OJTトレーナー研修とは？研修の重要性と学習する内容を解説
OJTトレーナー研修は、職場で新人や後輩を育成する役割を担うトレーナーの指導力を向上させ、OJTの成功を目指す取り組みです。この研修は、単にトレーニーの早期戦力化を支援するだけでなく、トレーナー自身に成長機会を提供することにもつながります。
本記事では、OJTトレーナー研修とはなにか、OJTトレーナー研修の重要性と学習内容について解説します。
OJTトレーナー研修とは
OJTトレーナー研修とは、職場での実務指導を担うトレーナーを育成するための研修のことです。そもそもOJT（On-the-Job Training）とは、トレーナー（上司や先輩）が、トレーニー（新人や後輩）に業務を通じて必要な知識・技術・技能・態度などを指導し習得させる職場内教育を指し、意図的・継続的・計画的な指導のもとおこなわれます。
そしてOJTトレーナーとは、その指導をおこなう役割を持つ人のことで、多くの場合、配属先の先輩や上司が担います。トレーナーはトレーニーの現場適応をサポートし、必要なスキル習得のフォローをします。
OJTトレーナー研修では、トレーナーが効果的な指導方法や育成スキルを習得し、実際のOJTに役立てる力を身につけます。研修は外部講師に依頼するほか、社内の管理職や経験豊富なトレーナーが講師を務める場合もあります。
OJTトレーナー研修の目的
OJTの成功を目指し、トレーナーとしての指導力を高めることがOJTトレーナー研修の目的です。座学形式を中心に、効果的な指導方法やOJT育成計画の立て方、印象管理や傾聴といったコミュニケーションスキルなども学びます。また、OJTトレーナー研修では、複数の研修形態や学習方法を組み合わせたブレンディッドラーニングを活用するのも効果的です。
たとえば、対面型研修ではロールプレイを交えて実践的な学習ができ、eラーニングでは受講者が学習したことのフォローアップがオンライン上でおこなえます。これらを組み合わせることで、柔軟かつ効率的な育成をおこなうことにつながります。
OJTトレーナー研修の重要性
つぎに、OJTトレーナー研修の重要性について解説します。
トレーナーごとの指導のばらつきを防ぐ
OJTトレーナーは、新入社員や後輩といったトレーニーを早期戦力化する役割を担います。しかし、トレーナー自身の実務能力が高くても、指導スキルが備わっているとは限りません。OJTの成果は、トレーナーの指導スキルに左右される側面もあり、トレーナーによって指導にばらつきが出てしまうケースもあるでしょう。
そのため、OJTを個々のトレーナー任せにせず、OJTに対する姿勢や進め方について、社内のトレーナー全員が同じ認識を持つことが重要です。OJTトレーナー研修で、トレーナーとしての振る舞いや考え方、指導の基本や育成計画の立て方、トレーニーとの関わり方などを学ぶことで、効果的な指導スキルを養い、場当たり的な指導を防ぐことが期待できます。
トレーナー自身の成長機会の提供につながる
OJTトレーナー研修は、OJTの効果を高めるだけでなく、トレーナー自身の成長にもつながります。成長機会があることで、トレーナー自身のキャリア形成も期待できます。たとえば、指導や育成、状況に応じた対応力を実践的に学ぶため、管理職に必要なスキルを習得しやすくなります。その結果、次世代の管理職候補としての成長が期待できます。
また、研修後にはフォローアップ研修を実施し、現場での課題共有や解決策の学習を通じて、トレーナーの成長を支援する取り組みも効果的です。
トレーナーの不安を軽減し、自信を育む
指導経験が少ない社員は、自分がトレーナーを務めることに不安を感じ、心理的負担になることがあります。OJTトレーナー研修では、トレーナーになるにあたっての心構えや振る舞い、具体的な指導方法などを学ぶことで、不安を軽減することにつながります。そのため、トレーナーは自信を持って指導に臨めるでしょう。
OJTトレーナー研修で学習する内容
トレーナー自身にも、OJTは成長の機会と捉え、真摯に取り組んでもらうことが重要です。ここでは、OJTトレーナー研修で学習する具体的な内容について、以下で解説します。
