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タレントマネジメントの中心に据えられるタレントの定義とは?

2021年07月07日更新

1990年代から広まった「タレントマネジメント」という概念ですが、日本企業の人事担当者の皆さんにとっては、まだまだ馴染みが薄い方も多いのではないでしょうか?「タレントマネジメント」という言葉自体は知っているものの、「どういった取り組みなのか?」がよくわからない方もいるかもしれません。また、タレントマネジメントをいわゆる「情報システム」としてとらえているケースも少なくありません。タレントマネジメントを正しく理解するためにも、その中心に据えられるタレントとはなにかを理解する必要があります。

今回は、タレントマネジメントの概要に触れたうえで、企業の人事に関わる方(経営者、マネージャー、人事担当者)に向けて、タレントとはなにかを解説していきます。

目次 【表示】

そもそもタレントマネジメントとは

タレントマネジメントの目的は、あくまでも「組織の成果の向上」です。そして、戦略や目標を達成するために重要な職務に対して、適切な人材の定常的な配置を可能にするための人事管理の仕組みとその実践を通してこの目的を達成することをめざしています。もう少し簡単にまとめると、「組織レベルの戦略や目標の達成に貢献する重要職務に、適切な人材を絶え間なく配置するための試み」ともいえるでしょう。

この概念は、コンサルティング会社のマッキンゼーが1997年に「War for Talent」を提唱したことに端を発しています。経営層やマネージャーとして企業を牽引するような人材を獲得・育成した企業がビジネスを制するという仮説のもと、企業間での人材獲得・育成競争をめぐる研究の中で「タレントマネジメント」という概念が生まれました。

タレントマネジメントを適切に実施することで、一人ひとりの人材とその能力に注目し、採用や育成、異動などを通じて、もっとも活躍できるポジションに配置することが必要になります。ここで注目すべきポイントは、配置に限らず、採用や育成、評価、報酬、定着などの人事管理施策もタレントマネジメントに含まれる点です。

タレントマネジメントにおける「タレント」とは、ある特定の能力・才能・資質を有する人材のことを指します。注意したいのが、タレントという概念については、切り口や軸は以下のようにさまざまであることです。

1. 「特性」としてとらえるか、「人」としてとらえるか
2. 生まれつきの能力としてとらえるか、開発可能な後天的な能力としてとらえるか
3. 人材の全員をタレントとしてとらえるか、一部の選別された人材をタレントとしてとらえるか
4. 観察可能な成果や結果を重視するか、観察できない潜在能力を重視するか
5. 移転可能なものとしてとらえるか、特定の組織・状況のみで有効なものとしてとらえるか

このように、タレントを選定する基準となる能力・才能・資質は、組織ごとに異なり、その時々の戦略や目的によっても「タレント」の定義、すなわち求められる能力・才能・資質が変わるのです。ここでは「ある特定の能力・才能・資質を有する人材」と定義します。

タレントは先天的な資質のある人に限られないことも多いです。たとえば、航空会社のキャビンアテンダントであれば、「顧客に対して安全・安心を前提としたコミュニケーションが取れること」がタレントの条件になる場合があるでしょう。定義によっては、タレント候補者の能力開発やキャリア形成を経て、本人が能力・採用・資質を伸ばす努力をしたり、周囲が働きかけたりすることによって、誰もがタレントになれる可能性があるのです。

「タレント」は、会社ごとになにを指しているのかを明らかにすることが重要なポイントになります。

タレントの選別法

タレントを選別するにあたっては、以下2つの方法が考えられます。

人に着目したタレント選別法

人に着目したのタレントマネジメントでは、能力の高い人材が組織の業績を押し上げることを前提に、タレントを選別します。

たとえば、アメリカGE社が過去開発した「ナインブロック」が有名です。これは、縦軸にパフォーマンス(能力・才能・資質によって現れる結果)やポテンシャル(潜在的な力)、横軸にバリュー(自社の行動指針)を基準としてすべての人材を格付し、Aクラスの人材には報酬を与え、Bクラスの人材の雇用を維持し、Cクラスの人材を解雇するための制度です。人に仕事をつけることをベースにした選別法であり、日本のメンバーシップ型の働き方や各人の成果責任を測る評価制度に近い考え方です。

タレントマネジメントを自社で運用する際に留意すべきポイントは、キーポジションとタレントの能力・才能・資質が合致しない可能性があることです。また、成長企業で新規のキーポジションが増え続け、事業変化が激しい場合には、経営層やマネージャーとして企業を牽引するようなタレントを供給し続けなければならなくなる場合もあります。

職務に着目したタレント選別法

一方、職務に着目したのタレントマネジメントにおいては、組織の戦略や目的の達成につながる重要な職務(キーポジション)を担える人材かどうかを基準にタレントを選別します。キーポジションに適正な人を配置することをベースにした選別法であり、管理職の定義が確立しているようなロール型の働き方や各人の職務能力を測る評価制度の概念に近い考え方です。

運用手順としては、キーポジションを特定してから、キーポジションを担う人材に求められる能力・才能・資質などの要件を決め、タレントを選別します。

運用上留意すべきポイントは、二つあります。一つ目は、キーポジションを特定する際には、職位の高さによって規定されるものではなく、業種や業態によって、キーポジションにあたる職務はさまざまであることです。

二つ目は、タレントを選別する際にキーポジションを担うために必要な能力がある、あるいは能力を身につける可能性がある人材というとらえ方をすれば、ハイパフォーマー、ハイポテンシャル人材以外も対象にできることです。こういった視点で選別すれば、これまで埋もれていた高い能力を持つ人材を見つけることも可能であり、タレント候補者を育成することによって、タレントプールを蓄積することにもつながります。

まずは自社のタレントはどんな人材か考えることから

今回は、タレントの定義と選別法について解説しました。

今回解説したのは、あくまでも言葉の定義なので「実際にはどうすればいいの?」という疑問を持たれた方も少なくないかもしれません。状況が異なれば、取るべき対応は異なります。企業は、経営環境の変化に合わせて経営戦略を立案し、即時対応できる組織を作っていかなければなりません。そのためには、自社に最適な人事管理手法を模索することが求められます。

世間と同じ人事管理手法で潤沢なリソースを確保できた時代もありましたが、現在は限られたリソースで組織として高いパフォーマンスを発揮する必要があります。それを実現したいと考えると、人材配置や人材育成が大きな関心事になると思います。自社の従業員一人ひとりの能力を最大化させるタレントマネジメントを理解し、実行することが一つの解になり得ます。

この記事を参考に、自社におけるタレントはどんな人材なのかをしっかり考えてみる機会を持ってみましょう。

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