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カークパトリックモデルとは?メリットや活用事例、運用時の落とし穴も解説

2024年03月27日更新

講義を受けているところ

カークパトリックモデルは、研修や教育プログラムの効果を評価するための手法のひとつです。このモデルでは、研修の効果を「反応」「学習」「行動」「成果」という4つの段階で評価し、それぞれの段階における成果を見える化します。誕生してから半世紀以上が経過していますが、現代でも研修を評価するためのフレームワークとして活用する企業も少なくありません。

この記事では、カークパトリックモデルの概要を紹介しながら、そのメリットや注意点も合わせて解説します。

目次 【表示】

カークパトリックモデルとは?

人材育成と書かれた積木

カークパトリックモデルは、研修や教育プログラムの効果を評価するための枠組みの一つです。1959年にアメリカの経営学者ドナルド・カークパトリックによって提唱され、そこから何十年間にもわたり研修の効果測定方法として利用されています。

カークパトリックモデルでは、研修の成果を4つの段階に分けて測定・分析します。単に研修直後の知識習得度を測るだけでなく、「受講者の行動変容」や「組織全体の成果」までを含めて研修の効果を測定します。その結果をもとに、研修効果を高めるための施策を検討できる点がカークパトリックモデルの特徴といえるでしょう。

【カークパトリックモデルの4段階】

段階 測定の対象 測定方法の例
レベル1 反応(Reaction)
受講者の満足度、研修直後の知識習得度、研修講師の評価を測る 満足度アンケートなど
レベル2 学習(Learning)
受講者の学習到達度を測る 理解度テスト・レポート提出など
レベル3 行動(Behavior)
職場における受講者の行動がどう変化したのかを測る 他者評価など
レベル4 成果(Results)
受講者の行動変容によって業績がどう変化したかを測る ROI分析(投資対効果)など

カークパトリックモデルが注目される理由

インスピレーションを受けたイメージ

そもそも研修は、従業員を育成して企業の持続的な成長を実現するための投資活動です。投資であるからには投資対効果(ROI)の観点をもつことが大切であり、研修を実施したことで「組織にとって具体的にどのような効果が得られたのか」を適切に測ることが欠かせません。

そして、その方法論として一部の企業で取り入れられているのが「カークパトリックモデル」です。研修や教育プログラムの効果を段階的に評価し、受講者の反応、学習到達度、行動変容、そして影響(成果)を総合的に捉えます。この多角的なアプローチにより、研修の効果を包括的に把握できます。

ただ一方で、継続的に研修の効果を評価することは、決して簡単なことではありません。とくに、行動変容や成果はさまざまな要因に影響されるため、厳密に効果測定をすることは難しいといえるでしょう。また、反応の段階ではアンケート調査が採用されることが多く、回答の質を保つために設問を適切に設定することも必要です。

カークパトリックモデルを実務で取り入れる際には、それらの課題があることを念頭において導入を進めましょう。

カークパトリックモデルの4段階評価について解説

step upと書かれたメモ

レベル1 反応(Reaction)

「反応」の段階では、受講者の研修に対する反応や満足度を評価します。具体的には、受講者が研修内容にどれだけ関心をもち、受講する価値があると感じたかに焦点を当てます。

アンケート形式で調査されるのが一般的で、受講者の感想や満足度を聞き取ります。受講者の反応がポジティブであればあるほど、より高い習熟度やその後の行動変容が期待できます。なお、アンケート実施のタイミングは、受講者の記憶が新しい研修直後におこなうのが効果的です。

ただし収集されるデータの多くは、主観的なものであることに注意しましょう。たとえば、受講者が「アンケートが自身の評価に影響するのではないか」と考え、ネガティブな回答を避けるといったケースも考えられます。

そのため、匿名アンケートにするなどの工夫をして、受講者の満足度や研修への関心度をできる限り適切に測れるような制度設計を心がけるとよいでしょう。

レベル2 学習(Learning)

