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LXP(ラーニング・エクスペリエンス・プラットフォーム)とは?LMSとの違いや導入の注意点も解説

2024年05月08日更新

ビジネスとテクノロジーのコンセプト
これまで、従業員に学習を提供する際には、管理者が、従業員に学んでほしい内容を、e-ラーニングや研修を通じて提供する形が主流でした。しかし、近年は従業員の体験がより重視されるようになってきており、学習者個人のニーズに合わせ最適な学習が提案されるLXP(ラーニング・エクスペリエンス・プラットフォーム)が台頭しようとしています。

本記事では、LXPとはなにか、LMSとの違いを解説し、LXPを活用するメリット、導入の注意点を紹介します。

目次 【表示】

LXP(学習体験プラットフォーム)とは

e ラーニング、オンライン教育のコンセプト「LXP(Learning Experience Platform)」は日本語で「学習体験プラットフォーム」とも呼ばれ、学習者のニーズに合わせて個々に学習コンテンツを提供できるプラットフォームを指します。

LXPは、サービスによってさまざまな機能が搭載されていますが、学習者の目標や過去の活動、学習スタイルといったデータにもとづき、自動でおすすめの学習コンテンツを提案できることが大きな特徴です。また、LXPは自社の学習コンテンツ(e-ラーニングや社内研修用のコンテンツなど)と、インターネット上の情報(Web記事・動画、ポッドキャスト、電子書籍など)も扱うことができ、学習体験をより向上させる環境も提供できます。

海外では近年普及が進んでいるLXPですが、日本では一部の大企業で導入され始めた段階であり、まだまだ認知が進んでいないといえます。しかし、人材の流動性が高まっていることや、人材不足が深刻化している背景を踏まえて、従業員のパフォーマンス向上や定着率向上が課題となっている今、いかに従業員体験(Employee Experience)の価値を向上させるかが重要な考え方となっています。

企業側が学んでほしいことだけでなく、従業員自身のニーズに沿って学べる環境を提供することが、従業員体験の向上にも寄与するでしょう。そのための手段として、LXPは今後ますます認知されていくことが予想されます。

LMS(学習管理システム)との違い

LXPと類似する概念のLMS(Learning Management System)は、「学習管理システム」と呼ばれており、学習者が受講する「学習コンテンツ」や、管理者が学習者の学習履歴や進捗を管理する「管理システム」を含みます。学習を促すシステムとして、LXPとLMSは混同されがちですが、以下のような違いがあります。

【LXPとLMSの違い】

   LXP
(学習プラットフォーム)
LMS
(学習管理システム)
特徴 ・学習者個人が学習内容を選び、能動的に学ぶことができる環境をつくれる ・管理者が受講者に学んでほしい内容を選び、配信・管理できる
機能 ・マイクロラーニング、オリジナルコンテンツ、レコメンド、キュレーションなど ・研修の管理、eラーニング配信、承認・署名など
強み ・個人の興味や必要なスキルに応じてパーソナライズ化された学習コンテンツを提供できる
・苦手な分野や興味のある分野のスキルアップにつながりやすい
・内容が決まったプログラム(コンプライアンス研修など)を最後まで履修してもらえる
欠点 ・長時間のコンテンツには適さない
・多機能がゆえに、使い方に関するガイダンスの提供が必須
・学習コンテンツの内容を学習者ごとにカスタマイズしづらい
・個々の学びのニーズに対応しづらい

 

LXPの代表的な機能

多くのLXPに共通して見られる特徴や機能としては、以下のようなものがあります。

【学習者向けの特徴・機能】

  • ・学習者の目標に応じた個々の学習計画(ラーニング・パス)の作成
  • ・学習者の傾向に合わせたおすすめの学習コンテンツの提案
  • ・直感的で操作しやすいインターフェース
  • ・スマートフォン・タブレットなどのモバイルデバイスへの対応
  • ・他のLXPユーザーと交流しながら学ぶ機能 など

【管理者向けの特徴・機能】

  • ・自社の課題に合わせた学習コンテンツのカスタマイズ
  • ・従業員の学習行動(コンテンツの閲覧・研修の受講履歴など)が記録される機能 など

その他にも、各社で基幹となっているシステムと連携できるものや、ゲーミフィケーション(※)を取り入れたコンテンツを提供するもの、チャットボットが学習者をサポートする機能を搭載したものなど、さまざまなLXPが登場しています。

また、すでにおこなっている社内研修などを、LXPと併用することで、学習効果を最大化できることが期待されます。

※ゲーミフィケーション……ゲームにおける要素(レベル、経験値、クエストなど)をゲーム以外の場面で取り入れることでモチベーションや学習効果を高める手法

LXPを活用するメリット

パソコンを操作する部下を指導する様子
ここでは、LXPを導入し、活用したときに生まれるメリットを紹介します。

従業員ごとに最適な学習を提供できる

新しいスキルを学ぶ際、前提知識や理解度は従業員ごとに異なるため、画一的な学習コンテンツを提供するだけでは、従業員全員の学習効果を最大化することは難しく、個々のニーズにも対応しきれません。しかし、LXPを活用することで、従業員の役職や過去の学習データなどを踏まえて、個々に応じた学習コンテンツを提案することができます。

