リフレーミングとは?種類や効果、やり方を解説

リフレーミングとは、物事の捉え方を柔軟に変える心理学的な手法です。同じ事実でも視点を変えることで、新たな意味や解決策を見つけられる点が特徴です。
本記事では、リフレーミングとはなにか、2つの種類、リフレーミングの効果、5つのやり方、活用場面を解説します。
リフレーミングとは

リフレーミング(reframing)とは、物事や出来事の捉え方を変えることを指します。コミュニケーション心理学(NLP)の概念として知られており、1970年代にアメリカの心理学者リチャード・バンドラー氏と、同じくアメリカの言語学者であるジョン・グリンダー氏がおこなった研究から発展したものです。
固定観念や思い込みに縛られた視点を柔軟に切り替えることで、新しい理解や解決策を見出すことにつながります。たとえば、チームメンバーの意見が一致しない状況を「意見の対立」と捉えるか、「多様な意見が集まっている」と捉えるかで、その後の話し合いの雰囲気や対応は大きく変わるでしょう。
このように同じ事実でも、見方を変えるだけで別の意味や可能性が浮かび上がるのがリフレーミングの特徴です。
ポジティブシンキングとの違い
リフレーミングとポジティブシンキングは、どちらも「物事の捉え方を変える」という点で共通していますが、捉え方を変える方向性が異なります。
ポジティブシンキングは、どのような状況でもよい面を見つけて前向きに捉えようとする姿勢が中心です。一方、リフレーミングは、物事や出来事の捉え方を変えることで新たな理解や行動の選択肢を見つけるアプローチです。
そのため、リフレーミングはポジティブシンキングとは異なり、必ずしもネガティブな出来事をポジティブに変換するのではありません。時には「よいと思われる出来事」に潜むリスクや問題点に気づくという違いがあります。
リフレーミングの2つの種類

リフレーミングには、大きく分けて「状況のリフレーミング」と「内面のリフレーミング」の2つの種類があります。
1. 状況のリフレーミング
状況のリフレーミングは、出来事や背景の枠組みを見なおし、異なる視点からその意味を再解釈する方法です。たとえば、顧客から厳しいフィードバックを受けた場合、「失敗した」と捉えるのではなく、「顧客のニーズをより深く理解する機会を得た」と考えることで、次の提案に活かせます。
このように、出来事を別の意味で捉えることで、新たな可能性や学びを見出せるでしょう。
2. 内面のリフレーミング
内面のリフレーミングは、性格や経験、感情の捉え方を変える方法です。たとえば、「自分は慎重すぎる」と考えていた性格を、「物事をしっかり検討できる能力がある」と認識を変えることで、自信につながる可能性があります。
また、過去の失敗を「役に立たなかった経験」とするのではなく、「次に活かせる学び」と再解釈することで、前向きな行動を促します。
リフレーミングの効果

リフレーミングの具体的な効果を3つ紹介します。
自信を高める
リフレーミングは、自分の短所の見方が変わることで考え方を前向きに変える助けになります。
たとえば、「自分は人前で話すのが苦手」と思っている人でも、「人の話を聞くことは得意」と考えることで、短所を前向きに捉えられます。自己認識を見なおすことで自信を高め、前向きな意欲を引き出すことにつながるでしょう。
モチベーションの向上
リフレーミングを通じて、課題を成長の機会として捉え直すことで、やる気が高まりやすくなります。
たとえば、複雑なプロジェクトに取り組む際、「負担が大きい仕事」と捉えるのではなく、「スキルアップのチャンス」と解釈することで、取り組む意欲の向上につながります。
課題解決能力の向上
リフレーミングは、問題の新たな側面に気づき、これまでに気づかなかった解決策を導き出すことにも効果的です。たとえば、なかなか解決できない課題があったとしても、課題を別の視点から考えることで新たな解決策やアイデアを考えられます。
このように、建設的な思考を促すことで、課題解決能力が向上するでしょう。
リフレーミングの5つのやり方

