プロアクティブ行動とは?プロアクティブ行動を促すために必要なこと
プロアクティブ行動とは「自ら率先して組織に影響を与える行動を起こすこと」を指す言葉です。仕事の目的ややり方を変革させたり、組織内での関係性構築のためにさまざまな人とコミュニケーションをとったりして、自己成長や組織力向上を目指します。
本記事では、プロアクティブ行動の定義や行動を促すための方法などを解説します。
プロアクティブ行動とは?
プロアクティブ行動の定義
プロアクティブ行動は「個人が自分自身や環境に影響を及ぼすような先見的な行動であり、未来志向で変革思考の行動」と定義されます。
組織に適応するために自ら行動を起こしたり、仕事で必要となるスキルを自主的に学んだり、自分自身のキャリアを見越して行動することなどが挙げられます。身近な例としては、新入社員が上司に積極的に質問したり、中途入社の社員が職場に早くなじむため勉強に励んだりする行為などもプロアクティブ行動といえるでしょう。
プロアクティブ(proactive)はもともと「先取りする」という意味をもち、反対語は「受け身の、後手の」を意味するリアクティブ(reactive)です。つまり、すでに発生した状況に対して反応するのではなく、その状況を能動的につくるような行動がプロアクティブ行動といえるでしょう。
プロアクティブ行動によって得られる効果
さまざまな効果が期待されるプロアクティブ行動は、なかでも「組織社会化」に関連する概念として知られています。組織社会化とは、新入社員や中途社員といった新規組織参入者が組織に順応するプロセスを表す言葉です。
個人がある組織に新たに参入する際には、組織社会化の過程を通ることになります。その際、個人が組織に適応するために、職場内での人間関係を構築するなどのプロアクティブ行動を起こすことで、組織にスムーズになじむことができます。
また、プロアクティブ行動は業務遂行能力の向上にもつながると考えられています。積極的に新しいことにチャレンジし、求められる役割や知識を率先して獲得していくことになるため、仕事のやりがいやアイデンティティの確立にいい影響を及ぼすと考えられています。
プロアクティブ行動の種類と例
プロアクティブ行動はいくつかの種類に分けられます。今回はそのなかでも代表的な以下の3つのプロアクティブ行動を紹介します。
1.革新的な行動(仕事の捉え方やり方を改善する行動)
2.フィードバック探索行動(周囲からのフィードバックを自ら求めて、自己成長させようとする行動)
3.関係性構築行動(上司や同僚、他部署の人とコミュニケーションを密にとり、関係性を構築する行動)
革新的な行動
職場全体の仕事や自分に与えられた仕事をあらためて捉え直し、やり方や手続きなどを変えたりする行動のことです。たとえば、社外セミナーで学んだ内容を社内で共有し、既存業務の在り方を検討しながら新たな方法で改善を図るといったケースが革新的な行動にあたります。
フィードバック探索行動
上司や同僚に自ら進んで質問をしたり、フィードバックを求めたりする行動です。例としては、新入社員が上司やOJT担当者に対してフィードバックを求めて、疑問や問題を解決しようとする試みがフィードバック探索行動といえるでしょう。
関係性構築行動
上司や同僚、さらには他部署と良好な関係性を構築するために起こす行動のことを指します。また、社内外に人的ネットワークを構築するような行動も関係性構築行動に該当し、周囲の人をまきこんで勉強会を開くといった行動が例として挙げられます。
プロアクティブ行動に影響を与える環境要因
プロアクティブ行動は、個人のパーソナリティに由来する部分が大きい一方、環境に起因するところも少なくありません。
たとえば、コミュニケーションが活発な職場では、上司や同僚とのやりとりが盛んにおこなわれ、指導やフィードバックを受ける機会が多くなります。そのような環境では新入社員や中途社員、さらには既存社員もプロアクティブ行動をとりやすくなります。
また、職場における学びへの積極性や変化に対する抵抗の有無もプロアクティブ行動に影響を与えます。職場全体が学習に積極的であれば、新入社員や中途社員もそれに応じて学びにつながる行動をとりやすくなるでしょう。
新しいアイデアを積極的に取り入れる雰囲気があれば、新しいことへチャレンジするハードルも下がります。逆に、組織の雰囲気が保守的で、規則やルールを重視しすぎるような環境だと、プロアクティブ行動をとりにくくなってしまうかもしれません。
そのほかにも、「裁量が大きいかどうか」「仕事の重要度がどれだけ高いか」「一人でこなすタスクなのか、集団で進めるタスクなのか」など、取り組んでいる仕事の特性もプロアクティブ行動に影響を与えます。
新入社員、中途社員のプロアクティブ行動を促すために周囲ができること
新入社員、中途社員がプロアクティブ行動をとることで、組織に早くなじんでもらうことができます。プロアクティブ行動は環境要因によっても左右されるため、組織としてはプロアクティブ行動を喚起するような環境づくりに取り組むといいでしょう。
最後に、プロアクティブ行動を促すために組織が取り組むべき対応について解説します。
コミュニケーションを活発にする
上司や同僚と気兼ねなくコミュニケーションを取れる環境が整っていれば、良好な人間関係を構築しやすくなり、ひいてはプロアクティブ行動につながります。
1on1のように上司と部下が定期的にコミュニケーションを図れる仕組みを導入したり、メンター制度によって、新しく組織に入ってきた社員が先輩社員に相談しやすい環境を整備したりするといいでしょう。
社員に裁量権を与える
社員に対して、より大きな裁量を与えるのもいい方法です。仕事の手順ややり方、スケジュールなどを自分で決められるようにすることで、社員は自発的に行動しやすくなり、自分なりの工夫もするようになるはずです。
逆に、仕事のルールを細かく定めて個人の裁量が減ってしまうと、自律性が奪われプロアクティブ行動を起こしにくくなってしまいます。
フィードバックの機会を増やす
周囲から前向きなアドバイスや問題解決につながる提案が得られると、その本人はモチベーションが上がり、課題解決への具体的な行動に結びつきます。周囲からフィードバックが定期的に得られる環境は、プロアクティブ行動を促すことにつながるでしょう。
また、フィードバックは大切なコミュニケーションの場としても捉えることができ、上司と部下の信頼関係構築にもいい影響を与えます。
プロアクティブ行動がしやすい職場環境を整えよう
プロアクティブ行動は、個人が能動的に考え創意工夫をこらすような先見的な行動のことを指します。プロアクティブ行動によって期待できるさまざまな効果のなかでも、新入社員や中途社員の組織社会化を促す効果が広く知られています。
プロアクティブ行動は職場環境にも影響されるため、コミュニケーションが活発であったり、新しいアイデアを受け入れる土壌があったりすると、人はプロアクティブ行動をとりやすくなります。
新入社員や中途社員が早く組織になじめるよう、プロアクティブ行動がとりやすい職場環境の構築を目指しましょう。