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フィードバックの意味と目的とは?効果的に実施するためのポイントも解説

2025年08月29日更新

会議室で話すビジネスパーソン

相手の成果や課題を客観的に伝え、成長を促す「フィードバック」。多くの職場でおこなわれる人材育成の手法ですが、伝え方やタイミングを誤ると相手との信頼関係やモチベーションを損なう恐れもあります。効果的なフィードバックの実施には、適切な方法や配慮が欠かせません。

本記事では、フィードバックとはなにか、フィードバックの種類、メリット、3つの手法、フィードバックを効果的におこなうためのポイント、やってはいけないことを紹介します。

目次 【表示】

フィードバックとは?

フィードバックとは、「相手の行動に対して客観的な評価をおこなって改善を促す行為」を指す言葉です。ビジネスでは上司から部下へおこなわれることが多く、1on1や人事評価などの面談を通じておこなわれるのが一般的です。上司はフィードバックを通じて部下に気づきを与え、問題解決やスキルアップを促します。

「フィードフォワード」との違い

フィードバックと似た言葉に「フィードフォワード」があります。フィードバックが過去の行動を振り返り、客観的な指摘をするのに対し、フィードフォワードは未来に目を向けたアプローチになります。

たとえば、「これからどうすればもっとよくなるか」「次回はなにを意識するべきか」といったように、目標達成や前進のための意見を共有するのが特徴です。
なお、この二つは対立するものではなく、目的に応じて活用することで、気づきと前向きな行動の両方を促すことができます。

「アドバイス」との違い

フィードバックとアドバイスは似ているようで、目的や伝え方、物事を捉える視点に違いがあります。
フィードバックは、相手の行動や成果に対して客観的な情報を返し、気づきや改善のきっかけを与えることを重視する一方、アドバイスは、伝え手自身の経験や知識にもとづいて主観的な提案や助言をおこなうという点が異なります。

フィードバックの種類

ポジティブとネガティブ イメージ画像

フィードバックは、褒めることを基本とする「ポジティブフィードバック」、問題点を指摘する「ネガティブフィードバック」の2種類に大きく分けられ、相手の性格や状況などに応じて使い分けることが大切です。

ポジティブフィードバックとは

ポジティブフィードバックとは、相手のよい行動や成果に対して前向きな言葉で評価を伝えるフィードバックの手法です。自己効力感を高め、モチベーションの向上や自発的な成長を促すことが期待されます。

ただし、効果的なポジティブフィードバックには前提条件があります。ある研究によれば、上司との信頼関係が築かれており、なおかつ部下の目標に合致した内容である場合にこそ、効果が高まるとされています。この2つの条件が欠けると、むしろ逆効果になる可能性もあるため、関係性やタイミング、内容に十分な配慮が必要です。

ポジティブフィードバックの例文

  • ・「今日のミーティングでは、要点を短く整理して発言していたため、参加者全体の理解が早まり、予定時間内にすべての議題を終えることができました」
  • ・「作成された資料は、見出しや図の配置が整理されていて視認性が高く、初見のメンバーも内容をすぐに把握できていました。視覚的な配慮が伝わっていました」
  • ・「お客様との会話で相手の話を最後まで丁寧に聞き返答していたことで、お客様が安心した様子で表情を緩めていました」
  • ・「トラブル発生時に、まず関係者に状況を共有し、手順に沿って速やかに動けていましたね。その結果、作業への影響も最小限に抑えられました」

ネガティブフィードバックとは

ネガティブフィードバックとは、相手の行動や成果における問題点を具体的に指摘し、改善を促すための手法です。
目的はあくまで相手の成長を後押しすることであり、的確に問題を伝えることで、次の行動に活かすための軌道修正を促します。

ただし、その性質上、「やる気をそぐような伝え方」や「人格に踏み込んだ指摘」には注意が必要です。「資料のまとめ方に説得力がない」「対応スピードが遅い」といった内容も、伝え方次第で相手の受け止め方は大きく変わってしまいます。

相手の状況や性格を踏まえた表現をしたり、日頃からの信頼関係を構築したりし、フィードバックそのものが「責め」になってしまわないようにすることが重要です。

ネガティブフィードバックの例文

  • ・「報告書の内容に少し曖昧な点がありました。もう少し具体的な数字や事例を入れてもらえると、読み手に伝わりやすくなります。」
  • ・「プレゼンの時間配分が少し長くなってしまいましたね。聞き手が集中しやすいように、重要な部分を絞って伝える工夫をしてみましょう。」
  • ・「タスクの進捗がやや見えにくくなっていたので、途中でも簡単な共有があると、周囲もフォローしやすくなります。」
  • ・「メールの文面が少し硬く感じられたようです。相手との関係性を踏まえて、少しやわらかい表現を心がけてもいいかもしれません。」