リフレーミングの具体的なやり方を5つ解説します。
言葉のリフレーミング
言葉のリフレーミングは、ある言葉を別の意味や表現に置き換えて解釈する方法です。
たとえば、「頑固」という言葉は「信念を持っている」と言い換えられ、同様に「慎重すぎる」は「リスクを考慮できる」と解釈できます。この方法を使うと、自分や他者への評価、見方が柔軟になります。
仮定のリフレーミング(As IF)
仮定のリフレーミングは、「もし〜であれば」という仮定を使って発想を広げる方法です。たとえば、難しい課題に取り組む際、「もしこれが簡単に解決できる課題だったとしたら」と考えることで、思考が柔軟になり、プレッシャーを減らしながら新たなアプローチを見つけられるかもしれません。
また、「顧客の立場だったらこの提案をどう受け取るか」と視点を変えることで、アイデアの改善点が浮かび上がることもあるでしょう。
時間軸のリフレーミング
時間軸のリフレーミングは、未来と過去の2つの時間軸を活用して物事を捉え直す方法です。たとえば、「今の苦労は10年後の自分にとってどう役立つか」と未来から考えると、現在の行動に意味を見出せます。一方で、「数年前の自分と比べて、どれだけ成長したか」と過去から振り返ることで、自分の進歩を実感しやすくなります。
この手法は、長期的な視野を持つきっかけになるでしょう。
解体のリフレーミング
解体のリフレーミングは、物事を細分化し、再構成することで新たな視点を得る方法です。たとえば、「チーム内の情報共有がうまくいかない」という場合、「情報共有が不足しているのか」「共有するタイミングが適切でないのか」「そもそも共有の場が設けられていないのか」など、原因を具体的に切り分けて考えられます。
このように分解することで、物事の全体像が見えやすくなり、次に取るべき行動が明確になります。
Wantのリフレーミング
Wantのリフレーミングは、「自分はどうしたいのか?」と問いかけることで解決策を探る方法です。たとえば、仕事で行き詰まったときに「この状況をどう変えたいか」と考え、「もっと効率的に進めたい」という答えが出た場合、「効率化するためにはなにを変えるべきか」と具体的な行動を見つけられます。
この方法は、感情を整理しながら、現状を改善する道筋を描くのに役立ちます。
リフレーミングの活用場面

ビジネスにおけるリフレーミングの活用場面の例として以下が挙げられます。
商品に新たな価値を生み出したいとき
既存の製品やサービスの価値を新たな視点で捉え直し、これまでとは異なるアプローチをしたい場合にリフレーミングを活用できます。
たとえば、自社製品に「多機能だが操作が難しいため、使いこなせないという声が多い」という課題がある場合を考えてみましょう。このとき「多機能で操作が難しいのであれば、機能を削減した方がよい」と捉えるのではなく、「適切なサポートを提供できれば、機能の豊富さが魅力になる」と捉え直し、初心者向けのステップガイドや使い方のデモ動画を提供することで、製品そのものを変えずに新たな価値を引き出せます。
また、課題の根本原因や前提条件から見なおす「ダブルループ学習」においても、リフレーミングは有効な手法の一つとされています。ダブルループ学習でリフレーミングを活用することで、戦略やビジネスモデル自体を再構築することもできるでしょう。
社員のメンタルヘルス対策として
メンタルヘルス対策として、リフレーミングを用いることで社員が抱える悩みや不安に対する新たな視点を提供します。たとえば、仕事で失敗を重ねて自信を失った社員に対して、「失敗を繰り返している=学びを積み重ねている」と捉え直すよう促すことで、自己肯定感を高められます。
また、人間関係のトラブルに悩む社員に対して、相手の行動や言葉の背景にある意図を一緒に考えることで、相互理解を深めるアプローチにもつながります。
リフレーミングで柔軟な思考を

リフレーミングは視点を切り替えることで問題解決や自己理解を深める効果があります。柔軟な思考を取り入れ、日常やビジネスに多くの可能性を生み出すきっかけとして、今回紹介した5つのやり方から実践してみてはいかがでしょうか。

















