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サイボウズが実践する「ほんとうに自由な」働き方とは~社員の自律性と組織の生産性のバランスを追い求めた変革の15年間~

2025年06月11日更新

サイボウズ株式会社_中根 弓佳氏
サイボウズ株式会社 執行役員 人事本部長 兼 法務統制本部長 中根 弓佳氏(2025年 1月時点)

人事や組織開発の仕事をしている方なら、サイボウズの特徴的な組織制度について耳にしたことがあるかもしれません。

現在「100人100通りのマッチング」という言葉に代表される同社の組織制度では、組織と社員とのマッチングを重視し、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方も選択できるなど、自律性を保ちながら組織としての生産性もまた同時に維持する試みが高い注目を集めています。

しかし、同社は現在もなお試行錯誤の最中であり、ここに到達するまでには15年間もの「変革の歴史」があったといいます。その歴史を紐解きながら、社員の働き方、そして組織改革へのヒントを探っていきましょう。

従業員定着率の課題から始まった働き方改革

——サイボウズといえば、多様な働き方を認めながら成長を続けるフラッグシップ企業という印象がありますが、ここまでにどのような変遷があったのでしょうか?

中根氏(以下、中根):はい。当社をそのように評価いただいているのはありがたく思いますが、私としては今もなお試行錯誤の最中であると考えています。過去を振り返ると、私がサイボウズに入社した頃、当社は少ない社員数で成長を追い求めており、結果として長時間勤務も常態化していました。

また、現在のようにリモートワークや短時間勤務も普及していなかったので、働き方は「決まった時間に、決まった場所(オフィス)に出社する」という1通りしかなかったのです。自分たちの働き方を見直し始めたのは、2007年頃のことです。M&Aを積極的に行い、事業が多方面に展開していく一方で、離職も多くなりはじめていた頃でした。

そこでまずは事業方針を見直し、自分たちが思いを持って取り組めるグループウェア事業に集中することにしました。それにあわせて、メンバーの能力をもっと発揮してもらえるよう、働きやすい組織を目指すという会社としての意志決定をしたのです。

——2007年に「働き方」へ力点を置いて会社を改革しようとされたのは、大きな決断だったと思います。

中根:そうですね。一方で当時は採用にも苦戦していたので、より多くの人が長く働ける環境を整えることで、事業を推進する力である人材を得る必要があったというのも事実です。

そこで、まずは短時間勤務を取り入れてフルタイムでなくても能力を発揮してもらえる環境を整えました。次に当社の事業でもあるグループウェアの強みを生かして当時としてはまだ珍しかったリモートワークも取り入れ、チームとして異なる働き方のメンバーを受け入れながら生産性を維持することが可能になる仕組みを充実させていきました。

このときに「100人100通りの働き方」と呼んでいたこれらの取り組みが採用上の強みとなり、その後の成長を支える礎となったことから、成果に繋がる取り組みであったと思います。

大企業化とコロナ禍で見つめ直した「自分たちのあり方」

——これが御社の「改革」の第1段階で、その後は採用も順調になられ、組織も大きくなっていったのですね

中根:はい。一方で、採用が順調に進み、社員数がどんどん増えていくことで「大企業化」していくことに危機感も抱いていました。

具体的にいえば、上意下達の「ヒエラルキー型組織」になっていくことへの危機感です。もちろん、経営陣の定めた方向性が即座に現場へ反映され、統制を持ってスピード感のある事業展開をしたい局面ではヒエラルキー型組織にもメリットはあります。

しかし、私たちが目指したのは「自分たちが主体的に考えて、主体的に意志決定して行動できる」チームで、わくわくしながら働くことでした。これはヒエラルキー型組織の中では実現が難しいだろうと考えたのです。

そこで、どんどん現場に権限を委譲していくことにしました。会社としての大きな方針はありながらも、現場は自律してそれぞれの目標を定め、それを達成していく「自律分散型組織」を目指し始めたのです。

これなら、大企業でありながらもヒエラルキー型組織にはならず、みんながわくわくしながら自分で仕事を作り、成果を上げていく組織になると考えました。

——そこまでが、御社の「改革」の第2段階ですね。

中根::そうです。そして、その後に訪れたのがパンデミックです。世の中全体の働き方が大きく変わる中でグループウェアの需要も増し、さらに従業員を増やしていきましたが、その中で自律分散型組織の弱みも見えてきました。

それぞれのチームで成果の出し方や個々の働き方が最適化されていく一方、個やチームの動きが見えにくくなったことで、1,000人というボリュームのある組織の力を発揮しきれていないのではないかと考えるようになったのです。

——つまり部分最適が進む一方で、全体最適に課題が見え始めた、ということでしょうか。

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著者プロフィールHR Trend Lab編集部
タレントマネジメントやエンゲージメントなどの最新トレンドから、組織や人事にまつわる基本知識までマイナビ独自の視点でお届けいたします。
監修者プロフィール中根 弓佳(なかね ゆみか)
サイボウズ株式会社 執行役員 人事本部長 兼 法務統制本部長
法学部法律学科を卒業後、大手エネルギー企業を経て2001年にサイボウズ入社。 法務部門の立ち上げを行い、知財法務やM&Aなど幅広い業務を行いながら制度策定や採用を中心に人事業務を兼任し、現職。チームワークあふれる会社を目指し、人と組織のプラットフォームづくりに邁進中。 (2025年1月時点)
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