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SXとは?DXとの違いや、重要視される理由についてわかりやすく解説

2024年01月17日更新


SDGsへの取り組みが広がるなか、サステナブルな社会の実現に向けて、企業による社会貢献が重要視されています。その一環として、理解しておきたいのがSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)です。今回は、SXの概要や重要視される理由とともに、DXとの違いや企業ができることについてわかりやすく解説します。

目次 【表示】

SXとは


SX(sustainability transformation/サステナビリティ・トランスフォーメーション)とは、企業と社会のサステナビリティ(持続可能性)の両方を重視する経営のあり方であり、企業の価値創出に繋げていくものです。 経済産業省が公開している伊藤レポート3.0(SX 版伊藤レポート)によると、SXとは、「社会のサステナビリティと企業のサステナビリティを「同期化」させていくこと、およびそのために必要な経営・事業変革(トランスフォーメーション)を指す」と定義されています。

変動的で想定外の出来事が起きやすいVUCA時代において、その変化に対応しながら、持続可能性のある企業運営を通じて、環境や社会、ガバナンスへ貢献するとともに企業価値を高めていく取り組みが、SXと言えるでしょう。

ただし、SXの実現は、企業努力のみでは達成されないものです。企業や投資家、取引先などのさまざまなプレイヤーが、持続可能な社会の構築に向けて対話を深めながら実践することが大切とされています。

「社会のサステナビリティ」、「企業のサステナビリティ」とは

サステナビリティ(sustainability)とは、日本語では「持続可能性」と訳され、長期的な視点で物事を継続、発展させていく状態に導くための行動や考え方を指します。サステナビリティにはさまざまな分野が関わりますが、SXでは、企業のサステナビリティと社会のサステナビリティの同期化が求められます。それぞれ、以下のような取り組みを指します。

・企業のサステナビリティ
「企業が長期的・持続的に成長原資を生み出す力(稼ぐ力)の向上」や「社会の持続可能性に視する長期的な価値提供」を目指す取り組み


・社会のサステナビリティ
「気候変動や人権への対応など、社会の持続可能性の向上」を目指す取り組み

SXでは、どちらか一方に偏るのではなく、どちらも実現できるような経営方針や事業改革を進めることが重要です。

SXとDXとの違い

DX(デジタルトランスフォーメーション/Digital Transformation)とは、データとデジタル技術を活用して、社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革し、業務フローの改善や企業文化などに変革をもたらし、自社の競争力を高めたり、企業風土の変革を実現したりすることを指します。

DXは企業価値を高め、持続可能性のある経済発展に繋がるものであり、SXと一体的に取り組むことが望ましいとされています。

SXとDXはいずれも企業価値を高めることを目的としたものですが、SXはサステナビリティ(持続可能性)を重視する、社会貢献も踏まえた経営方針であり、DXはデジタル技術を活用してサービスやビジネスモデルを変革し、競争力を獲得することなどを目的とする点が異なります。

SXが重要視される理由

ビジネスにおいてSXが重要視される理由として、以下のような点が挙げられます。

投資家からの信頼を得るため

企業のSX推進が注目されるようになった背景の一つとして、社会的にSDGsが浸透してきたことが挙げられます。SDGs とは、持続可能でよりよい世界を目指すための世界共通の目標であり、2030年までの実現を目指すものです。

SDGsには、社会のサステナビリティを目指す項目に加えて、働き方や経済成長に関わる項目(目標8「働きがいも経済成長も」)もあり、SXの推進は、SDGsの目標達成に繋がります。結果として、社会貢献を実現する企業としての評価が高まるでしょう。

近年では、「ESG投資(※1)」として、社会課題や環境問題に取り組む企業に対して優先的に投資する手法が注目を集めています。SDGsとESGには共通する部分があり、SXに取り組むことでESGの実現にも良い影響を与えます。

企業がSXの推進に取り組むことは、社会貢献と利益確保を同期化できるものとして、将来性があり、持続性のある企業として投資家から信頼獲得にも繋がります。その結果、企業優位性を保つことも期待できるでしょう。

※1:ESG投資…ESGは「Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)」の頭文字を取ったもの。ESGが抱える課題解決に向けて、社会貢献をおこなっている企業を評価し、投資判断の要素として考える手法

企業のイメージ向上のため

サステナビリティへの意識が高まるなか、社会的影響が大きい企業のあり方が問われる時代となっています。採用においても、企業のサステナビリティ活動を、企業選びの判断軸の一つとする求職者が増える傾向にあり、SX実現への取り組みは今後の採用にも大きく影響することが考えられます。

また、サステナビリティの観点も加味した人材の育成や活用が進めば、中長期的な視点で人材の価値を最大限に引き出すことによって、新たな企業価値の創造をもたらし、人的資本経営(※)の実現に繋がるでしょう。

その結果、企業としてのイメージ向上や、人材獲得への貢献、人的資源の効果的な活用など、さらなる持続可能性のある経営が見込めます。

※人的資本経営…人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上に繋げる経営のあり方

企業のSX実現に向けて取り組みたいこと


では、企業がSXを実現するためには、どのような取り組みを進めればよいのでしょうか。伊藤レポート3.0(SX 版伊藤レポート)に記載されている具体的な取り組みを紹介します。