【ポジティブフィードバックとネガティブフィードバックの違い】


ポジティブフィードバック ネガティブフィードバック
目的 相手のよい行動や成果を肯定的に伝え、モチベーションや自発的成長を促す 問題点を明確にし、改善を促すことで次の行動に活かせるようにする
メリット ・自己効力感を高める
・やる気や積極性を引き出す
・課題に気づかせる
・早期に軌道修正ができる
デメリット ・信頼関係がない場合、表面的に受け止められることがある ・伝え方を誤るとやる気を損なう恐れがある
適した場面 ・よい取り組みや成果が見られたとき
・行動を継続・強化してほしいとき
・問題が深刻である場合などミスや改善点が明確なとき
・パフォーマンスを立てなおす必要があるとき


フィードバックをおこなうメリット

フィードバックには次のようなメリットがあり、適切におこなうことができれば組織やフィードバック対象者のパフォーマンス向上につながります。

効率的にゴールを目指せる

定期的なフィードバックは、相手に自分の行動を振り返るきっかけを与えます。たとえば、進むべき方向性に間違いがあっても、フィードバックによってそれに気づき、方向を修正することで、より効率的にゴールを目指せるようになるでしょう。

実際に、心理学者ビロドーらの実験では、作業結果に関するフィードバックを途中から与えるようにしたグループは、ミスが著しく減少した結果が出ています。一方、途中でフィードバックをやめたグループでは、ミスが増加していったことが示されています。

そのため、効率的に業務を進めたい場合はフィードバックで情報を与えることの効果が大きいといえるでしょう。

モチベーションやスキルの向上につながる

フィードバックを通じて相手の努力や長所を認めてあげることで、相手の自己効力感が上がり、それに応じてモチベーションアップが期待できます。さらにモチベーションの高い状態を維持できれば、能動的に仕事に取り組めるため、スキルアップへの意欲や主体性を育むことにもつながるでしょう。

信頼関係を構築できる

対象者の納得感が高い適切なフィードバックを継続的におこない、対象者が改善の努力を重ねることができれば、それが信頼関係の構築に寄与し、さらには相互理解も深まります。信頼関係を築ければ組織力も上がり、連携を密にしながら目標達成へと前進できるはずです。その結果、心理的安全性の向上にもつながるでしょう。

有名な3つのフィードバック手法

様々なフィードバック手法 イメージ画像
フィードバックにはさまざまな手法があります。それらを意識することで、効果的なフィードバックを実施できます。

SBI型

Situation(状況)、Behavior(行動)、Impact(影響)の順番にフィードバックをする手法です。順序だててロジカルに説明できるため、相手にとってフィードバックの内容がわかりやすいのが特徴です。

【フィードバック例】

  • ・昨日の商談についてなんだけど(状況)、相手が抱える課題をよくヒアリングできていたよ(行動)。相手の課題を明確にできればそれに合った提案ができる(影響)ようになるから、その調子で引き続きよろしくお願いします。

サンドイッチ型

「ポジティブ→ネガティブ→ポジティブ」の順番でフィードバックをおこなう手法です。モチベーション低下というネガティブフィードバックのデメリットをできる限り抑えたいときに使います。

【フィードバック例】

  • ・昨日の商談は、相手が抱える課題をよくヒアリングできていたよ(ポジティブ)。ただ、提出した企画書の内容は具体性に欠けていて、顧客の課題を解決するという点では説得力が弱かったよ(ネガティブ)。企画の方向性やアイディア自体はとてもいいと思うので、もう少し相手の現状や課題に対する施策へブラッシュアップをしてくれるかな(ポジティブ)。

ペンドルトン型

部下自らに「今後、どう改善すればいいか」「どう行動すればいいか」を考えさせるようなフィードバック手法です。一方的にアドバイスや問題点を伝えるのではなく、対話を通じて部下が改善点を見つけられるよう上司がリードします。

【フィードバック例】

上司:昨日の商談の出来はどうだった?
部下:自分としては、うまくできたと考えています。
上司:そうだね。相手が抱える課題をよくヒアリングできていたよ。一方で商談の改善点はあるかな?
部下:得意先の事前リサーチが足りなかったと反省しています。
上司:たしかに、より綿密にリサーチをすればもっと具体的な提案ができるかもしれないね。今後、あの得意先にはどうアクションしていけばいいと思う?
部下:そうですね。相手のニーズはつかめたので、それを盛り込んで提案内容を練りなおします。1週間後にまたアポを取ろうと思うのですが、どうでしょう?
上司:それがいいと思うよ!

