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VUCA時代に必要なアンラーニングとは? 企業にとってのメリットや実践のポイントも紹介

2022年07月13日更新

生産性を向上するために、業務フローを見直し業務効率化を図ることが求められていますが、その過程で、時代や現状のビジネス環境にマッチしなくなった知識やスキルが散見されることがよくあります。これらを放置することで、企業を取り巻く競争社会で取り残される可能性が懸念されます。

そのようななかで、ビジネス界ではアンラーニングが注目されはじめています。今回は、そもそもアンラーニングとはなにか、市場から求められている背景や実践するためのポイントを解説するとともに、企業が社員のアンラーニングを推進する際の注意点も紹介します。

目次 【表示】

アンラーニングとは

アンラーニング(unlearning)とは、日本語で「学習棄却」ともよばれています。現在保有している知識やスキル、価値観を自己認識したうえで、より仕事の成果を高めるために取捨選択をおこない、現在の業務にマッチしなくなったものをよりマッチしたものへ、バージョンアップしていくことをアンラーニングとよびます。

現在の業務にはマッチせず求められなくなったものにとらわれたままだと、社員の行動が組織の方針と異なる方向に進み、実害が発生するリスクもあります。

そのため、アンラーニングでは学び直すだけではなく、現状求められる背景に準じて、保有するスキルや価値観に固執することなく適切に棄却することも重要です。

アンラーニングとリカレント教育(社会人の学び直し)の違い

アンラーニングと混同しやすいのがリカレント教育です。リカレント教育とは社会人の学び直しともよばれ、社会人になってから就労現場を一旦離れ、就学したうえで仕事に求められる能力・スキルを学習し直し、より専門的な業務や上位の立場として再び就労することを指します。

アンラーニングは仕事をしながらおこなうことが前提となるのに対し、リカレント教育は就労と就学を繰り返すという点で大きな違いがあります。

アンラーニングとリスキリングの違い

リスキリングもアンラーニングと混同しやすい概念として挙げられます。
リスキリングとは、キャリアアップやキャリアチェンジを目的として新たなスキルを身につけることを指します。

たとえば、現在事務職で働いている方がエンジニアに転向したいと考えた場合、現在の業務範囲を俯瞰して必要なスキルを検討し、エンジニア転向の第一足となるスキルを身につけることなどがリスキリングにあたります。

保有している知識やスキルを見直し、必要のないものを適切に捨てて知識やスキル、価値観をバージョンアップしていくアンラーニングとは異なる概念です。

アンラーニングがいま求められている背景

ビジネス界でアンラーニングが求められている背景のひとつに、現代が予測不能・不確実なVUCA時代に突入していることが挙げられます。

たとえば、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって人との接触が避けられるようになり、リモートワークが一般的な働き方になりつつあることは、近年の大きな変化といえます。

このように、わずかな年月でそれまでの常識や価値観が大きく変わることがある現代では、企業や社員もそれに合わせて変化していくことが生き残っていくために必要不可欠です。

社員がつねに時代に即した知識やスキルを身につけ、業務に生かしていくことで、企業競争力を向上させるためにもアンラーニングが求められています。

企業が社員のアンラーニングを推進するメリット

社員一人ひとりがアンラーニングを実践することで、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。

生産性の向上が期待できる

長年にわたって継続してきた業務フローのなかには、時代や環境の変化によって非効率的になった方法が存在している場合もあります。

しかし、ベテランの社員のなかには、新たな知識や価値観を取り入れることに抵抗感を抱き、従来の業務フローに固執してしまう人もいます。そのような社員をアンラーニング実践に導くことができれば意識変革が促され、「より効率的な方法があるのではないか」と考えるようになるでしょう。

中途入社社員の早期戦力化

企業は中途入社社員に対して、早期に社内で活躍することを期待しています。しかし、中途入社社員のなかには、以前勤務していた会社と比較して業務フローや企業文化の違いなどに戸惑う人が出てくることも考えられます。

そこで、中途入社社員がアンラーニングを実践することで、新しい環境での仕事の進め方や方法に素早く適応できるほか、企業の価値観に合わせられるようになり、早い段階で組織に馴染むことができるでしょう。

