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5分でわかる経験学習!経験を成長につなげる具体的な方法とは

2024年08月21日更新

失敗を積んで成功する積み木の写真

経験学習は、日々の業務や新たなプロジェクト、研修などの具体的な経験を通じて学びを得る学習プロセスです。デイヴィッド・コルブによって提唱された経験学習モデルは4つのステップから成り立ち、段階を踏むことで経験から気づきや体系的な教訓を獲得できます。

この記事では、経験学習の概要やメリット、実践のための具体的な方法について解説します。

目次 【表示】

経験学習とは

男性が本を読む様子

経験学習は、日常の活動や挑戦から学びを引き出す学習プロセスです。まずは、経験学習の特徴や実践するメリットを確認していきましょう。

デイヴィッド・コルブの経験学習モデル

「経験学習モデル」とは、アメリカの組織行動学者デイヴィッド・コルブによって提唱された学習理論です。

このモデルは、個人が実際の経験から学びを得て、その学びを生活や仕事に活かすプロセスを体系化したものです。コルブの経験学習モデルでは、学習プロセスを「具体的な経験」「内省的な観察」「抽象的な概念化」「能動的な実験」という4つの段階に分けて捉えます。

「実際の経験をもとにした学習」という点が経験学習モデルの特徴です。4つのプロセスが循環することで経験から学びを得ることができ、自らの思考や行動に対する理解も深まります。

PDCAサイクルにも似た概念ですが、PDCAは「どのように改善するか」に焦点が当てられます。一方、経験学習モデルは「経験をどのように内面化するか(どのように次に活かすのか)」に重点が置かれ、4つのプロセスを通じて自己理解が深まり、新たな行動や思考の形成につながります。

経験学習モデルのメリット

経験学習モデルを活用することのメリットは、日々の経験を具体的な学びに変換できる点にあります。必ずしも成功体験である必要はなく、失敗したとしてもその経験から価値ある教訓を紡ぎ出すことは可能です。

日々、仕事をしていれば誰しもがさまざまな経験をします。ただ意識をしなければ、それら一つひとつの経験は活かされないままになってしまいます。経験学習モデルを取り入れることで個々の経験を深く掘り下げ、新たな理論や仮説を実践するきっかけになります。

また、経験学習モデルは、年齢や職種、職位に関わらず、誰もが実践できるのも大きなメリットです。新入社員から経営層までさまざまな立場の人々が、経験学習モデルを通じて自身の経験を糧に成長できるでしょう。

経験学習サイクルの4つのステップ

STEPと書かれた積み木の社員

経験学習モデルは、学習プロセスを4つのステップに分けて捉えます。

  • 具体的な経験(Concrete Experiences):実際に体験や経験をする
  • 内省的な観察(Reflective Observation):自身の体験を客観的な視点から振り返り、観察することで気づきを得る
  • 抽象的な概念化(Abstract Conceptualization):観察から得られた気づきをもとに、応用可能な理論やモデルを構築する
  • 能動的実験(Active Experimentation):新たに構築した理論やモデルを実践することで、さらなる学びを得る

ここではそれぞれのステップを解説しながら、経験学習サイクルの流れを見ていきましょう。

具体的な経験(Concrete Experiences)

経験学習サイクルの第一段階である「具体的な経験」は、個人が実際に体験する活動や出来事のことを指します。たとえば、日常業務での取り組み、新しいプロジェクトへの参加、研修の受講やOJT、プレゼンの実施などが具体的な経験にあたります。

次のステップで振り返りや結果分析をしやすくするために、経験に対して「目標設定」をするのも効果的です。
なお、学習者自ら目標を設定することが望ましいですが、それが難しい場合はマネージャーや人事担当者が必要に応じて適切な目標設定ができるようサポートしてあげましょう。

内省的な観察(Reflective Observation)

「内省的な観察」は経験学習サイクルの第二段階であり、過去の経験から学びを引き出す過程です。「リフレクション」や「反省的思考」とも呼ばれ、行動の改善につながる気づきや教訓を得るための重要なステップといえるでしょう。

このステップでは、自分の経験を客観的に俯瞰し、観察します。たとえば、プロジェクトの振り返り会議で成功点や改善点を議論する、日報や学習ログをつけて反省点を整理する、などの行動が内省的な観察に該当します。内省的な観察を意識的におこなうことで、自分の行動や思考パターンに気づき、自分の価値観や信念などの理解につながります。

抽象的な概念化(Abstract Conceptualization)

第三段階である「抽象的な概念化」は、内省的な観察から得られた学びをより抽象的な理論に変えていくプロセスです。このステップでは、具体的な経験や観察結果を一歩引いて捉え直し、より高い次元での理解を目指します。

たとえば、クライアントへの提案営業がうまくいかなかった場合、まずは内省的な観察で失敗した原因を振り返ります。その段階で「顧客のニーズを十分に理解していなかった」「提案の仕方が適切でなかった」など具体的な課題が見つかるはずです。その具体的な課題に、一般的な理論や戦略を見出すのが抽象的な概念化です。この例でいえば、「顧客のニーズを深く理解することの重要性」や「柔軟に提案方法を検討する必要性」などの理論を形成します。

抽象的な概念化のプロセスでは、理論的な思考や分析的なアプローチが求められるため、チームで取り組んだり、1on1の対話を通じて概念を導き出したりすることも大切です。

能動的な実験(Active Experimentation)