また、サービスによっては、従業員ごとに学習計画(ラーニングパス)を作成し、段階的に必要な学習コンテンツを提案できるものもあります。従業員自身が関心を持っている分野だけでなく、経営戦略の観点から、長期的に必要になる学習を提供できるメリットがあります。

従業員の内発的モチベーション向上につながる

LXPを活用することにより、従業員が興味を持っている分野において学びを深めることができます。興味のある分野での学習を重ね、成長を実感することで「楽しい」と感じ、画一的な学習コンテンツよりも「内発的モチベーション」の向上につながります。

「内発的モチベーション」とは、興味や関心といった自発的な要因から生まれる動機で、報酬といった外部からの刺激による「外発的モチベーション」よりも従業員の持続的な成長やパフォーマンス向上につながりやすいといわれています。

従業員同士の関わりにより学びがブラッシュアップされる

LXPには、ユーザー同士が意見を交換したり、共同で作業したりするための機能が搭載されている場合が多く、従業員同士でアイデアや意見の共有がおこなえます。サービスによっては、同じようなスキルを学ぼうとしている他のユーザーが表示され、フォローしたり、そのユーザーの学習履歴を閲覧できたりするものもあります。

従業員同士が、お互いに刺激を受けながら切磋琢磨できることで、企業にとっても人材育成の効果が高まるメリットがあります。

学びのスピードが高まる

従来は、自分が興味を持った分野について学習したい場合、ニーズを満たすコンテンツを従業員自身が探さなければならず、多くの時間を要していました。しかし、LXPでは過去の受講履歴などから個々のニーズに合わせて学習コンテンツが提案されるため、コンテンツを探す手間が省け、学習により多くの時間を当てることができます。

従業員の学びのスピードが向上することは、人材育成の効率が上がることを意味します。効率のよい人材育成は、従業員の早期戦力化にもつながり、結果として組織の成果を最大化することになるでしょう。

マイクロラーニングによって学習効果が定着しやすい

LXPの学習には「マイクロラーニング」が多く取り入れられています。マイクロラーニングとは1分~5分の短時間学習を指し、動画やクイズ形式の学習などを含みます。短時間の学習を反復することで、学習内容が定着しやすくなるメリットがあります。

また、マイクロラーニングは、スマートフォンやタブレットといったモバイルデバイスとの相性が良く、通勤時間や業務の合間といったタイミングで手軽に学習できるため、忙しくてもスケジュールに組み込みやすく、学習のハードルが下がる利点もあります。

LXP導入における注意点

人差し指を立てるビジネスマン
ここまでLXPの特徴やメリットを紹介してきましたが、導入に際しての注意点を解説します。

導入による投資額増加

充実した機能が搭載されているLXPですが、無料で使えるものは少なく、全従業員に向けて本格的に導入するのであれば導入費用は高額になります。資金的余力が懸念される場合は、一部の部門に絞ってスモールスタートで導入していき、投資対効果(ROI)を確認しながら段階的に対象者を広げていくとよいでしょう。

管理者の負担増加

LXPは直感的で使いやすいインターフェースを備えていますが、導入に際しては、使い方を理解してもらうためのトレーニングや研修を実施する必要があるため、管理者の業務負担は増加します。また、導入後も、従業員の意見を取り入れながらユーザーインターフェースを使いやすくカスタマイズしたり、LXPを活用してもらうために社内での推進活動をおこなったりする必要があります。

加えて、既存の研修後のフォローアップ研修としてLXPにおける関連コンテンツを紹介するなど、既存の人材育成施策と結びつけるプロセスも欠かせません。

制度面を整備する必要がある

個々に最適化された学習を提供するというLXPの特性上、従業員個人のスマートフォンやタブレットなどを用いて、いつでもどこでも学習コンテンツにアクセスできるようにすることが学習効果を高めるためには欠かせません。

しかし、セキュリティ上の観点から、個人の端末の利用については、ルールを定めて運用する必要があるでしょう。

また、LXPにはマイクロラーニング(1分~5分の短時間学習)によるメリットがある一方で、時間・場所を選ばない学習の場合は、社外での学習時間を業務時間と見なすかどうかについても組織内でルールを決める必要があります。たとえば、自社が必修としている学習については業務時間と見なし、それ以外の学習については業務時間外の扱いとするなどといった区別が必要でしょう。

まとめ

マーケティングやテクノロジーについて会議をする様子LXP(学習体験プラットフォーム)は、学習体験プラットフォームとも呼ばれ、LMS(学習管理システム)よりも従業員の体験に重きを置いたツールです。個々の興味・関心に合わせてカスタマイズされた学習コンテンツが提供されることで、従業員の内発的モチベーション向上につながり、学習効果が高まるだけでなく、定着率向上などにも寄与することが期待されます。

まだ日本では認知度が低いですが、今後の動向に注目しながら、選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。

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