HR Trend Lab

MENU

HR Trend Lab

キャリアパスとは?意味や制度の必要性を解説

2022年10月30日更新

キャリアパスとは、主に社内での目標への道筋を指します。キャリアパスの設定や実現への取り組みは、人材育成や事業業績にも影響するため、従業員と企業側の双方にとって重要です。多くの企業が導入するキャリアパス制度にはどのような効果が期待できるのか?制度がもたらすメリットについて、詳しく解説します。

キャリアパスとは?なぜ重要視されるのか

キャリアパスとは、組織内における役職や職務に向けた昇進ルートを、職務間の移動も含めて示すものです。キャリアアップへの道筋を明示したり、職務と人がマッチしているかを判断したりと人材マネジメントの場面で幅広く活用できるため、従業員自身にとっても、目指したい業務や職位が明確になり、目標に向かうステップの指針となるでしょう。

具体的には、「プロジェクトリーダーを任せられるようになりたい」「3年後までに課長に昇進したい」といった従業員の社内での目標に到達するためのルートを意味します。

キャリアパス制度は1980年代後半頃より徐々に企業や業界に取り入れられてきましたが、近年、より注目を集めるようになった背景には、終身雇用や年功序列制度の崩壊が挙げられます。これまでのように、年齢とともに地位や給料がスライド式に上がるというわけにはいかなくなったことで、従業員が自身のキャリアを意識する機会が増えました。キャリアパス制度の導入は、職業人として目指すべき将来のビジョンを従業員が自ら描き、成長するよう導く効果が期待できます。

キャリアパス制度を導入するメリット・デメリット

キャリアパス制度の活用で得られる主なメリットは3つあります。

モチベーションの向上

キャリアパス制度は、目標に辿り着くために必要な経験やスキル、資格などを具体的に把握することができます。たとえば、「プロジェクトリーダーを任せられるようになりたい。
そのために〇〇についてキャリアを積みたい」「3年後までに課長に昇進したい。A部で経験を積み、必要となる資格を2年以内に取得したい」というように、達成ルートを進むために必要な要素や積むべき経験が可視化され、業務に対する意欲の向上につながります。意欲的に業務へ取り組む従業員が増えれば組織力も底上げされます。

職務と人のミスマッチを防ぎ、効果的な育成や配置

キャリアパス制度による従業員の強みの棚卸しや目標設定は、入社前後に発生しやすい職務に対する違和感の発生や、職務と人とのミスマッチを減らせます。
キャリアパスを用いた研修やOJTなど、成長に向けた環境を整備して提供することで、従業員の企業への信頼も増すでしょう。有益な研修を受けられる機会を増やすことでスキルアップが実現でき、効果的な人材の育成や配置にメリットをもたらします。

離職率の低下と定着率の向上

終身雇用制度が徐々に消滅する昨今、面接を受ける人にとって「この会社に入ってなにができるのか」「どう成長できるのか」といった将来のビジョンを描きにくくなっている側面があります。採用時にキャリアパスを提示することで、企業は「成長できる環境」をアピールすることができ、応募者も企業で働く姿をイメージしやすくなるため、意欲の高い人材の獲得につながります。
効果的な人材マネジメントを展開できれば、短期間で離職する人を減らし、定着率を向上することができるでしょう。

キャリアパス制度のメリットは、うまく活用することで従業員のモチベーションをアップし、企業全体のパフォーマンスを活性化できることです。ただし、形骸化したキャリアパスを用いると、デメリットにつながる可能性があるため注意が必要です。

キャリアパス制度を効果的に運用するポイント

キャリアパスのデメリットを回避し、効果的に設計・運用するために意識しておきたいポイントがあります。

目標となるモデルの設計

キャリアパス制度の効果を得るには、従業員が、理想像やゴールを具体的にイメージできるモデルが必要です。曖昧なモデルを提示すると失敗につながりやすいため、先輩や上司など自社で成果をあげている従業員を参考に、ロールモデルを設計しましょう。社内でコンピテンシーを導入している場合は、キャリアパスと連動させた活用も有効です。

従業員のスキルを分析し把握する

次に、従業員が歩んできたキャリアや、現在のスキルを分析します。ここでしっかり棚卸しができると、自分の強みや、描くキャリアへのルート上の今いる位置、足りていないものがなにであるかが明らかになります。

分析をもとにゴールまでのロードマップを描いて、目標達成するために必要なスキルや資格、メンタリティなど、身につけるべき能力をキャリアパスによって示しましょう。キャリアパスの構築に必要な「目標」「現状分析」「達成方法」の要素を踏まえながら進めることが大切です。
キャリアパスを押し付けるのではなく、本人の希望を考慮することも、モチベーションを阻害しないために重要なポイントとなります。