「能動的な実験」は、経験学習サイクルの最終ステップです。抽象的な概念化で得られた理論や概念から仮説を立てて、それを実際の行動に移します。

新しいアイデアやアプローチを試み、その結果がうまくいくのか、どのように機能するかを評価します。抽象的な概念化のステップで「柔軟に提案方法を検討する必要性がある」という仮説を立てたら、新しい営業戦略や提案方法を実際に試してみるといった具合です。

自ら考え行動することで、新たな経験を得られます。それが次の経験学習サイクルの出発点となり、学習者の持続的な成長につながります。

経験学習モデルを実践するための方法

経験を積む を表したイラスト

ここでは経験学習モデルをよりイメージしやすくなるよう、自分自身や部下・後輩の経験学習を促進する具体的な方法を紹介します。

自分の経験学習を促す方法と具体例

自分の経験学習を促進するためには、意識的に日々の活動を振り返り、学びを深めることが重要です。提案営業における経験学習の例を見てみましょう。

【例:提案営業がうまくいかなかった場合の経験学習サイクル】

具体的な経験
新しいプロダクトの提案営業をおこなったが、クライアントからの反応が芳しくなかった
内省的な観察
営業後に自己反省をおこない、以下のような点に気づいた。
・提案内容が複雑で、クライアントに理解されにくかった。
・クライアントのニーズに対する理解が不十分で、提案が的外れだった可能性がある。
抽象的な概念化
反省から「提案内容をシンプルかつ明瞭にすること」「クライアントのニーズを深く理解すること」が重要であるという仮説を立てた。
積極的な実験
今後の提案営業では、提案内容を簡潔にまとめ、クライアントのニーズに沿った提案を心がける。また、事前にクライアントのビジネスについてより深く調査し、ニーズを的確に捉える努力をする。

 

上記の例では、自分の仕事を振り返り、そこから仮説を導き出して、次回提案時に向けたアクションプランを作成しています。このように経験学習モデルを実践する場合、日常的な業務においても学びの機会を見出し、積極的に反省と実践を繰り返すことが重要です。

部下・後輩の経験学習を促す方法と具体例

経験学習モデルを自ら率先して実践できる人は、決して多くありません。そのため、部下や後輩の経験学習を促進するためにも、周囲が必要に応じてサポートをしてあげましょう。

【例:プレゼンテーションをおこなった部下に対する経験学習サイクル】

具体的な経験
部下がクライアントの現状の業務プロセスを分析し、改善策を提案するプレゼンテーションをおこなった。
内省的な観察
プレゼンテーション終了後、1on1で部下とともに振り返りをおこない、以下のような気づきが得られた。
・提案内容がクライアントに伝わりにくい部分があった。
・質疑応答の際、部下が自信をもって答えられなかったことがあった。
抽象的な概念化
振り返りから「提案内容の明瞭さと説得力を高めること」「部下のプレゼンテーションスキルと自信を向上させること」が重要であると認識した。
積極的な実験
プレゼンテーションスキル向上に向けて、明確で具体的な提案内容になるよう部下に指導し、事前練習のサポートもおこなった。結果として、クライアントのプレゼンテーション内容に対する理解度が深まり、提案採用率が上がった。さらに、部下も自信がつき、仕事に対する積極性が増した。

 

このプロセスはOJT(On the Job Training)とも言い換えられ、実際の業務経験を通じて成長を促します。経験を振り返り、学びを深めるサポートをおこないながら、部下や後輩のスキル向上を促しましょう。

経験学習モデルを実践する際のポイントと注意点

階段したで話をする様子

経験学習モデルを効果的に実践するためには、いくつかの重要なポイントと注意点があります。

内省への意識を高める

経験学習モデルを実践する際には、個人および組織レベルで内省への意識を高めることが重要です。成功や失敗の結果にとらわれず、経験自体を客観的に捉えて内省のプロセスを実践します。「どのような行動をとり、どのような結果と課題が生まれ、そこからどのような気づきを得られるのか」、一つひとつ丁寧に振り返りましょう。

また、個人の裁量に頼るのではなく、経験学習モデルを組織レベルで実施できるような体制構築も欠かせません。たとえば、プロジェクトの終了時や期末に、組織としてエンドオフ(振り返り会)をおこない、成果と課題を振り返るのも有効です。社員に経験の機会を提供し、内省を促す環境を整えましょう。

自律と介入のバランスをとる

上司や人事担当者が社員の経験学習サイクルをサポートする際は、学習者の自律性を尊重しつつ、適切なタイミングで指導や介入をすることが大切です。押しつけるのではなく、学習者が自己主導で学習プロセスを進められるよう心がけましょう。

もし学習者が迷ったり困難に直面したりした場合には、適切なアドバイスや助言をして学習プロセスをサポートします。

焦りは禁物

経験学習モデルは、一朝一夕で結果は出ません。学習プロセスには時間がかかることを理解し、長期的視点をもって進めましょう。

たとえばOJTの際に、トレーナーが焦って答えを先回りで教えてしまうと、学習者が自ら気づきを得る機会を奪ってしまうことになります。学習者が自己発見と成長を遂げられるよう、忍耐強くサポートすることが大切です。

経験学習を意識して経験を成長に変えよう

経験を積む積み木の様子

経験学習モデルは、個人や組織が持続的に成長していくための学習プロセスのひとつです。経験の大小は重要ではなく、些細なことでも内省を繰り返していくことで、着実な成長につながります。

組織全体として経験学習サイクルを回していけるようになれば、会社全体の業績アップにもつながります。これを機会に経験学習モデルを業務に取り入れてみてはいかがでしょうか。

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