1.企業の目指す姿を明確にする

伊藤レポート3.0では、「社会のサステナビリティを踏まえた目指す姿の明確化」が大切だとされています。上述したとおり、SXの実現には、「社会のサステナビリティ」と「企業のサステナビリティ」を同期化しなければいけません。その際、企業として自社が目指す姿が曖昧なままでは、どのような取り組みが効果的なのかを判断するのも難しくなるでしょう。

社会のサステナビリティに対し、自社の事業活動がどのような貢献に繋がるのか、どのような価値提供が継続的におこなえるのかなど、判断軸となる価値観を明確にしたうえで、目指す姿を設定する必要があります。

2.目指す姿を踏まえて、長期的な企業価値を作り出す戦略を立てる

SXは、長期的な視野で取り組むことが大切です。伊藤レポート3.0では「目指す姿に基づく長期価値創造を実現するための戦略の構築」について触れられています。設定した目指す姿に基づいて、長期的に価値創造ができるような戦略を考える必要があります。長期戦略を構築する際には、以下の3つが重要とされています。

  1. 長期的に目指す姿の設定
  2. その実現に向けて基盤となるビジネスモデルの構築・変革
  3. 視野に入れるべきリスクと機会の分析を統合的におこなうこと

また、長期の目標だけでなく、短・中期目標も加えた戦略を構築してみましょう。長期視点だけでは、目標までの行動が具体性に欠ける可能性があります。最終目標の達成に必要な行動や必要な取り組みを短・中期目標に設定することで、より具体的なタスクやスケジュールが把握できるようになるでしょう。

3. KPIの設定とガバナンスの整備

伊藤レポート3.0では「長期価値創造を実効的に推進するための KPI・ガバナンスと、実質的な対話を通じたさらなる磨き上げ」として、目指す姿に向けて、着実に成果を上げていくための、KPIの設定とガバナンス体制の整備が有効であるとされています。

KPIとは、重要業績評価指標と呼ばれるもので、組織の目標達成に向けた業績評価の指標のことです。KPI設定においては、目指す姿だけでなく、価値観や課題と関連づけるとよいでしょう。

また、ガバナンスとは健全な経営に向けたマネジメント体制を指します。ガバナンスの整備においては、自社の長期的な価値向上の観点から、なぜそのようなガバナンスの仕組みを構築しているのかを考え、その仕組みが、自社の持続的成長を周囲に納得してもらうための論理的な筋書きである価値創造ストーリーに基づいて機能するのかを示すことが大切だとされています。

そのうえで、経営陣の役割や機能分担を明確化し、KPIと連動した役員報酬などの中期的なインセンティブの設定も有益とされています。

SX化に必要な「ダイナミック・ケイパビリティ」


上述した「伊藤レポート3.0(SX版伊藤レポート)」において、不確実性が高まるなかで企業のサステナビリティを高めていくためには、企業経営のレジリエンスを高めていくことの必要性が提示されています。そこで求められているのが、「ダイナミック・ケイパビリティ」です。

ダイナミック・ケイパビリティとは

経済産業省が発表した「2020年版ものづくり白書」によると、ダイナミック・ケイパビリティとは、企業変革力とも呼ばれ、「環境や状況が激しく変化するなかで、企業が、その変化に対応して自己を変革する能力」を指します。顧客ニーズや技術的、ビジネス的機会を一致させることを目的として取り組むものであり、イノベーションを生み出す土台となるとされています。

カリフォルニア大学バークレー校ハース・ビジネススクール教授であるデイヴィッド・J・ティース氏によって提唱された経営論で、近年注目を集めています。

ダイナミック・ケイパビリティの3つの能力

ティース氏は、ダイナミック・ケイパビリティについて具体的には、以下の3つの能力に分類しています。

感知(センシング) 脅威や危機を感知する能力。自社を脅かす物事や社会的変化などを客観的に判断し、企業存続のための変革をすべきかどうかを感知する能力を指します。
捕捉(シージング) 変革すべき機会をとらえ、既存の資産・知識・技術を再構成して競争力を獲得する能力。ダイナミック・ケイパビリティの中核となる能力で、企業内部で再構築する取り組みは、他社からの模倣ができないことから、企業優位性を高め、競争力を高めるとされています。
変容(トランスフォーミング) 捕捉によって得た競争力を持続的なものにするために、組織全体を刷新し、変容する能力を指します。組織構造を変化させるといった具体的な取り組みを進めるための能力であり、実際には資金面、人材面双方に大きなコストが生じます。そのため、捕捉をしっかりおこなったうえで実践できるものと考えるとよいでしょう。

 
参照:2.企業変革力(ダイナミック・ケイパビリティ)の強化|経済産業省

SXの推進で、企業価値を高めよう


SXとは、持続的な企業の成長と、社会貢献を同期化させる取り組みと言えます。企業と社会のサステナビリティ双方を重視した経営により、企業価値の向上に繋げられます。SXの実現に向けて、伊藤レポート3.0にも書かれている「長期戦略を構築する3つのポイント」を押さえながら戦略的に取り組む必要があるでしょう。サステナビリティヘの理解を深め、企業全体でSXに取り組む意識を持つことが重要です。

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