「学習」の段階では、研修が受講者の知識・スキル習得にどの程度影響を与えたかを評価します。

研修当日~数日後に実施されることが多く、具体的には「研修の事前と事後にテストをする」「レポート提出や実践演習をおこなう」などの方法が考えられます。これらの方法により、点数や正解率といった定量的なデータと教育担当者からの定性的なフィードバックの両方を用いて、研修効果をより正確に把握できます。

近年は、LMS(学習管理システム:Learning Management System)の活用も進んでいます。受講者の研修受講履歴やテスト成績などをデジタルデータで管理でき、それをもとにその後の分析や経過観察をおこなえます。

レベル3 行動(Behavior)

「行動」の段階では、研修が受講者の行動や習慣にどのような変化をもたらしたかを評価します。「研修で得た知識が、実際の職務にどれだけ適用されているか」を確認することが目的であり、研修後3か月~半年のタイミングで評価をおこないます。

具体的には、同僚や上司による他者評価、本人のKPIの追跡などを実施します。その意味では、協力的な組織文化や現場のサポート体制も重要であり、組織全体として評価体制を構築する意識が大切です。

レベル4 成果(Results)

カートパトリックモデルの最終段階である「成果」は、研修が組織全体の目標達成にどの程度貢献したかを評価します。

業務効率の向上、売上の増加、顧客満足度の向上、離職率など、具体的な組織的成果を総合的に鑑みながら、研修の投資対効果(ROI)を検討します。分析のタイミングとしては、半年~1年ほどに1回の間隔で定期的に実施するのがよいでしょう。

前述の通り、組織に対する研修の効果を厳密に捉えることは簡単ではありません。ただし、「生産管理研修に対する不良率の改善度」「営業研修が寄与した成約件数や売上の増加率」など研修内容や設定する指標次第で実践することは可能です。

「成果」の段階はこのモデルの最終ゴールであり、組織の戦略的意思決定にも影響を与えます。

カークパトリックモデルのメリット

メリットと書かれた積木

研修プログラム改善やフォローアップの指針を立てられる

各段階での評価を通じて、研修プログラムのどの部分が効果的で、どの部分に改善が必要かを特定しやすくなります。原因が特定できれば、研修内容やフォローアップ方法の改善に向けた施策を検討できます。

たとえば、反応・学習の段階では研修効果が見られるものの、実際の行動に反映されていない場合、受講者にとって研修内容を実践できるようなサポートが必要であることがわかります。上司との面談の機会を設けたり、フォローアップ研修をおこなったりするなどの具体的な対策を講じられます。

研修に関するノウハウが蓄積される

カークパトリックモデルを活用することで、研修の各段階におけるデータが収集できます。場当たり的に研修をおこなうのではなく、計画から効果測定まで根拠にもとづいて研修プログラムを設計できるようになるでしょう。

時間をかけて蓄積された知見は、効果的な人材育成の基盤となり、ひいては組織全体の成長と発展につながります。

カークパトリックモデルを運用する際の注意点

注意事項と書かれたメモ

研修において、もっとも大切なのは「目的を明確にする」ことです。研修を通じて受講者にどうなってほしいのか、この点があいまいだと研修の効果を最大化できません。カークパトリックモデルを取り入れる際は、最終ゴールを定めたうえで、研修プログラムや評価方法を設計しましょう。

また「行動」「成果」の評価は難しく、「どこからどこまでが研修の成果なのか」を捉えにくい点もカークパトリックモデルを実践する際の注意点といえます。

なお、人材育成の評価フレームワークはカークパトリックモデル以外にも複数存在するため、組織のカルチャーや研修内容に合わせて適切な評価方法を検討することも大切です。

カークパトリックモデルを意識する効果は大きい

会議をしているイメージ

カークパトリックモデルは、研修の成果を多面的に測る方法のひとつです。「行動」「成果」の評価が難しいという課題はあるものの、4段階のフレームワークを用いることで研修の効果測定プロセスを整理できるでしょう。

一方で、組織によっては、他の評価方法が適している場合もあります。研修の目的や育成したい人物像を明確にして、それに沿った評価プロセスを構築しましょう。

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