」、中間管理職クラスを「ミドルマネジメント」、主任やリーダークラスの「ロワーマネジメント」の3つの階層に分け、「コンセプチュアルスキル」「ヒューマンスキル」「テクニカルスキル」の3つの必要とする能力の割合が階層によって異なるとしています。
図の通り、カッツモデルにある3つのスキルのうち、「ヒューマンスキル」はどの階層でも必要とされるスキルです。ヒューマンスキルは、リーダーシップやコミュニケーション能力などの8つから構成されています。それぞれについて、詳しくは後述します。
ヒューマンスキルが求められる背景
ヒューマンスキルは上記で説明した3つの階層だけでなく、すべてのビジネスパーソンに必要なスキルです。グローバル化やダイバーシティの推進などを背景に、企業では多様な人材が活躍しています。互いを理解し尊重しあいながら、円滑に業務を進めるためにもヒューマンスキルは重要です。
特に管理職においては、マネジメント上さまざまな価値観を持つメンバーと円滑なコミュニケーションをとり、良好な関係を構築することが求められています。これらを実現するために、ヒューマンスキルの向上が重要と考えられています。
ヒューマンスキルの構成要素
ここからは、前述したヒューマンスキルの8つの構成要素について説明します。
構成要素には、主に次の8つがあります。
- ・リーダーシップ
- ・コミュニケーション能力
- ・ネゴシエーション能力
- ・プレゼンテーション能力
- ・コーチング能力
- ・ヒアリング能力
- ・ファシリテーション能力
- ・向上心
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
リーダーシップ
リーダーシップとは、組織の中で目標を定め、組織を維持しながら成果を出す能力のことを指します。日本語では「指導力」や「統率力」と呼ばれることもあります。チームの先頭に立ってメンバーを率いるだけでなく、メンバーとともに目標に向かって業務に取り組み成果を出すこともリーダーシップです。
リーダーシップにはさまざまな理論があり、たとえばアメリカの心理学者であるダニエル・ゴールマンが提唱したリーダーシップスタイルには、次の6つがあります。
メンバーと1対1の関係を重視してコーチングをしながら進めていくスタイル | |
メンバー同士の関係性や感情に配慮するスタイル | |
目標の達成や課題解決のための提案を歓迎し、合意形成を図りながら仕事を進めていくスタイル | |
ビジョンを実現するためにメンバーを巻き込んでいくスタイル | |
実務能力に長けたリーダーが組織を引っ張り、パフォーマンスを発揮するスタイル | |
上司から部下に対し、強い指示や命令を出すトップダウン型のスタイル |
リーダーシップについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
コミュニケーション能力
ビジネスにおいてのコミュニケーション能力とは、多様な人と協働して成果をあげるために、互いが自分の意志や意図、感情、情報を伝え合い共有し、理解するためのスキルです。これを一言で表すとすれば「相互理解」のためのスキルとも表現できるでしょう。
コミュニケーション能力の向上により、業務の円滑化や良好な人間関係の構築・維持などを図れます。
ネゴシエーション能力
ネゴシエーションとは、日本語で「交渉力」のことです。ネゴシエーション能力は、交渉や折衝を円滑に進める能力のことを指します。ネゴシエーション能力を身につけると、交渉や合意形成における意見の調節の際に自分と相手の立場で物事を考え、両者にメリットのある方法を見つけ、互いに納得した形で合意を得られるようになります。
プレゼンテーション能力
プレゼンテーション能力とは、プレゼンテーションを通して相手に自分の考えを理解・納得してもらい、行動してもらう能力のことです。ビジネスにおいては、相手の意思決定を積極的に動機付ける手段としてプレゼンテーションをおこなうことがあります。
プレゼンテーション能力を身につけることで、たとえば顧客に対して実施する商品やサービスを紹介する際、相手が必要とする情報や商材の魅力を的確に伝えられるようになり、契約成立へと導くことに役立ちます。また、自身が立案した企画を説明する際にプレゼンテーション能力を発揮することで、他者を巻き込み企画の実現に近づけられる可能性が高まります。
コーチング能力
コーチング能力とは、コーチングを通して、個人やチームの能力を最大限に発揮してもらえるよう育成する能力のことです。コーチングでは、トレーナーとトレーニーの1対1のコミュニケーションにおいて、主体的に目標達成できるようサポートし人材の育成を図ります。
コーチング能力を身につけることで、メンバー一人ひとりに合わせて、成功するプロセスの発見を促せるようになります。
傾聴力
傾聴力とは、相手の話に耳を傾け、相手に共感しながら理解を示せる能力のことです。
傾聴力の向上により、相手の話を聴くにとどまらず、相手の言いたいことや伝えたいことに重点を置いて理解できるようになります。
ファシリテーション能力
ファシリテーション能力とは、会議などで円滑な進行のための支援をおこなう能力のことです。ファシリテーション能力を身につけることで、参加者の発言を促しながら、多様な意見を理解して、議論の活発化に貢献できるようになります。
向上心
向上心とは、設定した目標に対して積極的に取り組める能力のことです。向上心には、本人の成長しようとする意思や努力する姿勢も含まれています。向上心を身につけることで、目標を達成しようと前向きかつ積極的に行動できるようになります。
目標に向かい努力し、前向きに取り組む姿は、チームメンバーにもポジティブな影響を与えられる可能性があります。
ヒューマンスキルの高め方
適切な知識のインプット
まずは研修やワークショップを通して、適切な知識をインプットします。個々人の目的や理解状況にマッチする研修・ワークショップを選択しましょう。また、研修やワークショップだけでなく、個々人が継続的に学んでいけるような環境を整えることも大切です。
インプットした内容を実践する
さまざまな知識をインプットした後は、実践し、スキルの獲得を目指しましょう。またインプットのみ、実践のみで終わらないよう、どのスキル獲得に向けてどのような知識を手に入れ、実践してきたのかを振り返られるよう記録しておくことも大切です。
実践するために「受講者が研修で学んだことを現場で発揮できるよう、管理職にフォローを促す仕組みをつくる」といった環境を整えることも、スキル獲得に有効に働きます。
フィードバックとPDCAの実施
ヒューマンスキルは客観的な測定が難しいため、他者からのフィードバックやアドバイスを定期的に受け取るようにしましょう。たとえば、個別の相談や面談で指摘やアドバイスを受けることも有効です。
フィードバックの際には、フィードバックする側に適切な観点が求められます。ヒューマンスキルは、多様な価値観を持つメンバーと円滑にコミュニケーションを図り、良好な関係を構築するために必要なものです。フィードバックをおこなう上司側もヒューマンスキルを身につけられているか、ヒューマンスキル向上への取り組みが組織単位で奏功しているかを検証していくことも大切です。
インプット、実践、フィードバック、効果検証、改善を繰り返し、PDCAサイクルを回していきましょう。マイナビでは、ヒューマンスキルを高めるためのオリジナルの研修シリーズを展開しています。
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まとめ
一つの組織の中で多様な人材が活躍している昨今、良好な人間関係の構築に役立つヒューマンスキルはすべての人材に求められているスキルと言っても過言ではありません。企業の人事担当者は、8つの構成要素を理解したうえで、各個人がそれぞれに関する研修やワークショップなどで学習を進めつつ現場で実践できるよう環境を構築しましょう。
ヒューマンスキルを身につけたい方は、知識を継続的にインプットしながら、実践とフィードバックを重ね行動や姿勢の改善に取り組みましょう。