フィードバックを効果的におこなうためのポイント

次に紹介する5つのポイントを押さえてフィードバックを実施することで、より高い効果につながります。

フィードバックの目的を明確にする

フィードバックを通じて「組織としてなにを実現したいか」「部下にどういう姿になってもらいたいのか」を明確にイメージしましょう。目的意識が欠如していると、ピントのずれたフィードバックになってしまい相手の成長につながりません。

また、フィードバックの目的を部下と共有することも大切です。共通の目的意識をもつことで、より効果的なフィードバックをおこなえます。

適切なタイミングでおこなう

フィードバックをおこなう際は、対象となる行動や出来事の直後に伝えることが基本。時間が経ってからでは、相手の記憶も曖昧になり、そのときの状況や行動を振り返るのが難しくなります。

また、長期的な業務やプロジェクトでは、結果が出るのを待つのではなく、できるだけ早い段階でフィードバックをおこなうことが効果的です。

たとえば、「あと数日で納期なのに、このままのペースでは終わらない」といった状況ではじめて指摘をしても、時間が足りず、かえって相手の意欲を下げてしまう可能性があります。
そのため、フィードバックのあとに、軌道修正や改善に必要な時間や余地が十分あることが重要です。

フィードバックの頻度に注意する

フィードバックは、一定の頻度で継続的におこなうことで、相手の取り組みに対する関心や仕事への前向きな気持ちを引き出しやすくなります。定期的に振り返りの機会があることで、進捗状況をこまめに把握しやすくなり、軌道修正もスムーズに進むでしょう。

ただし、回数が多ければ多いほどよいというわけではありません。あまりに短い間隔で繰り返されると、相手は「どの方向で進めばいいのか」が定まらず混乱したり、試行錯誤の結果を確認する前にまた次の指摘を受けることになり、かえって改善の実感が得られにくくなってしまいます。

大切なのは、前回のフィードバックをもとに取り組んだ内容の変化や成果が、ある程度見えるタイミングで次のフィードバックをおこなうことです。そのサイクルを保てば、相手は行動の変化に対する手応えを感じながら、自律的な改善にも取り組みやすくなるでしょう。

具体的かつ定量的に伝えることを心がける

フィードバックの内容はできるだけ具体的にし、数字やデータなどを用いて定量的に伝えるよう心がけましょう。また、結果に対する過程や行動、それをともなう具体的な思考について話し合うことで、相手にとって「どこがよくて、どこが悪かったのか」を振り返るよい機会になります。

日頃から信頼関係を構築しておく

フィードバックが効果的に届くかどうかは、普段の関係性に大きく左右されます。相手からすると耳の痛い指摘ほど、信頼関係がなければ、「批判された」「否定された」と受け取られやすく、内容そのものが伝わらなくなってしまいます。

フィードバックの場面だけで関係性を築こうとするのではなく、日常の何気ないやりとりや声かけの中で、相手への関心や敬意を伝えておくことが重要です。そうした関係性があれば、たとえ厳しい指摘であっても、「自分の成長を願ってくれている」と前向きに受け止めてもらえる可能性が高まるでしょう。

フィードバックでやってはいけない3つのこと

注意すべきポイント
最後に、フィードバックをおこなううえでの注意点をご紹介します。

思い込みや主観でのフィードバックは禁物

上司の主観を相手に伝えてしまうと、本人の考えや思いを考慮していないフィードバックになりかねません。そうなれば相手は納得できず、信頼関係を損なうことにつながってしまいます。具体的な成果や数値など客観的な情報を中心に、相手へ伝わるフィードバックを心がけましょう。

言葉選びには細心の注意を

たとえネガティブな内容であっても、フィードバックは叱責するためにおこなうものではありません。否定的な意見を伝える場合には、前向きな言葉に言い換えるなど相手が萎縮しないための工夫をしましょう。相手への敬意を忘れず、一つひとつ丁寧な言葉選びをすることが大切です。

フィードバックする環境にも配慮する

「大勢の人がいる場でフィードバックをしない」「必ず作業の手を止めてからフィードバックする」など、フィードバックをする環境にも気をつかいましょう。また、緊張している状態では話に集中しづらいため、必要に応じてアイスブレイクや雑談をしながら、リラックスした環境でフィードバックができるとなおよいでしょう。

適切なフィードバックでサポートを

フィードバックは正しくおこなうことで、部下の成長やモチベーション向上につながります。その効果を引き出すには「フィードバックを通じて、なにをどうしたいのか」という目的を明確にし、適切なタイミングでフィードバックすることが求められます。また、内容や伝え方は相手の性格や関係性によっても変える必要があり、日頃から信頼関係を築いておくことも重要です。

加えて、フィードバックは頻度にも注意が必要です。間隔が短すぎると相手が混乱しやすくなるため、前回の内容を踏まえて行動や成果が現れるまで十分な時間を設けることが大切です。
こうしたポイントを意識しながら、長期的な視点で相手の成長を支援していくことが、効果的なフィードバックにつながります。

著者プロフィールHR Trend Lab編集部
タレントマネジメントやエンゲージメントなどの最新トレンドから、組織や人事にまつわる基本知識までマイナビ独自の視点でお届けいたします。
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