リバースメンタリングとは?導入メリットや注意点を解説
先輩社員や上司がメンターとなり若手社員をサポートするメンタリングを導入している企業は多いでしょう。さらに近年では、若手社員の育成や組織の活性化を図れるとして、若手社員が先輩社員や上司に助言をおこなう「リバースメンタリング」に注目が寄せられています。
本記事では、リバースメンタリングとはなにか、またその導入方法や導入前後の注意点について解説します。
リバースメンタリングとは
リバースメンタリングとは、若手社員がメンターとしてメンティーである先輩社員や上司に助言・指導をおこなう人材育成手法のことを指します。
メンター制度では、先輩社員や上司が若手社員の相談役となり、業務面だけでなく、メンタル面やキャリア形成も含めた助言や指導をおこなうのが一般的です。メンター制度は、若手社員の離職防止や早期活躍などを目的として導入されます。
一方、リバースメンタリングでは、デジタルネイティブ世代の若手社員が若年層で流行しているITツールやサービスについて先輩社員に活用方法を伝えるなど、若手社員と先輩社員あるいは上司の役割が逆転(リバース)します。逆メンター制度とも呼ばれるこの制度は、若手社員の育成のため、あるいは組織の活性化やイノベーションの創出を目的に導入される傾向があります。
リバースメンタリングの3つのメリット
1.互いを尊重する関係の構築
リバースメンタリングを実施することで、若手社員と上司・先輩社員が互いの価値観や個性を知る機会を設けられます。リバースメンタリングを通してお互いを知ることにより、それぞれの価値観や個性を尊重し合える関係性を構築できるでしょう。
また、世代や価値観、個性の異なる社員同士の交流により、これまでとは異なる事業案が生まれるなど、組織内でイノベーションを創出することにもつながります。
2.若手社員のモチベーションの向上
リバースメンタリングを通して、若手社員は自分の知識やスキル、あるいは価値観が組織に役立っていることを実感できるでしょう。これにより、業務へのやりがいや達成感を得られるだけでなく、企業への愛着心が高まり、モチベーションの向上も期待できます。
モチベーションの向上により、生産性や定着率の向上など、さまざまな付加価値が生まれることも利点です。
3.コミュニケーションの活性化
若手社員と先輩社員・上司のコミュニケーションは、同年代の社員同士よりも希薄になりがちです。リバースメンタリングを通して交流をおこなう中で多くのコミュニケーションが生まれ、普段の業務においても気兼ねなく意見を交わし合える環境に変化する効果が見込めます。
リバースメンタリングの導入方法
リバースメンタリングは企業にとっても複数のメリットがあります。導入の際は、次のステップで実施を検討してみましょう。
1.目的を定める
はじめに、リバースメンタリングをおこなう目的を設定します。リバースメンタリングでどのような課題を解決したいのか、実施後にどのような効果を得たいのかを明確化することにより、導入後の運用の円滑化や適正化が期待できます。
2.目的の共有
リバースメンタリングを実施する前に、必ず実施の目的を実施部門やステークホルダーに共有し、理解と同意を得るようにします。目的を明確化し共有することで、想定に沿った効果を見込めるでしょう。また、周囲から理解を得られていることで、リバースメンタリングの導入や実施がスムーズにおこなえるでしょう。
3.人選
次に、メンターとメンティーを選定します。はじめに設定した目的や、メンターとメンティーの相性を考慮してペアを決定します。このとき、メンターとメンティーが直接の上司と部下など、評価において利害関係がないかを確認することが重要です。利害関係がある場合は、別部署の上司をメンティーにするなど、気兼ねなくコミュニケーションがとれるよう配慮しましょう。
4.オリエンテーションの実施
人事担当者を中心に、メンターに対するオリエンテーションを実施します。メンターに選出された若手社員が、定期的なオリエンテーションで不安を払拭しながら、メンターとしての心構えやスキルを身につけてもらうようにします。
5.リバースメンタリングの実施
オリエンテーションが終わり、リバースメンタリングへの理解が深まった時点で実施に踏み切ります。人事担当者は、新たな制度で現場が混乱しないよう、実施後の様子をうかがい適宜フォローします。
6.フォローアップ
リバースメンタリングを導入した後は、定期的に内容を振り返り、目的に沿って実施できているかを確認します。また、人事担当者はリバースメンタリングの実施担当者として、メンター・メンティーに対してフォローアップをおこないます。
リバースメンタリングの注意点
リバースメンタリングの導入による利点を最大化するためは、いくつかの点に注意し導入・運用を進める必要があります。ここからは、リバースメンタリングの実施前後に注意したいポイントをご紹介します。
メンターの心理的負担への配慮
先輩社員や上司など、目上の社員に指導する行為に負担を感じる若手社員も少なくありません。メンター側の心理負担が増えすぎないよう、「メンティーからメンターへの指導や助言は禁止する」などのルールづくりをおこなうとよいでしょう。
また、若手社員にメンタリングのコミュニケーション方法などが学べる研修を実施する方法もあります。
評価への反映
若手社員のメンターとしての活躍を、人事評価にも反映できるよう検討することもよいでしょう。これにより、メンター側のモチベーションの維持・向上効果が見込めます。
メンターとしての活躍を人事評価に反映する場合は、評価基準があいまいにならいよう、あらかじめ基準を設けておくことが重要です。また、リバースメンタリングの実施内容や結果を人事担当者が集約し、メンターの評価をおこなう上司に共有することも忘れないようにしましょう。
実施時期と期間
リバースメンタリングの実施期間は自社の繁忙期を避けるなどの工夫が必要です。メンター・メンティーともにリバースメンタリングに取り組める余裕がある時期を設定するなど、自社に適する時期にします。
メンター・メンティーへのサポート
リバースメンタリングは、メンター・メンティー双方が、互いの価値観を知り尊重し合う関係性の構築にも役立ちます。世代や役職の違いによる価値観や考え方の違いを学び合えるよう、人事担当者はメンター・メンティーの双方と適宜面談をおこない不安の解消に努めるなどサポートしていきましょう。
次世代を担う若手社員の育成にも役立つ
リバースメンタリングを通して世代や価値観の異なる若手社員と先輩社員・上司との交流が深まることにより、組織の活性化や若手社員のモチベーションの向上が見込めます。その結果としてイノベーションの創出につながることもあるでしょう。
また、リバースメンタリングは自社の将来を担う若手社員の人材育成という面でも効果を発揮する可能性があります。リバースメンタリングを通して、他者への接し方や教え方を学んでもらいましょう。