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【連載】職場でのゲーミフィケーション導入事例と注意点(2/3回目)

2022年07月27日更新

近年、職場でも注目が高まっているゲーミフィケーション。本シリーズでは、3回に分けて職場でのゲーミフィケーションについて解説していきます。第2回目は、職場でのゲーミフィケーションの事例と結果を3つ紹介し、職場に導入する際の注意点について解説します。

目次 【表示】

オンラインでおこなう研修プログラムのゲーミフィケーション

1つ目の事例は、世界150社以上、1万人以上のシニア管理職に利用されている、リーダーシップ育成を目指したオンライン研修プログラムのゲーミフィケーションです[1]。

このプログラムでは、学習プログラムの完了や知識を共有することに対してバッジの報酬を与えたり、ユーザーのパフォーマンスをランキング化して、リーダーボードとして可視化したりするゲーミフィケーションが一時期導入されていました[2]。

このゲーミフィケーションを3ヶ月体験してもらった効果として、毎日サイトを訪れるユーザー数が約47%増加し、毎週サイトを訪れるユーザー数が約36%増加したことが報告されています。さらに、学習プログラムの完了率を向上させる効果があったことも報告されています。

このゲーミフィケーションは、すでに開発されたプログラムにゲームのデザイン要素を部分的に組み込むタイプです。導入コストが低く、カスタマイズしやすいメリットがある一方、バッジの獲得などはユーザーがのってこないと高い効果が出ないデメリットもあります。

社員のつながりを促進させる日常業務場面でのゲーミフィケーション

2つ目の事例は、社員同士のつながりを促進させようとした、あるIT企業の社内SNSのゲーミフィケーションです。

この社内SNSは、社員の新しい人脈作りや同僚との連絡を促すよう設計されていましたが、参加を促す仕掛けとして、ポイントやレベルやリーダーボードなど、ゲームのデザイン要素が追加されていた時期がありました[3]。

その結果として、リーダーボードで掲載されている社員は、ポイントを増やそうとモチベーションが向上しましたが、リーダーボードのトップ10に入っていない社員は徐々にSNS上での交流を減らすという興味深い結果が報告されています[4]。

この結果は、ゲームの仕組みにうまくのった人に対してはより高い効果が見込める一方、リーダーボードのような社員同士の競争を煽るような状態にしてしまうと、ゲーミフィケーションの場から遠ざかる社員も出てくるという重要な知見を示しています。

日常業務のモチベーションを高めるゲーミフィケーション

3つ目の事例は、一般公開されているオンラインアプリを個々人が活用し、日常業務のモチベーションを高めようとしているゲーミフィケーションです。ここでは、Gerdenitsch et al. (2020)の研究事例を紹介したいと思います[5]。

まず、この研究チームは、ユーザー自身が日々の習慣に関する目標を設定し、ゲーム感覚でそれらの達成を目指せるオンラインアプリに注目しました。

このアプリでは、「ゴミを捨てる」などの目標を自分で設定でき、期限内に実際に達成できれば、自分のキャラクターのレベルが上がったり、装備できるアイテムが報酬としてもらえたりします。つまり、日々の習慣作りをゲーミフィケーションにしたアプリといえます。

興味深いのは、このアプリを用いて「業務Aを完了させる」など、自発的に仕事の習慣を目標にしたユーザーも多くいたということです。

そこで、この研究チームは、そのアプリ内で仕事に関連した目標を設定しているさまざまなユーザーを対象に、「仕事の楽しさ」と「生産性」に対する効果を検証しました。その結果、そのアプリの満足度が高い人ほど、仕事の楽しさと生産性をより実感していることがわかりました。

また、そのアプリを使っているユーザーは、企業がトップダウンで決めた目標ではなく、個々人でゲームのゴールを決めているのも興味深い点です。

実際、ユーザーのリーダーシップ度合いによって目標設定が変わることも報告されています。このようなボトムアップに目標を設定できるゲーミフィケーションは、仕事が流動的になり、個々人の裁量が高まる時代に適したものといえるでしょう。

職場にゲーミフィケーションを導入する際の注意点

これまで紹介してきた事例をまとめると、職場にゲーミフィケーションを導入する事例では、前回紹介したゲームのデザイン要素をうまく組み込むことで、モチベーションやエンゲージメント、パフォーマンスを高められることがわかりました。

一方で、「ポイント」「リーダーボード」など競争を促すデザイン要素を用いる場合は効果のばらつきが大きくなり、ドロップアウトする社員も発生しやすくなるリスクがあります。

この原因として、企業がトップダウンで設定したゲーム内のゴールに対し、社員の同意が取れていないことを挙げている研究者もいます[4]。

第3回目の記事では、これらの注意点を踏まえた上で、職場でゲーミフィケーションを導入する手順とコツについて解説します。

参考文献
[1] Donovan, L., Lead, P. (2012). The Use of Serious Games in the Corporate Sector. Learnovate Centre.
https://www.learnovatecentre.org/wp-content/uploads/2013/
06/Use_of_Serious_Games_in_the_Corporate_Sector_PRINT_
FINAL.pdf(参照日: 2022年6月27日)

[2] Melwin, M. J. (2017). Deloitte leadership academy – Gamification in training and development. https://www.slideshare.net/manumelwin/deloitte-leadership-academy-gamification-in-training-and-development-manu-melwin-joy(参照日: 2022年6月27日)

[3] Dugan, C. (2014). Beehive (SocialBlue) https://researcher.watson.ibm.com/researcher/view_group.php?id=1231(参照日: 2022年6月27日)

[4] Perryer, C., Celestine, N. A., Scott-Ladd, B., Leighton, C. (2016). Enhancing workplace motivation through gamification: Transferrable lessons from pedagogy. The International Journal of Management Education, 14(3), 327-335. https://doi.org/10.1016/j.ijme.2016.07.001.

[5] Gerdenitsch, C., Sellitsch, D., Besser, M., Burger, S., Stegmann, C., Tscheligi, M., Kriglstein, S. (2020). Work gamification: Effects on enjoyment, productivity and the role of leadership. Electronic Commerce Research and Applications, 43, 100994. https://doi.org/10.1016/j.elerap.2020.100994

著者プロフィール池尻 良平(いけじり りょうへい)
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