キャリアパス制度の整備と定期的な見直し

ャリアパス制度が多くの企業に注目される理由に、昇進や給与アップの制度が時代とともに変化し、働き手としての将来が想像しづらくなった背景があります。
企業側がキャリアパス制度を導入し、従業員一人ひとりが望む将来に焦点を合わせた成長のルートを明示することで、優秀な人材の確保と育成に繋がり、さらには高い定着率が期待できます。

より良い効果を目指すには、従業員が納得できる公平な評価制の整備が必要です。
制度に人を合わせようとするのではなく、人によって成長スピードに違いがあることを考慮し、状況に応じた整備を意識します。具体的には、出産・育児休暇など長期休暇を取得した従業員が復帰した際は活躍の場を見直す、管理職の人材配置や役割が形骸化していないか定期的に見直すなど、制度に盲点がないよう広く組織内を把握し、改善を続けることが有効な活用の鍵となります。メンター制度など、コミュニケーションを軸にしたマネジメント手法も取り入れて、従業員が能力を伸ばせる場を後押ししていきましょう。

キャリアパス制度の運用で失敗しないために

キャリアパス制度では、目標到達のために必要な経験やスキルが示されることから、「自分の希望とずれている」「望むように昇進できなさそうだ」といったモチベーションの低下を招く可能性があります。失敗を避けるために注意したいポイントを紹介します。

  • ・キャリアパス制度の説明
  • 導入する目的や制度の内容について十分に説明する

  • ・キャリアカウンセリング、キャリアコンサルティングの実施
  • 従業員の希望や適正、キャリアに対する悩みや不安をヒアリングしフィードバックを行う

  • ・複数の選択肢を示す
  • 従業員の希望や環境、社会の変化に対応できることを示し、「道が絶たれた」ように感じさせない

また、キャリアパスと似ている言葉は多く、意味が混同されることも少なくありません。それぞれの用語との違いを正しく把握し、キャリアパス制度の運用を確実に行いましょう。

<キャリアパスと似ている用語>

  • ・キャリアプラン:目標達成のために、自ら考える計画
  • ・キャリアビジョン:人生や仕事を俯瞰して理想像を描くこと
  • ・キャリアデザイン:理想像実現のためのプロセス設計や人生設計
  • ・キャリアアップ:役職や地位向上を目指しスキルを高めること
  • ・キャリアラダー:同一職務内のキャリアアップに必要なステップ

キャリアパスの具体事例

キャリアパス制度は企業によって特色があり、近年では「キャリア自律」と並行して実施している企業も増えてきています。どのような取り組みがあるのか、一例を紹介します。

「キャリア自律」をサポートするサントリーの取り組み

サントリーホールディングス株式会社では、キャリアパスを前進させた「キャリア自律」への取り組みを提供しています。約4万人の社員を抱えるサントリーでは、リーダーシップ育成を念頭に、2015年に「サントリー大学」を開校しました。

リーダーシップ育成の重要ポイントを、「計画的な経営人材の育成」と「グローバルで活躍する人材の育成」の2点に定め、企業理念浸透やビジネス素養強化のためのプログラム、DXや職務に関係する分野の学部など、84,000以上にも及ぶ学習コンテンツを用意して、全世界の社員がオンラインツールで大学にアクセスできる環境を整備しています。

また、サントリーでは研修を現場との地続きの場と考え、社員がキャリアパスで描いた「なりたい姿」実現のために、機会損失が生まれないよう注力しています。自社で活躍する社員のストーリーを共有しロールモデル発見の機会を提供する、社員自らが自由に講義を受講・開講できるシステムを取り入れるなど、役職に関係なく自発的にキャリアパスを設計し行動できる機会を多方面から用意しています。

職業人生をどう生きるのか。求めるキャリアのルートを自ら明確に描くためのキャリアパス制度が効率的に導入され、有効に活用されている代表的な例と言えるでしょう。

まとめ

キャリアパスは、従業員が目標達成までに必要とする経験やスキルなどを、昇進ルートとして明確に示す制度です。目的実現のための研修やOJTを提供し、キャリアアップをサポートすることで、従業員のモチベーションや意欲の向上へつながります。
従業員が描くビジョンに理解を示し、従業員が自発的に目標へ進める環境を整備しましょう。キャリアパスの活用が組織の活性化につながり、事業の業績にも良い影響が期待できるでしょう。

著者プロフィールHR Trend Lab編集部
タレントマネジメントやエンゲージメントなどの最新トレンドから、組織や人事にまつわる基本知識までマイナビ独自の視点でお届けいたします。
人気記事ランキング
注目キーワード
研修・診断サービス
  • マイナビ エンゲージメント・リサーチ
  • 社会人基礎力診断
  • ムビケーション
→
←
Career Research Lab マイナビ研修サービス ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 外国人採用サポネット 日本エンゲージメント協会 HUMAN CAPITAL サポネット ナレビ マイナビキャリアサポート