OJTトレーナーの心構え
トレーナーにとって基本となるのは、トレーニーとの信頼関係を築くことです。どんなに優れた指導計画でも、「この人から学びたい」と思わせる姿勢や行動がなければ、信頼関係を築けず、トレーニーの学ぶ意欲も沸いてこないでしょう。
信頼関係を築くためには、トレーニーの気持ちを意識し、同じ目線に立つことが大切です。不安や戸惑いを抱えるトレーニーに対して、一緒に考え、乗り超える姿勢を示すこと、また、トレーニーの行動には必ず理由があることを理解し、その状況をしっかりと把握することから指導を始めると効果的です。トレーニーはトレーナーの姿勢を見て学ぶため、日々の関わり方が信頼関係を左右します。
育成計画書の作成
効果的なOJTの実現には、計画の立案が重要です。 OJTトレーナー研修では、育成計画書の作成についても学習します。OJTでは、企業の経営理念や行動方針をもとに、新入社員にどうなってほしいか、その目指すべき姿を明確にし、それを育成目標とします。そのうえで、スキル習得の期限や具体的な到達目標を設定し、スケジュールに落とし込みます。
またOJTは、組織全体で育成する風土をつくることが重要であるため、実際の育成計画においてはOJTトレーナーだけで作成するのではなく、上司や周囲のメンバーと協力して作成することも求められます。
コミュニケーションスキル
トレーニーと適切に関わるためのコミュニケーションスキルも学習します。一例として以下のスキルが挙げられます。
印象管理
印象管理とは、他人が抱く自身の印象を管理することです。
たとえば、イライラしている印象を周囲に与えてしまっている場合、トレーニーに「話しかけにくい」「聞いてもらえないかもしれない」と思わせてしまい、指導が円滑に進まない要因になります。
そのため、話しかけられやすい雰囲気づくりが重要です。笑顔や適切な挨拶はトレーニーとのコミュニケーションを促進します。また、質問を引き出す声かけや定期的に対話する時間をつくることで、コミュニケーション不足に陥ることを防ぎます。
傾聴スキル
傾聴とは、相手の言葉だけでなく気持ちや状態まで真剣に受け止め、心を込めて聴くことです。傾聴をおこなうことで信頼関係が深まり、円滑なコミュニケーションが生まれます。効果的な傾聴のポイントは以下の4つです。
- ・あいづち：適切な言葉やうなずきで聴いていることを示す、話しやすい雰囲気をつくる
- ・事実を返す：相手の話の事実を受け止め、言葉を返す
- ・感情を返す：相手の話のなかの感情を汲み取り、感情を表す言葉で返す
- ・要約する：話の内容を簡潔にまとめ、要点を確認する
指導スキル
指導スキルの一例としてティーチングとコーチングが挙げられます。OJTでは、トレーニーの業務レベルや意欲に応じて指導法を使い分けることが重要です。
たとえば、業務を始めたばかりのトレーニーには、具体的な指示ややり方を教えるティーチングが効果的です。この段階では、業務の基本的なステップや目的、注意点を丁寧に伝え、トレーニーが安心して業務を進められるようサポートしていきます。
一方、業務に慣れたトレーニーには、知識や経験を活用し、自ら考えて問題を解決できるよう促すコーチングが適しています。この手法では、トレーナーが適切な質問を通じてトレーニーに考えさせることで自主性を伸ばせます。初心者には細やかな指導が必要な一方で、経験者に対しては過剰な説明を省き、適切な問いかけをおこなうことで、トレーニーが持つ能力を引き出すことにつながります。
OJTトレーナー研修で、OJTの成功を目指そう
OJTトレーナー研修で、効果的な指導方法などを学ぶことで、トレーナーは自信を持って指導に臨めるようになり、トレーニーの成長を支える体制を整えられます。研修を通じて得た知識やスキルは、現場での実践を通じて活用され、職場全体の育成力の向上にもつながるでしょう。
OJTトレーナー研修でトレーナー自身の成長機会をつくり、指導方法の習得や育成スキルを向上させ、OJTの成功を目指していきましょう。