その結果、ほかの社員とも連携がとりやすくなり、新たな環境でも仕事をスムーズに進めて早期に成果を出せることが期待できます。

ビジネス環境の変化に柔軟に対応できる社員の育成

過去の成功体験や社員自身が積み重ねてきた経験により、仕事の進め方について自身のスタイルに固執してしまうことがあります。
ビジネス環境が変化している中で、新たな知識や方法を取り入れないままでいると、仕事の効率が上がらず成果が伸び悩んでしまうこともあるでしょう。

しかし、アンラーニングを実践することで、古い知識や仕事の進め方、方法をつねにバージョンアップしていくことができ、成果の向上が期待できます。
アンラーニングに取り組む社員が増えれば、ビジネス環境が変化しても柔軟に対応できる組織が構築されるでしょう。

アンラーニングを実践するためのポイント

それでは、どのようにアンラーニングを実践していくのでしょうか。

リフレクションをおこなう

リフレクションとは、日本語で「内省」を意味する言葉であり、アンラーニングを実践する際には仕事をするうえで、自分自身が当然のことと認識している内容や前提を客観的に問い直すことを指します。

たとえば、

・業務に必要な知識として習得した◯◯は、現在と今後も価値があるか
・既存の業務フローは現在において本当に最適か

などが挙げられるでしょう。リフレクションをおこなうことで自分自身がもっている知識や価値観を整理でき、アンラーニングを効率的に進められるようになります。

新しい価値観などに触れながら見直す

リフレクションをおこなうためには、自分自身がもっている価値観だけでは客観視が難しい場合があります。そこで重要なのが、新たな価値観に触れることです。

たとえば、さまざまな立場の人と交流するために、他部署の人と積極的にコミュニケーションを図ってみることもひとつの方法といえます。

普段は関わることがない人とコミュニケーションをとることで、それまで自分自身がもっていなかった価値観や新たな考え方に触れられるでしょう。その結果、現状保有する知識や価値観を客観的に整理する気付きを得るきっかけになります。

意識的に捨て、新しいものを取り入れる

知識や価値観の取捨選択をしたら、現在にマッチしなくなったものは意識的に捨て、かわりに新しい知識・価値観へバージョンアップしていくことでアンラーニングが実践できます。

その過程で、これまで自分にはなかった知識・価値観に対して好奇心を抱けるようになると、さらに視野が広がり自身の成長につなげられます。

企業が社員のアンラーニングを推進する際の注意点

正しくアンラーニングが実践できなかった場合、企業にとって逆効果となってしまうケースもあります。社員のアンラーニングを推進するうえで注意すべきポイントを2つ紹介しましょう。

成長のために必要であることを社員に理解してもらう

アンラーニングでは過去に習得した知識を棄却するステップが発生します。しかし、棄却することをネガティブにとらえてしまい、モチベーションが低下する社員が出てくることも考えられます。

そこで、「過去に習得した知識や積み重ねてきた経験は無駄なものだった」と認識させるのではなく、あくまでも今後の成長に向けて知識のバージョンアップのために必要であることを示し、社員に理解してもらうことが重要です。

必要に応じて部署やチーム単位でおこなう

アンラーニングは、個人レベルで実践することが基本です。
しかし、社員一人だけが仕事の進め方を変えてしまうと、部署やチームのメンバーと業務フローを共有できず、仕事がスムーズに進まないこともあるでしょう。

そのため、業務フローを見直すとなると、部署やチーム全体で取り組まなければならないケースも多いのです。このような場合、見直すべき業務の優先順位を整理しながら進めていく必要があります。

企業の持続的な成長にもつながるアンラーニング

企業がアンラーニングを推進することで、時代の変化へ柔軟に対応できる社員が育成され、変化に強い組織になっていくでしょう。その結果、企業そのものの持続的な成長にもつながっていくことが期待されます。

アンラーニングの実践にあたっては、持っている知識やスキルを適切に棄却することをポジティブにとらえてもらえるように、フォローすることが重要です。

VUCA時代のなかで企業が生き残っていくための一つの手段として、アンラーニングを推進してみてはいかがでしょうか。

監修者プロフィール小林 大悟(こばやし だいご)
2017年に株式会社マイナビへ入社。転職者向けサービスの営業として、多数企業の採用支援に従事。 中途採用後の人材活躍にも重要性を見出し、2020年より教育研修事業部に参画。 「採用、配置、育成・定着、活躍」といった、HRMプロセスをバックグラウンドに、日本全国の企業様に向け支援を継続中。
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